従来の「魔女」本といえば、ヨーロッパ近世の魔女狩り、オカルティズム、ファンタジーとサブカルチャーといった専門分化した視点で語られたものが殆どでした。それはつまり、宗教学でいう魔女、ファンタジーでいう魔女、オカルティズムでいう魔女などがそれぞれバラバラに語られ、その繋がりやコンテクスト、いま、私たちにとって「魔女」とはなにか、が明らかにされたことはなかった、ということです。
本書は、19世紀末美術から歩き始め、神話・伝承の夢物語を眺めながら、20世紀のオカルティズム、カウンターカルチャー、フェミニズム、スピリチュアリティを経由して、パンクロック、ゴスから現代日本のアニメやポップカルチャーに噴出する「魔女」の文化遺伝子を読み解く、他に類をみない意欲作です。それでいて語り口は平易かつ軽快で、一気に最終章まで読めてしまいます。
本書の特徴は、20世紀の実践オカルティズムとしての「魔女」にも深く切り込んでいるところです。博物館のガラスケースの中だけでなく、またファンタジーとアニメの夢想だけでなく、実際に生き、闘い、鮮やかに変容していった現代の「魔女」の存在を知って、驚かれる方もいるでしょう。こちらの方面に興味を持たれた方は、入門書として鏡リュウジ「魔女入門」をお薦めします。
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魔女の世界史 女神信仰からアニメまで (朝日新書) 新書 – 2014/7/11
海野 弘
(著)
蠱惑し、戦い、変容する女=「魔女」の世紀
19世紀末美術を魅了した「ファム・ファタル」以降、魔女は可視化され、
そのイメージが爆発的に拡散された。
中世魔女狩りからゴスロリ、そしてアニメまでに継続される「魔女」の遺伝子とは?
20世紀の魔女復興運動、フェミニズム、カウンターカルチャーを通過し、
新たなステージへ飛翔する「魔女」論。
美術批評、20世紀史、女性とポップカルチャー論を
縦横無尽に遊歩して明らかにする「魔女」の真実。
●19世紀末美術に視覚化された「魔女」
●アール・ヌーヴォーからフェミニズムへ
●秘密結社:黄金の暁団、クロウリー、ガードナー
●パンクからゴス、そしてゴスロリへ
●アニメ、ネットにみる魔女の文化遺伝子
「魔女狩り」から「魔法少女」「きゃりーぱみゅぱみゅ」まで
伝説から歴史へ、明かされる「魔女」の真実
サロメ/メドゥーサ/リリス/パンドラ/オフィーリア/ベアトリーチェ/
ロイ・フラー/サラ・ベルナール/ゴシックロマンス/イサドラ・ダンカン/
象徴主義/ラファエロ前派/アール・ヌーヴォー/黄金の暁団/ガードナー/
クロウリー/ボーヴォワール/ウィッカ/スターホーク/フリーダ・カーロ/
バルテュス/ニューエイジ/アサトル/シャーマニズム/アーシュラ・K・ル?グウィン/
レニ・リーフェンシュタール/エリカ・ジョング/ヴィヴィアン・ウエストウッド/
ココ・シャネル/パンク/ゴス/インターネット/スチームパンク/ゴスロリ/
シンディ・シャーマン/リサ・ライオン/ジャン・コクトー/アガサ・クリスティ/
キャロル・オニール/イーストウィックの魔女たち/エヴァンゲリオン/
下妻物語/土偶/サイケデリック/トランス/ティム・バートン/レディ・ガガ/
セーラームーン/まどか☆マギカ/宮崎駿/宝塚/AKB48/
きゃりーぱみゅぱみゅ/初音ミク/艦コレ/アナと雪の女王
【目次】
プロローグ 新しき魔女の時代
・魔女の原像
・魔女への新たな視線
・2014年 東京の三つの美術展から
第一章 世紀末――魔女の図像学の集成
・世紀末に魔女は見えるものとなった
・視覚化――都市、交通、メディア
・多様化する魔女のイメージ――四つの類型
・ジャーナリズムにおける魔女イメージの推移
・魔女の研究――グリムとミシュレから
・ロマンティックな魔女史観
・ゴシックの復活
・ゴシックの衝動――『オトラント城綺譚』からラファエル前派へ
・ゴシック・ロマンスと女性作家の系譜
・メアリー・シェリーの忌まわしき子ども『フランケンシュタイン』
・ファム・ファタル――魔女の図像学
・キマイラ――誘惑する怪物
・世紀末魔女図鑑
・アール・ヌーヴォー――花と女
・ラファエル前派の「運命の女」――エリザベス・シッダル
第二章 新しい魔女運動
・魔女の消えた時代
・フェミニズムの系譜――サフラジェットからモダン・ガールへ
・一九二〇~三〇年代――魔女としての「新しい女」
・第二次世界大戦後――「ハッピー・ハウスワイフ」の孤独
・フェミニズム以降の魔女研究――ケンブリッジスクールとネオペイガン
・マーガレット・マレー登場――魔女三部作の衝撃
・シュルレアリスムの女たち――ことばと絵画をめぐって
・一九七〇年代I ウーマン・リブ
・一九七〇年代II ニューエイジと癒し
・一九七〇年代III 新魔女運動
・新魔女運動の父、ジェラルド・ガードナー登場
・新魔女運動「ウィッカ」前史の魔術師たち
・リーランド『アラディア――魔女の福音』
・新魔女運動における「女」の変化
・ガードナー派魔女術の継承――ヴァリアンテとバックランド
・SFとネオペイガン――チャーチ・オブ・オール・ワールズ
・アメリカ発・ドルイド復興運動
・アサトル――ゲルマン系ネオペイガニズム
・ネオペイガニズムの見取り図
・反キリスト教の常連―ネオペイガン、ニューエイジ、シャーマニズム
・だれでも魔女になれる――エリカ・ジョングの魔女文学
第三章 ゴス――現代の魔女カルチャー
・<ゴス>――二十一世紀のサブカルチャー
・パンクからゴシック・パンクへ
・インターネット――反逆の拡散
・グラム・ロック――女性性へのイニシエーション
・メインストリームに浮上するゴス
・ゴスのDIY精神
・ゴスロリ――日本の<ゴス>の黎明
第四章 新魔女一〇〇シーン
・魔女
・アート
・ファッション
・文学(魔女文学)
・ゴス
・ジャパニーズ・ゴス
・サブカルチャー
・映画
・身体表現、パフォーマンス
・アニメ・コミック(少女文化)
・少女
エピローグ 魔女カルチャー・シンドローム
19世紀末美術を魅了した「ファム・ファタル」以降、魔女は可視化され、
そのイメージが爆発的に拡散された。
中世魔女狩りからゴスロリ、そしてアニメまでに継続される「魔女」の遺伝子とは?
20世紀の魔女復興運動、フェミニズム、カウンターカルチャーを通過し、
新たなステージへ飛翔する「魔女」論。
美術批評、20世紀史、女性とポップカルチャー論を
縦横無尽に遊歩して明らかにする「魔女」の真実。
●19世紀末美術に視覚化された「魔女」
●アール・ヌーヴォーからフェミニズムへ
●秘密結社:黄金の暁団、クロウリー、ガードナー
●パンクからゴス、そしてゴスロリへ
●アニメ、ネットにみる魔女の文化遺伝子
「魔女狩り」から「魔法少女」「きゃりーぱみゅぱみゅ」まで
伝説から歴史へ、明かされる「魔女」の真実
サロメ/メドゥーサ/リリス/パンドラ/オフィーリア/ベアトリーチェ/
ロイ・フラー/サラ・ベルナール/ゴシックロマンス/イサドラ・ダンカン/
象徴主義/ラファエロ前派/アール・ヌーヴォー/黄金の暁団/ガードナー/
クロウリー/ボーヴォワール/ウィッカ/スターホーク/フリーダ・カーロ/
バルテュス/ニューエイジ/アサトル/シャーマニズム/アーシュラ・K・ル?グウィン/
レニ・リーフェンシュタール/エリカ・ジョング/ヴィヴィアン・ウエストウッド/
ココ・シャネル/パンク/ゴス/インターネット/スチームパンク/ゴスロリ/
シンディ・シャーマン/リサ・ライオン/ジャン・コクトー/アガサ・クリスティ/
キャロル・オニール/イーストウィックの魔女たち/エヴァンゲリオン/
下妻物語/土偶/サイケデリック/トランス/ティム・バートン/レディ・ガガ/
セーラームーン/まどか☆マギカ/宮崎駿/宝塚/AKB48/
きゃりーぱみゅぱみゅ/初音ミク/艦コレ/アナと雪の女王
【目次】
プロローグ 新しき魔女の時代
・魔女の原像
・魔女への新たな視線
・2014年 東京の三つの美術展から
第一章 世紀末――魔女の図像学の集成
・世紀末に魔女は見えるものとなった
・視覚化――都市、交通、メディア
・多様化する魔女のイメージ――四つの類型
・ジャーナリズムにおける魔女イメージの推移
・魔女の研究――グリムとミシュレから
・ロマンティックな魔女史観
・ゴシックの復活
・ゴシックの衝動――『オトラント城綺譚』からラファエル前派へ
・ゴシック・ロマンスと女性作家の系譜
・メアリー・シェリーの忌まわしき子ども『フランケンシュタイン』
・ファム・ファタル――魔女の図像学
・キマイラ――誘惑する怪物
・世紀末魔女図鑑
・アール・ヌーヴォー――花と女
・ラファエル前派の「運命の女」――エリザベス・シッダル
第二章 新しい魔女運動
・魔女の消えた時代
・フェミニズムの系譜――サフラジェットからモダン・ガールへ
・一九二〇~三〇年代――魔女としての「新しい女」
・第二次世界大戦後――「ハッピー・ハウスワイフ」の孤独
・フェミニズム以降の魔女研究――ケンブリッジスクールとネオペイガン
・マーガレット・マレー登場――魔女三部作の衝撃
・シュルレアリスムの女たち――ことばと絵画をめぐって
・一九七〇年代I ウーマン・リブ
・一九七〇年代II ニューエイジと癒し
・一九七〇年代III 新魔女運動
・新魔女運動の父、ジェラルド・ガードナー登場
・新魔女運動「ウィッカ」前史の魔術師たち
・リーランド『アラディア――魔女の福音』
・新魔女運動における「女」の変化
・ガードナー派魔女術の継承――ヴァリアンテとバックランド
・SFとネオペイガン――チャーチ・オブ・オール・ワールズ
・アメリカ発・ドルイド復興運動
・アサトル――ゲルマン系ネオペイガニズム
・ネオペイガニズムの見取り図
・反キリスト教の常連―ネオペイガン、ニューエイジ、シャーマニズム
・だれでも魔女になれる――エリカ・ジョングの魔女文学
第三章 ゴス――現代の魔女カルチャー
・<ゴス>――二十一世紀のサブカルチャー
・パンクからゴシック・パンクへ
・インターネット――反逆の拡散
・グラム・ロック――女性性へのイニシエーション
・メインストリームに浮上するゴス
・ゴスのDIY精神
・ゴスロリ――日本の<ゴス>の黎明
第四章 新魔女一〇〇シーン
・魔女
・アート
・ファッション
・文学(魔女文学)
・ゴス
・ジャパニーズ・ゴス
・サブカルチャー
・映画
・身体表現、パフォーマンス
・アニメ・コミック(少女文化)
・少女
エピローグ 魔女カルチャー・シンドローム
- 本の長さ284ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2014/7/11
- ISBN-104022735724
- ISBN-13978-4022735720
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2014/7/11)
- 発売日 : 2014/7/11
- 言語 : 日本語
- 新書 : 284ページ
- ISBN-10 : 4022735724
- ISBN-13 : 978-4022735720
- Amazon 売れ筋ランキング: - 721,405位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,050位朝日新書
- - 11,041位世界史 (本)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2014年8月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は、平凡社『太陽』編集長を経て、幅広い分野で執筆活動を行う海野弘さん。
海野さんは、魔女狩りの時代の魔女と一線を画し、「19世紀末に魔女が見えるものとなった」(28ページ)という仮説を立てる。
人々は、近代に入り科学の明かりに照らされた都市の裏に、何かあるのではないかという疑念を感じる。かつて太陽の光が届かない森の奥深くに魔女が住んでいたように、都市の裏にも魔女が住んでいるのではないか。メディアが過去の魔女の情報を集め、その情報が拡散し、近代の魔女が形作られていく。
中世の森のようなゴシック建築は、魔女と相性がいい。女性作家が書く非現実なゴシック文学は新しい魔女を生み出し、ゴシックロリータが流行る。
第1章の最後では「世紀末魔女図鑑」として、サロメ、リリス、メディア、ユーディット、スフィンクス、メデューサ、イヴ、キルケ、等々を挙げている。彼女たち全ての名前を記憶している自分は、いかに世紀末オカルト・オタクであるかを再認識させられた。魔女とオカルトはセットで現れるのだ。
20世紀に入り、「〈ウーマン・リブ〉と新魔女運動は重なっている」(111ページ)という。ニューエイジやSFと魔女の関係について、ヨーロッパを中心に詳しく紹介している。
海野さんは、1970年代のパンクから始まった〈ゴス〉は、1995年に入ってサブカルチャートなり公民権を得たと指摘する。さらに、「〈ゴス〉はメイクやファッションを通して、魔女になる術を教えたのだ。そして日本では〈ゴスロリ〉という魔法少女たちが生まれた」(208ページ)という。ただし、「〈オタク〉は男性中心で、〈ゴス〉を支える女性をカヴァーできない」(251ページ)とも指摘する。
最後に、アニメの魔法少女たち、AKB48、きゃりーぱみゅぱみゅ、初音ミクなどを魔女として紹介しているが、考察がやや弱いように感じられた。
海野さんは最後に、現代に魔女が横行する背景として、別世界に飛び立ちたいという願望から魔女がもてはやされる一方、敵を魔女として投影することで差別論に繋がるとしている。いずれにしても、インターネットがサブカルチャーであった魔女をメジャーにしたことは確かである。そして、腐女子が真の魔女なのではないかと感じる次第(笑)。
海野さんは、魔女狩りの時代の魔女と一線を画し、「19世紀末に魔女が見えるものとなった」(28ページ)という仮説を立てる。
人々は、近代に入り科学の明かりに照らされた都市の裏に、何かあるのではないかという疑念を感じる。かつて太陽の光が届かない森の奥深くに魔女が住んでいたように、都市の裏にも魔女が住んでいるのではないか。メディアが過去の魔女の情報を集め、その情報が拡散し、近代の魔女が形作られていく。
中世の森のようなゴシック建築は、魔女と相性がいい。女性作家が書く非現実なゴシック文学は新しい魔女を生み出し、ゴシックロリータが流行る。
第1章の最後では「世紀末魔女図鑑」として、サロメ、リリス、メディア、ユーディット、スフィンクス、メデューサ、イヴ、キルケ、等々を挙げている。彼女たち全ての名前を記憶している自分は、いかに世紀末オカルト・オタクであるかを再認識させられた。魔女とオカルトはセットで現れるのだ。
20世紀に入り、「〈ウーマン・リブ〉と新魔女運動は重なっている」(111ページ)という。ニューエイジやSFと魔女の関係について、ヨーロッパを中心に詳しく紹介している。
海野さんは、1970年代のパンクから始まった〈ゴス〉は、1995年に入ってサブカルチャートなり公民権を得たと指摘する。さらに、「〈ゴス〉はメイクやファッションを通して、魔女になる術を教えたのだ。そして日本では〈ゴスロリ〉という魔法少女たちが生まれた」(208ページ)という。ただし、「〈オタク〉は男性中心で、〈ゴス〉を支える女性をカヴァーできない」(251ページ)とも指摘する。
最後に、アニメの魔法少女たち、AKB48、きゃりーぱみゅぱみゅ、初音ミクなどを魔女として紹介しているが、考察がやや弱いように感じられた。
海野さんは最後に、現代に魔女が横行する背景として、別世界に飛び立ちたいという願望から魔女がもてはやされる一方、敵を魔女として投影することで差別論に繋がるとしている。いずれにしても、インターネットがサブカルチャーであった魔女をメジャーにしたことは確かである。そして、腐女子が真の魔女なのではないかと感じる次第(笑)。
2022年6月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
魔女に興味はあるものの「キマっちゃってる」人の本を読むのはハードルが高い人向けの雑学的案内本。
年代ごとに語ると思いきや登場人物の年代が前後したり、作品や作者を紹介するかと思えば突然単語について独自解説を始めるなど、Twitterの独り言か?と思うようなクセ強めの編集で、まじめに読みはじめるとガッカリする。
とはいえ、ウィッカやペイガン団体の流れや立ち位置について広く浅く触れているので、これを足がかりに各魔女入門書や本格的な魔女の歴史について書かれている本を探していくヒントにはなる。
ちなみに、魔女の歴史を語るならフェミニズムとは切り離せないが、著者本人が男女の権力勾配に無自覚そうな、イライラさせられるような文が前半部分から登場する上に、そういった思慮に欠ける視点が散漫に登場する。
しかも解説では、ギャグなんだかわからないクソつまらんサムい文章が突然出てくるので、読み進めるのは忍耐が要る。
正直、ほぼ他人事で書かれていて、当事者性が皆無なこともあり、書評だけ纏められていた方がマシな部分も多い。
年代ごとに語ると思いきや登場人物の年代が前後したり、作品や作者を紹介するかと思えば突然単語について独自解説を始めるなど、Twitterの独り言か?と思うようなクセ強めの編集で、まじめに読みはじめるとガッカリする。
とはいえ、ウィッカやペイガン団体の流れや立ち位置について広く浅く触れているので、これを足がかりに各魔女入門書や本格的な魔女の歴史について書かれている本を探していくヒントにはなる。
ちなみに、魔女の歴史を語るならフェミニズムとは切り離せないが、著者本人が男女の権力勾配に無自覚そうな、イライラさせられるような文が前半部分から登場する上に、そういった思慮に欠ける視点が散漫に登場する。
しかも解説では、ギャグなんだかわからないクソつまらんサムい文章が突然出てくるので、読み進めるのは忍耐が要る。
正直、ほぼ他人事で書かれていて、当事者性が皆無なこともあり、書評だけ纏められていた方がマシな部分も多い。
2022年4月2日に日本でレビュー済み
ヨーロッパ世紀末文化については圧倒的な読書量と知識を持つ海野弘さんが魔女文化についてまとめた本です。
中世に魔女と呼ばれた女性達がどんな儀式をしていたとか、どんな魔術を使って実際に効果があったのか、また、魔女裁判や魔女狩りがどういう背景で行われたなどといった内容を期待して読んだのですが、そういう内容ではありませんでした。
やはり海野さんの専門である1900年前後のラファエル前派のような世紀末美術を中心に「魔女」を拡大解釈して女性開放の歴史と絡めて、無数の関係者の断片的な紹介が続く、海野弘さんの悪い著作のパターンでした。
あくまで男性から見たときに、約千年の中世の長い歴史の中で押さえつけられてきた女性がそれまでの枠からはみ出るようなことをしたら、それは「魔女」と呼ばれたのかも知れません。
中世に魔女と呼ばれた女性達がどんな儀式をしていたとか、どんな魔術を使って実際に効果があったのか、また、魔女裁判や魔女狩りがどういう背景で行われたなどといった内容を期待して読んだのですが、そういう内容ではありませんでした。
やはり海野さんの専門である1900年前後のラファエル前派のような世紀末美術を中心に「魔女」を拡大解釈して女性開放の歴史と絡めて、無数の関係者の断片的な紹介が続く、海野弘さんの悪い著作のパターンでした。
あくまで男性から見たときに、約千年の中世の長い歴史の中で押さえつけられてきた女性がそれまでの枠からはみ出るようなことをしたら、それは「魔女」と呼ばれたのかも知れません。
2014年9月17日に日本でレビュー済み
ずっと以前、森島恒雄『
魔女狩り
』(岩波新書)を読み、「魔女狩り」とは近世の宗教改革に対する反動の流れの中に位置づけられる出来事であったことを知り、大いに好奇心を刺激された覚えがあります。
この『魔女の世界史』を手にしたのは、そうした宗教対立の歴史を「魔女」というタームで読み解くことを目指した類書だと勝手に思いこんだからです。
しかし表題に「魔女」とあるものの、この本には16世紀の宗教裁判上の「魔女」の歴史を追う詳細な記述はありません。むしろもっと時代を下って、18、19世紀から20世紀を通り、21世紀初頭の現代に至るまでの、文化的、芸術的、風俗的な現象としての「魔女」を取り上げていくという趣向です。換言するならば、対抗宗教革命期におけるような迫害対象としての「魔女」ではなく、近代以降の<迫害や差別と戦う「魔女」>がテーマです。
18世紀の科学崇拝の時代に中世的な非合理性に憧れをもつゴシックロマンが流行し、そこにメアリー・シェリーといった女性作家たちが活躍する余地が生まれます。中世的ゴシックと「魔女」との親和性を著者は見るのです。
19世紀にはファムファタルが盛んに絵画に描かれますが、著者はこれも「魔女」的存在として取り上げます。女性の社会進出によって男性社会が脅かされるという恐怖心の存在を見るのです。
20世紀に入れば、モダンガール、ウーマンリブ、ニューエイジ、ハインラインSF作品『 異星の客 』、果てはゴス、アニメまでと、著者は時代の潮流と「魔女」の関わりを貪欲に解析していきます。
著者が描く「魔女」とは、近代から現代にかけて男性優位あるいは男性中心であることを無邪気に信じる社会において、女性たちが積極的に社会に関わっていく姿勢を示したがゆえに、厄介な存在と見做されて貼られたレッテルといえるでしょう。その意味では近世期にカトリックがプロテスタントへの対抗上おこなった<魔女狩り>とまさに底が通じているといえるでしょう。
著者が後段次々と列挙していく「魔女」たちの名前を眺めながら、そうした女性たちを十把一絡げに「魔女」であると、果たしてくくってよいものだろうかという疑問が湧かなくもありません。しかしその一方で、「魔女」というキー・タームで時代潮流を切り取るという視点の斬新さに心沿うところも同時にあるのです。
21世紀を迎えても男性が占める世界はまだまだあります。ということは裏返していえば、今後も「魔女」が活躍する余地は十分あるということでしょう。
果たして10年後、20年後に、どんな魔女が現れるのでしょうか。
流血の「魔女狩り」が繰り広げられることがないことだけは、強く望みます。
---------------
*122頁に画家の「レメディオス・ヴァロ」という表記がありますが、スペイン人のRemedios Varoは レメディオス・バロとカタカナ表記するのが一般的です。スペイン語の『Varo』の語頭音は英語の「v」ではなく「b」の音ですから。
*136頁に「次に重要なのは、リクライミングという機構である。取り戻す、という意味だ」とありますが、「取り戻す」という意味の「reclaiming」ならば、発音表記は「リクレイミング」とするべきです。
*199頁に「アレックス・コックス監督の『シドとナンシー』」という記述がありますが、コックス監督の当該映画の邦題は正しくは『 シド・アンド・ナンシー 』です。
この『魔女の世界史』を手にしたのは、そうした宗教対立の歴史を「魔女」というタームで読み解くことを目指した類書だと勝手に思いこんだからです。
しかし表題に「魔女」とあるものの、この本には16世紀の宗教裁判上の「魔女」の歴史を追う詳細な記述はありません。むしろもっと時代を下って、18、19世紀から20世紀を通り、21世紀初頭の現代に至るまでの、文化的、芸術的、風俗的な現象としての「魔女」を取り上げていくという趣向です。換言するならば、対抗宗教革命期におけるような迫害対象としての「魔女」ではなく、近代以降の<迫害や差別と戦う「魔女」>がテーマです。
18世紀の科学崇拝の時代に中世的な非合理性に憧れをもつゴシックロマンが流行し、そこにメアリー・シェリーといった女性作家たちが活躍する余地が生まれます。中世的ゴシックと「魔女」との親和性を著者は見るのです。
19世紀にはファムファタルが盛んに絵画に描かれますが、著者はこれも「魔女」的存在として取り上げます。女性の社会進出によって男性社会が脅かされるという恐怖心の存在を見るのです。
20世紀に入れば、モダンガール、ウーマンリブ、ニューエイジ、ハインラインSF作品『 異星の客 』、果てはゴス、アニメまでと、著者は時代の潮流と「魔女」の関わりを貪欲に解析していきます。
著者が描く「魔女」とは、近代から現代にかけて男性優位あるいは男性中心であることを無邪気に信じる社会において、女性たちが積極的に社会に関わっていく姿勢を示したがゆえに、厄介な存在と見做されて貼られたレッテルといえるでしょう。その意味では近世期にカトリックがプロテスタントへの対抗上おこなった<魔女狩り>とまさに底が通じているといえるでしょう。
著者が後段次々と列挙していく「魔女」たちの名前を眺めながら、そうした女性たちを十把一絡げに「魔女」であると、果たしてくくってよいものだろうかという疑問が湧かなくもありません。しかしその一方で、「魔女」というキー・タームで時代潮流を切り取るという視点の斬新さに心沿うところも同時にあるのです。
21世紀を迎えても男性が占める世界はまだまだあります。ということは裏返していえば、今後も「魔女」が活躍する余地は十分あるということでしょう。
果たして10年後、20年後に、どんな魔女が現れるのでしょうか。
流血の「魔女狩り」が繰り広げられることがないことだけは、強く望みます。
---------------
*122頁に画家の「レメディオス・ヴァロ」という表記がありますが、スペイン人のRemedios Varoは レメディオス・バロとカタカナ表記するのが一般的です。スペイン語の『Varo』の語頭音は英語の「v」ではなく「b」の音ですから。
*136頁に「次に重要なのは、リクライミングという機構である。取り戻す、という意味だ」とありますが、「取り戻す」という意味の「reclaiming」ならば、発音表記は「リクレイミング」とするべきです。
*199頁に「アレックス・コックス監督の『シドとナンシー』」という記述がありますが、コックス監督の当該映画の邦題は正しくは『 シド・アンド・ナンシー 』です。
2014年8月25日に日本でレビュー済み
本書の最大の価値は、これまで考えるどころか疑問にも思わなかった表題のことが、かくも深淵なテーマと分かることだと思う。
魔女は、中世のキリスト教文化が生み出した異教への敵対行動であり、以後は、当時の支配層である男が女を排撃する際の常套句と化していた(英国で第二次大戦後にも魔女禁止法が存続した意味も奥深い。さすが、20世紀に至っても、猥褻だからとピアノや食卓の脚に常にカバーをかけさせる禁欲国家だ)。
これに対する女性からの反撃、また、キリスト教を絶対の価値観としない人々の解放運動として、著者は幅広く魔女を位置付ける。
平塚らいてうが「元始、女性は太陽だった」と戦前日本で女性解放運動の旗を掲げたとき、欧米では太陽とは正反対とも思える魔女を旗頭としたわけで、何とも面白い。
また、こうした女性史(社会史・文化史)に力点を置かずとも、近代以降の絵画や文学が好きな方にも、魔女という視点を加えることで実に興味深い考察が得られると思う。
あとは、このタイトルと帯広告で、アニメ好きや若い世代に本書の終盤(著者はここを言わんがために、延々と本書を書いたのだろうし)までリードできたのかなぁ?とは思う。著者が本書で云う「魔女」を広範な女性に対して使っていることを、読者がどのように受け止めるのか?歴史や体制・文化に対峙する存在としての魔女が、現代日本に広く定着していることの意味を考えるところが本書のゴールだろう。
新書でありながら、半分近くを百科事典的な体裁にしているのも、本書をテーマの重さに対して読みやすくはしていると思う。
魔女は、中世のキリスト教文化が生み出した異教への敵対行動であり、以後は、当時の支配層である男が女を排撃する際の常套句と化していた(英国で第二次大戦後にも魔女禁止法が存続した意味も奥深い。さすが、20世紀に至っても、猥褻だからとピアノや食卓の脚に常にカバーをかけさせる禁欲国家だ)。
これに対する女性からの反撃、また、キリスト教を絶対の価値観としない人々の解放運動として、著者は幅広く魔女を位置付ける。
平塚らいてうが「元始、女性は太陽だった」と戦前日本で女性解放運動の旗を掲げたとき、欧米では太陽とは正反対とも思える魔女を旗頭としたわけで、何とも面白い。
また、こうした女性史(社会史・文化史)に力点を置かずとも、近代以降の絵画や文学が好きな方にも、魔女という視点を加えることで実に興味深い考察が得られると思う。
あとは、このタイトルと帯広告で、アニメ好きや若い世代に本書の終盤(著者はここを言わんがために、延々と本書を書いたのだろうし)までリードできたのかなぁ?とは思う。著者が本書で云う「魔女」を広範な女性に対して使っていることを、読者がどのように受け止めるのか?歴史や体制・文化に対峙する存在としての魔女が、現代日本に広く定着していることの意味を考えるところが本書のゴールだろう。
新書でありながら、半分近くを百科事典的な体裁にしているのも、本書をテーマの重さに対して読みやすくはしていると思う。
2014年11月10日に日本でレビュー済み
社会における女性の立ち位置の変化が「魔女」を使って丁寧に説明されています。
作中でも触れられていましたが、男は「女」という型に(例:おしとやか、清楚等)女性
を当てはめて理解しようとします(最近でいえばツンデレ、クウデレ等)。
しかし女性はその肉体の持つ特性と同様、しなやかに変化し続け、男たちが作った「女」の
雛型をも利用し、全てを、貪欲に呑み込んでいく、まさに「魔女」。
遺伝子研究の発展がもたらした未来予想図でも今後は女性が増加し男性は減少していくとのこと。
まさに「もうなにも怖くない」(魔法少女まどかマギカより)。
作中でも触れられていましたが、男は「女」という型に(例:おしとやか、清楚等)女性
を当てはめて理解しようとします(最近でいえばツンデレ、クウデレ等)。
しかし女性はその肉体の持つ特性と同様、しなやかに変化し続け、男たちが作った「女」の
雛型をも利用し、全てを、貪欲に呑み込んでいく、まさに「魔女」。
遺伝子研究の発展がもたらした未来予想図でも今後は女性が増加し男性は減少していくとのこと。
まさに「もうなにも怖くない」(魔法少女まどかマギカより)。
他の国からのトップレビュー
bayan
5つ星のうち5.0
Great book
2024年2月4日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
It is one of Hiroshi unno’s amazing point of view.