不思議な雰囲気の本だ。断然荒っぽく要約すれば、特異な能力をもった少年のスリリングな一人旅の物語。道程は岩見沢から室蘭を経て、最終目的地が函館。
その函館に瀕死の父親がおり、孤児収容施設から脱走した宗太という少年は、施設からの追っ手をかわしつつ、一路徒歩で函館を目指す。(最後は密かにバスに便乗するが)。ハーメルンの笛吹き男(連れ去られる130人の子供)そしてホロコーストのユダヤ人殺戮、大戦末期のサハリンでのソ連軍の蛮行、などが通奏低音になって、現代の北海道に新たな暴力と悲劇が起こる。
函館はあくまでも脱走した少年の「最終目的」地。函館に関する直接の叙述は多くはなく、あくまでも遠くから(特に室蘭方面から遥かに)の目線で描かれることの多い函館。
北海道の中では、本州から渡ってきての「中継点」、あるいは新たな旅立ちの「出発点」として描かれることの多い函館が、道央方面からの「最終目的地」として書かれるという視点が新鮮だ。特に室蘭を過ぎたあたりで噴火湾の向こう側に見えてくる駒ケ岳の姿の叙述は美しく感動的。
著者の大崎善生氏は札幌出身で将棋雑誌の編集長から作家になった人。奥さんは碁士。フィクションもノンフィクションもこなす多彩な作家で、従来は恋愛物が多かったのだが、これは違うジャンルという。
ファンタジー・ホラーともいうべきか、ともかく不思議な本だ。異質な「旅行記」ともいえるかもしれない。たまにはまったく肩の力を抜いて、実利からも遠ざかった読書をしたいという気分には適う本かも知れない。
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存在という名のダンス 上 単行本 – 2010/1/30
大崎 善生
(著)
厳しいルールと鉄条網で世間から隔離された施設で暮らしていた少年は、父危篤の情報を得て脱走、拮抗する悪の組織と対決することに――。人間存在の根源を問う、著者渾身の壮大なるロードノベルファンタジー!
- 本の長さ284ページ
- 言語日本語
- 出版社角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日2010/1/30
- ISBN-10404874027X
- ISBN-13978-4048740272
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商品の説明
著者について
1957年北海道生まれ。00年『聖の青春』でデビュー、新潮学芸賞受賞。『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞、『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。その他の著書に『アジアンタムブルー』『スワンソング』『ディスカスの飼い方』など多数。
登録情報
- 出版社 : 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010/1/30)
- 発売日 : 2010/1/30
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 284ページ
- ISBN-10 : 404874027X
- ISBN-13 : 978-4048740272
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,773,055位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年11月16日に日本でレビュー済み
上下とも読了しての感想です。
大崎さんの本は「聖の青春」と「将棋の子」がとても好きで、良い作家だと思っています。
この本はタイトルに惹かれて読み始めましたが、予想とはまったく違い、ファンタジーでした。
ファンタジー自体は嫌いではないのですが、これはいただけませんでした。
ストーリーはご都合主義的すぎ、安易すぎで、引き込まれるものがありません。
ファンタジーなら他にも良書は沢山あり、あえて大崎さんがこのジャンルに取り組んだことが、ちょっと
理解に苦しみます。本当にこういう物語を描きたかったのでしょうか。
余り悪い評価のレビューは載せないことにしているのですが、今回は投稿します。
大崎さんの本は「聖の青春」と「将棋の子」がとても好きで、良い作家だと思っています。
この本はタイトルに惹かれて読み始めましたが、予想とはまったく違い、ファンタジーでした。
ファンタジー自体は嫌いではないのですが、これはいただけませんでした。
ストーリーはご都合主義的すぎ、安易すぎで、引き込まれるものがありません。
ファンタジーなら他にも良書は沢山あり、あえて大崎さんがこのジャンルに取り組んだことが、ちょっと
理解に苦しみます。本当にこういう物語を描きたかったのでしょうか。
余り悪い評価のレビューは載せないことにしているのですが、今回は投稿します。