従来の「いわゆるラノベ」を期待していると違和感を感じるかもしれませんがなかなか
面白かったです。キャラクターから一歩引いて状況描写を重ねていくのは歴史小説で
よく使われる手法で、自分は 「この作者はラノベ以外にも相当読み込んで研究してい
るな」 と思いながら読ませていただきました。新しいフォーマットに挑戦しつつ 「安直に
叶ってしまった夢」 を捨てられるか?というテーマを語りきった意欲作だと思います。
…で、レビューを見ていると酷評意見もあるようですけど、中高生が読んで面白い
かというと確かに微妙です。というのも一人称で語る従来のラノベと異なり、本作は
全体の状況描写から入って個々人の視点に移っていくので、報道番組で現場中継
をみている感じに近いのです。司馬遼太郎ほどではありませんが田中芳樹(銀河
英雄伝説の人)くらいにはキャラクタを突き放して客観視した描写になります。いわ
ゆる群像劇ですね。
それと姉の視点でエラそうな意見が・・・という指摘も出ていますが、ある程度社会
経験のある人なら 「まあ妥当な指摘だよな」 という評価になると思います。ただ
当時現場にいた個々のキャラは全体状況がわからず、知りえる範囲の情報で
状況判断しているので、理想的な行動は取れなかった。それもひっくるめて、状況
の遷移を追っていくのがこの作品の読み方ではないでしょうか。
総合的に意欲作だと思いますし、賞の審査員氏もその点を評価したのではない
かと思います。自分は楽しめましたよ。
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タタの魔法使い (電撃文庫) 文庫 – 2018/2/10
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応募総数5,088作品の頂点――第24回電撃小説大賞《大賞》受賞作!
2015年7月22日12時20分。弘橋高校1年A組の教室に異世界の魔法使いを名乗る謎の女性、タタが突如出現した。後に童話になぞらえ「ハメルンの笛吹事件」と呼ばれるようになった公立高校消失事件の発端である。
「私は、この学校にいる全ての人の願いを叶えることにしました」
タタの宣言により、中学校の卒業文集に書かれた全校生徒および教職員の「将来の夢」が全て実現。そして、あらゆる夢が叶った世界が現れる。だがそれは、ある生徒の『異世界を旅したい』という願いが実現したことによる異郷の地だった――。
現実から隔絶された世界での彼らの武器は、かつての夢。日本へ帰還するため、全校生徒による過酷な異世界サバイバルの幕が上がる。
2015年7月22日12時20分。弘橋高校1年A組の教室に異世界の魔法使いを名乗る謎の女性、タタが突如出現した。後に童話になぞらえ「ハメルンの笛吹事件」と呼ばれるようになった公立高校消失事件の発端である。
「私は、この学校にいる全ての人の願いを叶えることにしました」
タタの宣言により、中学校の卒業文集に書かれた全校生徒および教職員の「将来の夢」が全て実現。そして、あらゆる夢が叶った世界が現れる。だがそれは、ある生徒の『異世界を旅したい』という願いが実現したことによる異郷の地だった――。
現実から隔絶された世界での彼らの武器は、かつての夢。日本へ帰還するため、全校生徒による過酷な異世界サバイバルの幕が上がる。
- 本の長さ296ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2018/2/10
- 寸法10.6 x 1.5 x 15 cm
- ISBN-104048936115
- ISBN-13978-4048936118
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商品の説明
著者について
●うーぱー:第24回電撃小説大賞にて《大賞》を『タタの魔法使い』で受賞。
●佐藤 ショウジ:月刊ドラゴンエイジにて『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』(原作:佐藤大輔)を連載。シリーズ累計300万部の大ヒットとなる。そのほか、アニメ化された『トリアージX』や『FIRE FIRE FIRE』など多数の作品が刊行中。
●佐藤 ショウジ:月刊ドラゴンエイジにて『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』(原作:佐藤大輔)を連載。シリーズ累計300万部の大ヒットとなる。そのほか、アニメ化された『トリアージX』や『FIRE FIRE FIRE』など多数の作品が刊行中。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2018/2/10)
- 発売日 : 2018/2/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 296ページ
- ISBN-10 : 4048936115
- ISBN-13 : 978-4048936118
- 寸法 : 10.6 x 1.5 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 936,735位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年2月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読み終わって最初に思ったのが、この作品もタタの力で数千ものワナビ達の絶望を集めて出版されたのかもしれない。
夢が叶って作者の心中いかばかりかということをふと思いました。
で、作品の中身ですが、結論から言うと面白かったです。
この作品ってアンチと言うかなんというか既存の異世界モノ、さらには漂流モノに対する「なんで?」ってツッコミを大きくして作品として成立しているような印象を受けました。
集団での行動や世界の成り立ちにいちいち根拠か解説があって、人によってはうざく感じる人もいるかもしれませんが、自分は好印象でした。
例えば、ゴブリンの解説で生活圏を脅かされるから人を襲ったとかいう件でも、単にモンスターだから襲うのが性分であるとかいう設定ではないわけです。
私は、絶賛販売中の某ゲームメーカーIPである「モンスター○○○ー」とかでも、なんでドラゴンが狩られないといけないの?とか思ってしまうので。餌付けして、「ドラゴン森林公園」を造ってレジャー化したりは出来んのだろうか真剣に考えてしまうのです。
なぜ、戦うのか? なぜ、襲うのか?
って大事な動機付けな気がするんですが、その肉付けがしっかりあったのが今作だと思うんです。
なぜ、その願いなのか? 偶然、手に入れたものに甘んじて良いのか?
などの展開と問いかけなどもすごく良かった。
ただ、これだけ「なぜ?」という疑問とそれに対する解答を提示している作品なのに、肝心のタタはいったい何者で、異世界自体が作品内で実在するモノか否かというところも曖昧なのが消化不良であった(異空間の中の箱庭的世界なのか? 遠い辺境の地球型惑星なのか?)。完全に明かすことはないが、それに関するヒントや作者なりの見解を出さないと、どうしても「このお話のための設定」に見えてしまうところは惜しいところな気がします。それは、次回作以降の続編に期待しなさいということなのでしょうか?
最後に、私が一番気に入ったのは作者さんが死者に対して敬意を払っているのが温度として伝わってきたとこです。これは理屈じゃありません。なにか、そういうつらいことがあったのかなと少し想像してしまいました。
エゴサーチなんかすると作者さん自身が絶望にまみれて異世界へ飛んでいきたくなるような気持ちになることもあるかもしれませんが、僕は結構この作品が好きになりました。
ぜひ、続きを書いてください。応援しています。
夢が叶って作者の心中いかばかりかということをふと思いました。
で、作品の中身ですが、結論から言うと面白かったです。
この作品ってアンチと言うかなんというか既存の異世界モノ、さらには漂流モノに対する「なんで?」ってツッコミを大きくして作品として成立しているような印象を受けました。
集団での行動や世界の成り立ちにいちいち根拠か解説があって、人によってはうざく感じる人もいるかもしれませんが、自分は好印象でした。
例えば、ゴブリンの解説で生活圏を脅かされるから人を襲ったとかいう件でも、単にモンスターだから襲うのが性分であるとかいう設定ではないわけです。
私は、絶賛販売中の某ゲームメーカーIPである「モンスター○○○ー」とかでも、なんでドラゴンが狩られないといけないの?とか思ってしまうので。餌付けして、「ドラゴン森林公園」を造ってレジャー化したりは出来んのだろうか真剣に考えてしまうのです。
なぜ、戦うのか? なぜ、襲うのか?
って大事な動機付けな気がするんですが、その肉付けがしっかりあったのが今作だと思うんです。
なぜ、その願いなのか? 偶然、手に入れたものに甘んじて良いのか?
などの展開と問いかけなどもすごく良かった。
ただ、これだけ「なぜ?」という疑問とそれに対する解答を提示している作品なのに、肝心のタタはいったい何者で、異世界自体が作品内で実在するモノか否かというところも曖昧なのが消化不良であった(異空間の中の箱庭的世界なのか? 遠い辺境の地球型惑星なのか?)。完全に明かすことはないが、それに関するヒントや作者なりの見解を出さないと、どうしても「このお話のための設定」に見えてしまうところは惜しいところな気がします。それは、次回作以降の続編に期待しなさいということなのでしょうか?
最後に、私が一番気に入ったのは作者さんが死者に対して敬意を払っているのが温度として伝わってきたとこです。これは理屈じゃありません。なにか、そういうつらいことがあったのかなと少し想像してしまいました。
エゴサーチなんかすると作者さん自身が絶望にまみれて異世界へ飛んでいきたくなるような気持ちになることもあるかもしれませんが、僕は結構この作品が好きになりました。
ぜひ、続きを書いてください。応援しています。
2022年12月14日に日本でレビュー済み
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凄く勿体無い作品だと思った。学生がそれぞれの夢を叶えた姿で異世界を旅する、という発想はとても良いのに、書き方や構成が致命的。
地の文が作品の七割近くを占めており、台詞もキャラクターごとの個性がなく(タタ以外)、ラノベより文学寄りであると思う。
自分なら、キャラ数は主人公・ヒロイン・タタ含めて五〜六人にとどめ、あくまで主人公視点でそれぞれの夢を掘り下げる形にする。何故その夢を抱いたのかという理由が有ればまだ感情移入しやすいかと。
地の文が作品の七割近くを占めており、台詞もキャラクターごとの個性がなく(タタ以外)、ラノベより文学寄りであると思う。
自分なら、キャラ数は主人公・ヒロイン・タタ含めて五〜六人にとどめ、あくまで主人公視点でそれぞれの夢を掘り下げる形にする。何故その夢を抱いたのかという理由が有ればまだ感情移入しやすいかと。
2019年1月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
語り部視点なので臨場感が無いとか言われていますが、確かにそうでした。
糞読みにくいと言われていますが、確かにそうでした。
でも、最後の最後でビックリするとんでもない話が待っていて面白かったです。
これを読むためだけにも買う価値は有るかも?
糞読みにくいと言われていますが、確かにそうでした。
でも、最後の最後でビックリするとんでもない話が待っていて面白かったです。
これを読むためだけにも買う価値は有るかも?
2019年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
インタビュー風、レポート風にするなら物語を時間軸に沿わせて進める必要はなかった。
聞き手が証言の断片を集めていきながら、事件の真相を解明していく筋立てにするべき。
全校生徒が消えるより、クラスがひとつ消えるだけで充分。そして消えるのは校舎じゃなくて、生徒だけの方が良い。
元の世界と異世界の両方に校舎は存在していて、例えば黒板だけ同期する。
異世界での変化が元の世界にも反映されるようにすれば、その状況を頼りに2つの世界の間で連絡が取れるようになる。
その方が物語を膨らませやすい。
聞き手が証言の断片を集めていきながら、事件の真相を解明していく筋立てにするべき。
全校生徒が消えるより、クラスがひとつ消えるだけで充分。そして消えるのは校舎じゃなくて、生徒だけの方が良い。
元の世界と異世界の両方に校舎は存在していて、例えば黒板だけ同期する。
異世界での変化が元の世界にも反映されるようにすれば、その状況を頼りに2つの世界の間で連絡が取れるようになる。
その方が物語を膨らませやすい。
2018年3月3日に日本でレビュー済み
夏休み直前の7月22日12時20分。異世界から来たタタと名乗る魔法使いが現われ、
「私は、学校という閉鎖空間の中にいるすべての人の願いを叶えることにしました」などと
言っていきなり学校ごと異世界に転移させるのみならず、生徒や教師が密かに抱いていた、
周囲に公言していた、はたまた中学時代の卒業アルバムに綴ったそれぞれの願いが
実現されていく――というストーリー。
本来の世界における視点で言えば、高校の土地建物が生徒や教師ごと消え、三十日後に
二百人超の犠牲者を出しながらも元の場所に建物ごと帰還するという事件であり、
学校の生徒である弟や弟の紹介で紹介された生徒たちへ取材して書き上げた人物の
ルポタージュという体で話が進行させることにより、電撃文庫では珍しくかつ主人公が
『信頼できない語り手』になり得るバイアスが介在しやすい一人称ではなく、
三人称――踏み込んだ言い方をすれば『神の視点』による群像劇として描くことを
可能としている。
言ってしまえば楳図かずお『漂流教室』、かわぐちかいじ『ジパング』(講談社)に
代表される『まるごと転移もの』であり、それが登場人物たちの精神を蝕んでいくと
いう意味においては庵田定夏『ココロコネクトシリーズ』(KADOKAWAエンターブレイン・
ファミ通文庫)にも通じるものがあるが、それらと明らかに異なるのは『学校にいる人物
全員の願望を具現化する』という『ひねり』であり、願望のすべてが必ずしもポジティヴな
ものとは限らず、『成績で一番になりたい』という願いにより成績上位者たちがごっそり
と消え、『いじめをなくしたい』という願いによりいじめをしていた人物がいなくなる描写に、
もし自分が彼等の立場なら、学区内の何軒かの家から火の手が上がり、何人かの女子生徒の
自宅の部屋が阿鼻叫喚の巷と化すだろうなと思いながら読み進めることができる。
また、現実的な夢のみならず、なれる可能性が低そうなもの、はたまた中二病的設定を
思わせる荒唐無稽なものが実現するさまには、筒井康隆の影響を推察することができる。
学校ごとの異世界転生と生徒の夢を実現すること以外を極力現実的な設定とするとともに、
既存の異世界転生ものに対するアンチテーゼ――具体的には異世界の人々の考え方、
運動能力、言語、インフラの設定を中世ヨーロッパの基準にすることに徹底し、ご都合
主義的なものにしないよう留意していることに好感を抱くと同時に、相対的に一部の
異世界転生ものの設定の緩さを感じずにはいられない。
惜しむらくは生徒たちが抱いていた夢が若干年齢不相応に幼いこと、そしてタタが自らの
ことを『異世界から来た魔法使い』と名乗ったことだ。地球に降り立った宇宙人が
「ワレワレハ宇宙人ダ」と名乗るのが不自然であるのと同じで、そもそも彼女のような
異世界人にとって自分のいる世界が本当の世界であり、我々がいる世界こそが異世界で
あるため、余程思慮深い人物でもない限り斯様な言い方はしないはずである。
「私は、学校という閉鎖空間の中にいるすべての人の願いを叶えることにしました」などと
言っていきなり学校ごと異世界に転移させるのみならず、生徒や教師が密かに抱いていた、
周囲に公言していた、はたまた中学時代の卒業アルバムに綴ったそれぞれの願いが
実現されていく――というストーリー。
本来の世界における視点で言えば、高校の土地建物が生徒や教師ごと消え、三十日後に
二百人超の犠牲者を出しながらも元の場所に建物ごと帰還するという事件であり、
学校の生徒である弟や弟の紹介で紹介された生徒たちへ取材して書き上げた人物の
ルポタージュという体で話が進行させることにより、電撃文庫では珍しくかつ主人公が
『信頼できない語り手』になり得るバイアスが介在しやすい一人称ではなく、
三人称――踏み込んだ言い方をすれば『神の視点』による群像劇として描くことを
可能としている。
言ってしまえば楳図かずお『漂流教室』、かわぐちかいじ『ジパング』(講談社)に
代表される『まるごと転移もの』であり、それが登場人物たちの精神を蝕んでいくと
いう意味においては庵田定夏『ココロコネクトシリーズ』(KADOKAWAエンターブレイン・
ファミ通文庫)にも通じるものがあるが、それらと明らかに異なるのは『学校にいる人物
全員の願望を具現化する』という『ひねり』であり、願望のすべてが必ずしもポジティヴな
ものとは限らず、『成績で一番になりたい』という願いにより成績上位者たちがごっそり
と消え、『いじめをなくしたい』という願いによりいじめをしていた人物がいなくなる描写に、
もし自分が彼等の立場なら、学区内の何軒かの家から火の手が上がり、何人かの女子生徒の
自宅の部屋が阿鼻叫喚の巷と化すだろうなと思いながら読み進めることができる。
また、現実的な夢のみならず、なれる可能性が低そうなもの、はたまた中二病的設定を
思わせる荒唐無稽なものが実現するさまには、筒井康隆の影響を推察することができる。
学校ごとの異世界転生と生徒の夢を実現すること以外を極力現実的な設定とするとともに、
既存の異世界転生ものに対するアンチテーゼ――具体的には異世界の人々の考え方、
運動能力、言語、インフラの設定を中世ヨーロッパの基準にすることに徹底し、ご都合
主義的なものにしないよう留意していることに好感を抱くと同時に、相対的に一部の
異世界転生ものの設定の緩さを感じずにはいられない。
惜しむらくは生徒たちが抱いていた夢が若干年齢不相応に幼いこと、そしてタタが自らの
ことを『異世界から来た魔法使い』と名乗ったことだ。地球に降り立った宇宙人が
「ワレワレハ宇宙人ダ」と名乗るのが不自然であるのと同じで、そもそも彼女のような
異世界人にとって自分のいる世界が本当の世界であり、我々がいる世界こそが異世界で
あるため、余程思慮深い人物でもない限り斯様な言い方はしないはずである。
2018年2月16日に日本でレビュー済み
佐藤ショウジ目当てで購入した作品。
佐藤ショウジ先生のイラストはほんと偉大。
小説自体の内容は、賛否両論別れるとは思う。
自分は好き。
異世界転移もののストーリーを第三者目線から語る形式の文章は非常に面白くて新鮮だったので、発想の勝利感は強いと思う。
異世界転移のきっかけは、なろうでありがちな勇者召喚というものではなく「異世界の魔法使いが学校全員の夢を叶えたらこうなった(生徒の中に異世界を旅したいという願いを持つ者がいた)」という結果論に基づくもので、この設定も面白かった。
そこから話のストーリーライン自体は無難であり、主要人物が魔法使いに叶えてもらった夢を元に日本に戻る手段を探すと言うものだった。
あえて最初に結末を明かす方式だったので、途中で驚きの展開があるわけでもなく話は無難に進み緊張感はなかった。
異世界転移系の世界観でありがちな主人公が理不尽なまでに叩きのめされる様な絶望的な展開は特にない。
ただ、この作品はエンタメ作品でありがちなハラハラとドキドキ感を楽しむものではなく、
異世界転生に巻き込まれていない第三者が、異世界から帰還した主人公たちに取材して書き記した伝記という見せ方をしているのでこの無難で楽勝な展開で良いのだと思う。
一応文末とかには続編を匂わせる布石が打たれていたが、もし続編が出るなら今後どう風呂敷を広げていくのかが課題か。
1巻を読んだ感じだとそこまで壮大なスケール感は感じさせないなので、続編が仮に出るなら期待です。
佐藤ショウジ先生のイラストはほんと偉大。
小説自体の内容は、賛否両論別れるとは思う。
自分は好き。
異世界転移もののストーリーを第三者目線から語る形式の文章は非常に面白くて新鮮だったので、発想の勝利感は強いと思う。
異世界転移のきっかけは、なろうでありがちな勇者召喚というものではなく「異世界の魔法使いが学校全員の夢を叶えたらこうなった(生徒の中に異世界を旅したいという願いを持つ者がいた)」という結果論に基づくもので、この設定も面白かった。
そこから話のストーリーライン自体は無難であり、主要人物が魔法使いに叶えてもらった夢を元に日本に戻る手段を探すと言うものだった。
あえて最初に結末を明かす方式だったので、途中で驚きの展開があるわけでもなく話は無難に進み緊張感はなかった。
異世界転移系の世界観でありがちな主人公が理不尽なまでに叩きのめされる様な絶望的な展開は特にない。
ただ、この作品はエンタメ作品でありがちなハラハラとドキドキ感を楽しむものではなく、
異世界転生に巻き込まれていない第三者が、異世界から帰還した主人公たちに取材して書き記した伝記という見せ方をしているのでこの無難で楽勝な展開で良いのだと思う。
一応文末とかには続編を匂わせる布石が打たれていたが、もし続編が出るなら今後どう風呂敷を広げていくのかが課題か。
1巻を読んだ感じだとそこまで壮大なスケール感は感じさせないなので、続編が仮に出るなら期待です。
2020年3月7日に日本でレビュー済み
「ラノベらしさ」からとことん外れた本作は、読みづらいかもしれません。いや、かなり読みづらい。
ただ、物語のバリエーションで新しさを提出しようとする「新人」のなかで、物語の語り方そのものに対して新しさを突きつけようとする本作の試みは、まちがいなく「新人」にふさわしいものだと思います。
語り方、書き方が変われば、その業界の地平は一変します。
わたしは、語り口の新しさに「大賞」を与えた編集部の意欲を買います。
ラノベらしきものに食傷している方は、たのしめるかもしれません。
ただ、物語のバリエーションで新しさを提出しようとする「新人」のなかで、物語の語り方そのものに対して新しさを突きつけようとする本作の試みは、まちがいなく「新人」にふさわしいものだと思います。
語り方、書き方が変われば、その業界の地平は一変します。
わたしは、語り口の新しさに「大賞」を与えた編集部の意欲を買います。
ラノベらしきものに食傷している方は、たのしめるかもしれません。