デパートの片隅で出会った美女が実は存在しない女性だったーー奇妙なストーリーで幕を開けるこの作品は
『やけっぱちのマリア』とならぶ、手塚男性彼岸ものの二大傑作と言ってよい。
主人公は売れっ子の作家ではあるが周辺にはサスペンスやミステリー、悪の誘惑が満ち溢れている。
ばるぼらは恩を決して抱かれないが、これらから主人公を護り通し、ツキを呼び込んでくれる。
劇中の作家が語る。
「バルボラはミューズであり芸術の女神だ。あらゆる芸術家の元へ突然現れツキを呼び込んだかと思えば、
ある日突然消えてしまう、時空を超えた存在だ」
薄汚れたコートに身を包むフーテンで大酒飲みのばるぼらは、かと思えば美しいドレスに身を包む。
ばるぼらにどこか遠い懐かしさを憶えたむきは、手塚治虫の狙い通りの方々だろう。
創作家の皆さんならばるぼらに戸惑い、惹かれ、突き放そうともがき、結局自分から探しに出てしまう
この不思議な感覚をきっと共有出来るのではないだろうか。
そして、心のどこかでばるぼらをずーっと求めてた事に気づくだろう。
自分勝手な振る舞いに明け暮れてゆく生活の中で、気づいた時にばるぼらはもういない。
無理に探し出し、自分に従わせようとするならば手ひどい罰を受ける事になる。
そのときあなたの心は果たして、主人公と一致するのか。それとも。。
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ばるぼら (上) 単行本(ソフトカバー) – 1992/7/31
手塚 治虫
(著)
耽美派の作家美倉洋介のもとにころがり込んできた美少女バルボラ。彼女に触発されて出来上った小説が超ベストセラーになるが…。バルボラは悪魔か女神か。芸術と狂気の間をゆれ動く、作家の栄光と喪失。
- 本の長さ204ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日1992/7/31
- ISBN-104048523511
- ISBN-13978-4048523516
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA; 特別版 (1992/7/31)
- 発売日 : 1992/7/31
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 204ページ
- ISBN-10 : 4048523511
- ISBN-13 : 978-4048523516
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,777,263位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 542,673位コミック
- カスタマーレビュー:
著者について
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1928年、大阪府豊中市生まれ。本名・治。大阪大学付属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。翌年、ス トーリー漫画の単行本『新宝島』がベストセラーになり、注目される。以後、幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、子どもたちに夢を与えつづけてきた。『ネ オ・ファウスト』など3作連載中の89年2月9日に胃ガンのため死去。無類の昆虫好きとして知られ、「オオムラサキを守る会」の理事や「日本昆虫倶楽部」 の初代会長を務めた(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 手塚治虫の昆虫博覧会 (ISBN-13: 978-4900963474)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年5月4日に日本でレビュー済み
事物に対する氏の、表層的で短絡的な捉えかたが、よく現われている作品。
ばるぼら、暑苦しいくらい「女」にしか見えないのに、少年のようと形容しているのにも苦笑い。これ見よがしにヴェルレーヌを諳んじるし。
ポルノの翻訳で食っている男の元に若い魅力的な女が転がり込んで奇妙な関係を築く、出口裕弘「京子変幻」のたちの悪い焼き直しに見える。こちらは本当に美少年が出てきますよ。
ばるぼら、暑苦しいくらい「女」にしか見えないのに、少年のようと形容しているのにも苦笑い。これ見よがしにヴェルレーヌを諳んじるし。
ポルノの翻訳で食っている男の元に若い魅力的な女が転がり込んで奇妙な関係を築く、出口裕弘「京子変幻」のたちの悪い焼き直しに見える。こちらは本当に美少年が出てきますよ。
2016年11月23日に日本でレビュー済み
手塚治虫のダークな面がうまく出ています。MWと並んで黒手塚の名品です。鉄腕アトムやリボンの騎士とは全く違う大人向けの作品です。文庫本ではなく大きな画面で見たい!
2011年7月17日に日本でレビュー済み
作家の心理に肉薄した異色作であり、傑作です。
耽美派の流行作家である美倉洋介の独白調で物語が進行します。
彼が街で拾った、大酒のみで常識を持ち合わせていない女・ばるぼら。
彼女は、作家の中に棲みついている創作の女神のようです。
作家の中にある抑えがたい衝動を取り出して客観性を与えている、そんな印象を抱きます。
作家が現実と自作品の想像物を交錯した世界に生きている様が描かれているのですが、これなど創作というものの凄み、恍惚感、危険性が表れています。
手塚先生が、描くことによってそれは、創作の秘密を垣間見せられている思いがします。
冒頭では、永島慎二氏のタッチを連想させられました。
手塚版『漫画家残酷物語』とも言えるかも知れません。
手塚治虫という人は本当に凄い作家だと改めて思い知らされました。
耽美派の流行作家である美倉洋介の独白調で物語が進行します。
彼が街で拾った、大酒のみで常識を持ち合わせていない女・ばるぼら。
彼女は、作家の中に棲みついている創作の女神のようです。
作家の中にある抑えがたい衝動を取り出して客観性を与えている、そんな印象を抱きます。
作家が現実と自作品の想像物を交錯した世界に生きている様が描かれているのですが、これなど創作というものの凄み、恍惚感、危険性が表れています。
手塚先生が、描くことによってそれは、創作の秘密を垣間見せられている思いがします。
冒頭では、永島慎二氏のタッチを連想させられました。
手塚版『漫画家残酷物語』とも言えるかも知れません。
手塚治虫という人は本当に凄い作家だと改めて思い知らされました。
2011年12月1日に日本でレビュー済み
異常性欲をもつ耽美主義作家の美倉洋介が、思いつきでヴェルレーヌの詩を口ずさむフーテン娘バルボラを拾うところから話は始まる。芸術や芸術家が持つ狂気とその魅力が、本書のいたるところに表れる。
・・・これほど手塚氏の「文学」への造詣の深さを表した作品は他にないんじゃないだろうか?
冒頭は美倉の(手塚の)美文。随所で詩や文学の引用が散りばめられている。
下巻では物語の輪郭がはっきりして「芸術とは何か」という問いが強くなり、一気にストーリーが進む。個人的には、ぼんやりとした妖しい世界の中で狂気がただよう上巻の方が好み。
・・・これほど手塚氏の「文学」への造詣の深さを表した作品は他にないんじゃないだろうか?
冒頭は美倉の(手塚の)美文。随所で詩や文学の引用が散りばめられている。
下巻では物語の輪郭がはっきりして「芸術とは何か」という問いが強くなり、一気にストーリーが進む。個人的には、ぼんやりとした妖しい世界の中で狂気がただよう上巻の方が好み。
2007年12月5日に日本でレビュー済み
他のレビューで、この作品の主人公「美倉洋介」を「売れない作家」と書いていらっしゃる方がいますが、そうではありません。美倉洋介はこの物語の巻頭で、すでに耽美(たんび)小説家として文壇にユニークな地位を築いている「売れている」作家として設定されています。
その今まさに「売れている」作家である美倉洋介が、「ばるぼら」という名のフーテン娘を東京・新宿駅で拾って自宅に連れ帰り、そこから奇妙な二人の同棲生活が始まります。そして、手塚治虫は、この二人の奇怪な生活の顛末を描きつつ、芸術とはそもそも何か、芸術家を創作活動へと突き動かすエネルギーの源とは果たして何なのか(それは人が"狂気"と呼ぶものなのか?)、という問いに対し、自分なりの答えを提示し、世に問いかけたように、私には思われます。手塚治虫はこの「ばるぼら」を書きながら、自身の作品の「芸術性」や、漫画家として生きる自分の内面、特に漫画界の第一人者としての自負と、創作上のジレンマやスランプがもたらす内面の葛藤を強く意識していたのではないでしょうか。
不条理と怪奇に満ちたストーリー展開は、数ある手塚作品の中でも第一級のもの。文句なく5つ星としたいと思います。
その今まさに「売れている」作家である美倉洋介が、「ばるぼら」という名のフーテン娘を東京・新宿駅で拾って自宅に連れ帰り、そこから奇妙な二人の同棲生活が始まります。そして、手塚治虫は、この二人の奇怪な生活の顛末を描きつつ、芸術とはそもそも何か、芸術家を創作活動へと突き動かすエネルギーの源とは果たして何なのか(それは人が"狂気"と呼ぶものなのか?)、という問いに対し、自分なりの答えを提示し、世に問いかけたように、私には思われます。手塚治虫はこの「ばるぼら」を書きながら、自身の作品の「芸術性」や、漫画家として生きる自分の内面、特に漫画界の第一人者としての自負と、創作上のジレンマやスランプがもたらす内面の葛藤を強く意識していたのではないでしょうか。
不条理と怪奇に満ちたストーリー展開は、数ある手塚作品の中でも第一級のもの。文句なく5つ星としたいと思います。
2005年5月26日に日本でレビュー済み
手塚治の物語の中の女性キャラクターはだいたいみんな記号のように面白くなくて似通っていると思ってきましたが、ばるぼらだけは、コマとコマのあいだにちょっと血肉を感じます。それだけでも手塚作品中、いちばん好きな女性登場人物です。前半は読んでいて嬉しくなるほどです。「ピノコ」、「火の鳥」、「ボク(サファイア)」。――そのいずれでもない、勝手な女が、ばるぼらです。男性がばるぼらに対して覚えるかもしれない「気持悪さ」と、女性が手塚治作品の他の女性キャラクターに対して感じている「気持悪さ」は、相当異質のものだと思うけれど、そんなことも含めて、「神様」の膨大な遺作の中でも、ちょっと特異な位置を占める作品でしょう。
2007年9月4日に日本でレビュー済み
これに出てくる登場人物は「オマエラ何しとんじゃい!」と何度もツッコミを入れたくなります。彼らは安住を恐れ自らを破滅に向かわしめていきます。何故か最初は異常に見えたバルボラが最後は段々まともに見えてきます。逆に最初はまともに見えた美倉が荒唐無稽で狂人の姿をあらわにします。