2001年、レベッカ・ブラウンの作品です。
原題「Excerpts from a Family Medical Dictionary」
邦訳版は、柴田先生の訳で2002年刊。 文庫版2006年刊。
母親が癌に冒され、著者レベッカ・ブラウンは、
母親の入院、手術、化学療法に付き添い、そして看取る。
病状は少しずつ進行し、回復することは無い。
時間はゆっくりゆっくりと流れ、2度と戻ることは無い。
このようなゆったりとした、でも確実に進む時間の流れの中で、
母親の病状の悪化、母親との会話や回想、思ったこと、腫瘍病棟の情景などが、淡々と書き綴られています。
連作短編形式のノンフィクションですが、小説のようにも読める、不思議な作品です。
訳者・柴田先生は、「あとがき」で、客観的な出来事として読みつつも、
個別的な出来事としても読むことができ、後者に力点を置きたいという旨を述べながら、
ー 安易に「わかるわかる」と言ったりするのは慎むべきだという気がするからである。(文庫版・P163)
と、述べています。
私も同感です。
著者が記した内容は、「プライベートの中のプライベート」と言える大事な空間。
たとえ親友であっても、安易に足を踏み込めるような領域ではない。
だが、読み進めていくと、「プライベートの中のプライベート」であるにもかかわらず、
「あ、やっぱりそうなんだ」と、著者と自分がシンクロする箇所が見つかる。
「わかるわかる」とは言えないけど、ちょっとした接点があり、そこに貴さを感じる。
そのような箇所を経るにつれ、ページをめくる手が自ずと速くなってくる。
本棚の中でも、「特別な存在」です。
特に、看取りを経験したことのある人には、一読を薦めたいです。
現在は、新品が手に入らない模様。
高齢化社会でありながら、読み手がいないということなのだろうか?
最後に、私の所有する文庫版の帯にある小川洋子氏・川上弘美氏の言葉を書いておきます。
「死にゆく者に寄り添い、その肉体を手当てしながら、魂を物語に刻み付ける・・・・・
レベッカ・ブラウンがここに生み出した看取りの文学は、胸に痛いほど静かで美しい。」
(小川洋子)
「大切な人の病と死を扱ったという理由からではなく、
それらの扱いの客観性ゆえに、本書はまことに聖なるものとなったのである。」
(川上弘美)
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家庭の医学 単行本 – 2002/10/10
- 本の長さ125ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞社
- 発売日2002/10/10
- ISBN-104022577983
- ISBN-13978-4022577986
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
死にゆく者に寄り添い、その肉体を手当てしながら、魂を物語に刻みつける…。胸に痛いほど静かで美しい看取りの文学。読めそうで、読めなかった待望の介護文学。
著者について
レベッカ・ブラウン:
1984年「The Evolution of Darkness」を発表。'94年ホームケア・ワーカーとしての経験をもとに、エイズ患者の世話をするホームケア・ワーカーの女性の視点から彼女と患者たちの交流を描いた小説「体の贈り物」を執筆。同作品でラムダ文学賞、ボストン書評家賞などを受賞する。他の作品に「The Haunted House」('86年)、「The Children's Crusade」('89年)、「The Terrible Girls」('90年)、「アニー・オークリーのガールフレンド」('93年)、「私をここにとどめておくもの」('96年)、「犬たち」('98年)などがある。バーモント州立大学創作科で講師も務める。2001年来日
柴田元幸:
東京学芸大学助教授を経て、東京大学助教授。著書に「生半可な学者」、訳書にJ.マシューズ「バトル・オブ・ブラジル」、ポール・オースター「幽霊たち」「偶然の音楽」「リヴァイアサン」、共訳にジョン・J.マカルーン「オリンピックと近代」など
1984年「The Evolution of Darkness」を発表。'94年ホームケア・ワーカーとしての経験をもとに、エイズ患者の世話をするホームケア・ワーカーの女性の視点から彼女と患者たちの交流を描いた小説「体の贈り物」を執筆。同作品でラムダ文学賞、ボストン書評家賞などを受賞する。他の作品に「The Haunted House」('86年)、「The Children's Crusade」('89年)、「The Terrible Girls」('90年)、「アニー・オークリーのガールフレンド」('93年)、「私をここにとどめておくもの」('96年)、「犬たち」('98年)などがある。バーモント州立大学創作科で講師も務める。2001年来日
柴田元幸:
東京学芸大学助教授を経て、東京大学助教授。著書に「生半可な学者」、訳書にJ.マシューズ「バトル・オブ・ブラジル」、ポール・オースター「幽霊たち」「偶然の音楽」「リヴァイアサン」、共訳にジョン・J.マカルーン「オリンピックと近代」など
登録情報
- 出版社 : 朝日新聞社 (2002/10/10)
- 発売日 : 2002/10/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 125ページ
- ISBN-10 : 4022577983
- ISBN-13 : 978-4022577986
- Amazon 売れ筋ランキング: - 732,958位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,717位外国のエッセー・随筆
- - 7,205位英米文学研究
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2004年11月22日に日本でレビュー済み
これってノンフィクションなんですね。てっきり小説だと思ってました。ってか、ほとんど小説ですよね?作者自らが看取った母との最後の日々。生あるものが、灯火を燃え尽くして魂がぬけていく様が肉親の目を通してるのにも関わらず、ドライで客観的な視点で描かれます。お涙頂戴じゃないがゆえに、看取る側の心理的な揺れが描かれず、逆にストレートに厳しい現実が胸に迫ってきます。冷徹なまでの完結した描写は写実的で、どんなに悲しいだろう時でも読者をその場面に定着させてしまう。肉親の死っていうのは、大きな嵐みたいなもの。死で完結する一連の行程は多大な心労と肉体的負担を強いられる。そして、死が訪れたあとは大きな穴が心に開いてしまい、虚脱感と空虚な闇が身を包んでしまう。何にせよ個人個人の大きな出来事には違いない。作者の筆は心理面を排除することによってその行程を崇高なまでに美しく描いていました。ちょっと真似できないですね。
2006年5月5日に日本でレビュー済み
レベッカブラウンは以前「体の贈り物」を読んだ。
前作はHIVウイルスに感染した患者達とのふれあいだったが、今回は実の母の看取りの話だ。母親の性格や本人の意見は端的にしかし不足することのない表現で表されている。病人の死や、苦しみが客観的な筆で書かれているが、お決まりの涙頂戴的な表現ではなく、そこにある事象のみに限定して表現している。そこにリアリティがあり、なおかつ読者の想像をかりたてる何かがあるのだろう。
描きすぎず、主張もおさえめながら心に深く染入る一冊でした。
前作はHIVウイルスに感染した患者達とのふれあいだったが、今回は実の母の看取りの話だ。母親の性格や本人の意見は端的にしかし不足することのない表現で表されている。病人の死や、苦しみが客観的な筆で書かれているが、お決まりの涙頂戴的な表現ではなく、そこにある事象のみに限定して表現している。そこにリアリティがあり、なおかつ読者の想像をかりたてる何かがあるのだろう。
描きすぎず、主張もおさえめながら心に深く染入る一冊でした。
2007年2月23日に日本でレビュー済み
運命的に引き寄せられる本との出会いというものが
時折存在する。
この本もそうだった。
「体の贈り物」を読んだあと、この本も読みたいと思っていたところ、
たまたま立ち寄った書店の店頭でばったり出会ってしまった。
購入して、一気に読んでしまった。
同じだ。父の時と。母の時と。
患者の家族であれば誰もが通る道。
それでもその家族ごとに異なるストーリーがある。
自分のことなのに
少し突き放したような抑えた文体で
実際に体験したひとの感情が淡々とつづられている。
まだ体験したことがない人にも、
既に体験している人にも、
ぜひ読んでもらいたいと思う。
日本とアメリカの火葬の違いに少し驚いた。
時折存在する。
この本もそうだった。
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たまたま立ち寄った書店の店頭でばったり出会ってしまった。
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同じだ。父の時と。母の時と。
患者の家族であれば誰もが通る道。
それでもその家族ごとに異なるストーリーがある。
自分のことなのに
少し突き放したような抑えた文体で
実際に体験したひとの感情が淡々とつづられている。
まだ体験したことがない人にも、
既に体験している人にも、
ぜひ読んでもらいたいと思う。
日本とアメリカの火葬の違いに少し驚いた。
2003年5月21日に日本でレビュー済み
先にレビューをお書きになった方々によって、この本の達成については
ほぼ言い尽くされていると思う。訳者の柴田さんは多くの名訳を
残していらっしゃるが、本書はその中でもつくづくなめらかで上品な翻訳であると感嘆します。
読み終わって、昔、上智大学の薄暗い教室で、まだ若々しかった河合隼雄先生が
ふとつぶやいた言葉を思い出します。
「生きることの根底にあるものは、impersonal sorrow とでもいうべき
なにかだと感じます」。
ほぼ言い尽くされていると思う。訳者の柴田さんは多くの名訳を
残していらっしゃるが、本書はその中でもつくづくなめらかで上品な翻訳であると感嘆します。
読み終わって、昔、上智大学の薄暗い教室で、まだ若々しかった河合隼雄先生が
ふとつぶやいた言葉を思い出します。
「生きることの根底にあるものは、impersonal sorrow とでもいうべき
なにかだと感じます」。
2003年5月12日に日本でレビュー済み
家族の死に至るプロセスを共に過ごすのは難しい。少しでも役に立ちたくて無闇に動き回ったり、話しかけたりするのはまだ始めのうちだ。死へのプロセスはそれほどに介護者の心も身体をも消耗させる。
本書では、癌患者の不眠、幻視幻聴、皮膚が痛んだり、飲み込めなかった薬が口の中に残っていたり、口の中にスポンジをふくませたり、という細かな要素が丁寧に描かれている。本当に「家庭の医学事典」のように。
これらの一つ一つの介護の記録が私の記憶の中の看取りの日々と共鳴を起こし、しばしば呼吸を整えるために本を閉じなくてはならなかった。
そして、母を亡くしたばかりの語り手のパニック状態も。百人百様の看取りがあるだろうが、看取りのプロセスは階段を深く深く降りていくようなもので、!全てが終わったとき、介護者が再び日常を取り戻すまでは一旦降りていった階段をのぼるようなプロセスを踏むことになる。
家族を介護したことのある人にとって、本書は追体験となるし、まだその経験がない人にとっては、その思いを知るよすがとなるだろう。
本書では、癌患者の不眠、幻視幻聴、皮膚が痛んだり、飲み込めなかった薬が口の中に残っていたり、口の中にスポンジをふくませたり、という細かな要素が丁寧に描かれている。本当に「家庭の医学事典」のように。
これらの一つ一つの介護の記録が私の記憶の中の看取りの日々と共鳴を起こし、しばしば呼吸を整えるために本を閉じなくてはならなかった。
そして、母を亡くしたばかりの語り手のパニック状態も。百人百様の看取りがあるだろうが、看取りのプロセスは階段を深く深く降りていくようなもので、!全てが終わったとき、介護者が再び日常を取り戻すまでは一旦降りていった階段をのぼるようなプロセスを踏むことになる。
家族を介護したことのある人にとって、本書は追体験となるし、まだその経験がない人にとっては、その思いを知るよすがとなるだろう。
2002年10月17日に日本でレビュー済み
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