松岡氏が考える「編集工学」について、
●氏がこれを研究するに至った動機
●『編集工学』の内容
について書かれています。
「編集工学」では「述語的であることを重視する」と言うように(?)、「ある語句の説明がまた別
の未説明の語句で説明される」という調子で分かりにくい表現が多々あります。
例えば、
「私は、何かによって『保存』され何かによって『関係』させている当体を、私の造語で
『エディットリアリティ』と呼んでいる。すなわち『編集的現実感』というものだ。
(P172)」
と重要なキーワードが提示されますが、内容が分かりにくい。読み進めると、100ページ
後に、
「『エディットリアリティ』を厳密に定義することは難しい。厳密を超えている概念
であるからだ。しかし、三つの特徴がはっきりしている。第一に、『エディットリアリ
ティ』は主語的でも対象的でもないということだ。第二に、『エディットリアリティ』
は述語的に広まり、述語的につながっていくということである。・・・・」
という調子である。
もう少し分かりやすく編集して欲しかった(笑)。
しかし、内容的には極めて面白いです。
以下、ポイントを掻い摘んで紹介します。
1.「編集工学」を研究するに至った動機
・個々別々の編集的な作業に潜む共通の特徴を集め、これをつなぎ大きな『編集エナジ
ー』というべきものが歴史や社会の中で働いてきたということを明示化したい。
・私はもともと『内容の提示』というよりも、『方法の冒険』を目指したかった。
・生物が組織を形成するに当たっては、『情報を自律的に自己調整する機能』という仕組
みが働いている。・・・この考え方はそれまでの科学が因果律や要素分類を重視してきた
のに対し、『プロセスを重視した科学』がありうることを告示していた。・・・この考え
方にひとかどの共感を持った。
2.「編集工学」とは
・情報の連鎖の感覚を自覚的に再利用することが編集技術
・自分の知っている情報を分節化しておくことが、未知の分野への挑戦では劇的効果を生
む。
・『要約』という『情報圧縮』のメカニズムは全くわかっていない。
・私たちは『記憶の構造に情報を当てはめている』のではなく『編集の構造を情報によっ
て記憶している』。
・編集工学では『述語的であること』を重視する。これにより『意味単位のネットワー
ク』ができる。
・『考える』ということは『意味単位のネットワークを進む』こと。
・『分節して関係づけよ』。これが編集工学のモットー。
・『編集』は『創発』する。私たちは『編集』を通して自然や社会を見ている。
・『編集』作業を通してみると、『時空の距離感』を手にすることが出来る。
・編集的創発性を支える7つの視点
(『自然は何故階層を持つのか?』、『生命はいつから相互作用の中に入ったの
か?』、『人間は何故自己を知ったのか?』、『社会は何故組織を必要としたの
か?』、『歴史は何故混乱を好むのか?』他)
本書を「編集工学」の解説書とみると難しい内容です。
むしろ、氏の「編集工学」への思いを随筆風に書いていると思った方が良いですね。
他の著作と合わせて読むと、『編集工学』が見えてきます。
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知の編集工学 (朝日文庫 ま 21-1) 文庫 – 2001/3/1
松岡 正剛
(著)
- 本の長さ346ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2001/3/1
- ISBN-104022613254
- ISBN-13978-4022613257
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2001/3/1)
- 発売日 : 2001/3/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 346ページ
- ISBN-10 : 4022613254
- ISBN-13 : 978-4022613257
- Amazon 売れ筋ランキング: - 188,451位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 572位朝日文庫
- - 12,868位アート・建築・デザイン (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1944年、京都市生まれ。早稲田大学仏文科出身。東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授を経て、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。1971年に 伝説の雑誌『遊』を創刊。日本文化、経済文化、デザイン、文字文化、生命科学など多方面の研究成果を情報文化技術に応用する「編集工学」を確立。日本文化 研究の第一人者として「日本という方法」を提唱し、私塾「連塾」を中心に独自の日本論を展開。一方、2000年にはウェブ上でイシス編集学校と壮大なブッ クナビゲーション「千夜千冊」をスタート(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 松岡正剛の書棚―松丸本舗の挑戦 (ISBN-13: 978-4120041327 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
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2009年7月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2015年6月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
汚れ等ありましたが、書籍を読むにあたっては問題なくよかったです。
2022年9月17日に日本でレビュー済み
映画監督の黒澤明は「映画の本質は編集である」と語り、国立民族博物館の梅棹忠夫館長は「編集という行為は現代の情報産業社会の夜明けを象徴する」と主張し、神戸製鋼のラグビーを七連勝に導いた平井誠二は「ラグビーは編集だ」と表明したという。これらの編集という言葉に含まれる意味は、深い意味が含まれていると思われるが、通常、我々が編集という言葉からイメージするのは、メディアにより情報が編集されるイメージになる。これらの編集には以下の構造がある。
1)ヘッドライン(本で言えば、タイトル):ヘッドラインは内容そのものではない。しかるべき内容の特徴を引き出すフラグ。そのフラグの下に「かくかくという情報が集まっていますよ」という目印で、ユーザーをめぼしい「情報の箱」に近づけるアトラクティブフラグ。
2)サブタイトル:内容をイメージさせる
3)腹巻:中身の検討がつくようにする
このようなことは、メディアだけでなく、企画書や営業報告書、イベントや都市計画や政策にも編集の技法は生かされる。誰も見向きもしないような報告書や提案書に欠けているのは、<編集力>だ、と。
筆者が経営する編集工学研究所では、11の「編集の背景に関する情報」で分類される。そして、編集プロセスを以下の8段階に分類している。
1)区別する(情報単位の発生)
2)相互に指し示す(情報の比較検討)
3)方向をおこす(情報的自他の系列化)
4)構えをとる(解釈過程の呼び出し)
5)検討をつける(意味単位のネットワーク化)
6)適当と妥当(編集的対称性の発見)
7)合意を導入する(対称性の同様と新しい文脈の獲得)
8)語り手を突出させる(自己編集性の発動へ)
ユニークなのは、筆者が「創造」とか「クリエイティビティ」という言葉を信用しておらず、「創造」は編集的な成果と考えている点だ。ポアンカレが言うように、異なる情報の組み合わせで生まれるため、「創造」を編集の一部とすることは納得できる。
1)ヘッドライン(本で言えば、タイトル):ヘッドラインは内容そのものではない。しかるべき内容の特徴を引き出すフラグ。そのフラグの下に「かくかくという情報が集まっていますよ」という目印で、ユーザーをめぼしい「情報の箱」に近づけるアトラクティブフラグ。
2)サブタイトル:内容をイメージさせる
3)腹巻:中身の検討がつくようにする
このようなことは、メディアだけでなく、企画書や営業報告書、イベントや都市計画や政策にも編集の技法は生かされる。誰も見向きもしないような報告書や提案書に欠けているのは、<編集力>だ、と。
筆者が経営する編集工学研究所では、11の「編集の背景に関する情報」で分類される。そして、編集プロセスを以下の8段階に分類している。
1)区別する(情報単位の発生)
2)相互に指し示す(情報の比較検討)
3)方向をおこす(情報的自他の系列化)
4)構えをとる(解釈過程の呼び出し)
5)検討をつける(意味単位のネットワーク化)
6)適当と妥当(編集的対称性の発見)
7)合意を導入する(対称性の同様と新しい文脈の獲得)
8)語り手を突出させる(自己編集性の発動へ)
ユニークなのは、筆者が「創造」とか「クリエイティビティ」という言葉を信用しておらず、「創造」は編集的な成果と考えている点だ。ポアンカレが言うように、異なる情報の組み合わせで生まれるため、「創造」を編集の一部とすることは納得できる。
2018年3月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
着眼点がとても独創的な考え方で、読んだ時になんて面白い本なのだろうと引き込まれました。
トートロジーの様ですが、知恵があるという事と無いということの違いをこの本によって教えて貰えたように思います。
トートロジーの様ですが、知恵があるという事と無いということの違いをこの本によって教えて貰えたように思います。
2015年2月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
非常に面白く興味深い内容です。ただ,少々難解なので,時間をかけて読むようにしています。作者の知識の広さに感服しています。
2012年6月13日に日本でレビュー済み
本書を読んで次の質問に答えなさい。
本書は、選択能力と編集能力が欠如したコンピューターに蓄積された知識の集積のアウトプットである。本書を読み、バラバラの知識から論理展開に必要なものを選択し、編集することにより、平均的な知能指数の人間が理解出来る情報に整理し直しなさい。但し、この質問に言う「編集」とは、「情報を集め、これを並べて、そこからいくつかを選択し、それらになんらかの関係をつけていく作業を」を意味しており、あらゆる知的作業や知的遊びを「編集」と呼ぶものではないことに留意してください。
本書は、選択能力と編集能力が欠如したコンピューターに蓄積された知識の集積のアウトプットである。本書を読み、バラバラの知識から論理展開に必要なものを選択し、編集することにより、平均的な知能指数の人間が理解出来る情報に整理し直しなさい。但し、この質問に言う「編集」とは、「情報を集め、これを並べて、そこからいくつかを選択し、それらになんらかの関係をつけていく作業を」を意味しており、あらゆる知的作業や知的遊びを「編集」と呼ぶものではないことに留意してください。
2013年9月26日に日本でレビュー済み
編集とは、あらゆる情報が加工されることそのものを指す。編集を通じて、知識が集積され、分類され、発展して行く。という感じか。
2011年5月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
編集という技術や位置付けが「工学」なのかは別の議論とするとしても、知識と向き合うには流行語のひとつとして片付けたくなく、数年前から読みたいと思っていた本。2部作で、編集の入口と編集の出口の各部に章を組んである。入口は、著者のいう編集の現れとこれらに関わる我らについての解説。出口は、方法論的展開となるが、多角的な考察でメタ編集ともいえるような厚みのある記述となっている。全体的に読みやすいが、内容は多様であるため、読者はどこかに焦点を当てて読んだ方が、より個人的興味から関係性を持たせて読み進めることができよう。
著者の造語にエディトリアリティ(編集的現実)があるが、これを著者は三つの特徴で説明する。すなわち、第一に主語的でも対照的でもない、第二に述語的に広まり述語的につながる、第三にメタゲーム性を持つ、である。このような興味を抱かせる観点から読み込んでみるのも、自己編集化という著者の主張を理解し考えるきっかけとなろう。すなわち編集工学の提示するキーワードとして登場する、情報圧縮、編集空間、葛藤や弱点や矛盾から展望への相互作用、文化の編集性、形式情報と意味情報、三段階の物語構造(出発・試練・帰還)、意味の科学と関係の発見などへの理解を、である。
目次、部章節。索引、なし。参考文献、本文中に有用な紹介あり。しおり紐、単行本にあり。
著者の造語にエディトリアリティ(編集的現実)があるが、これを著者は三つの特徴で説明する。すなわち、第一に主語的でも対照的でもない、第二に述語的に広まり述語的につながる、第三にメタゲーム性を持つ、である。このような興味を抱かせる観点から読み込んでみるのも、自己編集化という著者の主張を理解し考えるきっかけとなろう。すなわち編集工学の提示するキーワードとして登場する、情報圧縮、編集空間、葛藤や弱点や矛盾から展望への相互作用、文化の編集性、形式情報と意味情報、三段階の物語構造(出発・試練・帰還)、意味の科学と関係の発見などへの理解を、である。
目次、部章節。索引、なし。参考文献、本文中に有用な紹介あり。しおり紐、単行本にあり。