のっぺら坊になってしまった駆け出しの挿絵画家むじなが、怪談作家くもはちと赤坂の紀伊国坂で出会うところから物語は始まる。その日は怪談で有名な小泉八雲の葬儀が行われていた。三流怪談作家であるくもはち小泉の死を怪談仕立てにした小説を書かねばならないため、二人は葬儀を取材する必要があったのだ。二人は首尾よく葬列に紛れ込むが、むじなが葬列を監視する男を発見する。男はなんと神経症のあまり小泉八雲に雇われた探偵に追われていると錯覚する帝大教師夏目金之助だった。
売れない二人は怪談の種を、出版社とのつてを、また小遣い稼ぎにと東奔西走するが、その度に奇妙な人々と出会う。怪談の種を売ろうとする不気味な文学青年に、不思議な力を持つ法制局参事官、大手出版社博文館の編集主任にして女学生に取り憑かれた自然主義文学の先駆者。そして妻が妖精にさらわれたという英国人アーサー氏。二人の妖怪をめぐる冒険が始まる。
妖怪というと恐ろしさを感じさせるために殺伐とした描写が多くなりそうなものだが、内容は表紙のイラストのようにユーモラスそのもの。歴史的事実かどうかはさておき、裏付けがなされた文士たちは一人一人特徴的でどのキャラクターも印象的である。また、登場する妖怪たちもいかにも『出そう』な時代が与えられた上、様々な資料から推し量られた妖怪の正体や能力は荒唐無稽な存在に一定のリアリズムを与える事に成功している。
とにかく読んでいて飽きさせられるところがない。また、最後でもたらされるとある人物の正体とそれをめぐる事件は、貴方に再び本書を手に取らせることだろう。
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くもはち 単行本 – 2003/7/1
大塚 英志
(著)
怪談の夏。ポップでおちゃめな新・妖怪ノベルズの誕生
義眼で三文文士の妖怪くもはちと挿絵描きののっぺらぼう・むじな。ラフカディオ・ハーンに田山花袋、柳田國男の秘話がいま二人のずっこけ妖怪コンビによって明らかに…
義眼で三文文士の妖怪くもはちと挿絵描きののっぺらぼう・むじな。ラフカディオ・ハーンに田山花袋、柳田國男の秘話がいま二人のずっこけ妖怪コンビによって明らかに…
- 本の長さ246ページ
- 言語日本語
- 出版社角川書店
- 発売日2003/7/1
- ISBN-104048734784
- ISBN-13978-4048734783
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
明治43年、法制局参事官柳田国男は花巻に見聞に出かける。そこで出会ったのは義眼の妖怪くもはちと、のっぺらぼうの妖怪むじな。彼らが引き起こす事件は迷走を続け…。柳田民俗学の資料をもとに描く妖怪ファンタジー。
登録情報
- 出版社 : 角川書店 (2003/7/1)
- 発売日 : 2003/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 246ページ
- ISBN-10 : 4048734784
- ISBN-13 : 978-4048734783
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,663,752位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 409,477位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1958年生まれ。まんが原作者、批評家。『「捨て子」たちの民俗学』(第五回角川財団学芸賞受賞)などがある。神戸芸術工科大学教授、東京藝術大学大学院兼任講師。芸術工学博士(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 映画式まんが家入門 (ISBN-13: 978-4048685627 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年7月30日に日本でレビュー済み
ストーリーに関しては他のレビューアさんが詳細に書いて下さっているのでそちらに譲ります。この作品はまず、漫画原作→漫画→小説という順番で発表されたそうです。私は先に同タイトルの小説を読み、そのあとがきからこのことを知りました。小説がおもしろかったので漫画にも手を出してみたのですが、内容はほぼ忠実というか同じです。漫画の方が視覚化された分わかりやすく、絵のイメージも原作と違和感なく、よかったです。ただ、小説の方がやはり説明が詳細になっていて、くもはちの正体や鏡との関係などわかりやすいと思いました。両方読んで二度楽しむのもありかと思います。続編はもう書かれないのでしょうか?シリーズになったらおもしろいと思うのですが。
2009年3月26日に日本でレビュー済み
ラフカディオ・ハーンの葬儀の場で出会う、のっぺらぼうのむじなと、正体不明のくもはち。二人の役回りは大塚作品を読んでいる人ならなじみの深いものである。もしかしたら、京極夏彦の京極堂シリーズの読者にもすっと入りやすいものかもしれない。
個人的な好みとしては木島日記などのほうが面白いと思ったのだが、くもはちの正体には思わずうなってしまった。そこは間違いなく面白かった。
あの時代の複雑な著名人の交友関係をうまく利用しているなと思った。
国語便覧などを読んでから読むとより面白く感じるかもしれない。
個人的な好みとしては木島日記などのほうが面白いと思ったのだが、くもはちの正体には思わずうなってしまった。そこは間違いなく面白かった。
あの時代の複雑な著名人の交友関係をうまく利用しているなと思った。
国語便覧などを読んでから読むとより面白く感じるかもしれない。