ひとまず一点、註釈の間違いに気がついたので指摘しておきます。
「コロンビアからの手紙」に、
「億万長者〔ミジョナリオス〕(アルゼンチンのサッカー・チームRiver Plateの異名、壮麗なスタジアムを一等地に持つことから付けられた愛称)」
という註釈がありますが、これはRiver Plateではなく(確かにリベル・プレートにもミジョナリオスという愛称はありますが)素直にボゴタを本拠地とするコロンビアのクラブ、「ミジョナリオスFC」でよいです。
で、1952年7月6日にボゴタでミジョナリオスとレアル・マドリーの試合が行われており、2-1でホームのミジョナリオスが勝利していますが(ということをインターネットで手軽に検索できてしまうのが現代のすごさです…翻訳が出た当時とは環境が違います)、この試合で1ゴールを決めたのが、当時26歳、ミジョナリオス所属のアルフレッド・ディ・ステファノ選手でした。
サッカー好きの方ならご存知の選手でしょうし、検索すればあれこれの情報が出てくるから詳細は割愛しますが、地元のリベル・プレートからキャリアをスタートさせ、発足したばかりのリーガ・コロンビアーナのミジョナリオスに移籍し、この試合の翌年、1953年からレアル・マドリーに移籍して、数々の偉業を達成していくことになります。
ディ・ステファノ選手は1926年、ブエノスアイレスの出身で、1928年生まれのチェ・ゲバラとは同時代・同郷の人物ということになり、エルネスト青年もおそらくはコロンビアで活躍中の同郷のスター選手を見たくて、この日の試合を観に行ったのでしょう。
そして、ディ・ステファノ選手のゴールに、勝利に、興奮し、感動していたのではないでしょうか。
ともあれ、狭くものごとを眺めてしまうと接点のなさそうなふたりの偉人の人生が、こんなところで交わっていたのか、ということに「おお…」という感動もありますし、
チェ・ゲバラが生きた世界、生きた時代が、我々の世界と地続きのものであることを(時代や選手は変われどサッカーはサッカー、レアル・マドリーはレアル・マドリー、リベル・プレートはリベル・プレート、ミジョナリオスはミジョナリオスです…)改めて感じる、ささやかな記述と思います。
チェ・ゲバラ自身もなによりもまず生きて死んだひとりの人間であり、わくわくどきどきと目を輝かせ、一喜一憂しながらサッカーを観戦する姿は、我々と変わるところはないでしょう。
追記:アルベルト・グラナードの『Con el Che por Sudamérica』にはより具体的な記述があり、ふたりは8日にディ・ステファノと会い、マテ茶と翌日の試合のチケットをもらってもう一試合観に行ったとのことです。
同書はアルベルト版の『モーターサイクル・ダイアリーズ』といったようなもので、私も読み始めたばかりですが、チェ・ゲバラより率直な文章で書かれ、チェ・ゲバラが書いていないようなことも書いていたりします。
ふたりいてこその『モーターサイクル・ダイアリーズ』と思いますし、併せて読むとふたりの旅をより生き生きと、具体的に感じられそうです。
日記をつけるエルネストの姿の記述もあり、妙にほっこりしました。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
モーターサイクル・ダイアリーズ (角川文庫) 文庫 – 2004/9/23
この旅が、青年ゲバラの未来を変えた--
23歳のゲバラは、親友と共に中古のバイクに乗って南米大陸縦断の旅に出た。それは金も、泊まるあてもなく、好奇心のままに1000キロを走破する無鉄砲な計画だった。
23歳のゲバラは、親友と共に中古のバイクに乗って南米大陸縦断の旅に出た。それは金も、泊まるあてもなく、好奇心のままに1000キロを走破する無鉄砲な計画だった。
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2004/9/23
- ISBN-104043170025
- ISBN-13978-4043170029
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
●エルネスト・チェ・ゲバラ:キューバ革命の最重要人物として世界中から愛されるイコンとなった革命家。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2004/9/23)
- 発売日 : 2004/9/23
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 248ページ
- ISBN-10 : 4043170025
- ISBN-13 : 978-4043170029
- Amazon 売れ筋ランキング: - 84,868位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 28位スペイン・ポルトガル文学研究
- - 2,149位角川文庫
- - 2,867位旅行ガイド
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中4つ
5つのうち4つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
48グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年8月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
チェ・ゲバラが若いときに南米とオートバイとヒッチハイクで
旅行した日記のような旅行記。まだ医学生で、ハンセン病の専門家などを訪ねています。
翻訳の文章がこなれていなくて、ところどころわかりにくい個所や文体が異なる個所、誤訳ではないかと疑われるところもあったりと、この活き活きとした青春記を大いにスポイルしているのが残念です。
それでも、彼の人間味と冒険心の旺盛さがよくわかります。ゲバラの原点が理解できたような気がしました。
旅行した日記のような旅行記。まだ医学生で、ハンセン病の専門家などを訪ねています。
翻訳の文章がこなれていなくて、ところどころわかりにくい個所や文体が異なる個所、誤訳ではないかと疑われるところもあったりと、この活き活きとした青春記を大いにスポイルしているのが残念です。
それでも、彼の人間味と冒険心の旺盛さがよくわかります。ゲバラの原点が理解できたような気がしました。
2021年10月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
キューバ革命の立役者、ゲバラの若き日の旅の記録(若気の至りを含むw)です。映画化されたものを見て感動し、原作を手にしたのですが…詩のような文章がきつくて入り込めず、途中で断念しました。人に見せることを前提としない「日記」をもとにしているからかもしれませんがやや難解でした。本がきつかったら映画の方をお勧めします。
思想・信条の違いを超えて、死後も多くの人から愛されているチェ・ゲバラ。本書とは関係ないですが、願わくば彼が外交で世界の国々を巡った時の様子、特に広島を訪れた時の彼の記録や思いが読めたら…と思います。
思想・信条の違いを超えて、死後も多くの人から愛されているチェ・ゲバラ。本書とは関係ないですが、願わくば彼が外交で世界の国々を巡った時の様子、特に広島を訪れた時の彼の記録や思いが読めたら…と思います。
2015年8月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1951年から52年にかけて、アルゼンチンの医学生だったエルネスト・チェ・ゲバラが、医師である友人と、「行き当たりばったりという大まかな方針にしたがって」モーターサイクルとヒッチハイクで南米を旅した際の日記。いや、日々の「正確」な記録というよりも、23、24歳の好奇心旺盛な若者が、単調な毎日に背を向けて繰り出した冒険にわくわくしたり、うんざりしたり、ドジを踏んだり、大笑いしたりした冒険譚。しかし、ゲバラの目に映った世界がこんなにも楽しく、滑稽で、刺激的だったことを、彼自身によるこの文体のほうが、より「正確」に伝えてくれる。
始終おなかをすかせ、下痢をし、蚊に悩む。たった1台のモーターサイクルは酷使に耐えきれずしょっちゅう故障し、最後は使えなくなる。ヒッチハイクが成功したり、金をふんだくられたり。ひもじさに湖の鴨に石を投げて仕留めるという偉業まで(どっちが取りに行くかでもめるが、ゲバラが泳いで取りに行くはめに)!捕った獲物をただ焼いて食べる、という、なんとも野趣あふれすぎの食事もあれば、医者であることを最大限利用してハクをつけて地域の新聞にまでのり、まんまと地方の名士宅に泊めてもらって歓待を受けることも。そうはうまくいかず、肉体労働をしてその報酬として食事と泊まる場所をようやく確保することもある。無銭飲食やら、パーティの手伝いをしながらちゃっかりワインを横取りしようとするも、敵もさるもの、魂胆がばれていて、隠したはずのワインがごっそりないことやら、断られた船にもこっそり潜り込み船長が慌てながらも苦笑する事態、などなど、一応法律家としては「いけません」というべきことではあるが、若くいきいきした勢いにただただ楽しい(読む分には。こんな旅、過酷すぎて、か弱いおばさんとしては、まさかしたくない)。
はちゃめちゃで饒舌すぎるほど饒舌に冗談を書き連ねている一方、各地のハンセン病患者の置かれた劣悪な状況、貧困やインディオに対する差別の問題についてはふざけたトーンを抑え、見聞きしたことをストイックに書き留める(怒りがほとばしっているところもある)。しかし、若かりしゲバラがこの旅で感じたことがマグマのように彼の根底に残り、後の革命をリードする原動力になったことも感じ取れる。
無鉄砲で、愛すべき若者の青春。この若者が後にしたことを知っていても知らなくても、大いに楽しめる。
始終おなかをすかせ、下痢をし、蚊に悩む。たった1台のモーターサイクルは酷使に耐えきれずしょっちゅう故障し、最後は使えなくなる。ヒッチハイクが成功したり、金をふんだくられたり。ひもじさに湖の鴨に石を投げて仕留めるという偉業まで(どっちが取りに行くかでもめるが、ゲバラが泳いで取りに行くはめに)!捕った獲物をただ焼いて食べる、という、なんとも野趣あふれすぎの食事もあれば、医者であることを最大限利用してハクをつけて地域の新聞にまでのり、まんまと地方の名士宅に泊めてもらって歓待を受けることも。そうはうまくいかず、肉体労働をしてその報酬として食事と泊まる場所をようやく確保することもある。無銭飲食やら、パーティの手伝いをしながらちゃっかりワインを横取りしようとするも、敵もさるもの、魂胆がばれていて、隠したはずのワインがごっそりないことやら、断られた船にもこっそり潜り込み船長が慌てながらも苦笑する事態、などなど、一応法律家としては「いけません」というべきことではあるが、若くいきいきした勢いにただただ楽しい(読む分には。こんな旅、過酷すぎて、か弱いおばさんとしては、まさかしたくない)。
はちゃめちゃで饒舌すぎるほど饒舌に冗談を書き連ねている一方、各地のハンセン病患者の置かれた劣悪な状況、貧困やインディオに対する差別の問題についてはふざけたトーンを抑え、見聞きしたことをストイックに書き留める(怒りがほとばしっているところもある)。しかし、若かりしゲバラがこの旅で感じたことがマグマのように彼の根底に残り、後の革命をリードする原動力になったことも感じ取れる。
無鉄砲で、愛すべき若者の青春。この若者が後にしたことを知っていても知らなくても、大いに楽しめる。
2008年11月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
政治信条は抜きにして、面白いです。
自分が何をすべきか分からないからこそ持つ焦り、漠然とした使命感と、不安定な自信。過酷な南米バイク旅行を通して、青年ゲバラが何を考え、変わっていくのか…
ゲバラの青年期とは時代も状況も大きく変わった現代でも、この本はまったく古びれていない。むしろ、「家」「伝統」にしかれたレールが存在しなくなり、「すべてを自分で決めろ」というプレッシャーにさらされている現代の若者にこそ、響く本だと思います。
ただなぁ、翻訳のまずさが大きく興をそぐ。日記を元にしてるといっても、あまりに読みにくいし、主述のねじれなど、根本的なミスもちらほら。イライラせずに読み進める根気強さが必要となりそうです。
自分が何をすべきか分からないからこそ持つ焦り、漠然とした使命感と、不安定な自信。過酷な南米バイク旅行を通して、青年ゲバラが何を考え、変わっていくのか…
ゲバラの青年期とは時代も状況も大きく変わった現代でも、この本はまったく古びれていない。むしろ、「家」「伝統」にしかれたレールが存在しなくなり、「すべてを自分で決めろ」というプレッシャーにさらされている現代の若者にこそ、響く本だと思います。
ただなぁ、翻訳のまずさが大きく興をそぐ。日記を元にしてるといっても、あまりに読みにくいし、主述のねじれなど、根本的なミスもちらほら。イライラせずに読み進める根気強さが必要となりそうです。
2020年7月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
他の方も書かれていますが、翻訳がわざとらしい文章ばかりで、下手な直訳なんでしょうが、読む気が失せてしまいました。
あと、ゲバラ自身も青春期とはいえ、いった先々で少々身勝手な行動があります。これが革命家かよって思えました。
あと、ゲバラ自身も青春期とはいえ、いった先々で少々身勝手な行動があります。これが革命家かよって思えました。
2016年9月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
安価な値段で別に汚なくもなく、対応も早く大変満足しています。