すでに持っている知識や信念を通して、私たちは現実を見ています。すでに持っている知識や信念を「先入見」と名付けるなら、先入見無しに事実を理解することは不可能です。なぜなら、先入見が無いのも一つの先入見だからです。
だからといって、どんな理解でも可能だという意味ではありません。事実の「整合性」が求められるのです。このように、私たちが現実を理解するには、先入見と整合性が必要なのです。
ところで、科学者たちも同じく、すでに持っている理論に基づき、事実を観察しています。たとえば、X線写真を見る専門家は、医学の理論を通して、病巣を観察しています。これを「観察の理論負荷性」と言います。
このことは、私にとって驚くべきことでした。私たちの先入見とは独立に存在している真理に向けて、科学は日々邁進していると、私は考えていたためです。どうも科学とは特権的な真理を述べるものではないようです。科学に対する私の先入見が揺さぶりをかけられたので、この本は読む価値があると思いました。
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科学哲学者 柏木達彦の多忙な夏 科学がわかる哲学入門 (角川ソフィア文庫 G 105-1) 文庫 – 2009/6/25
冨田 恭彦
(著)
京都のとある大学の、ある日の午後。哲学教授・柏木達彦の研究室を一人の学生が訪問する。「パラダイムって何ですか?」──。相対主義、物語論、真理論など哲学の大問題を、平易な対話体で読み解く楽しい哲学小説。
- ISBN-104044094047
- ISBN-13978-4044094041
- 出版社角川学芸出版
- 発売日2009/6/25
- 言語日本語
- 本の長さ285ページ
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商品の説明
著者について
1952年生。京都大学文学部哲学科卒。ハーバード大学客員研究員などを経て、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。難解な分析哲学・科学哲学を易しく解説することで定評がある。『観念論ってなに?』『クワインと現代アメリカ哲学』『観念説の謎解き』など、著書多数。
登録情報
- 出版社 : 角川学芸出版 (2009/6/25)
- 発売日 : 2009/6/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 285ページ
- ISBN-10 : 4044094047
- ISBN-13 : 978-4044094041
- Amazon 売れ筋ランキング: - 690,381位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年1月16日に日本でレビュー済み
科学哲学の思弁を、できる限り平易に紹介しようとした本書の論述はさて、どこまで成功しているだろうか。科学哲学の研究と伝授を本業とする大学教授と、科学哲学のキモが直感的にわかってしまう女子大生との対話をメーンストリートとする対話の「創作」とでもいうべき1冊。とはいえ、この創作は必ずしもうまくいってはおらず、科学哲学の概要の解説というには、論述がごてごてしているように思う。英米流の分析哲学のあらましが呑み込めていないと、この思弁はフォローしがたいという難点もある。それと、あえて言えば、アカデミズムの内側にいる方にありがちな「気どり」が目立つ。その気どりが、本書の挑戦的な意図を弱めているのではないだろうか。
2010年3月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
哲学を専門とする著者による、科学哲学(?)入門書。
著者自身がモデルとなっている科学哲学者柏木達彦と女子大生との対話形式で、現代思想の主要なテーマを平易な言葉で語っている。
トマス・クーンのパラダイム論からデヴィットソンによる概念相対主義の批判、ソシュールの構造主義、ローティのエスノセントリズムと、文庫本サイズながらその論旨展開はサクサク進んでいく。
全体的に、議論の外堀を丁寧に埋めていくというよりは、主な思想や議論を分かりやすく伝えることに主眼を置いている。幅広いテーマ設定で、これは知っておいた方がいいという内容だったので、初学者には非常に有益だと思う。
正直、構造主義や言語哲学の基礎知識が全く無くても軽く読みこなせるかどうかは疑問だったが、現代思想の一端に触れるとともに、より深く知りたいと思わせるような内容だった。
著者自身がモデルとなっている科学哲学者柏木達彦と女子大生との対話形式で、現代思想の主要なテーマを平易な言葉で語っている。
トマス・クーンのパラダイム論からデヴィットソンによる概念相対主義の批判、ソシュールの構造主義、ローティのエスノセントリズムと、文庫本サイズながらその論旨展開はサクサク進んでいく。
全体的に、議論の外堀を丁寧に埋めていくというよりは、主な思想や議論を分かりやすく伝えることに主眼を置いている。幅広いテーマ設定で、これは知っておいた方がいいという内容だったので、初学者には非常に有益だと思う。
正直、構造主義や言語哲学の基礎知識が全く無くても軽く読みこなせるかどうかは疑問だったが、現代思想の一端に触れるとともに、より深く知りたいと思わせるような内容だった。
2009年8月11日に日本でレビュー済み
本書は「
科学哲学者 柏木達彦の多忙な夏―科学ってホントはすっごくソフトなんだ、の巻
」(1997)を大幅改訂し文庫化したものです。科学哲学を専門とする大学教授と女子学生(と同僚の数学教授)の対話を通じて、科学哲学の基本問題について紹介する小説になっています。クーンの"パラダイム論"で話を終わらせず、そこからドンドン話を進めていきます。(途中「なんて情緒的(非論理的)な議論なんだろう」と"違和感"を覚えた箇所は少しありましたが、概ね愉しみました。そういう訳で続編の文庫化も期待してます!)
特に面白かったのは「現実の理解における要点は"先入見"と"整合性の追求"の2つに尽きる」という処。その話で出てきた「解釈学的循環」("部分"の理解は他の部分(つまり"全体")との関係に依存する、しかし"全体"の理解は各"部分"の理解がないと決まらない)という言葉は面白かったです。これは「 世界は分けてもわからない 」での議論を彷彿させました。("contents"と"context"は独立には決まらないということ) この"整合性の追求"の下りは、物理屋としては"自己無撞着"(self-consistent)という言葉を想起させる話で愉快でした。(そして"先入見"はself-consistent解を求める際の"初期値"に相当するんじゃないかな?)
科学が"尤もらしいこと"を予測する手段であり続けるためには、科学がself-correcting & self-consistentなプロセスであること、つまり"flexibility"(ソフトさ)が求められているんじゃないかな、と再認識しました。(Carl Saganの名言" Science is a self-correcting process. "を思い出したのでした) 福岡伸一流に言えば、科学体系も「 動的平衡 」の範疇に入るんでしょうね。
特に面白かったのは「現実の理解における要点は"先入見"と"整合性の追求"の2つに尽きる」という処。その話で出てきた「解釈学的循環」("部分"の理解は他の部分(つまり"全体")との関係に依存する、しかし"全体"の理解は各"部分"の理解がないと決まらない)という言葉は面白かったです。これは「 世界は分けてもわからない 」での議論を彷彿させました。("contents"と"context"は独立には決まらないということ) この"整合性の追求"の下りは、物理屋としては"自己無撞着"(self-consistent)という言葉を想起させる話で愉快でした。(そして"先入見"はself-consistent解を求める際の"初期値"に相当するんじゃないかな?)
科学が"尤もらしいこと"を予測する手段であり続けるためには、科学がself-correcting & self-consistentなプロセスであること、つまり"flexibility"(ソフトさ)が求められているんじゃないかな、と再認識しました。(Carl Saganの名言" Science is a self-correcting process. "を思い出したのでした) 福岡伸一流に言えば、科学体系も「 動的平衡 」の範疇に入るんでしょうね。