私の心の原風景を構築してくれたのは大島弓子とうい漫画家です。彼女の描いた風景の中できらめく言葉たち、「毎日が夏休み」では仕事を懸命にすることで『私は永遠の夏休みを手に入れた』と言い、「ロストハウス」ではホームレスに近い状況を『彼はついに全世界を部屋にして そしてそのドアを開放ったのだ』と言い、「８月に生まれる子供」では、老化が急速に進む病にかかった少女に『ボケた自分は別の自分の誕生かもしれない』と言わせ、「夢虫・未虫」では不倫関係にある二つの家族が、一緒に暮らすことの提案を、その子供たちに『数千年未来のアイディアだと思う』と言わせます。
「グーグーだって･･･」に対しての賛否両論、ただの猫おばさんになっただの、社会性がないだの、がっかりしただの、なにを今更言ってるんだ?と思います。大島弓子氏は当たり前に普通じゃない。だからこそこんな豊かな世界を私たちに届けてくれてきたのです。これは猫の正しい飼育の手引きじゃない。彼女の視線はいつだって、未来のアイディアに注がれています。そのアイディアが好きだったから大島弓子氏を読み続けてきたんじゃなかったのですか？そのアイディアが隣のおばさんとして実社会に降りてきた途端に否定的になるのは、･･･ちょっと悲しいな。
驚く程幾多のアーティストや小説家や私たちに影響を与えてきた作家が、おえらい漫画家さんにもならず、その欲もなさそうで、猫一匹に右往左往している、ただの猫おばさんになっていることが私は愛しくてなりません。猫三昧のこの途方もない日常がエッセイコミックではなく従来の大島漫画になったら･･･と想像してみてください。ほら、少しもズレはないでしょ。
大島弓子氏は実世界でも大島弓子氏のまま、今日も猫のトイレ掃除しながら猫砂で砂山作ったりしているんです（これはいたって想像）。
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