才能の人ジャン・コクトーの理性、精神力、感受性は
ついに阿片でさえ、蝕むことができなかった。
決して飼いならすことの出来ない恋人「阿片」との共同日記。
研ぎ澄まされた神経の結晶であり、
近代・現代芸術のあらゆるテーマが、そこにはひそんでいる。
私は初めてこの作品を読み終えた後、しばらく、
他の、一切の作家の作品を、読めなくなった時期があった。
麻薬、アルコール、芸術、学問、セックス、宗教、スポーツ…
人間はあらゆるものに陶酔するものだが、
これほど、徹底して陶酔の対象を見つめる芸術家の作品を目の当たりにすると、
他の作家のものは、(読んでいるこっちが恥ずかしくて、)到底、読み続けられなかった。
コクトーは全く、類まれに強靭な詩人である。
彼のレトリックはレトリックの域を超えている。その表現の巧み、美は別次元である。
本書は堀口大学の訳。名翻訳家と言われるが、好みは分かれる。
私たち現代人には(仕方のないことだが、)どうしても古臭く感じてしまう所も多い。
この作品に限らず、私は、コクトーの作品を手にとるたびに、
コクトーを原文で読めるフランス人を、心底、うらやましく思う。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
阿片: 或る解毒治療の日記 (角川文庫 リバイバル・コレクション K 9) 文庫 – 1952/4/1
愛弟子の死に打ちのめされたコクトーは、阿片に救いを見いだした。阿片がもたらす至上の瞬間。それに続く激しい禁断症状--。理性と幻想のあいだで綴られる阿片からの脱出の記録。
- 本の長さ175ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日1952/4/1
- ISBN-104042047025
- ISBN-13978-4042047025
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (1952/4/1)
- 発売日 : 1952/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 175ページ
- ISBN-10 : 4042047025
- ISBN-13 : 978-4042047025
- Amazon 売れ筋ランキング: - 434,825位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 92位フランスのエッセー・随筆
- - 638位フランス文学研究
- - 8,222位角川文庫
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2013年5月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
レビューを書こうと思ったが、コクトーの本文以上にこの本を的確に表せる気がしないので以下に引用する。
僕はインクを用いて(阿片の)毒素を排出して来たのだ。僕の書いたり描いたりしようとする意志によって、この排泄が形になって現れたのだ。
自分にとっての気晴らしで、また自分の神経に対する一種の修養と思っていたものが、終わりに近い中毒症状の精確な図表となったのだ。
万年筆がそれを開拓し、それに奥行と輪郭を与えなかったとしたら、
単に僕の肉体の一種の衰弱以外には何も残さずに消え失せてしまったはずの幽霊のような物質が、汗と胆汁の次に体内から出て来たのだ。
文章もさることながら、ドローイングもまた気味が悪くてよい。
僕はインクを用いて(阿片の)毒素を排出して来たのだ。僕の書いたり描いたりしようとする意志によって、この排泄が形になって現れたのだ。
自分にとっての気晴らしで、また自分の神経に対する一種の修養と思っていたものが、終わりに近い中毒症状の精確な図表となったのだ。
万年筆がそれを開拓し、それに奥行と輪郭を与えなかったとしたら、
単に僕の肉体の一種の衰弱以外には何も残さずに消え失せてしまったはずの幽霊のような物質が、汗と胆汁の次に体内から出て来たのだ。
文章もさることながら、ドローイングもまた気味が悪くてよい。
2017年8月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容は難しく粗筋が言えません。でもフィーリングを大事にして進めたいと思います。
2005年2月12日に日本でレビュー済み
初めてジャン・コクトーを読む人にはこれをオススメします。
「恐るべき子供たち」「ポトマック」は難解で投げ出してしまうかもしれないけど、この阿片中毒の手記はどのページからでも読めるからです。
自由奔放な言葉の組みあわせが生み出す美しさに、知的快感とでもいうのか、脳が酔うような感覚を味わいました。
『禁断状態の八日目にある患者に僕はおすすめする。片腕で頭を抱えて、その腕に耳を押しあてて、さあ待って見給えと。そうしたら、その耳は聴くはずだ。瓦解だの、爆破される騒動だの、遁走する軍隊だの、洪水だのという人体の星月夜の下に行われる全ての啓示を。』
「恐るべき子供たち」「ポトマック」は難解で投げ出してしまうかもしれないけど、この阿片中毒の手記はどのページからでも読めるからです。
自由奔放な言葉の組みあわせが生み出す美しさに、知的快感とでもいうのか、脳が酔うような感覚を味わいました。
『禁断状態の八日目にある患者に僕はおすすめする。片腕で頭を抱えて、その腕に耳を押しあてて、さあ待って見給えと。そうしたら、その耳は聴くはずだ。瓦解だの、爆破される騒動だの、遁走する軍隊だの、洪水だのという人体の星月夜の下に行われる全ての啓示を。』