以下の7編からなる短編集である。
「失踪者たちの王国」「盗作」「キリコさんの失敗」「エーデルワイス」「涙腺水晶結石症」「時計工場」「蘇生」
どれも主人公は同一人物のようである。小川洋子さん自身が主人公なのではないか、と思うほど、著者自身との共通点が多い。女性、作家、飼い犬の名前がアポロ、息子がいる、旧姓のイニシャルがYH、などなど。
また、物語の中に、著者の他の作品と関連するエピソードが出てくる。短編集『まぶた』の中の「バックストローク」(本書では、主人公のデビュー作となっている)は、タイトルもそのままに出てくる。また「蘇生」に出てくる登場人物は『貴婦人Aの蘇生』のアナスタシアだ。ともに本書の発表年の方が早いのだから、本書が元になってこれらの作品が生まれたということか。
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偶然の祝福 (角川文庫) 文庫 – 2004/1/23
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息をつめてずっと願えば、きっと小さな奇跡がやってくる。珠玉小説。
見覚えのない弟にとりつかれてしまう女性作家、夫への不信がぬぐえない妻と幼子、失踪者についつい引き込まれていく私……心に小さな空洞を抱える私たちの、愛と再生の物語。
見覚えのない弟にとりつかれてしまう女性作家、夫への不信がぬぐえない妻と幼子、失踪者についつい引き込まれていく私……心に小さな空洞を抱える私たちの、愛と再生の物語。
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2004/1/23
- 寸法10.5 x 0.9 x 14.9 cm
- ISBN-104043410050
- ISBN-13978-4043410057
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA; 一般文庫版 (2004/1/23)
- 発売日 : 2004/1/23
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 208ページ
- ISBN-10 : 4043410050
- ISBN-13 : 978-4043410057
- 寸法 : 10.5 x 0.9 x 14.9 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 180,808位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1962(昭和37)年、岡山県生れ。早稲田大学第一文学部卒。
1988年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。1991(平成3)年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。主な著書に『やさしい訴え』『ホテル・アイリス』『沈黙博物館』『アンネ・フランクの記憶』『薬指の標本』『夜明けの縁をさ迷う人々』『猫を抱いて象と泳ぐ』等。2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞を受賞。『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、2006年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞受賞。翻訳された作品も多く、海外での評価も高い。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2024年4月7日に日本でレビュー済み
小川さんの作品に一か月ぶりにお目にかかります。
本作は2000年に発表された作品ですから、割と古い部類のものかもしれません。かれこれ四半世紀か。
・・・
本作は連作というのでしょうか。同じ主人公によるシーンの違う短編で構成されている作品となっています。
作家が主人公、ペットとしてラブラドールを飼っている、息子さんがいる、という背景から、なんだか小川氏本人を模したのかなあなどと勝手に想像してしまいます。作家の母親がキリスト教に没頭している設定も、小川さんが宗教の家で育った(from wikipedia)影響があるのかなあ、とか。
・・・
それでですね、読了した段階ではなんというか結構「普通」でした。
小川さんの作風は、一種異様な場景を現出させ、それでいて淡々と美しく世界を彩る、それこそ「ギャップ萌え」的なところが印象的であると思います。
たとえば「ブラフマンの埋葬」では、正体不明の小動物を愛でる主人公とその小動物ブラフマンの死が淡々と語られました(ブラフマンが何モノか分からないモヤモヤはそのまま)。
「猫を抱いて象と泳ぐ」では、姿を隠してしかプレイできないチェス名人「リトル・アリョーヒン」の短く悲しくでも明るい人生が描写されました。
私の読んだ上記の作品群と比較すると、作家という対象は割と普通なのかもしれません。いやもちろん普通じゃないんですけど、正体不明の小動物と比べたら、ねえ。
・・・
で、ここからフォローに入ります。
それでも作品には小川さんらしさとでもいおうものが全体を覆っていると感じました。奇しくもあとがきで川上弘美さんが指摘している通り、「小川洋子的世界」が現出していたと思います。
改まって、じゃあこの「小川洋子的世界」、小川さんらしさって何かを再考すると、人に対して優しい?性善説的に見る?みたいな、そんな安心感があるかなあ、と感じた次第で。
ラブラドールのアポロは当然犬だから喋れないけど、小川さんの手にかかると、やはり作家である主人公「わたし」と強い信頼関係があるように見えます。まるで小川さんと会話するかのように犬が物語を動かします。
「エーデルワイス」での主人公の作家のファン、自称「弟」さんも、今ならばストーカーとしてしょっ引かれかねない変態おじさんでしょうが、小川流に描写すると、結構変わっているのですが根は悪くないみたいな、ちょっと憎めない感じになります。
なんて言いながらぱらぱら本をめくっていると、なんだ、そこそこ面白かったし楽しんでいたじゃないか、という気にもなってきました笑 お手伝いさんキリコさんの話「キリコさんの失敗」もほっこりしていてよかったしね。
・・・
ということで小川氏の初期の作品でした。
ちょっぴり不思議な、優しい「小川洋子的世界」を味わいたい方は是非。
本作は2000年に発表された作品ですから、割と古い部類のものかもしれません。かれこれ四半世紀か。
・・・
本作は連作というのでしょうか。同じ主人公によるシーンの違う短編で構成されている作品となっています。
作家が主人公、ペットとしてラブラドールを飼っている、息子さんがいる、という背景から、なんだか小川氏本人を模したのかなあなどと勝手に想像してしまいます。作家の母親がキリスト教に没頭している設定も、小川さんが宗教の家で育った(from wikipedia)影響があるのかなあ、とか。
・・・
それでですね、読了した段階ではなんというか結構「普通」でした。
小川さんの作風は、一種異様な場景を現出させ、それでいて淡々と美しく世界を彩る、それこそ「ギャップ萌え」的なところが印象的であると思います。
たとえば「ブラフマンの埋葬」では、正体不明の小動物を愛でる主人公とその小動物ブラフマンの死が淡々と語られました(ブラフマンが何モノか分からないモヤモヤはそのまま)。
「猫を抱いて象と泳ぐ」では、姿を隠してしかプレイできないチェス名人「リトル・アリョーヒン」の短く悲しくでも明るい人生が描写されました。
私の読んだ上記の作品群と比較すると、作家という対象は割と普通なのかもしれません。いやもちろん普通じゃないんですけど、正体不明の小動物と比べたら、ねえ。
・・・
で、ここからフォローに入ります。
それでも作品には小川さんらしさとでもいおうものが全体を覆っていると感じました。奇しくもあとがきで川上弘美さんが指摘している通り、「小川洋子的世界」が現出していたと思います。
改まって、じゃあこの「小川洋子的世界」、小川さんらしさって何かを再考すると、人に対して優しい?性善説的に見る?みたいな、そんな安心感があるかなあ、と感じた次第で。
ラブラドールのアポロは当然犬だから喋れないけど、小川さんの手にかかると、やはり作家である主人公「わたし」と強い信頼関係があるように見えます。まるで小川さんと会話するかのように犬が物語を動かします。
「エーデルワイス」での主人公の作家のファン、自称「弟」さんも、今ならばストーカーとしてしょっ引かれかねない変態おじさんでしょうが、小川流に描写すると、結構変わっているのですが根は悪くないみたいな、ちょっと憎めない感じになります。
なんて言いながらぱらぱら本をめくっていると、なんだ、そこそこ面白かったし楽しんでいたじゃないか、という気にもなってきました笑 お手伝いさんキリコさんの話「キリコさんの失敗」もほっこりしていてよかったしね。
・・・
ということで小川氏の初期の作品でした。
ちょっぴり不思議な、優しい「小川洋子的世界」を味わいたい方は是非。
2016年11月13日に日本でレビュー済み
小川洋子の連作短編集である。女性作家が主人公なので、作家自身の物語かと思わせてしまうほど、なかなかリアルでしかも切なく淡々とした味わいのある短編集。
この女性作家は、知り合いが失踪したり、交通事故にあったり、不倫したり、シングルマザーになったり、果ては失語症にまでなってしまう。まあ、ありとあらゆるトラブルに巻き込まれているのだが、小川洋子の静謐な文章にかかると、なぜか何事もないありきたりの日常生活が淡々と続いているように思えてしまうのだ。不思議な作家だ。
普通の日常風景を描いているようで、実はそこから少しだけずれた異世界を垣間見せてくれるのが、最大の魅力。どちらかというと「博士の愛した数式」より、「ブラフマンの埋葬」に近い世界観なのである。
この女性作家は、知り合いが失踪したり、交通事故にあったり、不倫したり、シングルマザーになったり、果ては失語症にまでなってしまう。まあ、ありとあらゆるトラブルに巻き込まれているのだが、小川洋子の静謐な文章にかかると、なぜか何事もないありきたりの日常生活が淡々と続いているように思えてしまうのだ。不思議な作家だ。
普通の日常風景を描いているようで、実はそこから少しだけずれた異世界を垣間見せてくれるのが、最大の魅力。どちらかというと「博士の愛した数式」より、「ブラフマンの埋葬」に近い世界観なのである。
2021年3月25日に日本でレビュー済み
〇 この短編集の各篇の主人公は同一人物である。そのプロフィールは、作家で、犬を飼い、母は宗教狂い、父は外に女をこしらえ、弟は若くして死に、指揮者が秘密の恋人で、ひとり子供を産んでいる。
〇 この作品集は作家としての自画像ではないかと思う。自分は何者で、何をなぜ書いているか、についての呆気にとられるほど率直な告白ではないか。作者は自分の拠り所を確かめようとしているようだ。
〇 では、その自画像とはどんなものか? 各篇のモチーフを一行で書いてみた。
・「失踪者たちの王国」 私はこの世から消えて忘れられたものを感じながら小説を書いている。
・「盗作」 私自身のなかから分泌されるものではなく、わたしが外部世界からいちど取り込んで消化したものが結晶して小説となるのだ。
・「キリコさんの失敗」 数はすくなくとも喜んでくれる読み手がいてくれる小説を私は書きたい。
・「エーデルワイス」 私は自身のために自身のことを小説に書いているのだ。
・「涙腺水晶結石症」 (これはむずかしい)私はものを言わない動物だって立派な小説の題材にできる(かな?)
・「時計工場」 私の人生は小説を書くこと以外に考えられない。
・「蘇生」 小説は体の底から湧いてくる真実の言葉を使って書かなくてはならない。
〇 作者はきっと、いいえ、そんなことは考えてもおりません、とおっしゃるでしょうけれども。
〇 この作品集は作家としての自画像ではないかと思う。自分は何者で、何をなぜ書いているか、についての呆気にとられるほど率直な告白ではないか。作者は自分の拠り所を確かめようとしているようだ。
〇 では、その自画像とはどんなものか? 各篇のモチーフを一行で書いてみた。
・「失踪者たちの王国」 私はこの世から消えて忘れられたものを感じながら小説を書いている。
・「盗作」 私自身のなかから分泌されるものではなく、わたしが外部世界からいちど取り込んで消化したものが結晶して小説となるのだ。
・「キリコさんの失敗」 数はすくなくとも喜んでくれる読み手がいてくれる小説を私は書きたい。
・「エーデルワイス」 私は自身のために自身のことを小説に書いているのだ。
・「涙腺水晶結石症」 (これはむずかしい)私はものを言わない動物だって立派な小説の題材にできる(かな?)
・「時計工場」 私の人生は小説を書くこと以外に考えられない。
・「蘇生」 小説は体の底から湧いてくる真実の言葉を使って書かなくてはならない。
〇 作者はきっと、いいえ、そんなことは考えてもおりません、とおっしゃるでしょうけれども。
2017年10月15日に日本でレビュー済み
なぜ私は小川洋子の作品に心ひかれるのだろう?
その答えが「失踪者たちの王国」の最後に出てくる文、「不思議にも彼らは私を慰めてくれる。王国は遥か遠いはずなのに、彼らは洞穴に舞い降りてきて、いつまでも辛抱強く、そばに寄り添ってくれる。その吐息を私は頰のあたりに感じることができる。」ここにあるように思う。
「彼ら」とは?
亡くなってしまった大切な人や失われた存在が「彼ら」なのだ。作者は彼らを限りない愛しさを込めて描写している。その描写は、彼らとのつながりが決して暗闇に消えてしまったものではないと語りかけてくれているようだ。
だから私は小川洋子の作品を読むと慰められる。
いくつかの短編からなる本作品の中で、「失踪者たちの王国」と「エーデルワイス」が印象深い。
「失踪者の王国」
ちょっと不気味な不思議な雰囲気が魅力的。「私」と「絨毯屋の娘」の会話は、「ミーナの行進」の「私」とミーナの秘密の会話を思わせるし、この娘の話はミーナの童話にも通じるようでもある。
「エーデルワイス」
「あまりにも長い時間その格好でいるために、身体がふさわしい変形を起こしたかのよう」な本を読む男の話は、「猫を抱いて象と泳ぐ」のリトル・アリョーヒンを思わせる。リトル・アリョーヒンがチェスをこよなく愛するチェスの指し手だとするならば、「エーデルワイス」の男は「私」の本の最高の読み手だ。ただその外見と行動が世間に受け入れられがたいのが哀しい。男が姿を消してから後、その哀しさが静かな光をまとって「私」の胸に届いたのではないか、と思えるところに救いがある。だからこそ私は小川洋子の作品をまた読みたいと思う。その静かに差し込む光を感じてみたいと思う。
なぜ私は小川洋子の作品に心ひかれるのだろう?
その答えが「失踪者たちの王国」の最後に出てくる文、「不思議にも彼らは私を慰めてくれる。王国は遥か遠いはずなのに、彼らは洞穴に舞い降りてきて、いつまでも辛抱強く、そばに寄り添ってくれる。その吐息を私は頰のあたりに感じることができる。」ここにあるように思う。
「彼ら」とは?
亡くなってしまった大切な人や失われた存在が「彼ら」なのだ。作者は彼らを限りない愛しさを込めて描写している。その描写は、彼らとのつながりが決して暗闇に消えてしまったものではないと語りかけてくれているようだ。
だから私は小川洋子の作品を読むと慰められる。
いくつかの短編からなる本作品の中で、「失踪者たちの王国」と「エーデルワイス」が印象深い。
「失踪者の王国」
ちょっと不気味な不思議な雰囲気が魅力的。「私」と「絨毯屋の娘」の会話は、「ミーナの行進」の「私」とミーナの秘密の会話を思わせるし、この娘の話はミーナの童話にも通じるようでもある。
「エーデルワイス」
「あまりにも長い時間その格好でいるために、身体がふさわしい変形を起こしたかのよう」な本を読む男の話は、「猫を抱いて象と泳ぐ」のリトル・アリョーヒンを思わせる。リトル・アリョーヒンがチェスをこよなく愛するチェスの指し手だとするならば、「エーデルワイス」の男は「私」の本の最高の読み手だ。ただその外見と行動が世間に受け入れられがたいのが哀しい。男が姿を消してから後、その哀しさが静かな光をまとって「私」の胸に届いたのではないか、と思えるところに救いがある。だからこそ私は小川洋子の作品をまた読みたいと思う。その静かに差し込む光を感じてみたいと思う。
2014年5月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
小川さんの作品は2,3作しか読んでいませんが、この作品は設定とストーリーがあまりに意図的すぎて
興ざめしてしまいました。
その人工的な設定から引き出される物語、文章にロマンチックな空気は漂うのですが、いかんせん
完成度は低いと言わざるを得ないように思えます。
小川さんほどの実力の持ち主でも不作はあるのだと思うと、かえって安心感を覚えました。
興ざめしてしまいました。
その人工的な設定から引き出される物語、文章にロマンチックな空気は漂うのですが、いかんせん
完成度は低いと言わざるを得ないように思えます。
小川さんほどの実力の持ち主でも不作はあるのだと思うと、かえって安心感を覚えました。
2004年3月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一人の女性の半生に起こった色々なエピソードを集めた連作短編集。
最近のお話や、子供の頃のお話など、順序を変えて綴ることで、
主人公の半生が浮かび上がってくる構成になっています。
それぞれのお話は、ちょっと不思議な印象はありますが、
淡々としたものが多く、小川洋子さんの他の長編にあるような、
インパクトや、切なさは、控えめな感じです。
最近のお話や、子供の頃のお話など、順序を変えて綴ることで、
主人公の半生が浮かび上がってくる構成になっています。
それぞれのお話は、ちょっと不思議な印象はありますが、
淡々としたものが多く、小川洋子さんの他の長編にあるような、
インパクトや、切なさは、控えめな感じです。
2012年3月21日に日本でレビュー済み
いつも小川先生の作品を読むと、心の中がひやりとする。素足でタイルの上を、歩いていくみたいなひんやりとした世界観がある。
この作品は短編だけれども、連作なので、女性の半生をみることができる。特にキリコさんの失敗やエーデルワイスは、すこし、気持ち悪いかんじがするのに、小川先生の淡々とした書き方ですこし心が落ち着く感じがする。
わりとグロテスクなことや、また、行き場のないような暗いものが物語を包み込んでいても、不思議なことに淡々と描かれているがゆえに、嫌な気持ちにはならず、どこか凛とした空気がその中に流れているように思える。それが、小川先生の作品の魅力なんだと思う。
この作品は短編だけれども、連作なので、女性の半生をみることができる。特にキリコさんの失敗やエーデルワイスは、すこし、気持ち悪いかんじがするのに、小川先生の淡々とした書き方ですこし心が落ち着く感じがする。
わりとグロテスクなことや、また、行き場のないような暗いものが物語を包み込んでいても、不思議なことに淡々と描かれているがゆえに、嫌な気持ちにはならず、どこか凛とした空気がその中に流れているように思える。それが、小川先生の作品の魅力なんだと思う。