『名文を書かない文章講座』(村田喜代子著、朝日文庫)は、ユニークな文章指南書です。本音で語られる内容が実践的なので、学び甲斐があります。
●「起承転結」よりも簡潔な構成の「序破急」を選択する。「私はこの『序破急』の形のほうが言い得ている気がする」。
●書き上げてから、最後にタイトルを考える。「タイトルとはラストの文章がもう一段深まったものと理解すればよいのである」。
●描写は対象に忠実であってはならない。「対象の中から自分の都合の良い材料だけを抜き取るのだ。考えようによっては、勝手で都合の良い視線なのである」。
●エッセイにも嘘がいる。「嘘は文章を育てていくのである」。上手に嘘をつくことを勧めているのです。
●文章は推敲しだいだ。「書いている間は暗闇を手探りで歩いているようなもので、その足跡を昼間の日光の下で検証してみる。冷静な目で読み直す。この推敲で助からないような作品でも立ち直る。文章の上手下手は、推敲の技術を持っているか否かにかかっているといってもよい」。
●推敲は何といっても削除と加筆の作業である。「どの部分を削除し、どの部分を充実させて書き足すか。仕上げの最後の関門は、この2点で極まる。文章の多少のぎこちなさやテニヲハの修正は、いい加減のところで見切りをつけよう。・・・あえて言えば、文章なんてどうでもいい。どこかでキッパリと見切りをつけて、あとは書かれている内容を充実させる。削除は植木の剪定と似ている。余分の枝葉を落とせば、本来の姿が見えてくる。興に乗って横道へそれたり、枝葉のところで行数を使っている箇所はないか。・・・削除には多大な勇気がいる。名文なんか惜しみなく捨ててしまおう」。著者は、「真の名文とは、用途に合った表現の文章をさすのである。テーマに沿って効果的な働きをしている文章のみが、名文というに値する。たった一行のいかにも気の利いた文章や、格好の良い表現を名文と思い込んで、愛惜のあまり削ることができず、苦しんでいる人がいる。一行や一句の名文なんてあるはずがない。文章は前後と連結してこそ機能を果たすもので、そこだけ独立しているのではない」と定義しています。この件(くだり)は、著者の真骨頂と言えるでしょう。
●文章を読む目を養う。良いものを良いと理解する思考と感受性を磨こう。そのための参考書として、著者は『高校生のための文章読本』(筑摩書房)と『高校生のための小説案内』(筑摩書房)を強く推薦しています。この2冊は、早速、読まねば!
●優れた文章を書き写す。「プロの優れた文章を原稿用紙に一字一字書き写してみよう。これは、昔から多くの人々がやってきた練習法だけにあなどれないものがある」。
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名文を書かない文章講座 (朝日文庫 む 9-2) 文庫 – 2008/9/5
村田 喜代子
(著)
「文章を書くのはむずかしい」「はがき一枚にも苦労する」――そんな〝書けない〟人の悩みや疑問を芥川賞作家がすっきり解決します! 夏目漱石や山下清、森茉莉、赤瀬川原平、橋本治などの例文を豊富に引用しながら、文章の書き方から楽しみ方まで教えてくれる、面白くて絶対役に立つ文章読本!《解説・池内紀》
- 本の長さ333ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2008/9/5
- ISBN-10402261594X
- ISBN-13978-4022615947
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2008/9/5)
- 発売日 : 2008/9/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 333ページ
- ISBN-10 : 402261594X
- ISBN-13 : 978-4022615947
- Amazon 売れ筋ランキング: - 255,416位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2024年1月19日に日本でレビュー済み
2011年10月16日に日本でレビュー済み
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筆者は文章を難しいとも難しくないとも言わないが、「文章なんて恐れる必要はない」と言う。
「どう書いても、紙に字で何事かを記せば文章になる。そしてその中に、その人だけの考えや発見が一行でもあれば、それが文章の価値」だ。そして良い文章とは「1. 自分にしか書けないことを 2. 誰が読んでもわかるように」書いたものである。本書の最も核心的な教えはこれに集約される。
本書では様々なアドバイスが提供されるも、この教えを体現するように多くは技術的なものではなく姿勢に纏わるものであった。そして、これらの教えは物書きの姿勢に限らず、日々の姿勢に通ずるものがある。
例えば、「生硬な難しい言葉を使うと、一見、重い内容であるような感じを与えるが、実は既製の二文字で片づけた、粗暴な、これこそ『空虚』な文章だ」と斬る。生半可に見栄を張るな、これは物書きのみならず日々の生き方にこそ問いたい文句だ。
このように、「文章講座」に終わらず日々の我が身を省みる機会をも提供してくれた良書だった。
「どう書いても、紙に字で何事かを記せば文章になる。そしてその中に、その人だけの考えや発見が一行でもあれば、それが文章の価値」だ。そして良い文章とは「1. 自分にしか書けないことを 2. 誰が読んでもわかるように」書いたものである。本書の最も核心的な教えはこれに集約される。
本書では様々なアドバイスが提供されるも、この教えを体現するように多くは技術的なものではなく姿勢に纏わるものであった。そして、これらの教えは物書きの姿勢に限らず、日々の姿勢に通ずるものがある。
例えば、「生硬な難しい言葉を使うと、一見、重い内容であるような感じを与えるが、実は既製の二文字で片づけた、粗暴な、これこそ『空虚』な文章だ」と斬る。生半可に見栄を張るな、これは物書きのみならず日々の生き方にこそ問いたい文句だ。
このように、「文章講座」に終わらず日々の我が身を省みる機会をも提供してくれた良書だった。
2020年7月24日に日本でレビュー済み
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名文を書かない(書く)ことがどうこうと言う以前に、村田喜代子の方法が、作品と同じくきわめて独特だということ。いろんな情報や知識を入れても、結局は〝自分が書く〟しか最善の方法などない。それは自分に向き合って日々を生活するという、当たり前に出来そうで出来ない基本的なところに、立ち返らせてくれる本。
2019年5月6日に日本でレビュー済み
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夫に頼まれて購入しました。
表紙が違っていたのですが中身に間違いはなかったそうです。
表紙が違っていたのですが中身に間違いはなかったそうです。
2015年9月18日に日本でレビュー済み
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懇切丁寧な指導書だ。これを参考書にすれば、誰でも小説が書けること間違いなし。
2020年11月10日に日本でレビュー済み
とにかく面白い。この本の270頁では画家の菊畑茂久馬の文章を紹介している。菊畑は世界文化遺産となった山本作兵衛の絵の発見者で著者も九州生まれ。そうおもうと如何にも九州人が書いた九州人のための文章講座のようにおもえ無法松が書いた文章論というような破格の面白さがある。
2001年5月2日に日本でレビュー済み
芥川賞ほか多数の文学賞を受章した著者による文章の書き方の本である。著者は昔から文章作法について書かれた本を読むことに不快感があったが、自分でそういうものを書き始めて、その理由が、田圃の仕事を教えるのに手を泥に汚さない形で講義しているところにある、と気づいたという。この発見のためであろうか、本書は楽しく読めるようにできている。しかしながら、あまりにもすらすらと読めてしまったので、ある程度日が経ってから評者の記憶に残っていたのは、著者自身の言葉よりも、著者が推せんしている参考書の一つからの、次のような引用だった。「良い文章とは、1自分にしか書けないことを、2だれが読んでもわかるように書く、という二つの条件をみたしたもののことだ。」しかし、この引用文を!二度登場させ、強く印象づけるように構成されているということは、本書自体が巧みに書かれていることの証明であろうか。著者は最終章で、「この本に書いた事柄はよくよく考えれば誰もがわかることばかりだ。」と記している。内容のこうした性格も、読後に著者の諸主張がほとんど頭に残らなかった原因かも知れない。ただし、この批評を書くために、今ぱらぱらとページをくってみたところ、暇があれば読み返したいという思いがこみあげてきた。――不思議な本である。――なお、この批評が、多少なりとも新しい読者を引きつけるように書けているとすれば、この本に負うところがあるのであろう。
2020年10月1日に日本でレビュー済み
とてもリーズナブルにもかかわらず、新品同様の商品で感動しました。ありがとうございました。