文章がするすると読みやすく、どんどん進むうちにおもしろくなり止まらなくなって4時間で一気読みしてしまいました。
なのでこちらで厳しいレビューが多いのにびっくり。確かに犯罪とトリック、その謎解きというミステリ部分に重きを置くとはずれるかもしれません。むしろ梨園の世界やその人間模様を味わう小説ではないかと思います。
特に歌舞伎好きにはたまらないでしょう。今回出てくる演目は春興鏡獅子と本朝廿四考です。鏡獅子は大好きで、どの役者さんが舞ってもうっとりと見てしまいます。長唄の演奏も華やか。何度も見るうちにおぼえてしまったその謡が何度も出てきます。
また、著者さんは本朝廿四考の話からこのストーリーを考えつかれたようで、小説の登場人物と性格や役柄がかなり重ねてあります。読んでいるうちに歌舞伎の勉強にもなります。
気になったのは、出てくる人物がみんな何かを言いかけてやめるとか、今は言えないと隠し事をすることが多すぎること。結果を見てみれば、ちゃんと説明した方がよかったんじゃないの?自己判断でよかれと思って黙っていたのは間違いだったんじゃ?と思うことが多すぎました。謎を最後まで引っ張るために必要だったのでしょうが、やりすぎのように感じてしまいました。特に探偵の今泉君。あまり有能とは言えない気が。
みんなの心情も犯人の動機も十分理解できました。また、芸事と家が最優先の梨園ではありえないことではないと思ってしまいました。私たち観客はただ華やかな舞台を堪能するだけですが、裏にはやはり独特の事情や価値観があるのでしょう。登場人物のキャラがみんな個性的ではっきりしていて魅力的でした。
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散りしかたみに (角川文庫) 文庫 – 2001/8/23
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女形探偵・小菊が歌舞伎座を舞台に謎に挑む! 新本格ミステリー。
歌舞伎座での公演中、芝居とは無関係の部分で必ず桜の花びらが散る。誰が、何のために、どうやってこの花びらを降らせているのか? 一枚の花びらから、梨園の中で隠されてきた哀しい事実が明らかになる――。
歌舞伎座での公演中、芝居とは無関係の部分で必ず桜の花びらが散る。誰が、何のために、どうやってこの花びらを降らせているのか? 一枚の花びらから、梨園の中で隠されてきた哀しい事実が明らかになる――。
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2001/8/23
- ISBN-104043585012
- ISBN-13978-4043585014
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA; 一般文庫版 (2001/8/23)
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- 言語 : 日本語
- 文庫 : 240ページ
- ISBN-10 : 4043585012
- ISBN-13 : 978-4043585014
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年8月9日に日本でレビュー済み
序盤の奇妙な状況、中盤のサスペンス、そして驚きの結末。
出所不明の花びらが事の発端ですが、調査に乗り出た主人公たちは、
大した成果もあげられず、気がつくと物語の終盤に差し掛かって
しまいます。
なお名探偵殿は、瞬間推理的に事件の概要をつかんでいましたが、
気分が乗らずダンマリを決め込んだ模様。
主人公は、頑張って真相をつかもうと調査していくのですが、
調査を続けるための動機づけが、もう少しほしかったですね。
師匠の命令は大事ですが、「調べてもわかりかせんでした」
と報告して終わってもよさそうな状況です。少し不思議な状況ですが
誰かが致命的に困っているわけでもなかったですし。
動機付けでいうと、名探偵が後半調査に乗り出したきっかけが不可解
ですね。明らかにしない方がいいこともあると、言っていた彼が
自分の言葉を違えているわけですから、いろいろ思うところがあった
はずなのですし。そこを曲げるのはよほどのことがあったのでしょうか。
犯人あて推理というより、少し不思議なことを主人公が調べて
みましたというようなお話です。話も平坦で淡々と進むので、
気を張らず、のんびりと読めるところは好印象でした。
出所不明の花びらが事の発端ですが、調査に乗り出た主人公たちは、
大した成果もあげられず、気がつくと物語の終盤に差し掛かって
しまいます。
なお名探偵殿は、瞬間推理的に事件の概要をつかんでいましたが、
気分が乗らずダンマリを決め込んだ模様。
主人公は、頑張って真相をつかもうと調査していくのですが、
調査を続けるための動機づけが、もう少しほしかったですね。
師匠の命令は大事ですが、「調べてもわかりかせんでした」
と報告して終わってもよさそうな状況です。少し不思議な状況ですが
誰かが致命的に困っているわけでもなかったですし。
動機付けでいうと、名探偵が後半調査に乗り出したきっかけが不可解
ですね。明らかにしない方がいいこともあると、言っていた彼が
自分の言葉を違えているわけですから、いろいろ思うところがあった
はずなのですし。そこを曲げるのはよほどのことがあったのでしょうか。
犯人あて推理というより、少し不思議なことを主人公が調べて
みましたというようなお話です。話も平坦で淡々と進むので、
気を張らず、のんびりと読めるところは好印象でした。
2015年9月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
シリーズの中では一番後味の悪い作品でした。
動機は貧弱に思えるかもしれませんし
そんな馬鹿な!かもしれません。
しかし、イヤイヤ梨園ではありえそう。。
動機は貧弱に思えるかもしれませんし
そんな馬鹿な!かもしれません。
しかし、イヤイヤ梨園ではありえそう。。
2017年4月8日に日本でレビュー済み
事件というより、「なぜ誰が花びらを降らせているのか」を調べるというのが物足りないかな。
もう少しインパクトのあることを調べてほしいかなと思いました。
それでも結末がよかったらまだいいんだけど、結局降らせた人が分かったというだけ。理由は深いものがあったけど・・。
花びらから思わぬ事件に発展するなら、まだ面白かったかな。
もう少しインパクトのあることを調べてほしいかなと思いました。
それでも結末がよかったらまだいいんだけど、結局降らせた人が分かったというだけ。理由は深いものがあったけど・・。
花びらから思わぬ事件に発展するなら、まだ面白かったかな。
2006年9月6日に日本でレビュー済み
1998年の単行本の文庫化。『ねむりねずみ』に続く梨園シリーズの第二作。前作を読んでいないと話についていけないので、ご注意。
とんでもない駄作を読まされてしまった。本書の中心となっているはずの「桜の花びらが散る」というトリックの馬鹿馬鹿しさ。思わせぶりで当てずっぽうな発言しかしない名探偵の感じの悪さ。場面転換、語り手の転換が頻繁なための読みにくさ(それがトリックでもあるのだが)。読んでいて腹立たしいほどだった。
梨園を舞台に選び、女形を語り手とした点は面白いと思う。歌舞伎の演目とミステリを重ねていく点も評価できる。誰か、別の作家がこの設定で書いてくれると良い作品に仕上がるのではないか。
とんでもない駄作を読まされてしまった。本書の中心となっているはずの「桜の花びらが散る」というトリックの馬鹿馬鹿しさ。思わせぶりで当てずっぽうな発言しかしない名探偵の感じの悪さ。場面転換、語り手の転換が頻繁なための読みにくさ(それがトリックでもあるのだが)。読んでいて腹立たしいほどだった。
梨園を舞台に選び、女形を語り手とした点は面白いと思う。歌舞伎の演目とミステリを重ねていく点も評価できる。誰か、別の作家がこの設定で書いてくれると良い作品に仕上がるのではないか。
2015年7月12日に日本でレビュー済み
多少混乱が…。オチを読んでから前のページ拾い読みしなきゃならない感じにw
紫のさんに共感。こういう性根の人は根本的に何をやろうと憎めない。
双子の葛藤や悲劇より、妖女の嘆きより、紫之助の「ズルさ」に怒りを覚えた。判断的には誤ってないが、何というか「自分の手を汚さず」ってのが気に喰わなかった。今後せいぜい強請りたかられ、後継とも打ち解けられず苦悩するが良い。…みたいな。
紫のさんに共感。こういう性根の人は根本的に何をやろうと憎めない。
双子の葛藤や悲劇より、妖女の嘆きより、紫之助の「ズルさ」に怒りを覚えた。判断的には誤ってないが、何というか「自分の手を汚さず」ってのが気に喰わなかった。今後せいぜい強請りたかられ、後継とも打ち解けられず苦悩するが良い。…みたいな。
2003年6月17日に日本でレビュー済み
創元推理文庫の「ねむりねずみ」のシリーズ。梨園の華やかな登場人物は楽しいのだが、探偵クンのキャラが弱い…推理力が超人的な割に、結局悲劇を防げないのは金田一耕介からの伝統か?だからこそ、儚く美しい物語に仕上がっているのかもしれないけど。
新登場のモップ犬(犬種何だろう、立ち耳だからテリア系?)も含め、キャラはとてもユニークで良いので続編を期待したい。
新登場のモップ犬(犬種何だろう、立ち耳だからテリア系?)も含め、キャラはとてもユニークで良いので続編を期待したい。
2008年8月11日に日本でレビュー済み
凄絶なトリックとか、そういうものを期待して読んではいけないと思います。メインにすえられる謎のトリックについては「どうにでもなる」と作中に言及されていますし、其処をさして「駄作」と切り捨てるのは、お門違いというか、なんというか。
いくつか続いているシリーズの二作目、らしいです。作中にも以前に何かしらの事件があったことは示唆されていますが、それほどの影響なく、単体として読むことが出来ます(自分もそうでした。第一、シリーズとして順番に読んでほしいならばタイトルにそれを反映させるでしょう)。体裁としてはミステリですが、読者に挑戦する類のものではありません。物語を鑑賞する、という感じに近いです。淡々と物語がすすんでいく。
歌舞伎を知らない自分がすんなり話に入り込めたのは説明の巧みさなのか、文量の少なさなのか。歌舞伎という舞台故の人間ドラマを短いスペースで書き上げた(ちょうど濃密な夏の風みたいな感じでしょうか)佳作、という印象です。
いくつか続いているシリーズの二作目、らしいです。作中にも以前に何かしらの事件があったことは示唆されていますが、それほどの影響なく、単体として読むことが出来ます(自分もそうでした。第一、シリーズとして順番に読んでほしいならばタイトルにそれを反映させるでしょう)。体裁としてはミステリですが、読者に挑戦する類のものではありません。物語を鑑賞する、という感じに近いです。淡々と物語がすすんでいく。
歌舞伎を知らない自分がすんなり話に入り込めたのは説明の巧みさなのか、文量の少なさなのか。歌舞伎という舞台故の人間ドラマを短いスペースで書き上げた(ちょうど濃密な夏の風みたいな感じでしょうか)佳作、という印象です。