買い物という言葉を使っていますが便宜的なものです。通貨の歴史的な本質を解説するのが目的ですが、あまり固いととっつきにくいという配慮のようです。非常に分かりやすく説得力のある語り口だ。
ただ、いくつか事実関係の検証が甘い部分がある。歴史の彼方なので傍証を用意し難いのは当然だがそれにしても無理のある解釈がある。
その一つが島津下野守の名国司申請の件だが、久米寺が正本の提出を督促しているのは当然ではないか。中古の時代には官僚制は完成しており文書の重要性は今と変わらない。申請が正本でなくてはならないのは当然で、コピーを出されても手続きができないのは当たり前ではないか。そもそも任命の宣文の発行を押さえれば手数料の担保になるが、申請書は正本であっても申請者の出した書類に過ぎない。久米寺が返さなければ島津氏は他の伝手を探せば済む。筆者の説明には御教書の正本がなぜ金になるのかが明らかではない。
久米寺が口宣案を書く権限まであるなら写しでも済むだろうが、実際には除目に載せなくてはならない。やはり朝廷に任官枠の割り付け書と対になる形で申請書である御教書を添付しなくてはならないだろう。久米寺の権限が募集と取次の手数料稼ぎなら整合性がとれる。
関東御教書は御家人から鎌倉幕府に任官を願い出て幕府が取りまとめて朝廷のエージェントである久米寺に取次をさせる申請書だ。その宛名は御家人であり久米寺は債務者として明記されるにとどまる。一方で久米寺は任官の枠を与えられ、その枠が埋まることで資金を得る。しかし正本でなければ土倉を納得させられないということだろう。だが、筆者が想定するこの土倉との取引は架空のものであり久米寺が正本にこだわった傍証としてひねり出されたものに留まる。
御教書は幕府の奉行人が発行者として記名し宛名はあくまでも御家人である。そしてその御家人への指示として久米寺への支払いが書かれている。この場合、権利と利益は御家人の任官である。古文書の原則から言えばここに久米寺を含めて二つ方向に発行したという解釈はおかしい。その場合は別の文書が久米寺あてに発行されるはずだ。
他にも中国地方の市に四国の人が買い物に来たからといってその市の商圏が四国を含む巨大なものという証拠にはならない。四国にないものを入手するために瀬戸内海を渡ってくると考える方が自然だ。馬などは中国地方の方が良いものが手に入るだろう。そもそも中国、四国地方を包み込む市ならそれこそ京都の官立の市の数倍の規模でないとおかしい。
本書は成功を通じて朝廷の資金調達方法の多様化と室町幕府の対朝廷政策と御家人政策の強化をうまく説明している。しかし資料が足りないのと実際の事務手続きの精査が足りないのが説得力を減殺している。面白いし大胆な視点だが、それと傍証となるエピソードに乖離があるのが問題だ。
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買い物の日本史 (角川ソフィア文庫) 文庫 – 2013/7/25
本郷 恵子
(著)
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購入オプションとあわせ買い
市場での日常品から朝廷の官位にいたるまで、中世人の購買行動から、当時の価値観や道徳意識、信仰心のありかたに迫る。政情不安な時代の生々しい実情と、人々の心性を浮かび上がらせる、新しい日本史。
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社角川学芸出版
- 発売日2013/7/25
- 寸法10.7 x 1.4 x 15 cm
- ISBN-104044092079
- ISBN-13978-4044092078
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著者について
1960年、東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。日本中世史専攻。現在、東京大学史料編纂所教授。著書に『中世公家政権の研究』(東京大学出版会)、『京・鎌倉 ふたつの王権』(小学館)、『将軍権力の発見』(講談社)、『蕩尽する中世』(新潮
登録情報
- 出版社 : 角川学芸出版 (2013/7/25)
- 発売日 : 2013/7/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 288ページ
- ISBN-10 : 4044092079
- ISBN-13 : 978-4044092078
- 寸法 : 10.7 x 1.4 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 127,128位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 287位日本史ノンフィクション
- - 321位東洋史
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2019年8月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年11月9日に日本でレビュー済み
本書では、中世における市の位置付け、官位の売買、浄土信仰について解説している。
歴史の表舞台に登場しない人々の行動を紐解きながら時代背景と価値観を考察している。
買い物の視点から中世の人々の暮らしを考察することで、当時の娯楽や価値観が見えてくる点が興味深い。
歴史の表舞台に登場しない人々の行動を紐解きながら時代背景と価値観を考察している。
買い物の視点から中世の人々の暮らしを考察することで、当時の娯楽や価値観が見えてくる点が興味深い。
2019年11月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
知識や教養を広げたい人にはいいが面白くは感じなかった。
官位に関する話が長いが似たような話が続くので途中からしんどかった。
官位に関する話が長いが似たような話が続くので途中からしんどかった。
2018年7月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本を読んで久々に感動しました。主に中世の古文書や絵画から、本郷恵子氏が解説されます。何を解説するかと言えば、中世の人々の生活感です。現代社会で私達の生活の基盤と同じような、考えもあれば、中世独特の考えもあり、深く感銘しました。特に「中世の人々は、幸福という概念すらないのでは」と言う恵子氏の言葉には、その通りだと無学な私ですら、思いました。
この本は元は「中世人の経済感覚」とタイトルで出版されており、発売元が変わって、「買い物日本史」となっています。
なぜ変えたか?。出版社が本を売るためでしょう。
最近、本の中身とタイトルが大きく違ったり、タイトルで読者を引き付けようとする本が多いなと感じています。
出版社は筆者の了承を得ず、タイトルを変更したりしないと思うので、その点は少し残念でした。
この本は元は「中世人の経済感覚」とタイトルで出版されており、発売元が変わって、「買い物日本史」となっています。
なぜ変えたか?。出版社が本を売るためでしょう。
最近、本の中身とタイトルが大きく違ったり、タイトルで読者を引き付けようとする本が多いなと感じています。
出版社は筆者の了承を得ず、タイトルを変更したりしないと思うので、その点は少し残念でした。
2013年9月30日に日本でレビュー済み
買い物の日本史という書名だが、内容は、それとは一致しない気がする。
時代は中世に限られており、買い物の対象も、ほとんどの話題は、官位や武士社会の役職に終始している。
買い物というと、身の回りの日常品がすぐに思いつくが、残念ながら、そうした話題はほとんどない。
紹介されている話題、寺社における金融業の営みなどは、実に面白い。
この本の題名は、中世における官位の売買について、とでもした方がよい。
時代は中世に限られており、買い物の対象も、ほとんどの話題は、官位や武士社会の役職に終始している。
買い物というと、身の回りの日常品がすぐに思いつくが、残念ながら、そうした話題はほとんどない。
紹介されている話題、寺社における金融業の営みなどは、実に面白い。
この本の題名は、中世における官位の売買について、とでもした方がよい。