これは不思議な本である。
最初に読んだときには何を書いてあるのだろうかと理解しにくい気がしたが、
読み返してみるとなかなか奥が深い。
宗教とは何か、仏教とは何か。
仏陀の悟りとされる四諦・八正道・十二因縁などとは一見関係がないように
みえる禅宗や真宗は、果たして仏教といえるのか。
など、宗教全般に関する根本的な疑問を掲げ、広く深い考察を与えている。
この考察の広さや深さについていけないから、分かりにくいのだと思う。
この本は、昭和２年から３年にかけて（鈴木先生５７〜８歳のころ）、
５講ずつ２回、計１０講にわたって行われた講演の速記をもとにしてまとめられた
ものである。
最初は読みにくいと感じたのは、講演の速記録のせいでもあるかも知れない。
いずれにしても、読み返すと、なるほどそういう意味だったのかと納得できる
ことも多いので、却って味があるといってもよい。
古田紹欽師の解説によると、この本は禅の入門書である。
宗教における、また仏教における禅ないし禅宗の位置づけをていねいに説明されている。
しかし、本の題名の「禅とは何か」を一刀両断には書いていない。
禅では不立文字という。本当のことは言葉では言い表せないという。
読者は、自らの経験を通して先生の言葉を理解しなければならない。
そういう意味では、全くの初心者にとっての入門書ではなく、禅についてある程度の
知識や経験のある人が、禅の寄って立つところを最初から考え直してみるための
入門書かも知れない。
その意味で、禅に関する奥の深い入門書と言えると思う。
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