著者は小説は５年ぶり、以前書いていたのはほとんどゲームのノベライズなので、あとがきで述べているとおりほとんど本作が初オリジナル小説と言っていい。
しかし、ぽっと出の新人ではありえない。Ｄ＆Ｄ、ドラゴンランスを始め数多くの翻訳を手がけてファンタジーノベルの世界では知られた名だ。本作も翻訳で鳴らした冴えが随所に見られる出来栄えとなっている。
神が創った〈塔〉以外には外界も歴史も失われた王国。神の恩恵であり挑戦である〈塔〉＝ダンジョンを攻略して超技術を持ち帰り人々に恩恵をもたらすのは、超人的能力と男でも女でもない美しい身体を持つ神子の役目にして存在意義だ。
ファンタジーがあふれる昨今決して珍しい設定ではないが読み進めると、片鱗しか覗かせないこの世界に、著者ならではのギュウギュウのギミックが詰まっているのが良くわかる。
そして男でも女でもない神子が恋してしまったらどうなるか？あとは一直線の恋愛物語である。
このテーマで正面から堂々と殴り合ってくるような力強さは翻訳で鍛えたものだろう。
こんどは５年後…とか言わずに続けて書いて欲しい小説家がまた生まれた。
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