アニメーション化もされた1巻~3巻までのストーリーが一段落し、本巻は御船流子、前川さん、藤和エリオそして丹羽真の
それぞれの過去を描いた短編集プラス夏休みを悶々と過ごす現在の丹羽真を描いた掌編で構成されている。
『家出基地』
高1三学期の終業式の日、御船流子は告白した同級生に振られ、家出という名のマンガ喫茶への引きこもりを決め込むも、
そこで出会った、ある人物を連想させる不思議かつ綺麗な男の子とともに、幼い頃から謎だった、一体何をやっているのか
よくわからない研究施設に闖入することとなり……というのが簡単なあらすじ。航空管制センターや米軍基地のような、
大人から見たら存在意義が理解できるものであったとしても、子どもにとってよく分からない建物や存在って結構あったよなぁと
思いつつ読み進むことができると同時に、御船流子が思い出す自身の過去の描写を通じ、彼女自身の人格形成プロセスを
読者に見せることによって、読者自身の過去がえぐり出されていくさまに不思議な感情を覚える。
『初恋を見下ろして』
中3の1学期期末試験直前、自身の変化を望み、『とある美容室』で髪を金髪に染めた前川さん。自分自身のフィジカル的な変化により、
今は疎遠となってしまった幼馴染とのエピソードを通じ、自身の問題に対し対処療法ではなく、根本的な部分と向き合う大切さを
説いているようにも見える。
なぜ自身の身長を『179.9cm』と主張するのか、そしてどうして自身のファーストネームを出すことをなるべく避けるようにしているのかが
分かるものの、日常生活において、少々ズレたセンスのコスプレをするようになったのかは……分かるのか?
『空への明日』
小5の運動会間近な藤和エリオの日常を彼女自身の視点で描いたエピソード。
自身の髪と瞳の色そして片親であるという理由で担任や同級生の柏木にディスられつつも、宇宙を目指すべく『秘密特訓』に勤しむ
寂れた公園で、宇宙に行くという目標を達成し無気力となってしまい、日がな一日ジャングルジムで猫と過ごしているおじさん
(おそらくまだ実際に客を乗せていないヴァージン・ギャラクティックのようなものではなく、飛行機を成層圏近くまで飛ばし、上昇と下降を
繰り返すことによって擬似的に無重力空間を実現させるタイプのものと推察される)と邂逅するのだが……というおはなし。
行方不明になるまでにグラスに注がれた水が表面張力によって危うい均衡になりつつも、なお水が注がれ続けているかの如く
蓄積されてきたであろう様々な経験や感情が、現段階では比較的余裕があるものの、そのキャパシティが数年をかけて徐々に
限界まで近づきつつあることを暗喩しているようにも取ることができる。
『ぼくと彼女の月の距離』
中3の冬、まだ田舎にいた頃の丹羽真が、中2の時に同じクラスだった星中小海(彼氏持ち)に振り回される姿を描いたエピソード。
彼氏持ちの女は交際を秘密にしない限りにおいて、もう彼氏以外からは口説かれることはないという根拠のない安心感を得ることがあるらしく、
人畜無害そうな男に対して妙にフランクになるきらいがある(何回か経験あり)が、当の男にしてみれば真のように『自分ではなく彼氏と睦みあって
いればいいだろ』『一体お前は何がしたいんだ』『ニコニコしておきながらメタ・コミュニケーションによる「変な期待はするな」アピールの意味が
分からない』などといった感情を抱くだろうが、つまり真は星中の中に無意識のうちにあると思われる『彼氏では満たされない何か』を真に
求めることにより、都合のいいような距離感で付き合わされていただけであり、クリティカルな状況にならない程度のアイロニーを
言い放つことくらいでしか一矢を報いることができないことが、ある意味においてもの悲しさを表しているのがよく分かる。
普通であればこのままズルズル中途半端な関係から徐々にフェイド・アウトしていくが、この関係を『正しく終わらせる』ため、新月のクリスマスの夜に
真がとある行動を取る姿を通じ『こうすべきだった』をフィクションとしてちゃんと昇華させたことに唸らされた。今更だが、分岐点において自分自身と
しっかり向かい合うことができたなら、バタフライエフェクトだって起こすことができたのだろうし。
『E.R.O.』
夏休み序盤。日がな一日を悶々と過ごしていた丹羽真は、おかず(意味はお察しください)を調達するべく自転車を転がして書店を訪れるのだが――
を描いた掌編。
基本的には藤和女々以外には落ち着いた態度を取り、かつ突っ込み役である真が書店で出くわした前川さんや御船流子に動揺する姿そして
ようやく調達できたにもかかわらず、二人の顔がオーバーラップする姿を滑稽さを交えて描いている。少し年長である小生からのアドヴァイスが
あるとしたら、「そんな背徳感など捨ててGo Ahead!」である。
そして敢えて突っ込ませてもらう。どうして隣町の書店に行かなかった?
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電波女と青春男(4) (電撃文庫 い 9-14) 文庫 – 2010/3/10
- 本の長さ335ページ
- 言語日本語
- 出版社アスキー・メディアワークス
- 発売日2010/3/10
- 寸法10.5 x 1.8 x 15 cm
- ISBN-104048683950
- ISBN-13978-4048683951
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登録情報
- 出版社 : アスキー・メディアワークス (2010/3/10)
- 発売日 : 2010/3/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 335ページ
- ISBN-10 : 4048683950
- ISBN-13 : 978-4048683951
- 寸法 : 10.5 x 1.8 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 708,738位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1986年生まれ。アスキー・メディアワークス刊の電撃文庫にて活躍する若手小説家。同社が主催する、第13回電撃小説大賞に『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』を投稿、最終選考で惜しくも受賞を逃す。その後、数度の改稿を経て電撃文庫にてデビュー(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 六百六十円の事情 (ISBN-13: 978-4048685832 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年1月5日に日本でレビュー済み
2011年4月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この4巻短編集とのことだから、本編と関係ないかなと思って、5巻以降に飛ばして読んだ所、
わからない登場人物がやたら出てきて、あれ?、と思っていた所でした。
戻って読んだ所、この巻は後の伏線を張るための短編集という感です。ちょっと強引のような・・・。
とはいえ、宇宙をテーマとして思春期の甘酸っぱさいっぱいの小品が揃っており、気楽に楽しめると思います。
印象的だったのが、電波女をやめて今もなお天然ぽいエリオは、子供の頃はハッキリした積極的な子だったこと、
多分このエリオの変化は、今後描かれていくのでしょうね。
わからない登場人物がやたら出てきて、あれ?、と思っていた所でした。
戻って読んだ所、この巻は後の伏線を張るための短編集という感です。ちょっと強引のような・・・。
とはいえ、宇宙をテーマとして思春期の甘酸っぱさいっぱいの小品が揃っており、気楽に楽しめると思います。
印象的だったのが、電波女をやめて今もなお天然ぽいエリオは、子供の頃はハッキリした積極的な子だったこと、
多分このエリオの変化は、今後描かれていくのでしょうね。
2010年3月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
僕は短編は読んでなかったので今回の短編集はうれしかったです。
特に幼少時代のエリオはなんかハキハキしていて読んでいて良かったです。エリオが失踪してしまって女々さんとの関係が冷えてしまった所を読んで見たいという感想が残りました。
最後の章の真君は青春しすぎというか贅沢なやつでした(笑)
特に幼少時代のエリオはなんかハキハキしていて読んでいて良かったです。エリオが失踪してしまって女々さんとの関係が冷えてしまった所を読んで見たいという感想が残りました。
最後の章の真君は青春しすぎというか贅沢なやつでした(笑)
2018年12月1日に日本でレビュー済み
それぞれのキャラのショートショート集?
エリオの話中心に印象を書きますと、小学生のころから、エリオは宇宙への関心が強く、活発な子でした。
今迄の印象からは意外に思えますが走り回ったり、アウトドアなタイプだったようです。
いや、成長してからも外は徘徊しているのだったか。
とにかくそんな小学生エリオは、公園で奇妙なオッサンに出会います。
宇宙に行ったことのあるというおっさんの話を、目を輝かせて聞くエリオ。
エリオの良き相談相手になってくれる、ややくたびれた精神を持つおっさん。
エリオはやはり同級生などよりも、宇宙が、そこに輝く星が好きだったんだなと、そういう精神?を垣間見ました。
他の主要キャラが恋愛や異性への関心について描かれているなか、エリオはひたすらに、エリオです。
もしかするとエリオは、異性への興味が薄い?
公園のおっさんという年上男性(?)に惹かれたという見方は―――ないか(笑)
エリオの話中心に印象を書きますと、小学生のころから、エリオは宇宙への関心が強く、活発な子でした。
今迄の印象からは意外に思えますが走り回ったり、アウトドアなタイプだったようです。
いや、成長してからも外は徘徊しているのだったか。
とにかくそんな小学生エリオは、公園で奇妙なオッサンに出会います。
宇宙に行ったことのあるというおっさんの話を、目を輝かせて聞くエリオ。
エリオの良き相談相手になってくれる、ややくたびれた精神を持つおっさん。
エリオはやはり同級生などよりも、宇宙が、そこに輝く星が好きだったんだなと、そういう精神?を垣間見ました。
他の主要キャラが恋愛や異性への関心について描かれているなか、エリオはひたすらに、エリオです。
もしかするとエリオは、異性への興味が薄い?
公園のおっさんという年上男性(?)に惹かれたという見方は―――ないか(笑)
2010年3月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
丹羽真がエリオたちに会う前の短編集。流子編、前川さん編、エリオ編、丹羽編そして青春編と各登場人物ごとの青春(エリオは子供時代のエピソード)物語があります。特にエリオと丹羽君のお話しがおもしろかった。エリオは今の性格とかなり異なっているので、彼女に起きた謎の失踪事件が気になるところです.また丹羽編は中学生の異性や恋愛に対する不確かなもどかしさがよく描かれていています。「青春てなんだよ」と苦悩する姿は高校生の青春男・丹羽真より大人っぽく感じました.入間さんも普通のラノベが書けるんだと感心した作品でした.ブリキさんのイラストもふんだんに使われていてこちらも高得点でした.
2011年11月21日に日本でレビュー済み
アニメの続きだったので、この巻で初めて文庫版「電波女」に触れました。
キャラクターの描き方は魅力的です。かわいいです。
ただ、この作者のスタイルなのか非常に比喩的形容詞が多い、言葉を着飾ると言うより無理やり厚着させているようなボテボテ感。
悪く言えば、中高生が覚えた難しい表現を使いたくなってるような不格好感・違和感。慣用句の使い方も微妙におかしかったり。
ちょっと疲れちゃいました。
いや、むしろ丹羽くんが語り部なのだから、それで問題ないのか・・。
キャラクターの描き方は魅力的です。かわいいです。
ただ、この作者のスタイルなのか非常に比喩的形容詞が多い、言葉を着飾ると言うより無理やり厚着させているようなボテボテ感。
悪く言えば、中高生が覚えた難しい表現を使いたくなってるような不格好感・違和感。慣用句の使い方も微妙におかしかったり。
ちょっと疲れちゃいました。
いや、むしろ丹羽くんが語り部なのだから、それで問題ないのか・・。
2013年7月13日に日本でレビュー済み
子供時代の話がエリオ目線で語られてるんだけど、
別人なんだよね。
活発だとか、体育会系だとか、イロイロ違うのは
失踪事件で変わったのは分かる。
でも、頭の回転が早くって、
そこにすんごく違和感を感じながら読む。
いつものノンビリ思考回路に変化するとは思えん。
最後の3ページでスマキンの言葉足らずな発言の間には
3〜5行の思考が巡ってるって解って納得。
そんな目で一巻から読み直す楽しみができた。
私は考えたことをそのまま口に出す人なんですが、
失言を減らそうと数行考えてから話す時期も
あったなぁって事も思い出せた。
別人なんだよね。
活発だとか、体育会系だとか、イロイロ違うのは
失踪事件で変わったのは分かる。
でも、頭の回転が早くって、
そこにすんごく違和感を感じながら読む。
いつものノンビリ思考回路に変化するとは思えん。
最後の3ページでスマキンの言葉足らずな発言の間には
3〜5行の思考が巡ってるって解って納得。
そんな目で一巻から読み直す楽しみができた。
私は考えたことをそのまま口に出す人なんですが、
失言を減らそうと数行考えてから話す時期も
あったなぁって事も思い出せた。
2011年6月12日に日本でレビュー済み
リュウシさん、前川さん、藤和エリオ、丹羽真のそれぞれの過去を描いた話
リュウシさんと前川さんは恋愛がらみで起きた自分の心の中にあるもやもやを解消する話。
エリオは宇宙飛行士を目指す小学生の時に起こった話で、昔はこんなにしっかりしていたのか・・・と思わせられましたw
そして特にこの中でおすすめするのが丹羽くんの過去の話はこの本のポイントとなる青春ポイントのはじまりをかいた話で
この話を読んだあとに1巻のi can not fly のポイントを見たら、感じ方が変わりました。
というか丹羽くんは根っからの青春男なんだな、と感じさせられました。
これらの話は電波女と青春男の見方が増え、面白さをさらに引き出してくれました
リュウシさんと前川さんは恋愛がらみで起きた自分の心の中にあるもやもやを解消する話。
エリオは宇宙飛行士を目指す小学生の時に起こった話で、昔はこんなにしっかりしていたのか・・・と思わせられましたw
そして特にこの中でおすすめするのが丹羽くんの過去の話はこの本のポイントとなる青春ポイントのはじまりをかいた話で
この話を読んだあとに1巻のi can not fly のポイントを見たら、感じ方が変わりました。
というか丹羽くんは根っからの青春男なんだな、と感じさせられました。
これらの話は電波女と青春男の見方が増え、面白さをさらに引き出してくれました