鬼の起源について調べていたら行き当たった作品で、やや高価だが思い切って購入。
自分に子供はおらず、読み聞かせる対象も不在なのだが、単純に絵本作品として素晴らしかった。
内容から教訓として得るものは人それぞれだが、そういった包容力が大きい作品に感じる。
行間から赤鬼と青鬼の心情が滲み出て、それが読者の心を優しく潤していくというか。
オッサンになって感受性が豊かになったのか、二人の心情に思いを馳せて涙する。
青鬼の自己犠牲は、かつての経験からか大事を成す困難を知っていた点が光る。
赤鬼ならできる、託しても良い、そんな無二の信頼をおける人間が自分に居るだろうか。
それを知った赤鬼は大切なものの本質と存在に気付かされるが、その心情は語られないままに終わる。
挿絵も非常に良く、青鬼の元へ向かうシーンでは山野の中に咲く山百合が描かれている。
朝早く出立し、山をいくつも越えて青鬼の元へ向かったとある。
じきに夏の陽が山百合を照らし、草いきれと共に山道の香りが漂ってくるかのようだ。
何より、最終ページの挿絵のみとなっているシーンの余韻が非常に素晴らしい。
左上にぽつんと描かれた赤鬼と、その他は全て山野という大胆な構図。
青鬼の身を賭した行動を受けて、赤鬼もまた青鬼のように、これから出会う誰かに、かけがえのないものを与えていく生き方をしていったと思いたい。
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