旧著『江戸詩歌論』(汲古書院)中の「『五山堂詩話』論」を敷衍した形ながら、深く文叢に分け入り、世人の蒙を啓く好著となっている。
内容は、「五山堂詩話」成立の背景と、その様々な面からの解読、著者菊地五山の人物像、五山をめぐる人々に関する興味深い逸話など、通読すれば「五山堂詩話」に関する概略を得ることができる。
評者にとって特に興味深かった点。師である柴野栗山と市河寛斎の確執と、それに関する五山の記述の、複雑微妙な背景が解き明かされる箇所。また文化十三年の江戸文人界を揺るがせた、文壇「書画番付」騒動の顛末。これに関しては、もっと立ち入って論じてほしかった。俗な評者としては、「詩話」十五巻を二十六年にわたって刊行せしめた経済的な背景についても、さらに詳述してほしかったところ。また堀田善衛の一文を引いて、文人の地方歴遊の水脈が、この時代から昭和初期にまで残るものであることを述べた箇所なども、読者の興を呼び起こす工夫の見られる記述である。
富士川英郎先生亡き後、江戸期漢文学の案内者として、著者を得られたことを慶びとする読書人士は少なくない筈である。願わくは、先生、俗に堕さず、易に流れず、文雅の余香、広く江湖に薫らしむるに労を惜しまざらんことを。
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江戸の詩壇ジャーナリズム 「五山堂詩話」の世界 (角川叢書 19) 単行本 – 2001/12/21
ヨーロッパの新興ジャーナリズムと同時に、化政・天保年間の日本で漢詩の大流行を背景にジャーナリズムが開花した。ジャーナル誌『五山堂詩話』を通して身分を越えて躍動した文壇を描き出す。
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2001/12/21
- ISBN-104047021199
- ISBN-13978-4047021198
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
江戸・化政期に日本初のジャーナリズム批評メディア『五山堂詩話』が発刊。漢詩の一大ブームが始まりやがて江戸文壇を巻き込む大騒動が生じる…。菊池寛の祖先が著した江戸後期の文化の実相を生き生きと描き出した異色作。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2001/12/21)
- 発売日 : 2001/12/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 264ページ
- ISBN-10 : 4047021199
- ISBN-13 : 978-4047021198
- Amazon 売れ筋ランキング: - 593,819位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年9月21日に日本でレビュー済み
我々が日本的だと思っているものの多くは江戸時代からだ。それ以前のものは少ない。でも我々が江戸時代について知っていることは本当は少ない。でも永井荷風の随筆にほの見える江戸の文化と文人は美しく思える。この本はそんな江戸時代の人気作家(詩文作家)と彼らが作った文壇やその支持層のことを教えてくれる。今の世界を動かすのは新製品だが、当時は人が時代を動かしていた。詩文は時代を共有するための大事なメディアだった。紹介された詩には美しいものが多い。宗詩のコピーにせよ日本人の美意識が静謐にうたわれる。本書には詩文解釈はない。字解に加えて詩文の解釈があれば満天だった。だから星四つです。次作が待たれます。