読書の楽しみのひとつは、
著者のオリジナルな論考に触れ、
著者との暗黙の対話を通して自分の思考を
練り上げることにある。
「早わかりサブプライム不況」は、
その意味で、十二分に刺激的な本であった。
例えば、第三章では、
「なぜリーマンブラザーズは破綻したのか」についての
著者の仮説が披露されている。
簡単に言うと、金融機関に公的資金を投入するためには、
大口投資家には迷惑の掛らないスケープゴートが必要であり、
リーマンは、その条件を満たしていたということだ。
そこで、ふと考える。
金融機関の破綻が、それほど波風を立てないものなら、
逆に公的資金は不要ということにならないか。
公的資金へのコンセンサスが整うのは、
金融機関の破綻がパニックにつながり恐慌を連想させる時だ。
その際の真のスケープゴートは、市場参加者全員である。
果たして、パニックを前提とする「政策」はあるのかと。
著者の仮説が正しいなら、
米国にはパニックを制御できるという思い上がりもあったのだろう…。
読みながら、どんどん問題意識が膨らんでいった。
それが読書の醍醐味だと思うし、
この本には、こうした知的な仕掛けが他にも満載である。
なお、今回の金融危機は「信用」がキーワードであった割には、
クレジットアナリストによる解説書がなかった。
その意味でも、同書は貴重である。
クレジットアナリストならではの事例と分析が豊富に取り上げられており、
知識欲も十二分に満たされる。
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早わかりサブプライム不況 「100年に一度」の金融危機の構造と実相 (朝日新書 155) 新書 – 2009/1/13
中空 麻奈
(著)
世界同時株安、円急騰……。市場は大混乱だが、そもそもの発端であるサブプライム問題とは何だったのか。今後の大不況で日本に起きることは何か。リーマン・ショックの真相にも肉迫。気鋭の証券アナリストが未曽有の危機の全貌をわかりやすく解説した決定版。
- 本の長さ203ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2009/1/13
- ISBN-104022732555
- ISBN-13978-4022732552
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2009/1/13)
- 発売日 : 2009/1/13
- 言語 : 日本語
- 新書 : 203ページ
- ISBN-10 : 4022732555
- ISBN-13 : 978-4022732552
- Amazon 売れ筋ランキング: - 370,421位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 145位世界の経済事情
- - 592位朝日新書
- - 25,510位投資・金融・会社経営 (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2009年1月12日に日本でレビュー済み
クレジットアナリストの書いた本が少ないのは確かで、そういう意味では本作はサブプライム危機を扱った他の著作より価値のある面もあるかもしれない。しかし、所詮は後講釈本。著者は他のアナリスト(と称する人たち)と同様、これまで比較的楽観的な見方を徐々に下方に修正してきた点では先を見通す慧眼の持ち主ではないと思う。レトリックの才能があれば、それなりの後講釈本はいくらでも出来上がる。現在の書店の「恐慌本コーナー」のバブルぶりを見れば言うまでもないだろう。ただ、新書なので1000円でおつりが来る。後講釈でいいから時事解説を望む人にはうってつけの著作かもしれない。
2013年2月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なぜサブプライム問題で不況になったかについて説明した本です。
著者は文中で世界一わかりやすく解説するといっていますが、期待して読んでみると特に眼から鱗が落ちるようなものでもなく案外普通の内容でした。2回ほど読み返してだいたいこういうことかなーと雰囲気がつかめるくらいでした。
そもそもサブプライム危機自体が非常に複雑な問題のためどんなにわかりやすくしてもこういうものなのかもしれません。
最も興味深かったのはリーマンがなぜ破綻したかに関する著者の仮説でした。
著者によると、アメリカ政府は恐慌に喘ぐ銀行に公的資金を供給するための生贄として、あえてリーマンを助けなかったのではないかというものです。特にリーマンは外国の政府系ファンドが出資していなかったためアメリカ政府にとっては潰しやすく、標的とされたとういうのは、辻褄が合うだけに妙に説得力があって興味深かったです。
最後に印象的だったのは現在の金融システムが結局アメリカにお金が流れていくようにできているという主張でした。
2時間ほどで読めるような本なので、興味を持った方は手にとって見るといいかもしれません。
著者は文中で世界一わかりやすく解説するといっていますが、期待して読んでみると特に眼から鱗が落ちるようなものでもなく案外普通の内容でした。2回ほど読み返してだいたいこういうことかなーと雰囲気がつかめるくらいでした。
そもそもサブプライム危機自体が非常に複雑な問題のためどんなにわかりやすくしてもこういうものなのかもしれません。
最も興味深かったのはリーマンがなぜ破綻したかに関する著者の仮説でした。
著者によると、アメリカ政府は恐慌に喘ぐ銀行に公的資金を供給するための生贄として、あえてリーマンを助けなかったのではないかというものです。特にリーマンは外国の政府系ファンドが出資していなかったためアメリカ政府にとっては潰しやすく、標的とされたとういうのは、辻褄が合うだけに妙に説得力があって興味深かったです。
最後に印象的だったのは現在の金融システムが結局アメリカにお金が流れていくようにできているという主張でした。
2時間ほどで読めるような本なので、興味を持った方は手にとって見るといいかもしれません。
2009年2月1日に日本でレビュー済み
著者がJPモルガンに在籍している時、一度お話を伺う機会がありました。
その際は非常にスマートな方だという印象をもち、また、日経新聞などでもコメントをよくされている著名な方なので
本が出版されたのを知り、期待してこの本を手に取りました。
本のタイトルは「早わかりサブプライム不況」という
何とも一般受けするようなタイトルになっていますが、
内容は非常に濃く、外資系証券を渡り歩いてきた「クレジットアナリスト」としての
興味深い意見が至るところに散りばめられています。
特によく議論に挙げられる、なぜリーマンだけが政府から見放され、
破綻するに至ったかという著者の見解として「出資者」にスポットを充てていた点は
これまで聞かない話であったので非常に勉強になりました。
また、上記のような著者の意見に加え、タイトルにあるように
サブプライム不況についての背景の解説についても導入でなされているため、
サブプライムについて理解があまりない方にとっても、ある程度理解がある方に対しても
お勧め出来る一冊だと思います。
700円は間違いなく元が取れる非常に学びの多い一冊です。
その際は非常にスマートな方だという印象をもち、また、日経新聞などでもコメントをよくされている著名な方なので
本が出版されたのを知り、期待してこの本を手に取りました。
本のタイトルは「早わかりサブプライム不況」という
何とも一般受けするようなタイトルになっていますが、
内容は非常に濃く、外資系証券を渡り歩いてきた「クレジットアナリスト」としての
興味深い意見が至るところに散りばめられています。
特によく議論に挙げられる、なぜリーマンだけが政府から見放され、
破綻するに至ったかという著者の見解として「出資者」にスポットを充てていた点は
これまで聞かない話であったので非常に勉強になりました。
また、上記のような著者の意見に加え、タイトルにあるように
サブプライム不況についての背景の解説についても導入でなされているため、
サブプライムについて理解があまりない方にとっても、ある程度理解がある方に対しても
お勧め出来る一冊だと思います。
700円は間違いなく元が取れる非常に学びの多い一冊です。
2011年8月15日に日本でレビュー済み
本書にほんの少しだけだが登場するアーバンコーポレーションの破綻には著者が在籍するBNPパリバグループが深く関与している(というか事実上経営破綻に追い込んだ)のだが、その点について全く言及なし。いくら「所属する会社とは無関係」とは言ってもねぇ・・・。
2009年2月22日に日本でレビュー済み
今までになく簡単に金融危機の原因がわかる、という触れ込みと、女性が著者であるという珍しさや親しみもあって、期待して本書を手に取りました。が、完全に期待を裏切られました。
今回の金融危機の発端となったサブプライムローン問題発生時や、その後の金融機関の判断や対応について、「当時としては仕方なかった」「金融界では、そう判断するのが常識だった」といった自己弁護(著者は銀行のアナリストなので)のオンパレード。しかもそれらは、他の業界からすると相当に非常識な判断であるにもかかわらず、です。
しかも、現在一番問題視されている、「利益さえ上げられればよい」という金融業界のモラル・ハザードや、たとえばメリルリンチが、国民の血税から支払われた政府支援金の半分近くを、従業員へのボーナスに費やした、といった信じられないような企業体質(業界体質?)についての反省や改善の必要性への言及が見られません。
読後感としては、「だから、こういう事態になったのだな・・・。」という妙な納得感と、こんな金融業界のために、これからも私達の税金が使い続けられるのだ、という空しさが残りました。
金融危機の原因や構造の説明も、日経新聞などを普通に読んでいる人であれば、特に目新しい情報もないと思います。ということで2点としました。
今回の金融危機の発端となったサブプライムローン問題発生時や、その後の金融機関の判断や対応について、「当時としては仕方なかった」「金融界では、そう判断するのが常識だった」といった自己弁護(著者は銀行のアナリストなので)のオンパレード。しかもそれらは、他の業界からすると相当に非常識な判断であるにもかかわらず、です。
しかも、現在一番問題視されている、「利益さえ上げられればよい」という金融業界のモラル・ハザードや、たとえばメリルリンチが、国民の血税から支払われた政府支援金の半分近くを、従業員へのボーナスに費やした、といった信じられないような企業体質(業界体質?)についての反省や改善の必要性への言及が見られません。
読後感としては、「だから、こういう事態になったのだな・・・。」という妙な納得感と、こんな金融業界のために、これからも私達の税金が使い続けられるのだ、という空しさが残りました。
金融危機の原因や構造の説明も、日経新聞などを普通に読んでいる人であれば、特に目新しい情報もないと思います。ということで2点としました。
2009年1月17日に日本でレビュー済み
テレビ東京モーニングサテライトにも出演されているクレジットアナリスト(但しアーバンコーポレイションの一件で会社が金融庁から行政処分を貰ってから、自粛されているのか出演されていないように思われます…)の新書。証券化の基礎からマーケットの動きを分析されています。特に今回のサブプライム問題に端を発した金融・経済危機の原因を『価格機能不全』と的確に示した部分は必読だと思われます。
但し、唯一疑問に思ったのが最後の『日本よ、主張せよ』の部分。一部の政治家なども日本の不良債権問題での教訓をアメリカに対して主張せよと言っていますが、日本の恥をさらすような気が気がしてなりません。さらに日本の金融機関がサブプライム問題で損失が少なかったのは『賢明な投資判断があったからだ!』との意見も様々な本で見られますが、これも的外れな気がします。単に『複雑な金融商品を理解できないから投資しなかっただけ』(←結果的には正解でしたが…)と思われます。
あと著者について個人的な感想ですが、とても魅力的(スマート?チャーミング?)な方です。
JPモ○ガン証券に在籍されていたときにクレジット動向についてお話を聞く機会があったのですが、その時期が確か08年7月頃でちょうどGSE問題が話題になってきたときのことです。GSE問題は今は亡きリー○ンブラザーズのアナリストが『GSE(ファニーメイとフレディマック)はFAS140を適用すると実質債務超過だ』的なレポートを発端にしたものだったと思います。このレポートやどこかの元地区連銀総裁の発言などを受けて、マーケットが大きく荒れたことで著者が『お行儀の悪い某投資銀行が変なことを言って本当に困ります』と話されていたのが印象的でした。
今回のサブプライム問題に端を発した金融・経済危機を知りたい方にお薦めの一冊です。
但し、唯一疑問に思ったのが最後の『日本よ、主張せよ』の部分。一部の政治家なども日本の不良債権問題での教訓をアメリカに対して主張せよと言っていますが、日本の恥をさらすような気が気がしてなりません。さらに日本の金融機関がサブプライム問題で損失が少なかったのは『賢明な投資判断があったからだ!』との意見も様々な本で見られますが、これも的外れな気がします。単に『複雑な金融商品を理解できないから投資しなかっただけ』(←結果的には正解でしたが…)と思われます。
あと著者について個人的な感想ですが、とても魅力的(スマート?チャーミング?)な方です。
JPモ○ガン証券に在籍されていたときにクレジット動向についてお話を聞く機会があったのですが、その時期が確か08年7月頃でちょうどGSE問題が話題になってきたときのことです。GSE問題は今は亡きリー○ンブラザーズのアナリストが『GSE(ファニーメイとフレディマック)はFAS140を適用すると実質債務超過だ』的なレポートを発端にしたものだったと思います。このレポートやどこかの元地区連銀総裁の発言などを受けて、マーケットが大きく荒れたことで著者が『お行儀の悪い某投資銀行が変なことを言って本当に困ります』と話されていたのが印象的でした。
今回のサブプライム問題に端を発した金融・経済危機を知りたい方にお薦めの一冊です。
2009年4月24日に日本でレビュー済み
「早わかり」「世界一簡単」という言葉にちょっと引っ掛かりつつも2007年-2008年の怒濤のバラバラな経済事象をザックリ振り返るだけでもいいかと思って買ったのですが、うれしい大誤算でした。充実の一冊です。
第1章の「お勉強」を過ぎれば、第2章からはさながらドキュメンタリー小説のプロットのように、マーケットのプレーヤーがどう行動してどういう結果を生じさせたのかを筆者は多くの資料を使いながら解説してくれます。いままで点で記憶していただけのニュースが意味を持って線でつながってきます。筆者独自の仮説をもって書いた「なぜリーマンは破綻したのか」は秀逸です。「リーマンショック」は決して救済ルール不在の失敗事例だったのではなく、ある意味(不幸ながらも)起きるべくして起きたのかもしれません。またその裏には、米国のマネー覇権の構造も影響していたのだといえるのかもしれません。
経済学者によるマクロ的な金融危機概説の良書もありますが、それらとは一線を画した視点を持った一冊です。プレーヤーレベルまで掘り下げた「実相」とそれを生み出す「構造」をコンパクトにきれいに切り取っています。
第1章の「お勉強」を過ぎれば、第2章からはさながらドキュメンタリー小説のプロットのように、マーケットのプレーヤーがどう行動してどういう結果を生じさせたのかを筆者は多くの資料を使いながら解説してくれます。いままで点で記憶していただけのニュースが意味を持って線でつながってきます。筆者独自の仮説をもって書いた「なぜリーマンは破綻したのか」は秀逸です。「リーマンショック」は決して救済ルール不在の失敗事例だったのではなく、ある意味(不幸ながらも)起きるべくして起きたのかもしれません。またその裏には、米国のマネー覇権の構造も影響していたのだといえるのかもしれません。
経済学者によるマクロ的な金融危機概説の良書もありますが、それらとは一線を画した視点を持った一冊です。プレーヤーレベルまで掘り下げた「実相」とそれを生み出す「構造」をコンパクトにきれいに切り取っています。