実在する主人公を「私」という一人称で用いていますが、本書は主人公本人による作品ではなく、他人によって取材と想像によって形づくられたものです。有名な身体の繋がった双子のうちの一人が主人公となっていますが、他人が想像して書いたものとは思えないほどの表現力で、苦しみ、楽しみなどの様々な葛藤が克明に描かれています。しかも作者は20代の時に本作品を書き上げたというのですから、評判が高かったのも無理はありません。
本書を読んでいて、思い浮かんだのが映画化もされた『オペラ座の怪人』です。しかしこの双子はファントムとは違い、孤独(本質的な意味では孤独ですが)ではなかったはずです。すぐ隣にはもう一人の双子がいたのですから、世間の様々な批判にも耐えてこれたのでしょう。だから問題は多かったけれども、主人公は最後に感謝を言わずにはいられなかったのです。ラストシーンは特に素晴らしい。
現在のように障害者にもきちんと人権が確立していなかった時代ですから、その苦しみは想像を絶するはずです。他にも奴隷制度などの時代背景にも気を
使っているあたり、作者の手腕が光っていると思います。
しかし後半はやや駆け足で展開が早かったように思え、また彼らの生涯が二通りにわけられて展開されてゆく描き方にも読みにくさが感じられました。
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運命の双子 単行本 – 2001/11/1
「シャム双生児」の呼び名のもとになった兄弟に実話。驚くべきノンフィクシ
- 本の長さ332ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2001/11/1
- ISBN-104047913898
- ISBN-13978-4047913899
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
19世紀初頭、タイで生まれた双子は、胸がつながっていた。差別と偏見、栄光と名声、そしてある姉妹との奇妙な結婚生活。別個の人格を持ちながら片時も離れられない運命を生きた、ある兄弟の生涯を描く小説。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2001/11/1)
- 発売日 : 2001/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 332ページ
- ISBN-10 : 4047913898
- ISBN-13 : 978-4047913899
- Amazon 売れ筋ランキング: - 696,370位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,839位英米文学研究
- - 9,394位英米文学
- - 112,055位ノンフィクション (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2001年12月31日に日本でレビュー済み
面白い本だった。胸の部分で結合したシャム双生児エンとチャンは、母国タイで母の愛情に支えられ、人の好奇な目にさらされながらも、兄弟としてそれなりに幸せに生きていく。西洋の作家によって書かれた1800年代のタイの様子は、不思議な雰囲気をかもし出している。やがて14歳でアメリカに売られ「見世物」として巡業して生きていくが、30代になり、ノースカロライナで白人の姉妹に恋をしてそれぞれが結婚する。その結婚生活の奇妙さと、南部と北部の対立、そしてアメリカ南部で生きていく奇妙な中国人への偏見の中で妻を含めた4人の関係はギシギシと音を立てていくようになる。
幼い頃2人の敵は「他人の好奇な目」であったものが、成長するにつれ性格の違いもあって、互いが敵となり「滅ぼしあう」関係となっていく。そのことが最後に明かされるのだが、その構成の上手さや、後半どっと押し寄せてくる荒波の中でもがく2人の描き方などとても巧みで、面白く読んだ。
幼い頃2人の敵は「他人の好奇な目」であったものが、成長するにつれ性格の違いもあって、互いが敵となり「滅ぼしあう」関係となっていく。そのことが最後に明かされるのだが、その構成の上手さや、後半どっと押し寄せてくる荒波の中でもがく2人の描き方などとても巧みで、面白く読んだ。