小説家江戸川乱歩(1894-1965)の作品集。乱歩の作品を読むと、読書の暗い淫楽に耽ることができる。
「石榴」
ジャンケンのように無限遡行の決定不能だ。真実か虚構か、加害者か被害者か。ポー『盗まれた手紙』の中のジャンケンの話を挿入したのは見事だ。そして、読後もそのイメージを広げていくタイトル「石榴」も秀逸の一語に尽きる。本作品集に於ける白眉。
「夢遊病者の死」
「・・・・・・何が悲しいのだ。なんということもなく、すべてが悲しいのだ」鬱屈した青年が反側輾転しながら漏らす口癖は「死んじまえ、死んじまえ、死んじまえ・・・・・・」こんな青年が現代どれだけいるか、想像して戦慄する。
「指」
たった数ページにまで切り詰められた見事なナンセンス・ホラー。
「虫(蟲)」
「・・・、十数年の歳月は、可憐なお下げの小学生を、恐ろしいほど豊麗な全き女性に変えてしまったと同時に、その昔の無邪気な天使は、」柾木の神様でさえあった聖なる乙女は、いつしか妖艶たぐいもあらぬ魔女と変じていたのである」「芙蓉のような種類の女は、二つ面の踊りと同じように、二つも三つもの、全く違った性格をたくわえていて、時に応じ、人に応じて、それを見事に使い分けるものだということを、彼はすっかり忘れていた」虫のように変態していく女への、愛憎と畏怖。女もまた、無限遡行の底無しだ。それを感得できるのは、社会からも女からも疎外された孤独な男だけだ。男だけには、その行き着くところが何処にも無いまま無間地獄へ陥っていく。女は、素知らぬ顔で浮遊している。そこから、男のあらゆる狂おしい異常性欲が創造されていく。タイトルの「虫(蟲)」は、作品のクライマックスで明らかになる。しかし同時にそれは、変態させられ続ける――現象を変態として認識するのは、飽くまで男の視線である――性を負わされた「女」の隠喩ではないか。そしてそれは取りも直さず、「女」を変態させていく「男」の隠喩であるのかもしれない。「虫(蟲)」というタイトルは、実に両義的なものではないか。神様から妖女へそして永久の美がこぼれ落ちていく物体へと変態させられ続けた女を、じっと窃視しその眼差しのみによって変態させ続けた男の物語。
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夢遊病者の死 (角川ホラー文庫 24-6) 文庫 – 2000/6/1
江戸川 乱歩
(著)
- 本の長さ366ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2000/6/1
- ISBN-104041053234
- ISBN-13978-4041053232
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2000/6/1)
- 発売日 : 2000/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 366ページ
- ISBN-10 : 4041053234
- ISBN-13 : 978-4041053232
- Amazon 売れ筋ランキング: - 236,685位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1894年三重県生まれ。早稲田大学卒業。雑誌編集、新聞記者などを経て、1923年「二銭銅貨」でデビュー。以後、「D坂の殺人事件」などの探偵小説を 次々発表。怪奇小説、幻想小説にも優れた作品が多い。代表的なシリーズに、「怪人二十面相」「少年探偵団」などがある。日本の小説界に多大なる業績を残 す。65年没(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 大槻ケンヂが語る江戸川乱歩 私のこだわり人物伝 (ISBN-13:978-4041847213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年5月11日に日本でレビュー済み
角川ホラー文庫の江戸川乱歩集の第4弾。
いわゆる「奇妙な味」の短篇14本が収められている。
収録されているのは、「石榴」「赤い部屋」「夢遊病者の死」「指環」「独草」「日記帳」「接吻」「モノグラム」「算盤が恋を語る話」「妻に失恋した男」「盗難」「覆面の舞踏者」「二廃人」「虫」。
いずれも優れた作品であり、これらをまとめて読めるのは嬉しいことだ。
しかし、有名作品ばかりであり、他の選集にも収められているものが多い。いろいろ読んできた人には、目新しいものはないかも。
いわゆる「奇妙な味」の短篇14本が収められている。
収録されているのは、「石榴」「赤い部屋」「夢遊病者の死」「指環」「独草」「日記帳」「接吻」「モノグラム」「算盤が恋を語る話」「妻に失恋した男」「盗難」「覆面の舞踏者」「二廃人」「虫」。
いずれも優れた作品であり、これらをまとめて読めるのは嬉しいことだ。
しかし、有名作品ばかりであり、他の選集にも収められているものが多い。いろいろ読んできた人には、目新しいものはないかも。
2004年3月24日に日本でレビュー済み
江戸川乱歩は、1番好きな作家だと断言できる。。乱歩の作品を読んでいるとワクワクしてきてしまう。あたしはおかしいのだろうか?
奇怪で、恐ろしくて、怖い世界のハズなのに。
乱歩ワールドにはまってしまったみたいだ。
何度読み返しても、初めて読むかのような、新鮮な気持ちになる。
名探偵、明智小五郎が出る話よりも短編の方があたしは好き。
この本に入っている『赤い部屋』は本当に楽しい。怖いハズなのに、
楽しいと思ってしまう。不思議だ。
何でもっと早く
出会わなかったんだよっ!バカ!!って自分を怒ってしまった笑。
『毒草』リアリティがある。今の時代であったらどんなに恐ろしい
だろうな。
『虫』この作品も大好き。主人公の1人言でよりいっそう不気味さがましてくる・・・。
他にも、指、二癈人など楽しい作品がたくさん入っているので読んでほしい。
奇怪で、恐ろしくて、怖い世界のハズなのに。
乱歩ワールドにはまってしまったみたいだ。
何度読み返しても、初めて読むかのような、新鮮な気持ちになる。
名探偵、明智小五郎が出る話よりも短編の方があたしは好き。
この本に入っている『赤い部屋』は本当に楽しい。怖いハズなのに、
楽しいと思ってしまう。不思議だ。
何でもっと早く
出会わなかったんだよっ!バカ!!って自分を怒ってしまった笑。
『毒草』リアリティがある。今の時代であったらどんなに恐ろしい
だろうな。
『虫』この作品も大好き。主人公の1人言でよりいっそう不気味さがましてくる・・・。
他にも、指、二癈人など楽しい作品がたくさん入っているので読んでほしい。