本書を簡単に表現するなら、「情報リテラシー」に関する内容で、納得出来る事が非常に多かった良著。
内容として出てくるのは、ウォール街でのデモ、国際機関(の利権の背景)、中東情勢(に関する西側報道の誤り)、教育(点数至上主義や厳罰化)、利益偏重のグローバル企業、TPP等。
特に大学生、教育関係者、子どもがいる保護者にオススメ…というか必読。一読の価値は大いにある。
中でも一番私が良かったと思うのが、中東に関する西側報道と現地やロシアでの報道の違いを書いていた第2章。一部を引用してみる。
【2011年10月にリビアのカダフィ大佐が殺害されたことに関連して】
チリ出身で東京在住の女性の意見:
「あなたたち日本人は、リビアのことを何も分かっていない。西側のマスコミしか見ないからです」
カダフィ政権下での諸政策: 失業者には無料住宅を提供‥車を購入する時は政府が半額を‥電気代はかからず、税金はゼロ。教育、医療は質の高いサービスが無料で受けられる。全てのローンは無利子でガソリンは格安。42年前、カダフィが権力の座に着く前に10%以下だった識字率は今や90%を超えている。これらの政策を可能にしていたのは、アフリカ最大の埋蔵量を誇る石油資源だった。
「私はリビアにたくさん友人がいるけれど、彼らは高学歴・高福祉の国であるリビアを誇りに‥アフリカ大陸で最も生活水準が高いリビアでは、教育も医療も無料で、女性も尊重されている。日本の人たちはそういうことを知っていますか?国民は、電気代の請求書など見たことがありません。42年間も政権を維持できたことには、ちゃんと理由があるんです。‥外国の軍が上空から2万回もの爆撃を行うような軍事行動が、正当化されるような事態は一切なかった。」
カダフィが反政府軍に対して爆撃を仕掛けたというニュースに対して
ロシア人ジャーナリスト:
「日本のニュースの中身は、アメリカの通信社からくる情報でしょう?‥米国国防省でさえ、そうした攻撃は確認されていないと‥日本の人たちは優秀なのですから、そろそろ政府やマスコミのいうことを自分で調べたらどうですか?あの映像自体を見て、違和感を覚えないほうがどうかしている。」
私たちが日本国内で得る情報の大半は、西側の大手メディアやアルジャジーラなどの報道がベースになっている。だが、<※コーポラティズム>がメディア支配を強める21世紀、大手マスコミの報道を鵜呑みにすれば、大きなリスクが伴うだろう。
だからこそ、ニュースは常に、現場の声や企業の息のかかっていない独立系ジャーナリストの報告と比較することが重要になる。
-本文より
※コーポラティズム:資金力をつけた経済界が政治と癒着すること。著者によれば、9・11テロをきっかけにコーポラティズムは加速し始め、大幅な規制緩和とあらゆる分野の市場化がなされたとのこと。
---
どれだけの日本人がリビアやカダフィのことを知っているのか知らないが(ほとんどの人は知らないと思うが)、私自身は良く分かっていなかったので勉強になったし、私達が普段日本で入手できる情報だけでは別の面がなかなか見えないこともあるということがよく分かる事例だった。
著者は最後に「大切なのはひとつの情報を鵜呑みにせず、多角的に集めて比較し、過去を紐解き、自分自身で結論を出すことだ。」と書いているが、それは私達が物事を判断していく上で非常に重要なことだろう。
第3章ではTPPの話題も結構出てくるが(著者自身、参考文献に中野剛志の著作も挙げているが)、TPPに関しての詳細は
TPP亡国論 (集英社新書)
で。
【5/1追記】
アメリカが今度はシリアでの化学兵器使用という(おそらく)濡れ衣を着せて、軍事介入を検討しているようだ。上述のリビアの例や、イラクが大量破壊兵器を持っているとの言いがかりをつけて戦争を始めたのと同じように感じるのは私だけだろうか?今後の世界情勢を見ていく上でも本著は必読かと思う。
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発送元: 現在発送にお時間を頂戴しております。創業15年の信頼と実績。采文堂書店 販売者: 現在発送にお時間を頂戴しております。創業15年の信頼と実績。采文堂書店
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政府は必ず嘘をつく アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること 角川SSC新書 新書 – 2012/2/10
堤 未果
(著)
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購入オプションとあわせ買い
3・11以降、原発事故・放射能問題からTPPまで、政府や東電、大手マスコミの報道は隠ぺいされたり、偏った見方が蔓延るなど、国民に真実が知らされない中で、洪水のように情報が発信されている。
アメリカでは9・11の同時多発テロ以降、大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義「ショック・ドクトリン」によって貧困格差が拡大し続けている。
何が本当なのかが信じられなくなった今、どうすれば私たちは真実を手にできるのか。
著者は日本国内の状況を追いながら、並行して貧困大国化するアメリカに何度も足を運び取材した。
アメリカで目にした惨状、日本に帰るたびに抱く違和感は、やがて1本の線としてつながる。
それは、3・11後の日本の状況が、9・11後に格差が拡大していったアメリカの姿に酷似し始めているということだ。
そして、その背景にあるものは、中東の春やTPPなどと、同一線上にあるものだった。
「情報が操作され、市場化の名の下に国民が虐げられているアメリカの惨状を見るにつれ、このままでは日本が二の舞になる」と警告。
今こそ、自らが考え、行動し、真実を見抜く目を持つことの意義を問いかける。
アメリカでは9・11の同時多発テロ以降、大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義「ショック・ドクトリン」によって貧困格差が拡大し続けている。
何が本当なのかが信じられなくなった今、どうすれば私たちは真実を手にできるのか。
著者は日本国内の状況を追いながら、並行して貧困大国化するアメリカに何度も足を運び取材した。
アメリカで目にした惨状、日本に帰るたびに抱く違和感は、やがて1本の線としてつながる。
それは、3・11後の日本の状況が、9・11後に格差が拡大していったアメリカの姿に酷似し始めているということだ。
そして、その背景にあるものは、中東の春やTPPなどと、同一線上にあるものだった。
「情報が操作され、市場化の名の下に国民が虐げられているアメリカの惨状を見るにつれ、このままでは日本が二の舞になる」と警告。
今こそ、自らが考え、行動し、真実を見抜く目を持つことの意義を問いかける。
- ISBN-104047315702
- ISBN-13978-4047315709
- 出版社角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)
- 発売日2012/2/10
- 言語日本語
- 本の長さ219ページ
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商品の説明
著者について
堤未果(つつみ・みか)米国野村證券に勤務中、9・11同時多発テロに遭遇。以後、ジャーナリストとして、執筆・講演活動を精力的に続けている。主な著書に『ルポ・貧困大国アメリカⅠ・Ⅱ』(岩波新書)、『アメリカから自由が消える』(扶桑社新書)など。
登録情報
- 出版社 : 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング) (2012/2/10)
- 発売日 : 2012/2/10
- 言語 : 日本語
- 新書 : 219ページ
- ISBN-10 : 4047315702
- ISBN-13 : 978-4047315709
- Amazon 売れ筋ランキング: - 300,296位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 4,759位政治 (本)
- - 24,131位新書
- - 56,425位ノンフィクション (本)
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著者について
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堤 未果(つつみ みか)
ジャーナリスト、東京生まれ。ニューヨーク市立大学大学院で修士号取得。2006年『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞を受賞。2008年『ルポ 貧困大国アメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞、新書大賞を受賞。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年4月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年6月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
堤未香『政府は必ず嘘をつくーアメリカの「失われた10年」が
私たちに警告すること』を読む。
僕は『ルポ 貧困大国アメリカ』以来、 堤に注目している。
主にアメリカをベースキャンプに
独自の視点を僕たちに提供してくれているジャーナリストのひとりだ。
最近作の本書で堤は9.11、3.11、アラブの春、TPPをつなぐ
一本の線について書く。
国家の単位を越えた「コーポラティズム」の線である。
「コーポラティズム」は「想像を絶する資金力をつけた経済界が
政治と癒着する狂った仕組み」(p.5) と定義されている。
「1%の超富裕層が99%の人間に負担を全て押しつけて
異常な利益を手にする」(p.5) 仕組みと言いかえられる。
さて、そうした包囲網の中で僕たち個人は
どうしたら自分の頭で考え、最良とは言えないまでも
最悪ではない判断、行動ができるか。
それが、本書のテーマである。
そのためには世の中の資金の動き、
法律で社会を変えていく政治の動きから目を離さぬこと。
人間の本質を解読するために歴史、哲学を学び
思考の味方につけることが僕はとても大切だと思う。
「コーポラティズム」はかつての帝国主義のように、
一リーダーはもちろん、一国家のもくろみや戦略を越えて機能し、
世界の仕組みを変えている。
メディアの情報を鵜呑みにするのは危険である。
なぜならメディア自身が「コーポラティズム」の
主要プレイヤーであるからだ。
堤のフリージャーナリストとしての活動を、
自分で本を購入することで支えたい。
私たちに警告すること』を読む。
僕は『ルポ 貧困大国アメリカ』以来、 堤に注目している。
主にアメリカをベースキャンプに
独自の視点を僕たちに提供してくれているジャーナリストのひとりだ。
最近作の本書で堤は9.11、3.11、アラブの春、TPPをつなぐ
一本の線について書く。
国家の単位を越えた「コーポラティズム」の線である。
「コーポラティズム」は「想像を絶する資金力をつけた経済界が
政治と癒着する狂った仕組み」(p.5) と定義されている。
「1%の超富裕層が99%の人間に負担を全て押しつけて
異常な利益を手にする」(p.5) 仕組みと言いかえられる。
さて、そうした包囲網の中で僕たち個人は
どうしたら自分の頭で考え、最良とは言えないまでも
最悪ではない判断、行動ができるか。
それが、本書のテーマである。
そのためには世の中の資金の動き、
法律で社会を変えていく政治の動きから目を離さぬこと。
人間の本質を解読するために歴史、哲学を学び
思考の味方につけることが僕はとても大切だと思う。
「コーポラティズム」はかつての帝国主義のように、
一リーダーはもちろん、一国家のもくろみや戦略を越えて機能し、
世界の仕組みを変えている。
メディアの情報を鵜呑みにするのは危険である。
なぜならメディア自身が「コーポラティズム」の
主要プレイヤーであるからだ。
堤のフリージャーナリストとしての活動を、
自分で本を購入することで支えたい。
2014年12月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「秘密保護法」が議論されている昨今であるが、そんなものなくてもどうせ政府は都合の悪いことはひた隠ししているんだろうなあという気はしていた。
でも、メディアまでそのお手伝いをしているとは、かなりショックだった。
リビアのカダフィ大佐は凶悪な独裁者として西側メディアでは報道されていたが、実はカダフィ政権下のリビアは光熱費はタダ、新婚夫婦には住宅購入補助金、教育・医療は質の高いサービスが無料で受けられ、税金はゼロという夢のような社会だったことを本書で初めて知った。
カダフィが自国の金を原資に、ドルやユーロに対抗するアフリカとアラブの統一通貨・ディナの発行を計画していたことからリビアは西側の標的にされ、リビアの人々の幸せな生活は破壊されてしまったのだ。
メディアによる情報操作は、海外だけの話ではない。
日本でも、3・11後の政府発表やTPPに関する報道に、それは共通している。
では、私たちはどのようにして情報を見分け自分の身を守ればよいのだろうか。
本書では、情報を見分ける方法として、複数の情報源から情報を収集すること、附に落ちないニュースがあったら資金の流れをチェックすること、そしてSNSも政府の情報機関の息のかかった民間企業が運営していることを念頭に置いて利用することを述べている。
さらに、元外務省の孫崎氏の「点のニュースに騙されないために最も大事なことは、歴史をしっかり見ること」という言葉も紹介している。
私は早速、西側メディアが伝えない部分を知るために「ロシアの声」をフォローしました。
そして、日本では好印象のIAEA、IMF、WHOの実態は、イメージとはかけ離れたものであるということも。
IAEAはあくまでも原発推進であること、IMFの救済プログラムは債務国にとって非常に不利な仕組みとなっていて、国内の貧困層をますます増やすこと、WHOの資金の大部分は私企業からのものだという事実も紹介してくれている。
終章とエピローグで、筆者は資本主義とグローバリゼーションによって消費者という「モノ」にされてしまった私たちが、人間らしく生きるためになすべきことを述べている部分は、必読である。
人間らしく生きるためには、人間らしく自分の頭で考え、行動しなければならないのです。
このことを教えてくれた堤さんに敬意を表するとともに、益々のご活躍を期待します。
でも、メディアまでそのお手伝いをしているとは、かなりショックだった。
リビアのカダフィ大佐は凶悪な独裁者として西側メディアでは報道されていたが、実はカダフィ政権下のリビアは光熱費はタダ、新婚夫婦には住宅購入補助金、教育・医療は質の高いサービスが無料で受けられ、税金はゼロという夢のような社会だったことを本書で初めて知った。
カダフィが自国の金を原資に、ドルやユーロに対抗するアフリカとアラブの統一通貨・ディナの発行を計画していたことからリビアは西側の標的にされ、リビアの人々の幸せな生活は破壊されてしまったのだ。
メディアによる情報操作は、海外だけの話ではない。
日本でも、3・11後の政府発表やTPPに関する報道に、それは共通している。
では、私たちはどのようにして情報を見分け自分の身を守ればよいのだろうか。
本書では、情報を見分ける方法として、複数の情報源から情報を収集すること、附に落ちないニュースがあったら資金の流れをチェックすること、そしてSNSも政府の情報機関の息のかかった民間企業が運営していることを念頭に置いて利用することを述べている。
さらに、元外務省の孫崎氏の「点のニュースに騙されないために最も大事なことは、歴史をしっかり見ること」という言葉も紹介している。
私は早速、西側メディアが伝えない部分を知るために「ロシアの声」をフォローしました。
そして、日本では好印象のIAEA、IMF、WHOの実態は、イメージとはかけ離れたものであるということも。
IAEAはあくまでも原発推進であること、IMFの救済プログラムは債務国にとって非常に不利な仕組みとなっていて、国内の貧困層をますます増やすこと、WHOの資金の大部分は私企業からのものだという事実も紹介してくれている。
終章とエピローグで、筆者は資本主義とグローバリゼーションによって消費者という「モノ」にされてしまった私たちが、人間らしく生きるためになすべきことを述べている部分は、必読である。
人間らしく生きるためには、人間らしく自分の頭で考え、行動しなければならないのです。
このことを教えてくれた堤さんに敬意を表するとともに、益々のご活躍を期待します。
2015年7月12日に日本でレビュー済み
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著者の本はこれ以外にも数冊読んでいます。
テーマはギンズバーグの詩集のタイトル「アメリカの没落」
が自分的にはしっくりきます。
レーガノミックス以降、「すべては金儲け」の旗印のもと
1%の富裕層が政府と癒着し富を独占していくなか、
「医療」「教育」「被災地復興」すらも利益追求の手段として
差し出され、その結果99%の市民が最下層へと追いやられていく。
こうした現状を、著者は当事者へのインタビュー、データを丁寧に
提示し、またその一方で私たちに現実を見抜く「目」を養うべきだと
訴えています。
すでに日本の「アメリカ化」は癌のように日本社会を蝕みつつあります。
正しい情報を得て、動け、屈するな。
これが著者の本から自分が受けた大きな「説得」に他なりません。
テーマはギンズバーグの詩集のタイトル「アメリカの没落」
が自分的にはしっくりきます。
レーガノミックス以降、「すべては金儲け」の旗印のもと
1%の富裕層が政府と癒着し富を独占していくなか、
「医療」「教育」「被災地復興」すらも利益追求の手段として
差し出され、その結果99%の市民が最下層へと追いやられていく。
こうした現状を、著者は当事者へのインタビュー、データを丁寧に
提示し、またその一方で私たちに現実を見抜く「目」を養うべきだと
訴えています。
すでに日本の「アメリカ化」は癌のように日本社会を蝕みつつあります。
正しい情報を得て、動け、屈するな。
これが著者の本から自分が受けた大きな「説得」に他なりません。