朝吹真理子さんが
《この人の文章大好き》
と言っているほどだからいいのかな?
と思って手にとったのが、この本。
《もののはずみ》は生活の周辺にある
色々な生活小物などや雑貨を中心に
その時々の心のありようやそれに
まつわる小さな物語を綴っていて秀作です。
フランス文学者らしく、フランスの街角で
出会った骨董屋さんや物との付き合いの様子
が美しく語られています。
私が特に好きで、素晴らしい筆の運びだと
思うのは最後のほうに出てくる。
《冷えた心をあたためる器具》
というところ。
出だしから思わずのめり込んでしまいました。
《ずいぶん前のことらしいのですが、
・・・薄汚れた大きな車輪みたいな
ものを抱えてふらふらふらふら頼りなげに
歩いている眼鏡の男の人がいて、それが
あなたにとてもよく似ていた、いや、ご本人
としか思えなかった、という話しを友人から
聞いたのです、そのようなご記憶はおありで
しょうか、と仕事で付き合いのある方から
証人喚問ふうに問われてめんくらいながら
、ははあ、じゃあ、たぶんあの日だろうな、
と思い当たる節があった。・・・》
と6行ぜんぶが一つの文章になっているのだけど、
これが良い。
全部で50篇くらいですが、それぞれ楽しく
読ませてくれます。ちょっと、人を待つ間に
読んでほのぼのするのがいいかもしれませんね。
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もののはずみ (角川文庫 ほ 15-1) 文庫 – 2009/6/25
堀江 敏幸
(著)
作り手が透けて見えるような実直な製品や、元の持ち主の生活の匂いまで感じ取れる愛すべきがらくた。パリの裏路地のアンティークショップや、かび臭い古道具屋で、作家が出会った「もの」と「人」をめぐるエッセイ。
- 本の長さ222ページ
- 言語日本語
- 出版社角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日2009/6/25
- ISBN-104043908016
- ISBN-13978-4043908011
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商品の説明
著者について
1964年、岐阜県生まれ。99年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、01年「熊の敷石」で芥川賞、03年「スタンス・ドット」で川端康成賞、04年『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、06年『河岸忘日抄』で読売文学賞を受賞。
登録情報
- 出版社 : 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009/6/25)
- 発売日 : 2009/6/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 222ページ
- ISBN-10 : 4043908016
- ISBN-13 : 978-4043908011
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,436,215位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 16,711位角川文庫
- カスタマーレビュー:
著者について
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1964(昭和39)年、岐阜県生れ。1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年「熊の敷石」で芥川賞、2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、2004年、同作収録の『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、木山捷平文学賞、2006年、『河岸忘日抄』で読売文学賞を受賞。おもな著書に、『郊外へ』『いつか王子駅で』『めぐらし屋』『バン・マリーへの手紙』『アイロンと朝の詩人―回送電車III―』『未見坂』ほか。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年5月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2009年7月2日に日本でレビュー済み
いつもながらの堀江さんの文章で紡がれるささやかなものの写真とそれを生活の中に取り入れる効用や、買い物の快楽を1段上に上らせてくれるエッセイです。散文の名手と私が思う作家さんなのですが、このような短い文章でも、立ち上らせる匂いを感じさせてくれて気分転換にはとても良い作品でした。私は文庫で読みましたが単行本での写真を見てみたくさせます。
中でも私が気に入ったのは、昔の空港のシーンでは(そもそも海外旅行の経験の無い私には空港体験がほとんど無いのですが)必ずあったパタパタめくられる目的地と時間を示すアナログのパタパタ(正式名称がワカラナイ!)と時間の話し「十九時五十九分の緊張」、第1次世界大戦と木製トランクと雨の日の本漁りの話し「ランシャンタン」、何故売っていて?何故買う!の「ネームタグ」、私も子供の頃これを宝箱の中に入れて磨いては満足していた「ドアノブ」、カレンダーと暮らしと後の祭り「万年暦」、大いなる勘違いを笑えない「夢想のなかの知己」、この大きさは凄い!1円玉との比較も出来る「黒猫一家の海外移住」(私のこの本のベスト)、キーホルダーには私も性格が出ると常々思っています、の「鍵が見つからない」、不思議な居場所を求めた「ガスメーターのヴァイオリン弾き」、売り買いの現場に現れるふとした何かが降臨する瞬間を捉えた「家具の森の奥で」です。
何気ない「お買い物」にそれ以上の快楽も得られることを思い出させてくれる本です。私の経験でいえば、それは小銭を握り締めて通った駄菓子屋のおばちゃんとのやり取りにこそ、その原型があると思ってます。
買い物をさらに上質にする何かに興味のある方に、実用性だけでは測れない何かを生活に生かすためのものが気になる人にオススメ致します。
中でも私が気に入ったのは、昔の空港のシーンでは(そもそも海外旅行の経験の無い私には空港体験がほとんど無いのですが)必ずあったパタパタめくられる目的地と時間を示すアナログのパタパタ(正式名称がワカラナイ!)と時間の話し「十九時五十九分の緊張」、第1次世界大戦と木製トランクと雨の日の本漁りの話し「ランシャンタン」、何故売っていて?何故買う!の「ネームタグ」、私も子供の頃これを宝箱の中に入れて磨いては満足していた「ドアノブ」、カレンダーと暮らしと後の祭り「万年暦」、大いなる勘違いを笑えない「夢想のなかの知己」、この大きさは凄い!1円玉との比較も出来る「黒猫一家の海外移住」(私のこの本のベスト)、キーホルダーには私も性格が出ると常々思っています、の「鍵が見つからない」、不思議な居場所を求めた「ガスメーターのヴァイオリン弾き」、売り買いの現場に現れるふとした何かが降臨する瞬間を捉えた「家具の森の奥で」です。
何気ない「お買い物」にそれ以上の快楽も得られることを思い出させてくれる本です。私の経験でいえば、それは小銭を握り締めて通った駄菓子屋のおばちゃんとのやり取りにこそ、その原型があると思ってます。
買い物をさらに上質にする何かに興味のある方に、実用性だけでは測れない何かを生活に生かすためのものが気になる人にオススメ致します。
2014年10月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
堀江敏幸さんの文章はしずかに心地いいですね。氏が出会った品々の時間を往還しての逡巡や決断が柔らかな語り口で物語られます。
2019年9月10日に日本でレビュー済み
本当におもしろい人だなぁと思う。堀江さんは『その姿の消し方』で「消えた町、消えた人物、消えた言葉は、…(略)永遠に欠けたままではなく、継続的に感じとれる他の人々の気配によって補完できるのではないかといまは思いはじめている。視覚がとらえた一枚の画像の色の濃淡、光の強弱が、不在をむしろ「そこにあった存在」として際立たせる。」という。
また、『回送電車』では自らの文学にふれ、「特急でも準急でも各駅でもない幻の電車。そんな回送電車の位置取りは、じつは私が漠然と夢見ている文学の理想としての、《居候》的な身分」としている。つまりは「評論や小説やエッセイ等の諸領域を横断する散文の呼吸。複数のジャンルのなかを単独で生き抜くなどという傲慢な態度からははるかに遠く、それぞれに定められた役割のあいだを縫って、なんとなく余裕のありそうなそぶりを見せるこの間の抜けたダンディズムこそ《居候》の本質であり、回送電車の特質なのだ」として回送電車宣言をして自身の文学観を表明している。
この作家ならではの独特のスタンスであり独特のスタイルといえるだろう。読んでいて本当に不思議な時間体験をしているようで心地いいのだ。
本著では手もとに集めおいた諸々の品物にまつわる記憶や思い、エピソードが不思議な時間とともに伝えられる。たしかに、この散文の呼吸はなんとなく心地いい時間の流れを感じさせるし、書き手と読み手の記憶をつなぐ不思議な空間を共有しているようでもある。
たとえば、「鉛筆削り」(p62)では、小津安二郎の「お早よう」のなかで殿山泰司が演じる押し売りシーンを枕にして、自ら愛用するフランスの学童文具の粗雑さとその殿山泰司のシーンをつなぐ記憶が語られる。
原則として、鉛筆はナイフで削ることにしている。ところが、欧米の鉛筆は先が削られた状態で売られていて、円柱を円錐にする「筆おろし」のたのしみもないし、たまたま美しい黄色のベークライト製鉛筆削りを正方形と円形のペアで手に入れたこともあって、最近はそちらを使うようになった。もちろん刃先は摩耗していて、じつに削りにくい。(p64)
このほかに、「おまけ」「美しい木」「皿の音」「ドアノブ」「海を見ていた」「木靴」「二分十五秒」「残されたボタン」「彼女たちの脚」「ものごころ」などなどおよそ50個の品々のことにふれて書かれている。こんな「がらくた」ばかり集めていったいなんの役に立つのか?と帯にはあるけれど、ここには偶然にも読み手の記憶とクロスする品物もあるだろう。
ひとつの「もの」にあれやこれやと情けをかけ、過度にならない程度に慈しむことで、なにか身体ぜんたいをはずませ、ひいては心をもはずませること。私はそれを、もののはずみ、とよんでいる。(p222)
他愛のないエッセイのようでも、何とも云えない記憶が揺さぶられるようで不思議な気がしてくる。
この発想と文体、記憶と思いが錯綜する知的な引用のスタイルは、この作家ならではの感覚のあらわれとして描出される。おもえば、初期の名作『郊外へ』や『雪沼とその周辺』にも同質のエッセンスが感じとれる。
エッセイなのか物語なのかポエティックな広がりをもつ本著『もののはずみ』は、堀江さんにとってきわめて自然な成り行きとして刊行された必然的な産物といえるだろう。この何とも云えない散文の呼吸をどうぞお楽しみください。
また、『回送電車』では自らの文学にふれ、「特急でも準急でも各駅でもない幻の電車。そんな回送電車の位置取りは、じつは私が漠然と夢見ている文学の理想としての、《居候》的な身分」としている。つまりは「評論や小説やエッセイ等の諸領域を横断する散文の呼吸。複数のジャンルのなかを単独で生き抜くなどという傲慢な態度からははるかに遠く、それぞれに定められた役割のあいだを縫って、なんとなく余裕のありそうなそぶりを見せるこの間の抜けたダンディズムこそ《居候》の本質であり、回送電車の特質なのだ」として回送電車宣言をして自身の文学観を表明している。
この作家ならではの独特のスタンスであり独特のスタイルといえるだろう。読んでいて本当に不思議な時間体験をしているようで心地いいのだ。
本著では手もとに集めおいた諸々の品物にまつわる記憶や思い、エピソードが不思議な時間とともに伝えられる。たしかに、この散文の呼吸はなんとなく心地いい時間の流れを感じさせるし、書き手と読み手の記憶をつなぐ不思議な空間を共有しているようでもある。
たとえば、「鉛筆削り」(p62)では、小津安二郎の「お早よう」のなかで殿山泰司が演じる押し売りシーンを枕にして、自ら愛用するフランスの学童文具の粗雑さとその殿山泰司のシーンをつなぐ記憶が語られる。
原則として、鉛筆はナイフで削ることにしている。ところが、欧米の鉛筆は先が削られた状態で売られていて、円柱を円錐にする「筆おろし」のたのしみもないし、たまたま美しい黄色のベークライト製鉛筆削りを正方形と円形のペアで手に入れたこともあって、最近はそちらを使うようになった。もちろん刃先は摩耗していて、じつに削りにくい。(p64)
このほかに、「おまけ」「美しい木」「皿の音」「ドアノブ」「海を見ていた」「木靴」「二分十五秒」「残されたボタン」「彼女たちの脚」「ものごころ」などなどおよそ50個の品々のことにふれて書かれている。こんな「がらくた」ばかり集めていったいなんの役に立つのか?と帯にはあるけれど、ここには偶然にも読み手の記憶とクロスする品物もあるだろう。
ひとつの「もの」にあれやこれやと情けをかけ、過度にならない程度に慈しむことで、なにか身体ぜんたいをはずませ、ひいては心をもはずませること。私はそれを、もののはずみ、とよんでいる。(p222)
他愛のないエッセイのようでも、何とも云えない記憶が揺さぶられるようで不思議な気がしてくる。
この発想と文体、記憶と思いが錯綜する知的な引用のスタイルは、この作家ならではの感覚のあらわれとして描出される。おもえば、初期の名作『郊外へ』や『雪沼とその周辺』にも同質のエッセンスが感じとれる。
エッセイなのか物語なのかポエティックな広がりをもつ本著『もののはずみ』は、堀江さんにとってきわめて自然な成り行きとして刊行された必然的な産物といえるだろう。この何とも云えない散文の呼吸をどうぞお楽しみください。
2009年6月29日に日本でレビュー済み
松浦弥太郎の『日々の100』も良かったのですが、こちらは堀江氏独特の柔らかな語り口で氏が購入した品々が語られています。フランスで手に入れたモノ達が、購入先のおじさんやおばさんとのやり取りを踏まえて紹介されていますが、その内容もなかなかに味わい深く、慌ただしいところが皆無の平穏な空気が感じられてとても心地が良いものです。また、氏の購入理由が極めて情緒的で、なるほどその気持ちは良く分かるとか、そんな理由で購入したのかと意外に思ったりで非常に面白く読みました。共通して言えるのは全てのモノが氏の語り口と写真のなせる技で、角がとれた見心地・読み心地になっていることです。私もモノ好きですが、こういうモノに対する接し方は素敵だなと感心しました。
2008年2月2日に日本でレビュー済み
大好きな堀江さんのエッセイ本です。その「もの」に対するやわらかな視線と、ひそかな思い入れが融合したよい物語のつまった一冊です。「ジム・ボタン」の原作がミヒャエル・エンデだったり、「アメリ」のラストの二人乗り原付自転車が「ソレックス」と言うメーカーだとか、僕にとってうれしい発見もありました。
2005年8月31日に日本でレビュー済み
陶製のペンギン、穴のあいたトランク、大小の木樽、ボル、ベークライトの小皿・・・。偶然に手に入れた愛すべき古きものたち。その「もの」がまとうのは、手触りや音、匂い、そしてかつてそれを手にしていた主の記憶である。殊更に骨董を買い求める、というわけではなく、ふらりふらりとさまよい歩くなかで、気持ちをひかれたものを手に入れる。このスタンスが「もの」の持つ記憶と筆者との間に、微妙な距離感、緊張感を生み出している。どこかしらいびつで、角のとれた、やわらかさ。古いものが生み出すあたたかさは、それがたくさんの人の手に触れてきたことを物語る。そしてその「もの」が愛らしいのは、それを持ち主から譲り受けたときの、ささいな言葉のやりとりがあるからなのだ。ものにひかれるのは、それを生み出し、かつてそばにおいたひとの気持ちにひかれる、ということなのかもしれない。