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中尉 単行本 – 2014/11/29
古処 誠二
(著)
ペスト収束に奔走する敗戦間近の英国領ビルマ・メダンサ部落。武装強盗団に上官を誘拐され懊悩する軍曹――否応なく膨らむ疑心の闇、緊迫する心理戦、知られざる真実。人間の剥き出しの心に寄り添う戦争小説の白眉。
- 本の長さ239ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA/角川書店
- 発売日2014/11/29
- ISBN-104041023467
- ISBN-13978-4041023464
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA/角川書店 (2014/11/29)
- 発売日 : 2014/11/29
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 239ページ
- ISBN-10 : 4041023467
- ISBN-13 : 978-4041023464
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,206,542位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 284,253位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年12月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古処氏のインタビュー記事やほんの1,2頁程度のエッセイにいたるまで、すべてを持っている、筋金入りのファンです。もちろん、インタビューやエッセイなどは、単行本未収録作品とあわせてちゃんと複写して、製本して書庫においてあります。「死んでも負けない」は久々のユーモアミステリでしたが、この「中尉」は、本格的な戦争物でした。ネタバレ覚悟でいえば、作中の中尉の印象から、病気の前後で中尉は入れ替わってるんじゃないか(しかもビルマ人に入れ替わっているんじゃないか)と思っていましたが、最後の悲しくも優しい謎解きで感動しました。名作の誉れ高い「ビルマの竪琴」をしのぐ、ビルマおよびビルマ人を描いた素晴らしい小説でした。
2021年5月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
思ったほどのものではなかった
2023年4月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
共通の知人の話をすると同じ人物とは思えない様な人物評を聞かされて驚かされた経験をされた方は少なくないのではないだろうか?自分が下らん奴だと軽蔑している人物について「○○くん?割と良い奴だよ」と聞かされて「あいつのどこをどう見たらそんな評価に?」と戸惑う……そんな人物像のブレに直面するとひどく困惑する。
ビルマ戦線を舞台にした作品を執筆しているという事で最近興味を惹かれている古処誠二の作品だけれども、この作品はまさにそんな「人物像のブレ」に主人公が向き合わされる内容となっている。
物語は一度はビルマから追い払った英軍にインパール作戦の失敗を切っ掛けとして形勢逆転され完全に敗色濃厚となった日本軍の軍曹・尾能がペストの発生したメンダンサという部落に派遣される軍医の護衛任務を命じられる場面から始まる。
現地に向かう事になった伊与田軍医中尉と面会して尾能はその将校とは思えない威厳の無さに呆れさせられる。動作はもっさり、顔に覇気は感じられず、服装もだらしない……およそ自分が将校というものに求める日本軍人らしさを何一つ持ち合わせない伊与田だったが、部落に向かう道中も無駄話ばかりでいよいよゲンナリさせられる事に。
辿り着いた部落でも衛生班の宿舎は部落の真ん中に設営して欲しいと宣う伊与田に、ダコイと呼ばれる武装強盗団も頻発し、いつ日本軍を見限ってもおかしくないビルマ人を監視せねばならない状況を理解していないと尾能はうんざりさせらながら部落のビルマ人たちとも付き合う羽目になるが日本軍の降伏が近いという話が伝わってくる様になり……
……随分と「すっきりしない」作品だな、というのが読み終えての第一印象。ただその「すっきりしない」感覚は技術の不足ではなく、明らかに作者が意図的に狙った物であるというのがミソ。文庫版のあとがきで解説の片山杜秀も語っている様にこれは芥川龍之介の「藪の中」に近いテーマを扱った作品と言って良いかと。
物語はプロローグで軍医中尉の伊与田がダコイと呼ばれるビルマ人の強盗団に拉致される所から始まる。その後の本編は大きく分けて敗戦間近なビルマの一部落で軍人らしさが欠落した軍医、伊与田に主人公の尾能がイライラしながらペストの囲い込み(ある種のロックダウン)という任務に従事する様子が描かれる。
後半は日本が降伏し、イギリス軍の捕虜収容所へ収容された尾能がその直前に拉致された伊与田を巡る事情や拉致の真相について同じ日本兵や取り調べを担当するイギリスの語学将校とのやり取りを繰り返す様が描かれる。
前半は軍人とは、それも部下を率いる上で威厳を備えていなければならない将校とは思えないぐらい腑抜けた伊与田に苛つく尾能の視点がメインとなっている。後半も尾能の語りで話は進むのだけれども「尾能の目に伊与田はどういった人物として映ったか」を読者に印象付けるのが目的となっている。
その腑抜けた軍人というイメージを定着させた上で後半はそのイメージを崩す、あるいはブレさせる展開に。ダコイによって拉致されたと思われる伊与田がイギリスからの再支配を拒絶し、独立に向けて立ち上がろうとするゲリラに協力する為に拉致を偽装したのではという疑惑が持ち上がり前半で登場するビルマ人の青年の思惑も絡んで伊与田という軍人の真の姿が一気に分からなくなる。
更には伊与田の下で長く働いていた衛生兵の語るビルマ北部の大敗、日本軍が総崩れとなって撤退し白骨街道とも称される事になった日本兵の死体の山を前に伊与田が辿った運命を聞かされる事で尾能と、尾能の目を通じて伊与田の人物像を思い浮かべていた読者は大いに困惑する。一人の人物が複数の視点の間で全く異なった姿に見えるという、まさに人物像を巡っての「藪の中」的状況へと追い込まれるのである。
少し前に読んだ「ビルマに見た夢」でもビルマ人に対する日本人の偏見と、ビルマという土地を知る事でそのビルマ人像がひどく一方的で偏ったイメージだという事を思い知らされる主人公の困惑が描かれていたのだけど、戦争という「真実」を殺し国民に特定の像だけを刷り込もうとする状況の危うさを作者は伝えようとしているのではないか……二冊目となる著作に触れてそんな事を想わされた。
特定のイメージに縋っているのは安心かも知れないが危うい。困惑させられる状況は不安かもしれないがともすれば「真実」を殺そうとする弱さに飲み込まれずに済む、そんな事を思えば今の日本社会に対する警鐘であるとも読み取れる。
祖父の戦った地について知りたいという好奇心から読み始めた作家さんだけれども、気が付けば現代日本が陥っている状況について考えさせられる切っ掛けを与えてくれた一冊であった。
ビルマ戦線を舞台にした作品を執筆しているという事で最近興味を惹かれている古処誠二の作品だけれども、この作品はまさにそんな「人物像のブレ」に主人公が向き合わされる内容となっている。
物語は一度はビルマから追い払った英軍にインパール作戦の失敗を切っ掛けとして形勢逆転され完全に敗色濃厚となった日本軍の軍曹・尾能がペストの発生したメンダンサという部落に派遣される軍医の護衛任務を命じられる場面から始まる。
現地に向かう事になった伊与田軍医中尉と面会して尾能はその将校とは思えない威厳の無さに呆れさせられる。動作はもっさり、顔に覇気は感じられず、服装もだらしない……およそ自分が将校というものに求める日本軍人らしさを何一つ持ち合わせない伊与田だったが、部落に向かう道中も無駄話ばかりでいよいよゲンナリさせられる事に。
辿り着いた部落でも衛生班の宿舎は部落の真ん中に設営して欲しいと宣う伊与田に、ダコイと呼ばれる武装強盗団も頻発し、いつ日本軍を見限ってもおかしくないビルマ人を監視せねばならない状況を理解していないと尾能はうんざりさせらながら部落のビルマ人たちとも付き合う羽目になるが日本軍の降伏が近いという話が伝わってくる様になり……
……随分と「すっきりしない」作品だな、というのが読み終えての第一印象。ただその「すっきりしない」感覚は技術の不足ではなく、明らかに作者が意図的に狙った物であるというのがミソ。文庫版のあとがきで解説の片山杜秀も語っている様にこれは芥川龍之介の「藪の中」に近いテーマを扱った作品と言って良いかと。
物語はプロローグで軍医中尉の伊与田がダコイと呼ばれるビルマ人の強盗団に拉致される所から始まる。その後の本編は大きく分けて敗戦間近なビルマの一部落で軍人らしさが欠落した軍医、伊与田に主人公の尾能がイライラしながらペストの囲い込み(ある種のロックダウン)という任務に従事する様子が描かれる。
後半は日本が降伏し、イギリス軍の捕虜収容所へ収容された尾能がその直前に拉致された伊与田を巡る事情や拉致の真相について同じ日本兵や取り調べを担当するイギリスの語学将校とのやり取りを繰り返す様が描かれる。
前半は軍人とは、それも部下を率いる上で威厳を備えていなければならない将校とは思えないぐらい腑抜けた伊与田に苛つく尾能の視点がメインとなっている。後半も尾能の語りで話は進むのだけれども「尾能の目に伊与田はどういった人物として映ったか」を読者に印象付けるのが目的となっている。
その腑抜けた軍人というイメージを定着させた上で後半はそのイメージを崩す、あるいはブレさせる展開に。ダコイによって拉致されたと思われる伊与田がイギリスからの再支配を拒絶し、独立に向けて立ち上がろうとするゲリラに協力する為に拉致を偽装したのではという疑惑が持ち上がり前半で登場するビルマ人の青年の思惑も絡んで伊与田という軍人の真の姿が一気に分からなくなる。
更には伊与田の下で長く働いていた衛生兵の語るビルマ北部の大敗、日本軍が総崩れとなって撤退し白骨街道とも称される事になった日本兵の死体の山を前に伊与田が辿った運命を聞かされる事で尾能と、尾能の目を通じて伊与田の人物像を思い浮かべていた読者は大いに困惑する。一人の人物が複数の視点の間で全く異なった姿に見えるという、まさに人物像を巡っての「藪の中」的状況へと追い込まれるのである。
少し前に読んだ「ビルマに見た夢」でもビルマ人に対する日本人の偏見と、ビルマという土地を知る事でそのビルマ人像がひどく一方的で偏ったイメージだという事を思い知らされる主人公の困惑が描かれていたのだけど、戦争という「真実」を殺し国民に特定の像だけを刷り込もうとする状況の危うさを作者は伝えようとしているのではないか……二冊目となる著作に触れてそんな事を想わされた。
特定のイメージに縋っているのは安心かも知れないが危うい。困惑させられる状況は不安かもしれないがともすれば「真実」を殺そうとする弱さに飲み込まれずに済む、そんな事を思えば今の日本社会に対する警鐘であるとも読み取れる。
祖父の戦った地について知りたいという好奇心から読み始めた作家さんだけれども、気が付けば現代日本が陥っている状況について考えさせられる切っ掛けを与えてくれた一冊であった。
2018年4月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アンノウン、ルール、七月七日・・・等 初期中期の作品を是非読んでほしい、中尉も悪くはないけどこの作品一言言っておきたいが決してビルマの竪琴と同類には扱わないでほしい、まったく内容もレベルも違い過ぎる古処氏の方が文体作風表現何れも優れている。氏は推理作家としても素養があるので終わり掛けに予期しなかった展開がある。
2021年12月7日に日本でレビュー済み
同作者の「7月7日」、「線」を読み 三作目でした。前の二作は、軍隊の極限生活での人間の葛藤、悲しみ、憎しみなどが、ぎゅっと詰まって、心に刺さる作品でした。しかし本書は、終戦をビルマで迎えた中尉と周辺の人々のストーリーで、戦争事体の描写は少ないです。
もちろん、戦争を知らない世代には、充分リアリティがあり、読みごたえがありました。
もちろん、戦争を知らない世代には、充分リアリティがあり、読みごたえがありました。