著者の一人の佐藤優さんの博識ぶりには本当に驚かされます。
佐藤さんと魚住さんの進める議論に納得させられっぱなしなのですが、
魚住さんによるあとがきに出てきた
「人間の作ったものを拝んではいけない」
という佐藤さんのご母堂のお言葉に従い、
この議論も丸呑みにせず、疑いつつ自分の考える基盤の一つに加えたいと思います。
ただ2012年のいま再読してみて、
2010年の初頭に文庫化され読んだときよりも
文中の言葉の数々に納得させられる部分が多いように思います。
わたし自身がものを考える際の基礎になってくれそうだという点で、
自分に対する励ましもこめて星は5つにします。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ナショナリズムという迷宮 ラスプーチンかく語りき (朝日文庫 さ 43-1) 文庫 – 2010/1/8
国家とは何か。民族とは何か。宗教とは何か――。ナショナリズム、ファシズムなどの源流をたどりつつ、マルクス主義や天皇機関説などをめぐるイデオロギー的対立がせり出した時代の思想的枠組みから、オウム真理教事件、ライブドア事件など現代社会とのかかわりまで、国内外で起きている事象についてテキストをもとに博覧強記の論客が縦横に語り尽くす。待望の文庫化。
- 本の長さ312ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2010/1/8
- ISBN-104022616512
- ISBN-13978-4022616517
この著者の人気タイトル
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2010/1/8)
- 発売日 : 2010/1/8
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 312ページ
- ISBN-10 : 4022616512
- ISBN-13 : 978-4022616517
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,189,880位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,645位朝日文庫
- - 158,026位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
元外交官で文筆家。ロシア情報収集・解析のエキスパート。魚住昭/ジャーナリスト。ノンフィクションに著作多数。青木理/ジャーナリスト。元共同通信記者。『日本の公安警察』『絞首刑』など著作多数。植草一秀/経済学者。日本経済、金融論が専門。(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 誰が日本を支配するのか!?政治とメディアの巻 (ISBN-13:978-4838721566)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2012年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2009年9月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『コイン2枚でコーヒーが買えることに疑念を持たないことが「思想」なんです。そんなもの思想だなんて考えてもいない。当たり前だと思っていることこそ「思想」で、ふだん私たちが思想と口にしているのは「対抗思想」です。』という佐藤氏の言葉から始まる。
国家、民族、宗教を題材にオウム事件や小泉政権、ライブドア事件をまじえ佐藤氏とジャーナリスト魚住氏が現在を語る対談集第一弾。
佐藤氏のユーモアと知性を交えた言葉と誠実な魚住氏による白熱した対談は非常にスリリング。
特に小泉政権がファシズムとなりえなかったのは「やさしさ」の欠如であるという分析やマルクスの「ブリュメール18日」を交えた解説はとても面白かった。
その他、各宗教の時間感覚やコーヒーの話にも通じる喫茶店やサロンの文化とマスメディアの誕生の関係。日本のジョセフ・マッカーシーともいえるかもしれない蓑田胸喜の時代の知識人の姿から日本の集団主義についての話など話題は尽きない。
佐藤優本は金太郎飴的な物もあるが読みやすさと面白さで本書は佐藤本の中でもかなり上位ランクに入ると思います。おススメです。
国家、民族、宗教を題材にオウム事件や小泉政権、ライブドア事件をまじえ佐藤氏とジャーナリスト魚住氏が現在を語る対談集第一弾。
佐藤氏のユーモアと知性を交えた言葉と誠実な魚住氏による白熱した対談は非常にスリリング。
特に小泉政権がファシズムとなりえなかったのは「やさしさ」の欠如であるという分析やマルクスの「ブリュメール18日」を交えた解説はとても面白かった。
その他、各宗教の時間感覚やコーヒーの話にも通じる喫茶店やサロンの文化とマスメディアの誕生の関係。日本のジョセフ・マッカーシーともいえるかもしれない蓑田胸喜の時代の知識人の姿から日本の集団主義についての話など話題は尽きない。
佐藤優本は金太郎飴的な物もあるが読みやすさと面白さで本書は佐藤本の中でもかなり上位ランクに入ると思います。おススメです。
2007年10月25日に日本でレビュー済み
筆者の著作にはまっていたので買ってみた。筆者の経験にもとづくリアリティ、論理の明確さ、誠実なスタンスに惹かれたからだ。でも、この著作を含め、思想関連本はあまりいただけないというのが率直な感想。ある種の主体の作為や謀略を前提にした筆者の議論は面白いし迫真性があるが、思想・政策の話にはそのような面白さはなく、むしろある種の国家主義的な観点が気にかかる。
本書は社会思想・科学の入門書のような内容がほとんどで、目新しさはそれほどない。その多くは比喩とアネクドートに彩られていて(その分面白く読めるというメリットもあるのだが・・・)、リアリスティックだが実証データの裏づけも乏しい。わが国の知的風土と昨今の社会状況にマッチしているのかもしれない。
このような問題は、例えば新自由主義的な流れに対する安直な評価につながっている。小泉改革を含め新自由主義的な取り組みは、資本という限りある資源をより効率的に使うことを主眼にしているのであって、人間を個に還元することを狙いとしているわけではない。それに、今日の一見新自由主義のせいに見える問題をどこかの国の謀略や役人の作為に帰するのは無理がある。
新自由主義的な取り組みがなかったらもっと状況は悪くなっていた可能性があるが、ナショナリズムの色彩を帯びた感情的な評価のみが一人歩きしているのが、昨今の状況。このように新自由主義の影響について実証的に確立された評価が存在しないなかで、筆者はマスコミによく見られる論調を吟味もせずに安易に話を進めていく。それにともなって、対抗軸として国家やナショナリズムがメインディッシュとして料理されるという仕組み。なお、この筆者の著作の多くでは、国家や国体が絶対化された神格のように屹立している印象を受ける。ある種の信仰抜きでは、すんなり受け入れられないかもしれない。
本書は社会思想・科学の入門書のような内容がほとんどで、目新しさはそれほどない。その多くは比喩とアネクドートに彩られていて(その分面白く読めるというメリットもあるのだが・・・)、リアリスティックだが実証データの裏づけも乏しい。わが国の知的風土と昨今の社会状況にマッチしているのかもしれない。
このような問題は、例えば新自由主義的な流れに対する安直な評価につながっている。小泉改革を含め新自由主義的な取り組みは、資本という限りある資源をより効率的に使うことを主眼にしているのであって、人間を個に還元することを狙いとしているわけではない。それに、今日の一見新自由主義のせいに見える問題をどこかの国の謀略や役人の作為に帰するのは無理がある。
新自由主義的な取り組みがなかったらもっと状況は悪くなっていた可能性があるが、ナショナリズムの色彩を帯びた感情的な評価のみが一人歩きしているのが、昨今の状況。このように新自由主義の影響について実証的に確立された評価が存在しないなかで、筆者はマスコミによく見られる論調を吟味もせずに安易に話を進めていく。それにともなって、対抗軸として国家やナショナリズムがメインディッシュとして料理されるという仕組み。なお、この筆者の著作の多くでは、国家や国体が絶対化された神格のように屹立している印象を受ける。ある種の信仰抜きでは、すんなり受け入れられないかもしれない。
2019年9月13日に日本でレビュー済み
再掲 2007
図書館本
佐藤さんと魚住さんの対談を通して、ファシズム、ナショナリズムを紐解く。小泉政権をファシズム前夜とし、小泉氏に「やさしさ」があればファシズムが完成していたと説く。
佐藤「ファシズムって定義しづらいものなんです。後から振り返ってみて、ああ、あれが、ファシズムだったんだなと。そういうものだと思います。言い換えれば、その渦中にいる当事者には気づきづらいものであります。しかもファシズムを定義しようとすれば必ずその定義からこぼれてしまうものであって、それが重要な要素だったりするのです。
「32年テーゼの亡霊がいまも日本の知識人を束縛しているように私にはみえるのです。確かに丸山真男に代表される知識人は、封建社会の地獄絵は見せてくれました。中略 しかし、その先に待っている世の中までは見せてくれなかった。その果てを垣間見せてくれたのが小泉さんでしたね。五年半の小泉政権が新自由主義を推し進めてくれたおかげで、徹底した個の自立の先の、弱肉強食、優勝劣敗がもたらす地獄絵に気付かせてくれました。逆説的ですが、その意味で小泉さんは「日本が特殊な社会である」というわれわれの思想の輪郭をはっきりさせることができた、とても優れた”対抗思想”の持ち主だったと思います。
立花さんの「天皇と東大」(下)に出てくる天皇機関論を徹底的に叩く蓑田胸喜に対する評価も立花さんとは若干違って興味深い。メディアを使ったナショナリズムと言う文脈で。
佐藤さんは宗教の専門家とばかり思っていましたが、思想や国家論まで説いてしまう論客なんですね。さらにその立ち位置が非常に中立のように思います
図書館本
佐藤さんと魚住さんの対談を通して、ファシズム、ナショナリズムを紐解く。小泉政権をファシズム前夜とし、小泉氏に「やさしさ」があればファシズムが完成していたと説く。
佐藤「ファシズムって定義しづらいものなんです。後から振り返ってみて、ああ、あれが、ファシズムだったんだなと。そういうものだと思います。言い換えれば、その渦中にいる当事者には気づきづらいものであります。しかもファシズムを定義しようとすれば必ずその定義からこぼれてしまうものであって、それが重要な要素だったりするのです。
「32年テーゼの亡霊がいまも日本の知識人を束縛しているように私にはみえるのです。確かに丸山真男に代表される知識人は、封建社会の地獄絵は見せてくれました。中略 しかし、その先に待っている世の中までは見せてくれなかった。その果てを垣間見せてくれたのが小泉さんでしたね。五年半の小泉政権が新自由主義を推し進めてくれたおかげで、徹底した個の自立の先の、弱肉強食、優勝劣敗がもたらす地獄絵に気付かせてくれました。逆説的ですが、その意味で小泉さんは「日本が特殊な社会である」というわれわれの思想の輪郭をはっきりさせることができた、とても優れた”対抗思想”の持ち主だったと思います。
立花さんの「天皇と東大」(下)に出てくる天皇機関論を徹底的に叩く蓑田胸喜に対する評価も立花さんとは若干違って興味深い。メディアを使ったナショナリズムと言う文脈で。
佐藤さんは宗教の専門家とばかり思っていましたが、思想や国家論まで説いてしまう論客なんですね。さらにその立ち位置が非常に中立のように思います
2007年1月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『獄中記』に詳しいように、独房での読書生活でさらに磨きをかけた佐藤氏の鋭利な知性は本書でも存分に発揮されているが、他の佐藤氏の著作に比べてやや踏み込みに欠ける印象を持った。
もちろんナショナリズムそのものは、神学、外交といった彼の専門領域ではないので、テーマ設定そのものに冒険があるのだろうが、魚住氏と佐藤氏の思想的、教養的なバックグラウンドにやや距離があることにも原因があろう。
それにより、佐藤氏が思想家の思想や基本的な歴史概念を魚住氏に紹介・解説するという部分が増え、そこから踏み込んだ批評や佐藤氏の鋭利な洞察が十分な紙面を割いて展開されていない気がする。ただ、難解な思想を平易に説明できることも佐藤氏の知性の大きな特徴であるので、知識の量に関わらず楽しむことができ、さらに蓑田対丸山のインテリ論など、刺激的な議論が続く本書は、一読の価値は十分にある。
佐藤氏は日本の言論界で極めてユニークなポジションにおり、現代の知識人のあり方を問うていると思う。彼の旺盛な好奇心が続く限り、様々なテーマで執筆・発言してもらいたい。
もちろんナショナリズムそのものは、神学、外交といった彼の専門領域ではないので、テーマ設定そのものに冒険があるのだろうが、魚住氏と佐藤氏の思想的、教養的なバックグラウンドにやや距離があることにも原因があろう。
それにより、佐藤氏が思想家の思想や基本的な歴史概念を魚住氏に紹介・解説するという部分が増え、そこから踏み込んだ批評や佐藤氏の鋭利な洞察が十分な紙面を割いて展開されていない気がする。ただ、難解な思想を平易に説明できることも佐藤氏の知性の大きな特徴であるので、知識の量に関わらず楽しむことができ、さらに蓑田対丸山のインテリ論など、刺激的な議論が続く本書は、一読の価値は十分にある。
佐藤氏は日本の言論界で極めてユニークなポジションにおり、現代の知識人のあり方を問うていると思う。彼の旺盛な好奇心が続く限り、様々なテーマで執筆・発言してもらいたい。
2014年9月1日に日本でレビュー済み
最後にシベリアに抑留された日本人とドイツ人の事に触れてから丸山眞男を
批判していますが、60年以上も経っているから言える事であって
今言っても意味ないと思います。
批判していますが、60年以上も経っているから言える事であって
今言っても意味ないと思います。
2007年8月17日に日本でレビュー済み
あとがきで魚住昭が紹介しているように、佐藤優の言説の活躍の場は、「正論」「世界」
「SAPIO」「週刊金曜日」「新潮45」「月刊現代」「文藝春秋」と非常に幅広い。
佐藤優による巻末の文献解題も秀逸で、対話中、佐藤優がかみ砕いて説明してくれたそれらの
文献を思わず買いあさってしまった。読んでみると、佐藤優の解説の的確さがよくわかる。
クレヨンしんちゃんと「思想」、イエスの「国家」と「貨幣」に対する戦略、ねずみ男の
バランス感覚と「原罪」思想、ブッシュと星飛雄馬の共通点、サザエさんと中世ヨーロッパ、
ホリエモンと「貨幣」、ゴジラ=「国家」と「貨幣」=東京タワー・・・次から次へと、
意外なたとえで引き込まれていきます。
封建社会の地獄絵と、そういう世界から解き放たれた、徹底した個が自立した先の地獄絵・・・
国家とはどうあるべきか、国民とは何か、民族とは何か、ナショナリズムとは何か、
自分のアタマで考えるヒントをくれたような気がします。
とは言え、やはり佐藤イズムの新しい言説を読みたくなってしまう。
「SAPIO」「週刊金曜日」「新潮45」「月刊現代」「文藝春秋」と非常に幅広い。
佐藤優による巻末の文献解題も秀逸で、対話中、佐藤優がかみ砕いて説明してくれたそれらの
文献を思わず買いあさってしまった。読んでみると、佐藤優の解説の的確さがよくわかる。
クレヨンしんちゃんと「思想」、イエスの「国家」と「貨幣」に対する戦略、ねずみ男の
バランス感覚と「原罪」思想、ブッシュと星飛雄馬の共通点、サザエさんと中世ヨーロッパ、
ホリエモンと「貨幣」、ゴジラ=「国家」と「貨幣」=東京タワー・・・次から次へと、
意外なたとえで引き込まれていきます。
封建社会の地獄絵と、そういう世界から解き放たれた、徹底した個が自立した先の地獄絵・・・
国家とはどうあるべきか、国民とは何か、民族とは何か、ナショナリズムとは何か、
自分のアタマで考えるヒントをくれたような気がします。
とは言え、やはり佐藤イズムの新しい言説を読みたくなってしまう。
2006年12月30日に日本でレビュー済み
この年末は佐藤優という人の著作に嵌っているところだ。本書もその中の一冊である。
まず 佐藤の博覧強記ぶりに驚くしかない。論点を説明するにあたって取り出してくる題材が ことごとく意表を突いたものになっている。対談相手の魚住昭が そのたびに驚きの声を上げている場面が むしろ楽しいくらいだ。正確に 対談で 魚住が「えっ?」という声を上げていることが そのまま「えっ」と書いてある。「えっ」という言葉が何度も書かれている対談集は小生は寡聞にして知らない。勿論 それは佐藤と魚住の「作戦」だ。相手の「作戦」には「乗る」 というのも一つの姿勢なのである。
僕としては大変勉強になったわけだが 一番頷いたのは最後の部分である。佐藤は言う。
「絶対に正しいものはあってもいいんです。但しそれは複数あるんです。しかもそれら複数の絶対に正しいことは権利的には同格なんです」
この言葉がいかに僕らにとって 難しいものなのか ということである。これが出来ないことで 一体 何百万人、何千万人の人間が死んできたことだろうか。
まず 佐藤の博覧強記ぶりに驚くしかない。論点を説明するにあたって取り出してくる題材が ことごとく意表を突いたものになっている。対談相手の魚住昭が そのたびに驚きの声を上げている場面が むしろ楽しいくらいだ。正確に 対談で 魚住が「えっ?」という声を上げていることが そのまま「えっ」と書いてある。「えっ」という言葉が何度も書かれている対談集は小生は寡聞にして知らない。勿論 それは佐藤と魚住の「作戦」だ。相手の「作戦」には「乗る」 というのも一つの姿勢なのである。
僕としては大変勉強になったわけだが 一番頷いたのは最後の部分である。佐藤は言う。
「絶対に正しいものはあってもいいんです。但しそれは複数あるんです。しかもそれら複数の絶対に正しいことは権利的には同格なんです」
この言葉がいかに僕らにとって 難しいものなのか ということである。これが出来ないことで 一体 何百万人、何千万人の人間が死んできたことだろうか。