元共同通信社記者であり気鋭のフリージャーナリスト・魚住昭さんのご本。魚住さんがたくさん敵を作りながら書いてくれたこの本、全国民に読んでいただきたい。著者がリスクを冒しているわけでもない娯楽や実用書ばかりがベストセラーになり、リスクだらけでも使命感から儲からない本を出版してくれている、こういう真面目な本があまり売れないというのは国民の責任です。国家権力とその仲間が親切に自分たちがどうやって私腹を肥やしどのくらい国民を無知のままに保とうとしているか教えてくれるわけもなし、自分たちで自分たちを教育しなきゃならないのです。それができなければ我が国は内部から腐り落ちて崩壊するのみでしょう・・。
本書を読んでいると社会が嫌になるような権力のもたれ合いズブズブの現実が容赦なく暴かれていますが、魚住さんや上杉さんなど危険を警告してくれるジャーナリストさんがいたにも関わらず、大手メディアでは当然ながら電通や新聞社の不正が書かれているような書籍を宣伝してくれませんし、国民の目に届きにくいままになり、結果危険水域状態を放置し続けた挙句の、国民の怠慢や諦めが招いた起こるべくして起こってしまった原発事故だったのだ・・と思います。
本田靖春さんの自伝『我、拗ね者として生涯を閉ず』でも書かれていましたが、本書は、僅かな期間新聞社に「本当の民主主義」が-権力の圧力に一丸となって抵抗し、本気でデスクや局長とひら記者が議論をたたたかわせ、個性的な記者がのびのび持ち味を発揮し、権力に怖じず噛みつき真実を追求する若手記者を「よくやったな!」と先輩が誉めてくれるような自由で気骨のある気風があった時代が、段々と、上層部の権力への忖度と癒着が強まり、管理もいたずらに厳しくなり、記者がサラリーマン化していく過程と、使命感あふれるジャーナリストたちがあるいは社を見限り、あるいは牙を抜かれ飼いならされていくのを眺めているしかないその無念さが、「自分も保身に走った時期があった」という自省の想いと共に綴られています。
そして本書は2007年出版の本であるにも関わらず、電通・最高裁・新聞社「裁判員全国制度フォーラム偽装広告」の話が載っていて非常にタイムリーでした(大手メディアがスットボケる中、東京新聞だけ、オリンピック招致不正疑惑記事に大きく「電通」関与と書いていましたね、グッジョブ!!読者諸賢東京新聞への圧力に警戒ですね)。『ニッポンの裁判』『絶望の裁判所』で、一見国民の政治参加がすすんだように見える「裁判員制度」も実際は最高裁事務総局やらの利権がらみと書かれていたので、最高裁の悪事にはさして驚きませんでしたが(失望はしました)、電通と地方紙連合と三位一体で共謀した世論誘導、その手口のいやらしさにはぞっとしました。
「第一章 もみ消されたスキャンダル」では安倍さんのスキャンダル記事の握りつぶしが-現在『報道ステーション』で解説をされてる元共同通信社編集局長の後藤謙次さんが安倍さんと昵懇なのは周知のことですが、在社時から安倍さんに便宜をはかっていたんだなってしみじみ白い目でブラウン管を見つめました。「第二章 組織メディアの内実」では著者が共同通信時代に『総理の実力 官僚の支配』でも恐い政治家と書かれていた「最強総理」竹下登元首相から『野望の系譜』という書籍へ出版妨害があった話が紹介されています。
2005年の「耐震データ偽装事件」では、2009年の「郵便不正事件」でも見られたような<国策捜査>-個人の犯行を検察が無理やり組織的犯行に仕立て上げる-というやり方だったと暴かれており、2005年の「ライブドア事件」も国策捜査でした。堀江さんは、個人的に「どう捉えていいのかよく分からない人」と思っているのですが、村上さん堀江さんはフジテレビと対立した結果やはり検察に強引に嵌められた・・という話で、さすがに気の毒です。その他NHK問題、朝日新聞問題など、どれも現在にそのままつながるような根深い問題ばかり扱われており、大変勉強になります。
それにしても、我が国の裏舞台では嘘・でっち上げ・圧力が大盛況です。遡れば明治、そして戦後、張りぼての近代国家と民主主義で誤魔化しながらやってきたわけですが、まだまだ本当に根付いてなどいません。自民党などは憲法草案を見る限り人権のある自由で尊厳ある「個人」という概念のなかった旧時代に帰りたがっているほどです。
大手メディアが自分の利害に関係する問題はほとんど報じないのであたかも検察の国策捜査、出版圧力や電通によるメディア支配などはないかのような幻想を抱かされていますが、本当にいくら今の日本がこれまでになく平和だからといっても、白アリが柱を倒してしまうのではないかと思います。そうなったら国民の責任です。
まずは現実のおぞましさを知らなくてはならない、知らせなくてはならないと思います。そして厳しい環境で踏ん張っている使命感ある優秀なジャーナリストの人たち、心ある検事、弁護士、裁判官、政治家、官僚の方たちを国民が見極め、彼らを支持していかなくてはいけません。
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官僚とメディア (角川oneテーマ21 A 62) 新書 – 2007/4/10
魚住 昭
(著)
佐藤優(起訴休職外務事務官) 絶賛!
「国家もマスコミも内側から壊れていく。本書は官僚とメディアの凄まじい癒着と腐敗をえぐり出した衝撃的なノンフィクションである!」
メディアと官僚の癒着は、ここまで進んでいる!
耐震偽装事件に見る国交省とメディアの癒着、最高裁・電通・共同通信社が仕組んだ「タウンミーティング」やらせ事件・・・なぜメディアは暴走する官僚組織の支配に屈するのか?独自取材で驚くべき真実が明らかに。
「国家もマスコミも内側から壊れていく。本書は官僚とメディアの凄まじい癒着と腐敗をえぐり出した衝撃的なノンフィクションである!」
メディアと官僚の癒着は、ここまで進んでいる!
耐震偽装事件に見る国交省とメディアの癒着、最高裁・電通・共同通信社が仕組んだ「タウンミーティング」やらせ事件・・・なぜメディアは暴走する官僚組織の支配に屈するのか?独自取材で驚くべき真実が明らかに。
- 本の長さ211ページ
- 言語日本語
- 出版社角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日2007/4/10
- ISBN-104047100897
- ISBN-13978-4047100893
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商品の説明
著者について
ジャーナリスト。一ツ橋大学卒。共同通信社の司法記者時代はロッキード事件、リクルート事件、ゼネコン汚職等の取材で活躍。96年からフリーに。『特捜検察』『野中広務 差別と権力』『渡邊恒夫 メディアと権力』など話題作多数。
登録情報
- 出版社 : 角川書店(角川グループパブリッシング) (2007/4/10)
- 発売日 : 2007/4/10
- 言語 : 日本語
- 新書 : 211ページ
- ISBN-10 : 4047100897
- ISBN-13 : 978-4047100893
- Amazon 売れ筋ランキング: - 897,484位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2018年8月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
権力の不正を露わにするのが本書の趣旨ではあるが
グレーだが合法的な不正まで声高に叫べば、世の中というものは正常に機能しない。
ただ、権力を監視すべきマスコミと行政との癒着構造には辟易した。
出世や保身のために真実を語れないジャーナリストが多い中、
魚住氏が世の中に向ける真摯で純な眼差しは特筆すべきものである。
グレーだが合法的な不正まで声高に叫べば、世の中というものは正常に機能しない。
ただ、権力を監視すべきマスコミと行政との癒着構造には辟易した。
出世や保身のために真実を語れないジャーナリストが多い中、
魚住氏が世の中に向ける真摯で純な眼差しは特筆すべきものである。
2009年10月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は元共同通信社記者さんです。
耐震強度偽装事件を通して、国交症の思考パターン、
ケシカラン逮捕・口封じ逮捕など、検察の思考パターン。
などと、日本の報道を大本営の垂れ流しとしている病理である
客観報道主義、記者クラブ制に言及しています。
報道を見たとき誰が得をするかを常に念頭におかなければいけません。
効率主義により現場記者さんたちもかつての自由闊達・
物言える雰囲気が失われつつあること
それゆえかの取材力の低下を非常に憂いています。
医療記事を読んでいても取材力の低下を感じます。
耐震強度偽装事件を通して、国交症の思考パターン、
ケシカラン逮捕・口封じ逮捕など、検察の思考パターン。
などと、日本の報道を大本営の垂れ流しとしている病理である
客観報道主義、記者クラブ制に言及しています。
報道を見たとき誰が得をするかを常に念頭におかなければいけません。
効率主義により現場記者さんたちもかつての自由闊達・
物言える雰囲気が失われつつあること
それゆえかの取材力の低下を非常に憂いています。
医療記事を読んでいても取材力の低下を感じます。
2019年8月29日に日本でレビュー済み
再掲 2007
図書館本
佐藤優氏との共著「ナショナリズムという迷宮」を読んで、ジャーナリストとして長い経験を持つ魚住さんの本に興味を持った。
共同通信に記者として勤務した頃の話や辞めるきっかけ等の話を通じて、メディアと政府、行政との密接な繋がりを指摘している。テレビや新聞で流れているニュースの7-8割は実は官庁が発表していると。
耐震偽造事件の姉歯以外の別件逮捕、村上ファンドやライブドアの国策的逮捕、もちろん佐藤優氏の作り上げられた背任容疑での逮捕など、よくよく考えれば?マークが付くような事件が多い事がわかる。
魚住氏自身が共同通信時代、多くの特ダネを検察や特捜との繋がりで書くことが出来たと告白している。そして、また多くのスキャンダルが新聞に出る事なくボツになっていく現実があるという。
また最近の電通、共同通信、最高裁の裁判官制度導入におけるタウンミーティングのやらせや広告に関してもすっぱ抜いている。
最後に魚住氏が問う「メディアは誰のものか?」と。
図書館本
佐藤優氏との共著「ナショナリズムという迷宮」を読んで、ジャーナリストとして長い経験を持つ魚住さんの本に興味を持った。
共同通信に記者として勤務した頃の話や辞めるきっかけ等の話を通じて、メディアと政府、行政との密接な繋がりを指摘している。テレビや新聞で流れているニュースの7-8割は実は官庁が発表していると。
耐震偽造事件の姉歯以外の別件逮捕、村上ファンドやライブドアの国策的逮捕、もちろん佐藤優氏の作り上げられた背任容疑での逮捕など、よくよく考えれば?マークが付くような事件が多い事がわかる。
魚住氏自身が共同通信時代、多くの特ダネを検察や特捜との繋がりで書くことが出来たと告白している。そして、また多くのスキャンダルが新聞に出る事なくボツになっていく現実があるという。
また最近の電通、共同通信、最高裁の裁判官制度導入におけるタウンミーティングのやらせや広告に関してもすっぱ抜いている。
最後に魚住氏が問う「メディアは誰のものか?」と。
2015年7月2日に日本でレビュー済み
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内容は 正しい。 同じ谷間に棲息している者として 言える。正しい。
でも 正しすぎて 消されるかもしれない。 なまなまし過ぎる。 でも現実だ。
でも 正しすぎて 消されるかもしれない。 なまなまし過ぎる。 でも現実だ。
2011年3月4日に日本でレビュー済み
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官僚とメディアです。
イデオロギー的偏りが無く、感情的な記載もないので読みやすいです。
官僚については、自分もその中にいるので(最下層ですが)・・・・まぁ納得かな
メディアについては上から目線の扇情的なコメントのテレビ報道や、警察発表そのままの新聞など胡散臭く思っていましたが、この本で納得しました。
(なにしろ記者の非礼さは体験しないと分からないほど酷いです。)
松本サリン事件の警察発表鵜呑み、犯人たたき、えん罪責任転嫁の構造が変わっていないんですね。
4年前まで単身赴任してテレビと新聞の無い生活で、特別困ることもなかったのでこの機会に、生を受けて53年間お世話になった朝日新聞をやめました。
静かな生活です、ネットがあれば十分です。
イデオロギー的偏りが無く、感情的な記載もないので読みやすいです。
官僚については、自分もその中にいるので(最下層ですが)・・・・まぁ納得かな
メディアについては上から目線の扇情的なコメントのテレビ報道や、警察発表そのままの新聞など胡散臭く思っていましたが、この本で納得しました。
(なにしろ記者の非礼さは体験しないと分からないほど酷いです。)
松本サリン事件の警察発表鵜呑み、犯人たたき、えん罪責任転嫁の構造が変わっていないんですね。
4年前まで単身赴任してテレビと新聞の無い生活で、特別困ることもなかったのでこの機会に、生を受けて53年間お世話になった朝日新聞をやめました。
静かな生活です、ネットがあれば十分です。
2009年4月9日に日本でレビュー済み
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著者の「特捜検察の闇」を読んで、さらに読んでみたいと手に取ったのがこの新書。著者自体が共同通信に所属していたという経験から、いまや通信社・テレビ・新聞という主要メディアが総じて公的機関のインサイダーと化していることを、具体的な例を挙げて解説していく。共同通信のスクープ報道自主規制、「耐震偽装事件」なるものの本質と顛末とに真っ向から対立するテレビ報道・国交省・特捜検察の過剰な対応、「村上ファンドインサイダー事件」「ライブドア粉飾決算事件」についてのメディア報道・特捜検察の同様な対応、NHK番組改編についてのNHK側の自主規制と朝日新聞の追及へのしり込み、裁判員制度タウンミーティングをめぐる最高裁・電通・地方紙連合の癒着と、個々の具体例についての経過と問題性を最低限明確に記しているので、論旨が抽象的になることがなく、興味深く読み続けられる。
また、先般話題になった漆間巌の名がライブドア事件の章で、TBSの大型報道番組のキャスターである後藤謙次の名が共同通信のスクープ自主規制の章で、最近テレビで見かけた郷原伸郎の説がライブドアに対する特捜検察の捜査に疑義を示している部分でそれぞれ取り上げられているのが、本書で扱われているテーマが現在進行形なのだということを教えてくれる。
もはやジャーナリズムという言葉の実質は、本書のような書籍にしか生き残ることができないのではとさえ思えてくる。こんな主張が流通できるうちに読んでおきたい一冊。
また、先般話題になった漆間巌の名がライブドア事件の章で、TBSの大型報道番組のキャスターである後藤謙次の名が共同通信のスクープ自主規制の章で、最近テレビで見かけた郷原伸郎の説がライブドアに対する特捜検察の捜査に疑義を示している部分でそれぞれ取り上げられているのが、本書で扱われているテーマが現在進行形なのだということを教えてくれる。
もはやジャーナリズムという言葉の実質は、本書のような書籍にしか生き残ることができないのではとさえ思えてくる。こんな主張が流通できるうちに読んでおきたい一冊。
2008年2月21日に日本でレビュー済み
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メディアが官僚や検察起源の情報を無批判にたれん流していること、メディア自身の利害のためにニュースを取捨選択している事実を告発した書だ。取り上げられている話題は、共同通信と北朝鮮の関係、耐震偽装事件の特捜とメディアの暴走(実際は姉歯の単独犯であった)、ライブドア−村上事件の同様な事態、NHKと朝日新聞で争われた『女性法廷』事件での朝日新聞の腰砕け、などが扱ってある。著者はその原因が、記者クラブ制や客観報道主義、新聞の記者に対する締め付けなどであると述べている。
それぞれの事件の見方として、それなりに面白かったが、個々の事件はかなり様相は異なり、全体としてはまとまりなく感じた。私としては、メディアと警察・検察権力が結びついた倫理の押し売りと、法治主義の崩壊に焦点を当てて欲しかった。わが国のメディアの病理が一番現れているのだから。
それぞれの事件の見方として、それなりに面白かったが、個々の事件はかなり様相は異なり、全体としてはまとまりなく感じた。私としては、メディアと警察・検察権力が結びついた倫理の押し売りと、法治主義の崩壊に焦点を当てて欲しかった。わが国のメディアの病理が一番現れているのだから。