いわゆる「スパイ物」の書物は世に氾濫しているが、それに対する防諜の現場はあまり知られていないように思う。本書を読み、防諜もまたエキサイティングな分野であることを知ることができる。私は本書を読む前、「防諜」という言葉からはせいぜい尾行程度しか思いつかなかったのだが、本書を読み、通信傍受、暗号解読といったシギントが重きを成していることを知り、目を開かされる思いであった。MI5と米国の情報機関との関係も興味深かった。
残念なのが、訳がやや分かりにくいことだ。この分野はただでさえプロットが入り組んでいて話が分かりにくいので、訳のせいで一層読解が難しくなってしまっている。
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スパイキャッチャー 上 (朝日文庫 ひ 10-1) 文庫 – 1996/2/1
ピーター ライト
(著),
Peter Wright
(原名)
- 本の長さ297ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日1996/2/1
- ISBN-104022611332
- ISBN-13978-4022611338
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (1996/2/1)
- 発売日 : 1996/2/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 297ページ
- ISBN-10 : 4022611332
- ISBN-13 : 978-4022611338
- Amazon 売れ筋ランキング: - 703,602位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年3月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年12月14日に日本でレビュー済み
スパイ映画と言えば、一種もう固定したジャンルとして成立しています。最近で言えばKingsman、ちょっと昔だとMission Impossible、さらには古典ともいうべき007等が挙げられます。日本では縁遠い諜報機関ですが、世界じゅうに存在しています。イギリスのみならず、米国のCIA、ロシアのKGB、イスラエルのモサドなどです。
本書はイギリスの防諜機関たるMI5出身の筆者の手による、イギリス諜報機関内で行われたスパイ探索活動記です。余りに内部情報を掲載した為か、出版当時の首相であるサッチャー氏が英国のみならず、オーストリア、ニュージーランド等で出版差し止めを要求したという曰く付きの作品です。
さて、本書で最も驚くのは、1930年代から筆者の引退する1970年代半ばまで約40年間にもわたり、諜報機関内部に潜むスパイを排除できなかったことです。
筆者はMI5の所属であり防諜活動が専門です。内部に潜むスパイを捕まえようと必死になりますが最終的には容疑者の特定と尋問までしか進めません。相手に縄をかけることまではできず、引退することになります。最後に元上司がかけた言葉が印象的です。「ピーター、君は秘密を知りすぎていたんだよ」
怖いですねえー笑。官僚組織の一部にスパイががっちり組み込まれているイギリスっていったいどういう国なのか興味が湧きます。
次に書きたいのは、何というか、強く感じる虚しさ・虚無感です。
上記に書いた通り、筆者は結局、大物内部スパイを一人も捕まえることはできません。敗北です。加えて彼は組織内でも支持を失っていきます(同僚を疑う監査部的役割だし仕事内容をみだりに言えないので当然ですが)。
本人は正義感から懸命にやっているものの、上司に阻まれる、あるいはそれより上位からの圧力を受ける。結局、自分の人生をかけてやってきたことは報われない(危うく年金まで失いそうになる)という終わり方です。哀しくないですか?筆者が真面目そうに見える分、一層哀しさが募ります。こうした読後の虚しさは、共産党革命家が最終的に転向した様子を綴る史明氏の自伝にも通ずるところがあると感じました。
また、ぼんやり感じたのは、そこはかとなく感じるイギリスのエリート社会の奥深さです。
本作後半で、内部スパイは組織的であり、かつオックスフォードやケンブリッジの卒業生グループらのつながりであることが示されています。尋問を受ける容疑者も、かつて共産主義に触れた事実を鷹揚に認めるところや、引退後の芸術への志向を表すなど、何だか人間の質が少し違うなあと感じました。これが米国なら尋問中にきっと不審死(!)。日本ならば、事実認定せずとも疑わしい時点で総バッシングか村八分。金銭的豊かさからくる余裕なのか文化なのかはわかりませんが、大物容疑者の余裕がちょっと素敵に感じました。
マルクスが資本論を書いたのはイギリスでありますが、そのイギリスのエリート層は冷戦中も資本主義の根本的問題についてよく学んでいたのかもしれません。
・・・
さいごにリキャップしますと、とても興味深いドキュメンタリでした。確かに一部、盗聴・尾行・暗号解読・亡命などは、もはや映画の典型のようなアナクロニズムを感じます。しかしながら、筆者のスパイを必死で追いかける様や、最終的にその元凶が組織内部、しかも事もあろうに自分の(元)上司が容疑者である等、進行がドラマチックで楽しめました。これが実話ですからまた驚きです。また、MI5をはじめとした公的組織の硬直性や政治家との付き合い、省庁同士の争いなど、組織の機能不全をよく表している点でも面白く読めました。
本書はイギリスの防諜機関たるMI5出身の筆者の手による、イギリス諜報機関内で行われたスパイ探索活動記です。余りに内部情報を掲載した為か、出版当時の首相であるサッチャー氏が英国のみならず、オーストリア、ニュージーランド等で出版差し止めを要求したという曰く付きの作品です。
さて、本書で最も驚くのは、1930年代から筆者の引退する1970年代半ばまで約40年間にもわたり、諜報機関内部に潜むスパイを排除できなかったことです。
筆者はMI5の所属であり防諜活動が専門です。内部に潜むスパイを捕まえようと必死になりますが最終的には容疑者の特定と尋問までしか進めません。相手に縄をかけることまではできず、引退することになります。最後に元上司がかけた言葉が印象的です。「ピーター、君は秘密を知りすぎていたんだよ」
怖いですねえー笑。官僚組織の一部にスパイががっちり組み込まれているイギリスっていったいどういう国なのか興味が湧きます。
次に書きたいのは、何というか、強く感じる虚しさ・虚無感です。
上記に書いた通り、筆者は結局、大物内部スパイを一人も捕まえることはできません。敗北です。加えて彼は組織内でも支持を失っていきます(同僚を疑う監査部的役割だし仕事内容をみだりに言えないので当然ですが)。
本人は正義感から懸命にやっているものの、上司に阻まれる、あるいはそれより上位からの圧力を受ける。結局、自分の人生をかけてやってきたことは報われない(危うく年金まで失いそうになる)という終わり方です。哀しくないですか?筆者が真面目そうに見える分、一層哀しさが募ります。こうした読後の虚しさは、共産党革命家が最終的に転向した様子を綴る史明氏の自伝にも通ずるところがあると感じました。
また、ぼんやり感じたのは、そこはかとなく感じるイギリスのエリート社会の奥深さです。
本作後半で、内部スパイは組織的であり、かつオックスフォードやケンブリッジの卒業生グループらのつながりであることが示されています。尋問を受ける容疑者も、かつて共産主義に触れた事実を鷹揚に認めるところや、引退後の芸術への志向を表すなど、何だか人間の質が少し違うなあと感じました。これが米国なら尋問中にきっと不審死(!)。日本ならば、事実認定せずとも疑わしい時点で総バッシングか村八分。金銭的豊かさからくる余裕なのか文化なのかはわかりませんが、大物容疑者の余裕がちょっと素敵に感じました。
マルクスが資本論を書いたのはイギリスでありますが、そのイギリスのエリート層は冷戦中も資本主義の根本的問題についてよく学んでいたのかもしれません。
・・・
さいごにリキャップしますと、とても興味深いドキュメンタリでした。確かに一部、盗聴・尾行・暗号解読・亡命などは、もはや映画の典型のようなアナクロニズムを感じます。しかしながら、筆者のスパイを必死で追いかける様や、最終的にその元凶が組織内部、しかも事もあろうに自分の(元)上司が容疑者である等、進行がドラマチックで楽しめました。これが実話ですからまた驚きです。また、MI5をはじめとした公的組織の硬直性や政治家との付き合い、省庁同士の争いなど、組織の機能不全をよく表している点でも面白く読めました。
2010年12月8日に日本でレビュー済み
この本は野田君に教えてもらった。MI5のダブル・スパイは長官のロジャー・ホリスである。まあ007シリーズのボンドの上司Mのことだ。MI5で約20年活動したピーター・ライトの告発は説得力があるが疑問もなしとしない。真相は「闇の中」だ。どうも決め手にかける。野田君は「黒」というが。さて小生は「スパイ狩り」が得意だ。民主党本部に潜入したオウム幹部を見抜いたのは俺だ。野田君が「どうして解かったの?」と聞くがまあ長年の「勘」だよ。佐藤優がイスラエルのスパイではないか、ということは野田君も疑っていた。野田君が佐藤の裁判を傍聴したとき公安調査庁のスパイの宮崎学が来ていて親しそうに挨拶したそうだ。スパイ仲間のネット・ワーク。私も佐藤の裁判は何回か傍聴している。スパイの友人、仲間はたいていスパイである。スパイの宮崎と付き合ってる佐高信はスパイとはいわないが神経を疑う。総会屋の新聞で飯を食っていた佐高らしい。香山リカちゃんもこんな奴と対談しないで俺と結婚しろ。もう朝まで寝かさないから。話が逸れちゃった。リカちやんプロレス評論家など捨てちゃえば?俺はガチンコ。戦争してたんだから。俺の嫁さんにならないか?お医者さんごっこしよ。
2018年3月17日に日本でレビュー済み
この本を読み直すとホリス長官がスパイである確実な証拠がなにもない。全て伝聞か状況証拠とも言えない憶測である。ライトはCIAの伝説的防諜部長アングルトンと親しかったがアングルトンは精神異常な人物でスパイと疑ったCIA職員を暗殺した容疑で査問にかけられ解任された。CIAはアングルトン自身がソ連の二重スパイではないかとさえ疑った。かなり締め上げたがそれは否定した。この本でもバーボンに溺れるアングルトンが登場。アルコール依存症なんだろ。ライトの親父もアルコール中毒だが人を見ればソ連のスパイに見えるのはアングルトンと同じ。解任は免れたがMi5を石持て追われるように退職している。