奇譚ではなく鬼譚。
最初の方の段階でクトゥルー神話を知っている人には、何が起きているかおぼろげながら見当がつく様になっている辺りは心憎い構成。都市伝説を効果的に利用している辺りは、超自然に関して常に流行を意識して取り込んでいたラヴクラフトのやり方にも似ている。
英訳もされた「クン・ヤンの女王」で言及されている著者の創造したヨス=トラゴンの名がここでも登場し、しかもユゴスで崇拝され夜刀浦の神でもあるらしい。更にヨス=トラゴンに仕える存在らしい電磁波生命体のイルエヰックの名前も登場。しかし只でさえ発音し辛い名前が余計に発音しにくい名前に・・・父が若い頃、一度だけ聞いた事があるそうだが、”ヰ”の音なんて発音出来る人、滅多に居ないだろう。
「恐怖まだ終わらず」のラストも美事。
それにしてもヒロインがおそらく「深き者」の血を引いているのだろうが、結局、彼女が変貌するまでは描かれなかった。それとも続編か夜刀浦を舞台にした別作品で、描かれるのだろうか。
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弧の増殖 夜刀浦鬼譚 単行本 – 2011/1/31
朝松 健
(著)
電波を媒介とした戦慄のクトゥルー譚ここに開幕! !
太古の因習の痕跡をとどめる巨石と最先端のメガ・サーバー施設を備えた電波塔。
古の遺物と現代の叡智という対照的な2つの建造物が丘の上で奇妙に共存する
“千葉県夜刀浦市"には、さまざまな都市伝説が存在した--。
電磁波が引き起こす神経症、頭のない幽霊の出現、死んでいない猟奇殺人鬼etc
寺の鐘を思わせる音をたて、メガ・サーバーが運転を始めたとき、
異次元の扉は開かれ、町に阿鼻叫喚の一夜が訪れた!!
「上手いとか、上質だとかいうまえに、とにかく怖いです、この本。」魔夜峰央(マンガ家)
「クトゥルーとサイコの甘やかな融合、戦慄の闇が降臨する! 」平山夢明(小説家)
「星間宇宙(ほしぞら)を渡る風が、滅びの情報(ことば)を運ぶ。汝、星に祈ることなかれ。」森瀬繚(クトゥルー研究家)
太古の因習の痕跡をとどめる巨石と最先端のメガ・サーバー施設を備えた電波塔。
古の遺物と現代の叡智という対照的な2つの建造物が丘の上で奇妙に共存する
“千葉県夜刀浦市"には、さまざまな都市伝説が存在した--。
電磁波が引き起こす神経症、頭のない幽霊の出現、死んでいない猟奇殺人鬼etc
寺の鐘を思わせる音をたて、メガ・サーバーが運転を始めたとき、
異次元の扉は開かれ、町に阿鼻叫喚の一夜が訪れた!!
「上手いとか、上質だとかいうまえに、とにかく怖いです、この本。」魔夜峰央(マンガ家)
「クトゥルーとサイコの甘やかな融合、戦慄の闇が降臨する! 」平山夢明(小説家)
「星間宇宙(ほしぞら)を渡る風が、滅びの情報(ことば)を運ぶ。汝、星に祈ることなかれ。」森瀬繚(クトゥルー研究家)
- 本の長さ326ページ
- 言語日本語
- 出版社エンターブレイン
- 発売日2011/1/31
- ISBN-104047268321
- ISBN-13978-4047268326
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登録情報
- 出版社 : エンターブレイン (2011/1/31)
- 発売日 : 2011/1/31
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 326ページ
- ISBN-10 : 4047268321
- ISBN-13 : 978-4047268326
- Amazon 売れ筋ランキング: - 505,438位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,628位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1956年札幌生まれ。東洋大学卒。出版社勤務を経て、1986年『魔教の幻影』で小説家デビュー。伝奇とホラーを中心に幅広い執筆活動を続けている。近年は『暁けの蛍』をはじめとする室町時代に材をとった時代伝奇小説で注目されている。2005年に「東山殿御庭」で日本推理作家協会賞短編部門候補となる。ホラーの分野ではアンソロジストとしても活躍し、監修・編纂した『秘神界』は英訳されニューヨーク・タイムズはじめとする海外メディアで絶賛された。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年2月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2011年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
クトゥルー神話の諸設定、特にラヴクラフトの『闇に囁くもの』の諸設定を元にした、現代的な恐怖譚。『闇に囁くもの』は、大好きなラヴクラフト作品の中でもとりわけ「宇宙的」で、私の特別なお気に入りの一つだ。これはそれを元にした物語だからたまらない。あちこちで密やかに張られた原作品へのリンクが、いちいち楽しいし、それにすぐに気がつける自分が、ちょっとばかり誇らしくもある。序盤に出てくる「暗号」も、登場人物たちより一足早く解けて、とてもいい気分だった…もっともこれもまた、初めからファンに先読みされるのを前提として用意された、楽しむための「仕掛け」で、作者の掌の上で転がされていることには変わりないわけだがw。
『闇に〜』で効果的に使われているのが、手紙や蓄音機などの通信や最新メディア機器、そして新聞記事に載る都市伝説的なエピソードだ。この物語ではそれを踏まえて、ケータイやパソコン、サーバー施設、あるいは都市伝説の携帯サイトなどがふんだんに使われ、重要な役割を果たす。そしてそうした巧妙な現代への「翻案」が、この作品の恐怖を身近な「今ここにある恐怖」に変貌させ、より鮮烈で迫真的なものにしている。そしてその鮮烈さと迫真力は、別にクトゥルーファンでなくても十分に堪能…というより戦慄…できることだろう。
あまり書きすぎるとネタバレになってしまうので、ここでは仄めかす程度にしか書けないが、他にも「ケーブル」や「雑音」も恐かったし、他のクトゥルー作品の呪文やフレーズとの「暗合」にもゾクゾクさせられる。そしてそれらが独特の「異化された表記」で登場してくるところがまたたまらなく恐い。
とにかくその恐怖の「現代性」と「鮮やかさ」が印象に残る。ラブクラフトを同時代に読んだ人は、きっとこんなふうに恐かったんだろうと思わせる、そんな一冊だった。
『闇に〜』で効果的に使われているのが、手紙や蓄音機などの通信や最新メディア機器、そして新聞記事に載る都市伝説的なエピソードだ。この物語ではそれを踏まえて、ケータイやパソコン、サーバー施設、あるいは都市伝説の携帯サイトなどがふんだんに使われ、重要な役割を果たす。そしてそうした巧妙な現代への「翻案」が、この作品の恐怖を身近な「今ここにある恐怖」に変貌させ、より鮮烈で迫真的なものにしている。そしてその鮮烈さと迫真力は、別にクトゥルーファンでなくても十分に堪能…というより戦慄…できることだろう。
あまり書きすぎるとネタバレになってしまうので、ここでは仄めかす程度にしか書けないが、他にも「ケーブル」や「雑音」も恐かったし、他のクトゥルー作品の呪文やフレーズとの「暗合」にもゾクゾクさせられる。そしてそれらが独特の「異化された表記」で登場してくるところがまたたまらなく恐い。
とにかくその恐怖の「現代性」と「鮮やかさ」が印象に残る。ラブクラフトを同時代に読んだ人は、きっとこんなふうに恐かったんだろうと思わせる、そんな一冊だった。
2011年2月7日に日本でレビュー済み
朝松先生の新刊で、且つクトゥルー物とのことで、早速購入。
一気に読んでみたが、残念ながら何というか「短編か中編でも良かったような感じ」という印象を持った。
本作ではスピード感を殺さない為なのか、朝松先生の持ち味であるウンチクはほぼ無し。(アレが好きなのに><)
また、作品の舞台である夜刀浦市の伝承や、古くからある士族の役割、物語の背景に当たる部分はほとんど無い。
15年前に陰惨な事件が起こり⇒それはメインとなる事件の準備である事が明かされ⇒市がパニックに陥る事件が起こる
ということが淡々と描かれているだけである。
一気に読めるのは良いところではあるのだけれど…。
また、主役とも言える連中はラブクラフトの「闇に囁くもの」に出てくる蟹状の異星生物である。
ラブクラフトファンからすると、何故この手の事件を起こすのが例のカニなのか疑問に感じる。
連中の目的を考えてはいけない訳であるが、にしてもトンデモナイ連中がもっと沢山いるのが、
クトゥルー神話のいいところでもある。手垢のついてないカニにしてみました的チョイスに感じられる。
(ウミユリ状でも良かったし、円錐状の彼らなどのほうがサーバー施設を使用するのに合っているかもしれない。)
また、ファンで無い人が読んだ場合にも、SF「スピーシーズ」より酷い出来かもしれない、といった感じの侵略モノであった。
やはり「秘神界」を読んでいない為なのか…。「崑崙の女王」はもうちょっと面白かったような…。
もう少し夜刀浦市そのものについて掘り下げてほしかった。
繰り返すが内容的には中短編小説といったところ。
一気に読んでみたが、残念ながら何というか「短編か中編でも良かったような感じ」という印象を持った。
本作ではスピード感を殺さない為なのか、朝松先生の持ち味であるウンチクはほぼ無し。(アレが好きなのに><)
また、作品の舞台である夜刀浦市の伝承や、古くからある士族の役割、物語の背景に当たる部分はほとんど無い。
15年前に陰惨な事件が起こり⇒それはメインとなる事件の準備である事が明かされ⇒市がパニックに陥る事件が起こる
ということが淡々と描かれているだけである。
一気に読めるのは良いところではあるのだけれど…。
また、主役とも言える連中はラブクラフトの「闇に囁くもの」に出てくる蟹状の異星生物である。
ラブクラフトファンからすると、何故この手の事件を起こすのが例のカニなのか疑問に感じる。
連中の目的を考えてはいけない訳であるが、にしてもトンデモナイ連中がもっと沢山いるのが、
クトゥルー神話のいいところでもある。手垢のついてないカニにしてみました的チョイスに感じられる。
(ウミユリ状でも良かったし、円錐状の彼らなどのほうがサーバー施設を使用するのに合っているかもしれない。)
また、ファンで無い人が読んだ場合にも、SF「スピーシーズ」より酷い出来かもしれない、といった感じの侵略モノであった。
やはり「秘神界」を読んでいない為なのか…。「崑崙の女王」はもうちょっと面白かったような…。
もう少し夜刀浦市そのものについて掘り下げてほしかった。
繰り返すが内容的には中短編小説といったところ。
2011年4月16日に日本でレビュー済み
クトゥルーにコンピュータと現実に起こった猟奇殺人を絡めて新機軸、と思ってるのは作者だけ。自分がコンピュータやったんで使いたくなっただけだと思う。いや、感覚の新しい若い作家なら面白く描けたんだろうけど、なんとまあ古臭い。ありふれた道具立てに、作者だけが深いと思っている鈍重な展開。先が読めて読めて。あのラスト描いてて恥ずかしくありませんでしたか?
この人、古いタイプの文学青年で田舎者なんだよね。それと、隠しようのない純文学コンプレックス。純文やりゃいいのに。暗いとこだけは評価されるかも。
この人、古いタイプの文学青年で田舎者なんだよね。それと、隠しようのない純文学コンプレックス。純文やりゃいいのに。暗いとこだけは評価されるかも。