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マリコ/マリキータ (角川文庫) 文庫 – 2006/5/25
- 本の長さ231ページ
- 言語日本語
- 出版社角川書店
- 発売日2006/5/25
- ISBN-104043822014
- ISBN-13978-4043822010
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登録情報
- 出版社 : 角川書店 (2006/5/25)
- 発売日 : 2006/5/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 231ページ
- ISBN-10 : 4043822014
- ISBN-13 : 978-4043822010
- Amazon 売れ筋ランキング: - 748,940位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
1945年、北海道生れ。埼玉大学理工学部中退。
二十代から世界各地を旅し、ギリシャ、沖縄、フランスで暮らす。現在は、札幌在住。公式サイトは[cafe impala]
http://www.impala.jp
1988年「スティル・ライフ」で芥川賞を受賞。詩、小説、随筆、翻訳(英・ギリシャ語)、書評と執筆は多岐にわたる。広く深い文学的教養と理系的知識を土台に、自然と人間の関わりについての示唆に富んだ作品を多く著している。
ワープロ原稿で芥川賞を受賞した初めて作家でもあり、9.11をきっかけに毎日メールマガジンを通じて意見を表明する(『新世紀へようこそ』に収録)など、早くからデジタル・メディアの活用に関心を持つ。2014年からは株式会社ボイジャーと共同で自身の著作の電子アーカイブ化にも取り組んでいる。
主な著書に『母なる自然のおっぱい』(読売文学賞)『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)『ハワイイ紀行』(JTB出版文化賞)『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)『すばらしい新世界』(芸術選奨文部科学大臣賞)『イラクの小さな橋を渡って』『憲法なんて知らないよ』『言葉の流星群』(宮沢賢治賞)『静かな大地』(親鸞賞)『パレオマニア』等。2003年、著作活動全般について司馬遼太郎賞、「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」の編纂で朝日賞を受賞。
東日本大震災の後は被災地に通い、『春を恨んだりはしない』『双頭の船』『アトミック・ボックス』を執筆。震災をきっかけに日本と日本人について思索したいとの思いから、「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」に取り組み、2014年末から刊行開始。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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〇 語り手も含めて、5篇の登場人物は大体が理性的であり、人間の意志に信頼するところでは極めて近代的なのだが、一方でどこか大きな見えない力(神とか自然の摂理とかいうもの)の支配を受け入れている。そんなところがどの作品でも感じた。最後の「帰ってきた男」では特に強かった。その分だけこの作品が抽象的になってしまったのを残念に思う。
〇 わたしが良いと思ったのは最初の3篇。マリコ/マリキータ、梯子の森と滑空する兄、アップリンクである。それから、帰ってきた男の最後の部分も良いと思った(ピエールとの対話を描いた11章)。
池澤夏樹は理系ならではの目線で鋭敏な感受性を働かせる作家だなぁ、といつも思う。自然とか、未知のものとか、人の力の到底及ばない圧倒的に大きなものの前に立つときの畏敬の念、みたいなものがどの作品にも通底している気がする。
特に最後に収録されている『帰ってきた男』がとにもかくにも素晴らしい。たしか『骨は真珠、目は珊瑚』だったか、池澤夏樹の別の短編集の最後の方にUFOを探す話(?うろ覚え)があったと記憶しているのだけれど、なんかあれと雰囲気がかぶる感じ。
タイトルは忘れたけれど、やっぱり『骨は真珠〜』に入っていた(多分…うろ覚え…)『眠る女』に似た雰囲気のも一篇入っていた。呪術的、アニミズム的なものへの作者の傾向は相変わらず健在。
読み終えると生活の中で堆積していた心の垢がすこぅしだけ落ちて、感受がわずかに鋭敏になったような気持ちになれる。
「豊か」って、こういうものを指す言葉だと思う。
スリップストリーム系の小説で、まあ、普通に考えたらSFです。遺跡調査に行って、神(のようなもの)と接触を果たし、帰ってくる男。いわば、神秘体験系のスーパーナチュラルなのだが、書き方が絶妙で興味深い。作者は、タルコフスキーの「ソラリス」に触発された、といっていて、人間以外のものが人間に何かを見せて、「真理」のようなものを見せる、それをきっかけとして、すべてのものの見方が変わる、という通念が、この作品集全体に行き渡っている。個を失うことが怖いのか、はたまたそれが本来あるべき正しい形なのか。
てゆううか、この話の完成形が劇場版エヴァ?
それぞれに異なった味わいと余韻を持つ5作品は、1988‾1990年に各誌に発表されたもの。そこに共通するのは、ある境界線を乗り越えた者とそうでない者の、ある種の融合と乖離ではないだろうか。風のように国境も文化も乗りわたってゆくマリコ/マリキータ(美人でも不美人でもない)の話は、旬な女性誌に掲載されても違和感ない軽快さと爽やかさを持つが、作者の日本社会および文化への批評眼がいつもながら光っているし、緻密かつ優雅な筆致はここでも読者をうならせるにじゅうぶんだ。
最後を飾る『帰ってきた男』には、神や大宇宙の想念がうずまく。光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』級SFを数冊まとめて読んだような頭脳負荷を受けた。『南の島のティオ』を知っている読者は、透き通った大いなる存在と、世界のすべてが含まれた音に、ここでも出会うことになる。個人的には神話の香気ただよう『アップリンク』が本書中最愛の作。