これはミステリーなのでしょうか?読んでいるうちに、疑問が湧いてきました。
自分がこれまでに読んだことのあるミステリーを基準に考えると、最初はちょっと冗長な気がしていましたが、ミステリーと考えずに読み進めていると、凄く良い小説だと思うようになりました。殺人事件は単にストーリーを進めるための方便に過ぎないのではないかと。
世の中は、0と1、良いか悪いかだけでは測れないものだということを、改めて教わった気がします。
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夢果つる街 (角川文庫 赤 450-2) 文庫 – 1988/4/12
吹き溜まりの街、ザ・メイン。ここはラポワント警部補の街であり、彼が街の”法律”なのだ。そして彼にも潰えた夢があった……トレヴェニアンが小説巧者の真価を発揮した警察小説の最高傑作!
- 本の長さ514ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日1988/4/12
- ISBN-104042450024
- ISBN-13978-4042450023
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (1988/4/12)
- 発売日 : 1988/4/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 514ページ
- ISBN-10 : 4042450024
- ISBN-13 : 978-4042450023
- Amazon 売れ筋ランキング: - 273,266位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本作品は、原題のTHE MAINが示すとおり、
カナダ・モントリオール市に実在する地区、ザ・メインが舞台。
そこは移民が流入し、
老人と負け犬と身を持ち崩した者たちが暮らす
猥雑な地区――夢果つる街なのです。
クロード・ラポワント警部補は
ザ・メインを担当して30年あまりの53歳。
街の「法律」であり、巡回を欠かすことはありません。
週2回、仕事帰りにマルタン神父、モイシェ・ラパポート、
デイヴィッド・モゴレフスキーの3人の街の住人と議論を交わしながら、
カード・ゲーム「ピノクル」に興ずる彼は、
若い頃に妻を亡くし、心臓には動脈瘤の爆弾を抱えています。
家ではエミール・ゾラ全集を熟読するという一面も。
ある日、路地で若い男性の刺殺死体が発見されるのですが、
物語は捜査過程で関わり合う街の人々を
抑えた筆致で描写していきます。
また、助手の新人刑事・ガットマンや、
ひょんなことから同居が始まった
若い娘・マリー‐ルイズとのやりとりも物語に花を添えます。
本作品は謎解きは主たる要素ではなく、
ジャンルとしては、警察小説、
あるいはハードボイルドと呼べるものでしょう。
ラポワント警部補の行動を通して、
人間が誰でも持つ哀愁感や寂寥感を
叙情性豊かに描ききることに成功した、秀作だと思います。
1976年に発表された本作品は、
我が国では1988年に刊行、
同年に始まった「このミステリーがすごい!」で
海外部門第1位に輝いています。
その後、在庫が途切れることもあったようですが、
2009年の角川文庫60周年企画で
増刷されるようになった模様。
ランクインした当時からでも20年以上経っていますが、
全く古びた感じはなく、
むしろ、ザ・メインという街が現実感を増して迫ってくるのは、
見事と言わねばならないでしょう。
カナダ・モントリオール市に実在する地区、ザ・メインが舞台。
そこは移民が流入し、
老人と負け犬と身を持ち崩した者たちが暮らす
猥雑な地区――夢果つる街なのです。
クロード・ラポワント警部補は
ザ・メインを担当して30年あまりの53歳。
街の「法律」であり、巡回を欠かすことはありません。
週2回、仕事帰りにマルタン神父、モイシェ・ラパポート、
デイヴィッド・モゴレフスキーの3人の街の住人と議論を交わしながら、
カード・ゲーム「ピノクル」に興ずる彼は、
若い頃に妻を亡くし、心臓には動脈瘤の爆弾を抱えています。
家ではエミール・ゾラ全集を熟読するという一面も。
ある日、路地で若い男性の刺殺死体が発見されるのですが、
物語は捜査過程で関わり合う街の人々を
抑えた筆致で描写していきます。
また、助手の新人刑事・ガットマンや、
ひょんなことから同居が始まった
若い娘・マリー‐ルイズとのやりとりも物語に花を添えます。
本作品は謎解きは主たる要素ではなく、
ジャンルとしては、警察小説、
あるいはハードボイルドと呼べるものでしょう。
ラポワント警部補の行動を通して、
人間が誰でも持つ哀愁感や寂寥感を
叙情性豊かに描ききることに成功した、秀作だと思います。
1976年に発表された本作品は、
我が国では1988年に刊行、
同年に始まった「このミステリーがすごい!」で
海外部門第1位に輝いています。
その後、在庫が途切れることもあったようですが、
2009年の角川文庫60周年企画で
増刷されるようになった模様。
ランクインした当時からでも20年以上経っていますが、
全く古びた感じはなく、
むしろ、ザ・メインという街が現実感を増して迫ってくるのは、
見事と言わねばならないでしょう。
2017年11月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
カナダが舞台とは知らずに読みはじめました。ニューヨークを小さくしたような、ザ・メインという移民の街が舞台。
苦いくせにセンチメンタル。ブラックコーヒーに砂糖だけ入れるという主人公の刑事のコーヒーの好みとおんなじ。
主人公とフーテン娘(年がばれるボキャブラリーだけど)との関係もいいです。
個人的には、後半の「クオ・グァディス・パードレ」というセリフに泣かされてしまった。
苦いくせにセンチメンタル。ブラックコーヒーに砂糖だけ入れるという主人公の刑事のコーヒーの好みとおんなじ。
主人公とフーテン娘(年がばれるボキャブラリーだけど)との関係もいいです。
個人的には、後半の「クオ・グァディス・パードレ」というセリフに泣かされてしまった。
2010年11月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
凍てつく冬空をひたすら歩いて家路を辿り、暖かい暖炉の前で食べる、凍える体に沁みるポトフのような物語。
派手なアクションや展開はない。淡々と物語は進んでいく・・著者の言葉遊びを伴いながら。
私は読後、著者の「シブミ」を早速購入してしまった。
なんか酔っているのでかなり断片的な書評で申し訳ありません。
派手なアクションや展開はない。淡々と物語は進んでいく・・著者の言葉遊びを伴いながら。
私は読後、著者の「シブミ」を早速購入してしまった。
なんか酔っているのでかなり断片的な書評で申し訳ありません。
2016年7月9日に日本でレビュー済み
「夢果つる街」は私のベスト1作品であるが、内容もさることながら、重く、深い文章が、ヒタヒタと胸に沁みるのである。例えば、以下の独白などは、その最たるものである。
「犯罪というものについて、罪悪というもについて、おれはずいぶん考えたことがある。強制収容所にいたときだ。おれは恐ろしい犯罪をいくつも目撃した。あれを見てしまったら、バーの外でぶん殴られている奴がいようが、だれかが殺されようが、気にもならない。心とか想像力にも、てのひらとおんなじように、たこができるものなんだ。奴らはおれたちにひどい仕打ちをした。獣みたいな奴らに殴られたり拷問されたりしたって意味じゃない。違うんだ。殴られているうちにこっちが獣になってしまったという意味だ。最後には本当に殴られるに値する動物になりさがってしまうんだよ」
「犯罪というものについて、罪悪というもについて、おれはずいぶん考えたことがある。強制収容所にいたときだ。おれは恐ろしい犯罪をいくつも目撃した。あれを見てしまったら、バーの外でぶん殴られている奴がいようが、だれかが殺されようが、気にもならない。心とか想像力にも、てのひらとおんなじように、たこができるものなんだ。奴らはおれたちにひどい仕打ちをした。獣みたいな奴らに殴られたり拷問されたりしたって意味じゃない。違うんだ。殴られているうちにこっちが獣になってしまったという意味だ。最後には本当に殴られるに値する動物になりさがってしまうんだよ」
2014年1月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
冗漫・散漫・起承転結もなく…
他のレビュアーの方も書いておられますが、
この小説はミステリーではありません。
なんせ、主人公は謎解きに熱心でもなく、だらだらとつづく
まるでジュンブンガク(偏見入っています)のように、
主人公の「内面描写」とやらをくだくだと書き連ねているだけです。
妻を亡くした独り者,ザ・メインでは強面の警官・心臓の病
年若い春をひさぐ女性との淡い恋物語り・新米警官との交流…
これらが渾然となって本作品を構成していますが、それらの要素が
てんでバラバラの方向を向いていて、何を書いているのやら…
ハードボイルドでもありません。
外から乾いた眼差しで主人公を描くことや
主人公の心の襞を描写することも全くできていません。
まるで著者の自己満足に付き合ったような嫌な読後感
(そもそも「小説を読んだ」という感すらありませんが)が
残るだけです。
つい新刊本を取り寄せてみましたが、最初から最後まで
面白くない本書を読んだのは失敗でした。
ミステリーの体裁をなしていない・ハードボイルドとしても
3流4流。
星は一つしかあげられません。
他のレビュアーの方も書いておられますが、
この小説はミステリーではありません。
なんせ、主人公は謎解きに熱心でもなく、だらだらとつづく
まるでジュンブンガク(偏見入っています)のように、
主人公の「内面描写」とやらをくだくだと書き連ねているだけです。
妻を亡くした独り者,ザ・メインでは強面の警官・心臓の病
年若い春をひさぐ女性との淡い恋物語り・新米警官との交流…
これらが渾然となって本作品を構成していますが、それらの要素が
てんでバラバラの方向を向いていて、何を書いているのやら…
ハードボイルドでもありません。
外から乾いた眼差しで主人公を描くことや
主人公の心の襞を描写することも全くできていません。
まるで著者の自己満足に付き合ったような嫌な読後感
(そもそも「小説を読んだ」という感すらありませんが)が
残るだけです。
つい新刊本を取り寄せてみましたが、最初から最後まで
面白くない本書を読んだのは失敗でした。
ミステリーの体裁をなしていない・ハードボイルドとしても
3流4流。
星は一つしかあげられません。
2012年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あれを「シブミ」と名付けたなら、この一編は、「寂び」か、「あはれ」と呼んでみたい気がする。悲しみに砕かれ、諦めにもがく人々の姿が、淡々と語られるのに、それが如何にも赤裸々で、皮膚の裏まで浸み込むような、寒々とした寂寥感と、喪失の思いを押し付けて来る。時として、美しい情景や、ささやかな温かみに、ふと心を動かされる姿は、あはれでもあるが、余計に、哀れを催させる。場面は、どこまでも灰色で、緩慢な死のようにゆっくりなのに、その底でわだかまる、何かをまた失うのではないかという緊張感が、次の頁を貪らせる。
事件の始末は、安直とも思うが、この、ゾラのような話には、こうあるべきなのだろうと感じる。
エピローグでは、明るい暗闇とも謂えそうな虚しさに、思わず落涙。
事件の始末は、安直とも思うが、この、ゾラのような話には、こうあるべきなのだろうと感じる。
エピローグでは、明るい暗闇とも謂えそうな虚しさに、思わず落涙。
2005年8月17日に日本でレビュー済み
読者を引き込む力のある、よくできた小説です。ジャンル分けすると警察捜査小説に当たりますが、この作品では良くも悪くも事件はほとんど重要ではなく、全体の底流にある静かな悲哀がこの小説の形を作っています。
この小説の舞台となるザ・メインは確かに“夢果つる街”ではあるのですが、それは「赤い収穫」のポイズンヴィルのような街では決してなく、汚いながらも人々の喜びと哀しみが溢れる愛すべき街、愛すべきながらも夢は果て、やがては崩れゆく街として描かれています。この小説を取り巻いているのはあくまで諦めのこもった静かな悲哀なのです。
また、この小説で重要であり見事でもあるのは登場人物の造形です。主人公のラポワント警部補はザ・メインを独自のやり方で治め、街の法の象徴ですらある警官であるものの、過去の喪失と悲しみを乗り越える勇気を出せなかった人物。それと対比させるように描かれているのが、大学卒の新人刑事でラポワントの考えや行動に共感できないガットマンです。
この新しい世代と古い世代を対比させる関係は、物語では珍しくもなんともないのですが、読んでみるとこれがただの世代の違いだけによるものでないことがわかるでしょう。この登場人物たちのドラマにもやはり象徴的な諦観と悲哀、そしてある種の希望が存在します。
読んでいる途中は面白くて気づきませんでしたが、これはミステリとして読んだらお粗末な出来です。真相につながる伏線はほとんどないし、それどころか事件に存在感と魅力すらありません。しかしもちろん、それでいいのです。この小説の魅力は先に述べた雰囲気であり、それを生み出す美しい文章や随所に織り込まれた本筋でない魅力的なサブ・ストーリーなどで、求められるものは見事に満たしていました。ラストの事件解決後の感慨をもらすラポワントとザ・メインの姿が心に残ります。
この小説の舞台となるザ・メインは確かに“夢果つる街”ではあるのですが、それは「赤い収穫」のポイズンヴィルのような街では決してなく、汚いながらも人々の喜びと哀しみが溢れる愛すべき街、愛すべきながらも夢は果て、やがては崩れゆく街として描かれています。この小説を取り巻いているのはあくまで諦めのこもった静かな悲哀なのです。
また、この小説で重要であり見事でもあるのは登場人物の造形です。主人公のラポワント警部補はザ・メインを独自のやり方で治め、街の法の象徴ですらある警官であるものの、過去の喪失と悲しみを乗り越える勇気を出せなかった人物。それと対比させるように描かれているのが、大学卒の新人刑事でラポワントの考えや行動に共感できないガットマンです。
この新しい世代と古い世代を対比させる関係は、物語では珍しくもなんともないのですが、読んでみるとこれがただの世代の違いだけによるものでないことがわかるでしょう。この登場人物たちのドラマにもやはり象徴的な諦観と悲哀、そしてある種の希望が存在します。
読んでいる途中は面白くて気づきませんでしたが、これはミステリとして読んだらお粗末な出来です。真相につながる伏線はほとんどないし、それどころか事件に存在感と魅力すらありません。しかしもちろん、それでいいのです。この小説の魅力は先に述べた雰囲気であり、それを生み出す美しい文章や随所に織り込まれた本筋でない魅力的なサブ・ストーリーなどで、求められるものは見事に満たしていました。ラストの事件解決後の感慨をもらすラポワントとザ・メインの姿が心に残ります。