ぞくりと怖く、ほっこりとあたたかい、そんな味わいのある宮部さんの江戸もの作品。六つの短篇を収めた本書も、読んでいる間は江戸の風に吹かれ、闇に遊ぶかのような心持ち。半端ない面白さを満喫させられました。久しぶりに宮部さんの江戸ワールドに出かけたのですが、行ってみて良かったあ! お腹いっぱい、大満足の一冊です。
「坊主の壺(つぼ)」「お文(ふみ)の影」「博打眼(ばくちがん)」「討債鬼(とうさいき)」「ばんば憑き(つき)」「野槌(のづち)の墓」の、全部で六つの短篇を収録。なかでも、表題作「ばんば憑き」を筆頭に、「博打眼」「討債鬼」が存分の読みごたえで堪能させられましたね。
語り手の佐一郎ならずとも、<ぞわりと、背中を悪寒が駆け抜け>る「ばんば憑き」。佐一郎とお志津の夫婦の関係を描いた序盤から、ふたりが泊まる宿の部屋に老女が入り、話が少しずつきしみ始め、やがて急速調で怖さが増していく・・・。宮部さんの語りの旨味が遺憾なく発揮された、これはただならない怖さを秘めた怪談の逸品。読んでる途中から肌が粟立つ感じで、ぞくぞくさせられましたよ。
台詞とか仕草とか内面の感情とか、子供の描写が実に上手いのもこの作家ならでは。「博打眼」では、七つになる近江屋の娘、お美代のおしゃまさんぶりに、「討債鬼」では、主人公の利一郎を助ける腕白小僧、金太、捨松(すてまつ)、良介(よしすけ)のいたずら三人組の活躍に、にこにこしちゃいました。
「博打眼」ではまた、お美代が言葉を交わす狛犬の阿吽(あうん)さんも可愛かったな。お美代と阿吽さんに話のスポットライトが当たる本文149頁〜151頁にかけてのシーン、大好きです。
おしまいの「野槌の墓」も良かったな。主人公の源五郎右衛門(げんごろうえもん)を怪異へと導く猫又のお玉さん。彼女の粋な姐(あね)さんぶり、艶(あで)やかな化けっぷりが魅力的。話の途中から、宮部さんの僚友・京極夏彦さんが舞台袖から顔を覗かせている雰囲気も感じて、大いに楽しませていただきました。
収録作品の初出は、以下のとおりです。
「坊主の壺」 「怪」vol.0015(2003年8月)
「お文の影」 「怪」vol.0017(2004年10月)
「博打眼」 『Anniversary 50』(カッパ・ノベルス 2009年12月)
「討債鬼」 「怪」vol.0026(2009年4月)
「ばんば憑き」 「怪」vol.0029(2010年3月)
「野槌の墓」 「オール讀物」(2010年5月号)
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ばんば憑き 単行本 – 2011/3/1
宮部 みゆき
(著)
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湯治旅を終えた若夫婦が、帰途、雨で足止めとなり老女との相部屋を引き受けた。老女が語り出す50年前の忌まわしい出来事とは。「〈ばんば〉とは恨みの念を抱いた亡者のこと…」。ぞくりと怖く、心騒がす全6話。
- 本の長さ376ページ
- 言語日本語
- 出版社角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日2011/3/1
- 寸法13.8 x 3.3 x 19.5 cm
- ISBN-104048741756
- ISBN-13978-4048741750
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商品の説明
著者について
1960年生まれ。東京都出身。87年「我らが隣人の犯罪」オール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、『火車』で山本周五郎賞、『理由』で直木賞、『名もなき毒』で吉川英治文学賞を受賞する。
登録情報
- 出版社 : 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011/3/1)
- 発売日 : 2011/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 376ページ
- ISBN-10 : 4048741756
- ISBN-13 : 978-4048741750
- 寸法 : 13.8 x 3.3 x 19.5 cm
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- - 50,386位文芸作品
- カスタマーレビュー:
著者について
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1960年生まれ。東京都出身。東京都立墨田川高校卒業。
法律事務所等に勤務の後、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。
1992年 「龍は眠る」で第45回日本推理作家協会賞長編部門、 同年「本所深川ふしぎ草紙」で第13回吉川英治文学新人賞。1993年 「火車」で第6回山本周五郎賞。1997年 「蒲生邸事件」で第18回日本SF大賞。1999年 「理由」で第120回直木賞。2001年 「模倣犯」で毎日出版文化賞特別賞、第5回司馬遼太郎賞 、 第52回芸術選奨文部科学大臣賞文学部門をそれぞれ受賞。2007年 「名もなき毒」で第41回吉川英治文学賞受賞。2008年 英訳版『BRAVE STORY』でThe Batchelder Award 受賞。2022年 第70回菊池寛賞受賞。
イメージ付きのレビュー
2 星
それほど面白くなかった
6作の短編集。同時期にこの「ばんば憑き」と角川文庫の「お文の影」を購入してしまったので「お文の影」を読んだ。角川が既刊作品「ばんば憑き」を勝手に「お文の影」に改題してしまったので誤解と無駄な出費に陥る。あたかも別書籍であるかのような変更はやめるべきだ。消費者を騙すに等しい。「お文の影」は奇しくもこの作品の前に読んだ長篇の「おまえさん」と同じ登場人物政五郎、三太郎のおでこを起用した短編である。なぜ著者は長篇大作の一部を別の短編集として使ったのだろう。一般文学通算2384作品目の感想。2020/03/26 11:55
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年3月5日に日本でレビュー済み
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2011年7月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
宮部さんの江戸者にハズレはないですが、この短編集は「恐ろしく、そして暖かい」。
人の心が織りなす闇を描いているものがほとんどですが、同時に、人がそれを
乗り越えていく「癒し」も紡ぎだされます。
おでこと政五郎のコンビや、青野利一郎のおなじみのキャストが出てくるところ
も、宮部ファンには嬉しいところですが、私は最終話の「野槌の墓」に心を打たれました。
若くして世を去った恋妻と、残された父と一人娘。
付喪神から、悪しきものへと姿を変えてしまった野槌。
今も亡き妻を恋い慕いながら、娘を守りつつ、悪化身となってしまった野槌を
斬りにゆき、普段は人と関わりを持たない数多の化け物たちから感謝され、
お盆の一瞬だけ、目に見えることのない、妻の姿を垣間見るラスト。
人の心、欲が織りなす悪事を残酷なまでに描きだしながらも、温かさが心に
残る読後感なのは、人物描写にすぐれた宮部さんならでは。
夏の夜、本作を一気に読みとおしてしまいました。
張り子の犬が人々を救う「博打眼」も、読み終わった後、じんわりと涙が
にじんでいることに気づく、怖くも温かな作品です。
人の心が織りなす闇を描いているものがほとんどですが、同時に、人がそれを
乗り越えていく「癒し」も紡ぎだされます。
おでこと政五郎のコンビや、青野利一郎のおなじみのキャストが出てくるところ
も、宮部ファンには嬉しいところですが、私は最終話の「野槌の墓」に心を打たれました。
若くして世を去った恋妻と、残された父と一人娘。
付喪神から、悪しきものへと姿を変えてしまった野槌。
今も亡き妻を恋い慕いながら、娘を守りつつ、悪化身となってしまった野槌を
斬りにゆき、普段は人と関わりを持たない数多の化け物たちから感謝され、
お盆の一瞬だけ、目に見えることのない、妻の姿を垣間見るラスト。
人の心、欲が織りなす悪事を残酷なまでに描きだしながらも、温かさが心に
残る読後感なのは、人物描写にすぐれた宮部さんならでは。
夏の夜、本作を一気に読みとおしてしまいました。
張り子の犬が人々を救う「博打眼」も、読み終わった後、じんわりと涙が
にじんでいることに気づく、怖くも温かな作品です。
2021年11月20日に日本でレビュー済み
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レビューを詳細に確認しない私のミスでは有りますが説明文に片方づつの表題内容を綴られては読みふける目的で買い漁る私のような愚か者には落とし穴でした。そこが残念
2011年5月13日に日本でレビュー済み
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宮部さんの初期作品「あやし」にでてきた政五郎さんの過去。
おでこちゃんが弓ノ助と奔走していない日常生活をチラっと見せたり・・・。
はたまた「おそろし」の三島屋おちかの周りにでてきた人の過去のいきさつ。
視点を変えても生き生きとしてかたられる登場人物の心。
まるで実際にいきているかのような人物描写。
宮部さん、やってくれますねぇと一気に読んでしまえます。
二度、三度と読み返すたびにいろいろな景色が見えます
あるいは、ものがたりのミルフィーユと言えます。
オススメです。
おでこちゃんが弓ノ助と奔走していない日常生活をチラっと見せたり・・・。
はたまた「おそろし」の三島屋おちかの周りにでてきた人の過去のいきさつ。
視点を変えても生き生きとしてかたられる登場人物の心。
まるで実際にいきているかのような人物描写。
宮部さん、やってくれますねぇと一気に読んでしまえます。
二度、三度と読み返すたびにいろいろな景色が見えます
あるいは、ものがたりのミルフィーユと言えます。
オススメです。
2014年10月12日に日本でレビュー済み
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ちょっとぞくっとしたり、ぐっときたり、1話1話楽しく読みました。
通勤電車の中で読み切れるのも良かったです。
宮部みゆきさんは昔から大好きで、これからも応援していきたいです。
通勤電車の中で読み切れるのも良かったです。
宮部みゆきさんは昔から大好きで、これからも応援していきたいです。
2014年4月12日に日本でレビュー済み
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本屋さんから持ち帰ったようなきれいなまんまの一冊でした。
早速カバーをかけて読んでおります。
みやべワールドにはまってしまっています。
天衣無縫の脳力からほとばしってくる言葉の紡ぎものですね。
早速カバーをかけて読んでおります。
みやべワールドにはまってしまっています。
天衣無縫の脳力からほとばしってくる言葉の紡ぎものですね。
2015年3月19日に日本でレビュー済み
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相変わらず、場面づくりのうまさに感心します。一行二行で舞台と背景をイメージしてしまう。穏やかな印象のものから、ぞくっとするようなものまで大変面白く読ませていただきました。
2013年5月12日に日本でレビュー済み
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妖怪・物の怪などに疎い私でしたがこれは大変読みやすく、
怖いというより、優しさにあふれた、ほのぼのとした短編集です。
怖いというより、優しさにあふれた、ほのぼのとした短編集です。