[あらすじ]
ナポレオンの遠征軍が迫るカイロ。エジプト政界第三位の実力者に仕える若き執事・アイユーブは、読み始めると死を突きつけられても読むのを止められない(ほど面白い)という稀書“災厄の書”をナポレオンに献上することを提案します。 ところが、実際にはそんな本は存在せず、“夜の種族”を名乗る女性が夜毎に語る物語を口述筆記することで“災厄の書”を作り出そうとしていたのです。
完全にハードルが上がった状態で語られる「物語」こそが、この本のメインとなります。
物語は一人の少年を主人公にして始まります。彼の生涯が綴られるのですが、なんというか、RPGで迷宮の最奥に鎮座する魔王がどうやって誕生したのかを描いたような内容です。
イスラームの帝国で大王の末子として生まれたアーダムは、容貌の醜さから疎まれ、乳母(実は魔女)によって孤独に育てられ、妖術と謀略に長けた王子として成長します。
彼は騎兵100騎で敵国を崩壊させると宣言すると、敵国の中枢である邪教団に潜入しました。しかし、祭神である蛇のジンニーアと出会うと、その力に惚れ込み弟子となります。妖力を高めたアーダムは父王を殺して帝位を簒奪し、大王となったのです。
絶大な権力を得ると、蛇神の生け贄を無尽蔵に生み出すため迷宮を造りました。迷宮には魔物が棲みつき、魔物は財宝を溜め込みます。財宝を狙い数多の盗っ人や冒険者が侵入し、その大半が命を落とします。それが蛇神の生け贄となるのです。
アーダムと蛇神は互いに協力関係で力をつけていきますが、アーダムは蛇神の目的――能力の高い妖術師の子種を媒介とした自身の復活――を知ります。
これを裏切りと感じたアーダムは蛇神を出し抜き復讐することを誓いました。夢を見ると考えを読まれるため、眠りを絶ちます。耐え難い眠りへの飢えを紛らわすため、アーダムは女を犯し魔物を屠り臣下を殺します。
いつしかアーダムは悪逆の魔王として恐れられるようになるのでした。
そして千年後、新たに二人の人物を主人公に加え物語は続きます。彼らは対立する関係になり、協力する関係になり、著者と著書の関係になり、物語を紡いでいくのです。
実に読み応えがあります。
さらに、この本の特徴は語り手が多重に存在することです。サウジアラビアで本書の英訳版を手に入れたとあとがきで語られ、この物語がいかに語り継がれてきたかが注釈によって考察されます。作中ではアイユーブが“災厄の書”の物語を編纂し、物語内ではアーダムが魔術書を書き、それを魔術師ファラーが読み込みます。
イスラーム世界のエキゾチックな雰囲気を味わいつつ、物語の入れ子構造にひたってみてはいかがでしょうか。
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アラビアの夜の種族 単行本 – 2001/12/1
古川 日出男
(著)
語られるのは、存在しない物語。13世紀エジプトを舞台とした奇書の登場!
聴きたい者の前に、物語は姿を見せる。ナポレオンのエジプト侵攻をくい止めるため、奴隷アイユーブが探しだした「災厄の書」。そして、物語が現実を浸食し始める--。
聴きたい者の前に、物語は姿を見せる。ナポレオンのエジプト侵攻をくい止めるため、奴隷アイユーブが探しだした「災厄の書」。そして、物語が現実を浸食し始める--。
- 本の長さ659ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2001/12/1
- ISBN-104048733346
- ISBN-13978-4048733342
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
聖遷暦1213年、偽りの平穏に満ちたカイロ。訪れる者を幻惑するイスラムの地に、迫りくるナポレオン艦隊。読むものを狂気に導き、歴史さえも覆す1冊の書。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2001/12/1)
- 発売日 : 2001/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 659ページ
- ISBN-10 : 4048733346
- ISBN-13 : 978-4048733342
- Amazon 売れ筋ランキング: - 353,322位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 91,988位文学・評論 (本)
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2016年4月21日に日本でレビュー済み
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2020年2月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
友人に勧められたので買いました。
これ以外にも、3冊でセットになっている同作品の別文庫バージョンもありますが、この一冊で上中下の内容が入っています。
二段組の600ページ程度なので文量は多めです。
文章の書き方や表現に癖があります。性表現中に出てくるとある四文字の単語が気になって気になって、こういう真面目な文章の書き方しておいてそういう表現する??みたいなギャップにとてもじわじわ来ました。
また、現実世界と物語世界を行ったり来たりし、次の章が待ちきれなくなる、本の魅力に取り憑かれていくのを追体験させられるようで良いです。
これ以外にも、3冊でセットになっている同作品の別文庫バージョンもありますが、この一冊で上中下の内容が入っています。
二段組の600ページ程度なので文量は多めです。
文章の書き方や表現に癖があります。性表現中に出てくるとある四文字の単語が気になって気になって、こういう真面目な文章の書き方しておいてそういう表現する??みたいなギャップにとてもじわじわ来ました。
また、現実世界と物語世界を行ったり来たりし、次の章が待ちきれなくなる、本の魅力に取り憑かれていくのを追体験させられるようで良いです。
2017年10月15日に日本でレビュー済み
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過去に文庫版で読みましたが、あらためて単行本を購入しました。ファンタジー?、伝奇?などのジャンルに入るとも思いますが、作者の想像力と筆力に感服しました。古川氏の最高傑作と思いますが、今後これを超える作品は出ないでしょうね。秋の夜長に、ご一読をお勧めします。
2014年3月4日に日本でレビュー済み
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友人に勧められて買ったのだが、こんなに厚い本田とは思わなかった。あとで時間があるときに、じっくり読もうと思っている。
2020年4月25日に日本でレビュー済み
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冒険譚としても歴史ものとしてもファンタジーとしても読める。異常な語彙力による巧みな筆致に脳がトリップする。しかし読みにくくはない。王道であり、怪書。
2019年6月24日に日本でレビュー済み
表題の通り。1時間読んでダメだったったら読む必要はない。その先には何もない。
延々と迂遠な表現が続く骨子の緩い物語。
他のレビューに引っ張られる必要はない。時間は有限。
延々と迂遠な表現が続く骨子の緩い物語。
他のレビューに引っ張られる必要はない。時間は有限。
2020年6月29日に日本でレビュー済み
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は、無かった。
イブラーヒームとアイユーブは国家の危機に何をしたかったんだろう。
どなたか教えて下さい。
イブラーヒームとアイユーブは国家の危機に何をしたかったんだろう。
どなたか教えて下さい。
2019年8月2日に日本でレビュー済み
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かつて書評を見て読みたかった本です。手に入ったので読んでみて良かった。幻想的でしかもSF。こうした作品はなかなかありません。とは言え、人によっては取っつきにくいかも知れないので星4つとしました。