アメリカのミステリー作家デニス・ルヘインの〈私立探偵パトリック&アンジー〉シリーズ第1作、“A Drink Before the War”(1994)の邦訳書。
私立探偵パトリックとアンジーが、上院議員からの依頼で黒人女性の捜索をするうちに、深刻な人種問題に巻き込まれていく、という筋立て。
ハードボイルド・ミステリによくあるように、本作も社会派要素が色濃く、作中では人種差別、DV、幼児虐待、性犯罪などが取り上げられています。
とくに人種差別の複雑さは作者がなにより描きたかったテーマでしょう。本作の舞台は作家の出身地であるボストン・ドーチェスター。そこでは、90年代においても依然として低所得者層の白人と黒人が分離し対立して暮らしています。
そこで克明に活写されるのは、地位、所得、犯罪にまつわる社会的な不満がすべて “人種差別” に原因がある、と問題が単純化されてしまう恐ろしさ。問題の複雑さが “人種” に還元されてしまうと、“差別者” も “被差別者” も妥協点を見いだせず、衝突するしかありません。その結果は両者の争いは激化してしまう、という悪循環。これはまさにアメリカの “リアル” でしょう。
ただ脇役がたっているのはいいのですが、主人公コンビがまわりの助っ人に頼りすぎで、主人公たちの捜査能力が優れてるというよりも助っ人がすごいという印象を抱きました。そこらへんはもう少し工夫が欲しかったです。
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スコッチに涙を託して (角川文庫 レ 6-1) 文庫 – 1999/5/21
上院議員のもとから失踪した黒人掃除婦。彼女は議員の秘められたスキャンダルを撮影した写真を持ち去っていた。写真の奪回を依頼された探偵パトリックとアンジーは、写真を巡る陰謀に巻き込まれていく。
- 本の長さ362ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日1999/5/21
- ISBN-104042791018
- ISBN-13978-4042791010
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商品の説明
商品説明
私立探偵パトリック&アンジーシリーズ第1弾。ボストンに探偵事務所を構えるパトリック・ケンジーとアンジェラ・ジェナーロは幼なじみだ。アンジェラには夫がいて、2人は恋人同士というわけではないが、パトリックはアンジェラに好意を持っている、という微妙な設定で物語はスタートする。
依頼人は上院議員。重要書類を盗んで姿を消した掃除婦ジェンナを探し出してほしいという。ほどなく居場所をつきとめると、彼女は正義のためにその書類をパトリックに託したいという。しかし、書類を手に入れる直前、パトリックの目の前で、ジェンナは射殺されてしまった。上院議員が回収を焦るその重要書類はいったい何だったのか。
やがて、巨大な黒人ギャング集団のボスたちが重要書類を求めてパトリックに接触してくる。殺されたジェンナの夫マリオン・ソシアと、マリオンを激しく憎む息子のローランドだ。2人は別々の集団を組織し、小さな街で互いに争っている。やりきれないような暴力と貧困の街で死んでいったジェンナの遺志を継ぎ、パトリックは真相究明に乗り出した。
政界とギャング界の癒着をえぐる社会派ハードボイルドのスタイルをとり、事件の裏面に黒人差別と幼児虐待の問題を描く硬質な展開。さらに2人の探偵が抱える心の傷が物語の底にひそみ、厚みを与えている。貧困による絶望と憎しみが交差する街で、パトリックの銃が怒りの火をふく。(木村朗子)
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (1999/5/21)
- 発売日 : 1999/5/21
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 362ページ
- ISBN-10 : 4042791018
- ISBN-13 : 978-4042791010
- Amazon 売れ筋ランキング: - 390,319位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年3月5日に日本でレビュー済み
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2018年1月28日に日本でレビュー済み
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想像していたよりはるかに良い状態でした。カバーにうっすらと焼けがある以外、折れ、傷、書き込み等、全くなく、とてもきれいな状態で嬉しかったです。
作品自体に関しては、翻訳が英文直訳的で少し読みにくいと感じました。とても良く出来た作品だと言うのは伝わってくるのですが・・・。
英文のまま読めるスキルがあればと…思いました。きっと数倍面白く読めるでしょう。
作品自体に関しては、翻訳が英文直訳的で少し読みにくいと感じました。とても良く出来た作品だと言うのは伝わってくるのですが・・・。
英文のまま読めるスキルがあればと…思いました。きっと数倍面白く読めるでしょう。
2013年5月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
かなり前に書かれた小説なので、いま読むとところどころ古いと思う記述がありますが、
(例えば入院中の友人に贈るプレゼントが任天堂のゲームボーイだったり・・・)
デビュー作としては賞を受賞してるだけあって、おもしろいです。
主人公のウイットに富んだ軽妙な会話や登場人物も魅力的で、このシリーズを全部
読みたい気分にさせてくれます。
ただし、描写などは暴力的な場面や多少グロテスクと感じる部分もありますので、
苦手な方は止めた方がいいかなと思います。
第2作目がシリーズ中、一番の傑作という評判なので、続きが楽しみです。
(例えば入院中の友人に贈るプレゼントが任天堂のゲームボーイだったり・・・)
デビュー作としては賞を受賞してるだけあって、おもしろいです。
主人公のウイットに富んだ軽妙な会話や登場人物も魅力的で、このシリーズを全部
読みたい気分にさせてくれます。
ただし、描写などは暴力的な場面や多少グロテスクと感じる部分もありますので、
苦手な方は止めた方がいいかなと思います。
第2作目がシリーズ中、一番の傑作という評判なので、続きが楽しみです。
2005年8月1日に日本でレビュー済み
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ボストンを舞台に私立探偵のコンビ、パトリックとアンジーが活躍する探偵小説。ボストンというとロバート・B・パーカーの「スペンサー・シリーズ」を思い浮かべるが、パトリックはスペンサーほどヒーロー然とはしていない。ストーリー自体も目新しいものではなく、探偵小説の王道そのものの展開だが、死人続出の結構ハードな内容。人物設定とその背景がきっちり書き込まれているので平凡なストーリーながら厚みのある話しに仕上がっている。ただ比喩の多用がやや鼻につき、かえって効果減。しかし、シリーズ化して欲しい内容ではある。
2015年8月29日に日本でレビュー済み
主人公の私立探偵が上院議員から消えた書類と持っていそうな女の捜索を依頼され・・・というお話。
上記の粗筋だけ書くと、よくある私立探偵物に見えますし、実際そういう所もありますが、そこに色々工夫して小説としての奥行を深めている所に本書の読み処があるように思えました。例えば、失われた書類がどういう物だったのかとか、何故ストリートギャングの抗争が絡められているのかとか。
そして、主人公の探偵と相棒の女性登場人物が類型的ではありますが、互いに普通の存在として描かれている所もこの小説をシェイマス賞という権威ある賞に導いている要因ではないかと思いました。神がかった力や超人的能力を発揮したりしない、わたしやあなたみたいに普通の人間として探偵を描いている所がこの小説を普遍的なものにしているように思いました。
多少マンネリな所もないではないですが、これが処女作なら及第点を与えられる秀作。機会があったら是非。
上記の粗筋だけ書くと、よくある私立探偵物に見えますし、実際そういう所もありますが、そこに色々工夫して小説としての奥行を深めている所に本書の読み処があるように思えました。例えば、失われた書類がどういう物だったのかとか、何故ストリートギャングの抗争が絡められているのかとか。
そして、主人公の探偵と相棒の女性登場人物が類型的ではありますが、互いに普通の存在として描かれている所もこの小説をシェイマス賞という権威ある賞に導いている要因ではないかと思いました。神がかった力や超人的能力を発揮したりしない、わたしやあなたみたいに普通の人間として探偵を描いている所がこの小説を普遍的なものにしているように思いました。
多少マンネリな所もないではないですが、これが処女作なら及第点を与えられる秀作。機会があったら是非。
2010年9月12日に日本でレビュー済み
“ボストンの鬼才”デニス・レヘインの’94年のデビュー作で、5作続いた<探偵パトリック&アンジー>シリーズの第1作。フロリダ州のカレッジで創作を学んでいたレヘインは「遊びのつもりで」書いたと言っているが、指導教官の目に留まり出版の運びに。PWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)が主催するシェイマス賞の’95年度最優秀新人賞をみごと受賞した。
ボストンの中でも貧しいドーチェスター地区の教会の鐘楼の中に探偵事務所を開く、その地区で生まれ育った‘わたし’ことパトリック・ケンジーはある日ふたりの上院議員から、9日前に失踪した掃除婦と、同時になくなった「重要書類」を探すよう依頼される。
彼女の家に行くと、もぬけの殻のうえ室内は何者かによって無残に荒らされていた。これがこの物語の発端であり、‘わたし’と、幼なじみで今はDV夫に悩まされる相棒のアンジー・ジェナーロのコンビは、「重要書類」を巡って、ギャングの抗争に巻き込まれてゆく。
デビュー作ということで、ボストンの街の描写や説明、登場人物たちのキャラクターや背景が‘わたし’の冗長な比喩と皮肉と共に詳細に語られてゆく。
しかもジャンルがハードボイルド私立探偵ものならではの激しい銃による殺し合いや積み重なる死体の数もハンパでない。
また扱うテーマも、人種差別、貧富の差、政治、家庭内暴力や虐待、小児性愛、ギャングと、現代アメリカが抱える社会問題を網羅しており幅広い。
しかし何といっても本書の魅力は、ふたりの探偵といっていいだろう。貧民街に身を置き、軽口を叩きながらも心と体に傷を負いボロボロのふたりが降りかかる事件にどう対処し、どういう行動をとるのか、知らない間にページがどんどん進んでゆく。
このシリーズは5作続くのだが、今後もこのふたりから目が離せない。
ボストンの中でも貧しいドーチェスター地区の教会の鐘楼の中に探偵事務所を開く、その地区で生まれ育った‘わたし’ことパトリック・ケンジーはある日ふたりの上院議員から、9日前に失踪した掃除婦と、同時になくなった「重要書類」を探すよう依頼される。
彼女の家に行くと、もぬけの殻のうえ室内は何者かによって無残に荒らされていた。これがこの物語の発端であり、‘わたし’と、幼なじみで今はDV夫に悩まされる相棒のアンジー・ジェナーロのコンビは、「重要書類」を巡って、ギャングの抗争に巻き込まれてゆく。
デビュー作ということで、ボストンの街の描写や説明、登場人物たちのキャラクターや背景が‘わたし’の冗長な比喩と皮肉と共に詳細に語られてゆく。
しかもジャンルがハードボイルド私立探偵ものならではの激しい銃による殺し合いや積み重なる死体の数もハンパでない。
また扱うテーマも、人種差別、貧富の差、政治、家庭内暴力や虐待、小児性愛、ギャングと、現代アメリカが抱える社会問題を網羅しており幅広い。
しかし何といっても本書の魅力は、ふたりの探偵といっていいだろう。貧民街に身を置き、軽口を叩きながらも心と体に傷を負いボロボロのふたりが降りかかる事件にどう対処し、どういう行動をとるのか、知らない間にページがどんどん進んでゆく。
このシリーズは5作続くのだが、今後もこのふたりから目が離せない。
2003年9月4日に日本でレビュー済み
カーマニアの男性主人公、美人だけど腕っ節の強い相棒の女性
陰で支える無鉄砲で単純な協力者、主人公の恋路を邪魔する障害物
そして必ず持ってる銃器携帯許可(笑)
というアメリカの探偵小説ハードボイルドのパターンを
全部備えているので、期待にそむくことはないでしょう。
主人公が冗長な比喩で皮肉を連発するのもお決まり。
日常生活でそんな長ったらしい比喩で状況を説明するのは非現実的なのに。
人種・政治・虐待・ギャングとテーマ満載です。
映像化するならメル・ギブソン&サンドラ・ブロックあたりでしょうか。
レへインは初めて読みましたが、もう1作読んで見たいと思わせる一冊でした。
陰で支える無鉄砲で単純な協力者、主人公の恋路を邪魔する障害物
そして必ず持ってる銃器携帯許可(笑)
というアメリカの探偵小説ハードボイルドのパターンを
全部備えているので、期待にそむくことはないでしょう。
主人公が冗長な比喩で皮肉を連発するのもお決まり。
日常生活でそんな長ったらしい比喩で状況を説明するのは非現実的なのに。
人種・政治・虐待・ギャングとテーマ満載です。
映像化するならメル・ギブソン&サンドラ・ブロックあたりでしょうか。
レへインは初めて読みましたが、もう1作読んで見たいと思わせる一冊でした。