3人の「時代小説が好きだ」というのが読んでいて伝わり、特に縄田一男氏の知識には圧倒される。
時代・歴史小説好きなら読み終わった後に紹介された本を買うために本屋に行きたくなるだろう。
ただ、対談を活字におこしているという体裁の為、作品や作家がまとめられておらず実用面ではマイナス。
縄田氏が作品や作家の姿勢を戦中の日本に対するアンチテーゼだとしたがっているところがいくつかあり、そこは若干鼻についた。
読めば自分の時代小説の世界が広がるのは確か。時代・歴史小説好き、時代劇好きなら読んで損は無いだろう。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ぼくらが惚れた時代小説 (朝日新書 23) 新書 – 2007/1/1
山本 一力
(著)
松本清張に出会って時代小説にのめりこんだ山本一力、戦時中の少年時代から剣豪ものが大好きだった児玉清、長州藩の祐筆の家柄で、純文学からエンターテイメントまで網羅する評論家・縄田一男。当代随一の読み手三人が、時代小説の魅力を語り尽くしたのが本書。吉川英治・山本周五郎・池波正太郎・司馬遼太郎・藤沢周平・山田風太郎……作家と作品の魅力がぎっしり。それぞれのベスト3も掲載。
- 本の長さ211ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2007/1/1
- ISBN-104022731230
- ISBN-13978-4022731234
この著者の人気タイトル
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2007/1/1)
- 発売日 : 2007/1/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 211ページ
- ISBN-10 : 4022731230
- ISBN-13 : 978-4022731234
- Amazon 売れ筋ランキング: - 698,230位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,285位朝日新書
- - 108,886位ノンフィクション (本)
- - 179,179位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
1947年高知県生まれ。小説家。会社員を経て、97年に「蒼龍」で第77回オール讀物新人賞を受賞。2002年には『あかね空』で第126回直木賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 江戸は心意気 (ISBN-13: 978-4022645456)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2007年1月21日に日本でレビュー済み
2012年4月23日に日本でレビュー済み
「大菩薩峠」机龍之助と言う殺人鬼が主人公だが、斬った相手の業を背負っていく話。
「大菩薩峠」は昭和2年の金融恐慌の暗い時代に普及した、机龍之助の剣は「罪と罰」の主人の使った斧と同じだという評価もある。
児玉氏の持説では面白小説は市民生活が経済的に成熟した時期に生まれる。翻訳小説は
訳者の偏見によって文学の主流が形成されていると指摘。
日本の時代小説では体制に対し反逆者が国民的ヒーローになる、海外の作品では逆に秩序を保つ側がなる。破天荒な人物のほうが絶対に面白い。
富士の裾野の築城問、両家の対立を描いた大長編が「富士に立つ影」、「宮本武蔵」は戦中世代の人にとって“いかに生きるべきか”についての指針であった。「宮本武蔵」と「竜馬がゆく」は時代小説の形を借りた青春小説である。もっとも国民の心に寄り添った作家が吉川英治だった。それは忍耐、創意工夫で人生を乗り越えていく爽快さで人間の向上心をも刺激してくれるから。山岡壮八は「徳川家康」で新興勢力の織田=ソ連、京都いていたの文化に憧れる今川=アメリカ、弱小の国三河=日本と仮想していた。経営者にも副読本として読まれるブームがあった。「樅の木は残った」も「忠臣蔵」も幕府の政道を正すという体制への反逆者が策謀に策謀を巡らしぎりぎりのところで対決する構造のストーリ。
藤沢周平は江戸時代に存在した藩という特殊な単位での平凡な人間があたりまえに生きていくのがどれだけ大変かを描いている。「ただ一撃」「用心棒日月抄」「蝉しぐれ」がいい。
池波正太郎の原稿を最初によんでいたのは奥さんでした。清張の「かげろう絵図」は下山事件を模して書いたとのこと。関東大震災のあと「半七捕物帳」の部数が伸びているのは読者が江戸の残り香を嗅ぎ取ろうしたのかも、捕物帳は都市文化への憧れ、股旅ものは故郷への郷愁ではないか。長谷川伸は小さいころから苦労をしているので股旅ものはウエットで、子母澤寛のはカラットしている。子母澤寛の祖父は彰義隊の残党で、ニシンの魚場で用心棒をしていたのでやくざ者には思い入れがある。渡世人(既成の権威が崩壊した時に現れる)を主人公(アウトロー)にした初の連作が「木枯らし紋次郎」である。東映の錦之助主演の「関の弥太ッぺ」は何度みても涙が流れる。平岩弓枝の「鏨師」はすばらしい。
北原亞以子の「贋作天保六花撰」も面白い。佐江衆一「江戸職人綺譚」の中の「一会の雪」
は30枚のすごい恋愛小説との縄田氏の話。山田風太郎は自分がどれだけすごいことをやっているかわからないアイデアの天才。東京大空襲でも、なぜこれだけ楽観的になれるのか?日本人は本当に懲りないね「戦中派不戦日記」。縄田氏は隆慶一郎「影武者徳川家康」の文庫解説で熱い思いを書いた。「吉原御免状」不思議な人物と剣法が面白い。海洋もの作家白石一郎「海狼伝」「十時半睡事件帖」はもっと読まれるべき。吉村昭「漂流」、児玉氏はアリステア・マクリーン「女王陛下のユリシーズ号」「八点鐘が鳴る時」バーナード・コーンウェル「殺意の海へ」はメチャ面白い。北方謙三の作品はどれだけすごい悪人が書けるかであるが悪人にも哲学を持たせる。
山田風太郎いわくあと100年たっても残る小説は「我輩は猫である」「宮本武蔵」だとのこと。
隆慶一郎と南條範夫の二人はフランス語と経済学で大学の教壇に立っていた。南條範夫が残酷もの
を書くのは東京裁判をみて指導者のマゾの精神構造をみたから、封建時代の体制はたった一人のサドな絶対君主に多くのマゾヒスの家臣が仕えている構図だとの主張。滝口康彦「異聞浪人記」「拝領妻始末」は仲代達矢、三船敏郎で映画化された。新田次郎は気象台に勤務していた経験が作品に見られる。綱淵謙錠の「斬」は職業として首を斬る、歴史から見放された流民の一族の意識。同じ流民意識を持って早乙女貢は「会津士魂」を書いた、児玉氏の思い入れがあるの「流星雨」も会津の物語。児玉氏は海外も含め仕事で多く有名作家とのインタビューの話題を提供しています。
「大菩薩峠」は昭和2年の金融恐慌の暗い時代に普及した、机龍之助の剣は「罪と罰」の主人の使った斧と同じだという評価もある。
児玉氏の持説では面白小説は市民生活が経済的に成熟した時期に生まれる。翻訳小説は
訳者の偏見によって文学の主流が形成されていると指摘。
日本の時代小説では体制に対し反逆者が国民的ヒーローになる、海外の作品では逆に秩序を保つ側がなる。破天荒な人物のほうが絶対に面白い。
富士の裾野の築城問、両家の対立を描いた大長編が「富士に立つ影」、「宮本武蔵」は戦中世代の人にとって“いかに生きるべきか”についての指針であった。「宮本武蔵」と「竜馬がゆく」は時代小説の形を借りた青春小説である。もっとも国民の心に寄り添った作家が吉川英治だった。それは忍耐、創意工夫で人生を乗り越えていく爽快さで人間の向上心をも刺激してくれるから。山岡壮八は「徳川家康」で新興勢力の織田=ソ連、京都いていたの文化に憧れる今川=アメリカ、弱小の国三河=日本と仮想していた。経営者にも副読本として読まれるブームがあった。「樅の木は残った」も「忠臣蔵」も幕府の政道を正すという体制への反逆者が策謀に策謀を巡らしぎりぎりのところで対決する構造のストーリ。
藤沢周平は江戸時代に存在した藩という特殊な単位での平凡な人間があたりまえに生きていくのがどれだけ大変かを描いている。「ただ一撃」「用心棒日月抄」「蝉しぐれ」がいい。
池波正太郎の原稿を最初によんでいたのは奥さんでした。清張の「かげろう絵図」は下山事件を模して書いたとのこと。関東大震災のあと「半七捕物帳」の部数が伸びているのは読者が江戸の残り香を嗅ぎ取ろうしたのかも、捕物帳は都市文化への憧れ、股旅ものは故郷への郷愁ではないか。長谷川伸は小さいころから苦労をしているので股旅ものはウエットで、子母澤寛のはカラットしている。子母澤寛の祖父は彰義隊の残党で、ニシンの魚場で用心棒をしていたのでやくざ者には思い入れがある。渡世人(既成の権威が崩壊した時に現れる)を主人公(アウトロー)にした初の連作が「木枯らし紋次郎」である。東映の錦之助主演の「関の弥太ッぺ」は何度みても涙が流れる。平岩弓枝の「鏨師」はすばらしい。
北原亞以子の「贋作天保六花撰」も面白い。佐江衆一「江戸職人綺譚」の中の「一会の雪」
は30枚のすごい恋愛小説との縄田氏の話。山田風太郎は自分がどれだけすごいことをやっているかわからないアイデアの天才。東京大空襲でも、なぜこれだけ楽観的になれるのか?日本人は本当に懲りないね「戦中派不戦日記」。縄田氏は隆慶一郎「影武者徳川家康」の文庫解説で熱い思いを書いた。「吉原御免状」不思議な人物と剣法が面白い。海洋もの作家白石一郎「海狼伝」「十時半睡事件帖」はもっと読まれるべき。吉村昭「漂流」、児玉氏はアリステア・マクリーン「女王陛下のユリシーズ号」「八点鐘が鳴る時」バーナード・コーンウェル「殺意の海へ」はメチャ面白い。北方謙三の作品はどれだけすごい悪人が書けるかであるが悪人にも哲学を持たせる。
山田風太郎いわくあと100年たっても残る小説は「我輩は猫である」「宮本武蔵」だとのこと。
隆慶一郎と南條範夫の二人はフランス語と経済学で大学の教壇に立っていた。南條範夫が残酷もの
を書くのは東京裁判をみて指導者のマゾの精神構造をみたから、封建時代の体制はたった一人のサドな絶対君主に多くのマゾヒスの家臣が仕えている構図だとの主張。滝口康彦「異聞浪人記」「拝領妻始末」は仲代達矢、三船敏郎で映画化された。新田次郎は気象台に勤務していた経験が作品に見られる。綱淵謙錠の「斬」は職業として首を斬る、歴史から見放された流民の一族の意識。同じ流民意識を持って早乙女貢は「会津士魂」を書いた、児玉氏の思い入れがあるの「流星雨」も会津の物語。児玉氏は海外も含め仕事で多く有名作家とのインタビューの話題を提供しています。
2011年11月12日に日本でレビュー済み
先日逝去された俳優児玉清氏が、作家山本一力、評論家縄田一男と時代小説について語り合ったものである。
児玉氏が、本当によく時代小説を読んでいて、しかも大好きだったことが、その発言のはしばしから良くうかがえる。
知性派俳優だったが、実際に深い教養をそなえており、やさしい眼差しはその教養に裏付けられたものだったのだと思う。
いつでも、惜しい人ほど早逝するものだ。
本書の良いところは、時代小説好きが集まって、自分たちの好きなものについてきままに語り合ったもの、ということだ。
だから、各人の作家や作品に対する思い入れ、時代小説に対する深い愛情が、手に取るように分かる。
そして、自分もそれらの作品を読みたくなる。
まさに、ガイドブックとしては最高だ。
しかも、へたに作品内容のキモに触れるようなことがない。
だから、本書で紹介されている作品をこれから読む場合にも、ほとんど先入観なしで接することができる。
こういう座談会は、実に楽しいだろうと思う。
そして、作家や評論家と互角に話ができる児玉氏の読書量に、あらためて敬意を表したい。
児玉氏が、本当によく時代小説を読んでいて、しかも大好きだったことが、その発言のはしばしから良くうかがえる。
知性派俳優だったが、実際に深い教養をそなえており、やさしい眼差しはその教養に裏付けられたものだったのだと思う。
いつでも、惜しい人ほど早逝するものだ。
本書の良いところは、時代小説好きが集まって、自分たちの好きなものについてきままに語り合ったもの、ということだ。
だから、各人の作家や作品に対する思い入れ、時代小説に対する深い愛情が、手に取るように分かる。
そして、自分もそれらの作品を読みたくなる。
まさに、ガイドブックとしては最高だ。
しかも、へたに作品内容のキモに触れるようなことがない。
だから、本書で紹介されている作品をこれから読む場合にも、ほとんど先入観なしで接することができる。
こういう座談会は、実に楽しいだろうと思う。
そして、作家や評論家と互角に話ができる児玉氏の読書量に、あらためて敬意を表したい。