疾風怒濤の佐々木海人くん編(上)より視点が変わり、こちらは月田桜子・椿子さんの双子姉妹編。時間の経過は(上)からほぼ連続していますが、映画「スワロウテイル」の円都を思わせるスラムが主な舞台となります。
姉妹は海人の援助を蹴って自分たちの道を進む(これは海人のスタンスが嫌いなんじゃなくて、大いなる遠慮だと思う)わけですが、これがポップでアナーキー。ガールズ・マフィアの結成です。「秩序の破壊」をうたいますが、そちらメインではなく、現代マフィアの原組織であったコーザ・ノストラの精神を思わせるテーゼにつながるように描かれています。
あっという間に誰も看過できない存在となる組織のボスとして(正確には結成直後に)思いがけず海人と再会し、自分たちの未来に関する思いを話したときに異を唱えた海人に対し、姉妹が投げつける「宝石箱」のたとえは秀逸!それでも、3人はお互いがコインの表裏ということを理解している(ふしがある)ため、完全に反目し合うというのではなく、時には信頼する友人として、時には共同作戦のパートナーとして前へ進みます。具体的に描かれているわけではないんですが、姉妹との共同作戦時に海人が見せる、「しょーがねーなぁ(彼としてはもっと胸の痛む深刻な問題なんだけど)」感がなんかいいです(笑)。しかも、作戦中に読んでる本がまたすげぇ!
北上次郎氏の解説にもあるように、悲惨な中に妙な明るさのある巻です。(上)より凝った設定ですが、こちらの巻のほうが、各登場人物の思いが出揃ってストレートに伝わってくることもあり、スピードが増しても軽やかに読めます。バイプレイヤーに回った海人の印象も薄すぎず、かといって主張しすぎずという立ち位置で絶妙でしたのでこの評価とします。
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裸者と裸者 下 単行本 – 2004/10/1
打海 文三
(著)
邪悪な許しがたい異端の
- 本の長さ333ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2004/10/1
- ISBN-104048735586
- ISBN-13978-4048735582
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2004/10/1)
- 発売日 : 2004/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 333ページ
- ISBN-10 : 4048735586
- ISBN-13 : 978-4048735582
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,308,850位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 328,024位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年11月20日に日本でレビュー済み
(上)で、どちらがしゃべっているのか分からない、とても存在感の強い双子姉妹が主人公のお話です。
最初から最後まで、ノンストップの彼女たちの活躍が楽しめます。
わたしがレビューを書いている時点で、
(上)★★★★★
(下)★★★★1/2☆
下巻の評価が若干落ちるのは、男性の読者が多いためかもしれません。
続編が楽しみですね。
最初から最後まで、ノンストップの彼女たちの活躍が楽しめます。
わたしがレビューを書いている時点で、
(上)★★★★★
(下)★★★★1/2☆
下巻の評価が若干落ちるのは、男性の読者が多いためかもしれません。
続編が楽しみですね。
2010年12月5日に日本でレビュー済み
近未来の日本の内戦を生き抜く少年少女の物語。
上巻は少年兵が主人公でしたが、
下巻はゲリラ活動の双子少女の視線。
上巻は茨城あたりが主戦場、
下巻は多摩ニュータウンあたり。
町田に住んでるので
見知った地名が多くて馴染みやすかったです。
上巻同様、ご都合主義が過ぎる展開や、
言葉のロジック先行で
状況説明が足りない場面も目立ちましたが、
それでもグイグイと物語に引き込む筆力に脱帽。
上下巻で視点・主人公が変わるのですが、
共通してるのは絶望しきってない空気感でしょうか。
「イマドキの漫画っぽい」
と評すると否定的に聞こえるかもしれませんが、
読者のほとんどがその「イマドキの漫画」を
読んで血肉にしてる世代です。
しかしそんな世代でも納得できる、
武装集団の力のバランスの説明、
ゲームではないリアルな戦闘描写、
きっと楽しめると思います!
上巻は少年兵が主人公でしたが、
下巻はゲリラ活動の双子少女の視線。
上巻は茨城あたりが主戦場、
下巻は多摩ニュータウンあたり。
町田に住んでるので
見知った地名が多くて馴染みやすかったです。
上巻同様、ご都合主義が過ぎる展開や、
言葉のロジック先行で
状況説明が足りない場面も目立ちましたが、
それでもグイグイと物語に引き込む筆力に脱帽。
上下巻で視点・主人公が変わるのですが、
共通してるのは絶望しきってない空気感でしょうか。
「イマドキの漫画っぽい」
と評すると否定的に聞こえるかもしれませんが、
読者のほとんどがその「イマドキの漫画」を
読んで血肉にしてる世代です。
しかしそんな世代でも納得できる、
武装集団の力のバランスの説明、
ゲームではないリアルな戦闘描写、
きっと楽しめると思います!
2008年8月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
上巻の主人公が地位を得て動きが制約される事になったので、
下巻では主役が交代して、双子の姉妹が物語の中心となります。
舞台は東京西部の人口密集地。スラムと化した市街地で、
武装マフィアの抗争と人種差別者のテロが横行しています。
上巻主人公も武装勢力の一因として首都東京のパワーバランスの一翼を担いつつ、
混沌と化した無法地帯そのものが描かれていきます。
そこは、賄賂と麻薬と性産業が経済の源であり、権力を動かします。
金と武器を手にした者が武装集団を作り、他者を支配し搾取し、権力抗争を余儀なくされます。
品性や自己顕彰は何ら意味を持たず、刹那の快楽に異議を唱えるものはいません。
平和時には吐き気をもたらすような日常が、平坦に起伏無く充ち満ちています。
この下巻では、これが元はハードカバーであると言う事を思い知らされました。
ライトノベルの戦記エンターテイメント的な出世物語ではありません。
登場人物達は利益で繋がり、あっけなく死に、姦淫に抵抗を持ちません。
特に双子姉妹はその傾向が顕著で、刹那の衝動が行動の原理、
諦観により完結しきった瑞々しい思考で状況を判断し、
その場の事態を打開する事が目的であり、手段でもあります。
一応大局的には内戦終結という目標もありますが、
淡々延々と続く抗争と殺戮に気が滅入りました。
上巻のレビューでも書きましたが、これは架空戦記物とかいった類の娯楽ではありません。
おそらく現在の日本からでは遠い内戦下の国の様子を、
この日本に置き換えて、読者に突きつけるものなのです。
そんなわけで、上巻では主人公の出世物語とかで薄まっていた、
この内戦下の日本の、救いがたい不快な現状をまざまざと見せつけられます。
他に首都圏での戦闘もありますが、関東地方の地理や地形に興味がないものですから、
まったく現実味のない文字列としか受け取れませんでした。
もし下巻を地理上でも楽しもうとされるのならば、
少なくとも関東圏の地理がよく判っていないと、難しい事にご注意ください。
下巻では主役が交代して、双子の姉妹が物語の中心となります。
舞台は東京西部の人口密集地。スラムと化した市街地で、
武装マフィアの抗争と人種差別者のテロが横行しています。
上巻主人公も武装勢力の一因として首都東京のパワーバランスの一翼を担いつつ、
混沌と化した無法地帯そのものが描かれていきます。
そこは、賄賂と麻薬と性産業が経済の源であり、権力を動かします。
金と武器を手にした者が武装集団を作り、他者を支配し搾取し、権力抗争を余儀なくされます。
品性や自己顕彰は何ら意味を持たず、刹那の快楽に異議を唱えるものはいません。
平和時には吐き気をもたらすような日常が、平坦に起伏無く充ち満ちています。
この下巻では、これが元はハードカバーであると言う事を思い知らされました。
ライトノベルの戦記エンターテイメント的な出世物語ではありません。
登場人物達は利益で繋がり、あっけなく死に、姦淫に抵抗を持ちません。
特に双子姉妹はその傾向が顕著で、刹那の衝動が行動の原理、
諦観により完結しきった瑞々しい思考で状況を判断し、
その場の事態を打開する事が目的であり、手段でもあります。
一応大局的には内戦終結という目標もありますが、
淡々延々と続く抗争と殺戮に気が滅入りました。
上巻のレビューでも書きましたが、これは架空戦記物とかいった類の娯楽ではありません。
おそらく現在の日本からでは遠い内戦下の国の様子を、
この日本に置き換えて、読者に突きつけるものなのです。
そんなわけで、上巻では主人公の出世物語とかで薄まっていた、
この内戦下の日本の、救いがたい不快な現状をまざまざと見せつけられます。
他に首都圏での戦闘もありますが、関東地方の地理や地形に興味がないものですから、
まったく現実味のない文字列としか受け取れませんでした。
もし下巻を地理上でも楽しもうとされるのならば、
少なくとも関東圏の地理がよく判っていないと、難しい事にご注意ください。
2011年6月18日に日本でレビュー済み
上巻は「ビジネスとしての戦争」の内面を描写していました。
下巻では、その理不尽なシステムに人を巻き込むメカニズムを学べます。
戦争孤児であり、戦争弱者。
双子の少女マフィア「パンプキンガールズ」の蜂起を軸に、組織的観点から戦争の裏事情を描写。
人を戦いへと動かす根本原理は何か?
それは「信仰心」です。
全知全能な文献「聖書」。
それは、かつての戦争、これからの戦争、そして理念なき戦争にすら活用されてきた歴史を持ちます。
権力者たちの格好の「ツール」とされてきた、「宗教と戦争」の皮肉な関係を指摘する1冊です。
下巻では、その理不尽なシステムに人を巻き込むメカニズムを学べます。
戦争孤児であり、戦争弱者。
双子の少女マフィア「パンプキンガールズ」の蜂起を軸に、組織的観点から戦争の裏事情を描写。
人を戦いへと動かす根本原理は何か?
それは「信仰心」です。
全知全能な文献「聖書」。
それは、かつての戦争、これからの戦争、そして理念なき戦争にすら活用されてきた歴史を持ちます。
権力者たちの格好の「ツール」とされてきた、「宗教と戦争」の皮肉な関係を指摘する1冊です。
2011年4月12日に日本でレビュー済み
上巻は、カイトを中心とする狭い交友範囲が軍隊といった
狭い世界で動くので気にならなかったが、椿子と桜子が
スラム地区といえども一般地区で行動する下巻は、上巻で
気にならなかった世界観の粗みたいなものが目について
いまいちのめり込めなかった。
ドラッグ産業が経済の中心という設定の割には、中毒者が
社会に溢れてる描写がないし、軍隊で銃を乱射するジャンキー
も出てこない。ドラッグが冨を表す記号にすぎないような
印象を与える。レイプ等の残虐行為が語られても、その
心理的後遺症に苦しむ女性は出てこない。
全てがなんかオモチャっぽい。
語られるのは関東の一部分の武装勢力の戦闘と『政治』という
名で語られるグダグダ、それが延々と続くので飽きてしまった。
印象としては、過激派のテロ日記を読まされている気分だった。
フェミニズムとか、被差別者の闘い云々あたりも、なんか
武力集団というより『運動』ぽい感じだった。
狭い世界で動くので気にならなかったが、椿子と桜子が
スラム地区といえども一般地区で行動する下巻は、上巻で
気にならなかった世界観の粗みたいなものが目について
いまいちのめり込めなかった。
ドラッグ産業が経済の中心という設定の割には、中毒者が
社会に溢れてる描写がないし、軍隊で銃を乱射するジャンキー
も出てこない。ドラッグが冨を表す記号にすぎないような
印象を与える。レイプ等の残虐行為が語られても、その
心理的後遺症に苦しむ女性は出てこない。
全てがなんかオモチャっぽい。
語られるのは関東の一部分の武装勢力の戦闘と『政治』という
名で語られるグダグダ、それが延々と続くので飽きてしまった。
印象としては、過激派のテロ日記を読まされている気分だった。
フェミニズムとか、被差別者の闘い云々あたりも、なんか
武力集団というより『運動』ぽい感じだった。
2012年2月13日に日本でレビュー済み
上巻で感じた「長い粗筋」ではないかという悪い予感そのままに話は進んだ。
上巻は主人公佐々木海人の成長とキャラクターに救われてなんとか読み進めることができたが、下巻は双子姉妹に視点が移り、読み進めるのは苦行に等しかった。内乱が続く世界での様々な武装勢力同士の衝突、思惑のぶつかり合い、離合集散、ドラッグと倒錯した性、そのような混沌とした世界を描くために、下巻ではあえてキャラクターを排除した双子姉妹を主人公にしたのだと思う。双子は文中で全く書き分けられることがない。これはキャラクターの放棄を宣言しているのであり、混沌とした世界にただ身を任せる様を描くための存在だと考えられる(その証拠は物語の最後に示される)。一方、上巻ではその正義感と誠実さを発揮していた佐々木海人も、脇役に追いやられてキャラクターを抑圧されている。
そういった作者の意図からすれば、理屈の上ではこういうやり方もありだ、というのは頭では理解できるものの、ただナントカ軍がナントカ軍を倒しただかのまるで歴史の教科書みたいな文章の羅列ばかりで、ストーリーらしいストーリーもなく、当然の帰結として魅力あるキャラクターもおらずでは、いったい何をもって面白く感じたらいいのかがさっぱり分からなかった。
上巻は主人公佐々木海人の成長とキャラクターに救われてなんとか読み進めることができたが、下巻は双子姉妹に視点が移り、読み進めるのは苦行に等しかった。内乱が続く世界での様々な武装勢力同士の衝突、思惑のぶつかり合い、離合集散、ドラッグと倒錯した性、そのような混沌とした世界を描くために、下巻ではあえてキャラクターを排除した双子姉妹を主人公にしたのだと思う。双子は文中で全く書き分けられることがない。これはキャラクターの放棄を宣言しているのであり、混沌とした世界にただ身を任せる様を描くための存在だと考えられる(その証拠は物語の最後に示される)。一方、上巻ではその正義感と誠実さを発揮していた佐々木海人も、脇役に追いやられてキャラクターを抑圧されている。
そういった作者の意図からすれば、理屈の上ではこういうやり方もありだ、というのは頭では理解できるものの、ただナントカ軍がナントカ軍を倒しただかのまるで歴史の教科書みたいな文章の羅列ばかりで、ストーリーらしいストーリーもなく、当然の帰結として魅力あるキャラクターもおらずでは、いったい何をもって面白く感じたらいいのかがさっぱり分からなかった。
2004年11月26日に日本でレビュー済み
下巻では主人公が変わります。が、やってることは上巻と同じに見えてしまいます。なおかつ時間軸は引き継いでいるので、幼年期からはじまる上巻からすると平板な印象を受けるのも否定しがたい事実。戦闘描写なども、一少年兵からスタートする上巻に比べ、淡白な気がするのです。長距離トラックの運転手ということで、色々な展開を勝手に想像しちゃっていたので、なおのこと勿体無く思います。フェミニズムに関心を寄せるという打海さん、この上下巻の書き分けはまた別の意図があったことは読み取れます。が、純粋エンターテイメントとしては、まあ、個人的に上巻よりも落ちるかなあ、と。それとも、これは僕が男だから?
あと、ガウリなどおいしいキャラクターを使い切ってないし、シリーズ化するつもりなんじゃないでしょうか。そうなってくると、この下巻の位置づけもわかりやすくなるかもしれませんね。
あと、ガウリなどおいしいキャラクターを使い切ってないし、シリーズ化するつもりなんじゃないでしょうか。そうなってくると、この下巻の位置づけもわかりやすくなるかもしれませんね。