読んだ本が面白くないとき、あるいは部分的によくわからないとき、人は普通「この本は自分に合わなかった」と思う。しかし、時に表題と内容の著しい乖離や、読者の想定を間違えてはいないか、などと著者を責めたくなることがある。私のこの本の読後感想はどちらかというと後者に近い。本書は「想像するということ」に大きな重点を置き、そして、その対象の一つとして「数」があるということらしい。この本で最もよく目立つ言葉は「yellow of the tulip」である。「黄色い花のチューリップ」は簡単に想像できる。しかし、「チューリップという花における黄色それ自体をイマジンせよ」とはどういうことか、というプラトンのイデアみたいなことを論じている本である。そして、imagineということばから数学の対蹠にある「詩」の話が出てくる。なんとも変わった本である。本書の著者は数学の一般書としてかなりいい本を何冊も書いているので信用して買ったが、この本だけはまさにハズレであった。
とはいえ、あちこちに煩わしく出てくる「詩」の話を全部無視して数学の部分だけ読んでいくと「この説明いいね!」という部分が出てくる。√―1(ルートマイナス1)の話になったとき、「正の数を乗ずることが数直線を拡大縮小する」と考えるとき、「-1をかけることは数直線を180度回転させる」と考えられる。だから、「2乗すると―1になる√-1を1回だけかける」ということは、「-1の半分の90度回転だ」という論理、代数を幾何で説明するという手法で複素数平面を持ち込む点は確かに「詩人」でもわかるだろう。
数学の知識を増やしたい詩人、数学が好きで詩も大好きな人、そうした人が世間にたくさんいればきっと売れる本になるに違いないが、少なくとも私はそのいずれでもない。
買おうか買うまいか思案している方で、「数学書」を買いたい方にはお勧めできない本である。
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黄色いチューリップの数式: ルート-15をイメージすると 単行本 – 2004/3/1
- 本の長さ268ページ
- 言語日本語
- 出版社アーティストハウスパブリッシャーズ
- 発売日2004/3/1
- ISBN-104048981595
- ISBN-13978-4048981590
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
何世紀にも渡り、多くの数学者たちが実体のない数字、虚数に挑み、具体的にイメージする方法について研究を重ねてきた。掛け算ができれば誰にでも虚数が見えてくる、知的探求の旅に出かけよう!
登録情報
- 出版社 : アーティストハウスパブリッシャーズ (2004/3/1)
- 発売日 : 2004/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 268ページ
- ISBN-10 : 4048981595
- ISBN-13 : 978-4048981590
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,036,069位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,670位数学一般関連書籍
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
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2017年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2004年11月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
畑村洋太郎「直感でわかる数学」を読んで、複素数の話が面白かったので、積ん読してあったこの本を引っ張り出して覗いてみました。
「直感で~」ではほとんど省かれていた、複素数と回転の関連性が初歩から丁寧に積み上げて説明してあり、「文系人間」としてはその点は満足できました。ポイントは、-1を掛けるという操作を回転として捉えられるかどうかで、そこさえクリアすれば複素数までまっしぐらなんですね。
ただし、全体の中で膨大な比率を占める詩的想像力の話題は、ハッキリ言って数学の大家らしい著者のハイブラウな趣味という印象で、少なくとも私には不必要と思えました。まあ、もっと数学に詳しかったら、詩と数学の類似・差異というテーマも楽しめたのかもしれませんが・・・
また著者が想定する読者レベルが「高卒程度」らしいのですが、これはアメリカの高卒でしょう。2次方程式の解の公式なんて、日本では中学生じゃなかったっけ。そのため、説明はチョー基本的なところから始まり、じれったい気持ちもありました。しかも、複素数に辿り着いて、それなりに親切な解説があったと思ったら、そこから先は細かい説明を省略しながらドンドン水準を上げていくので、ついていけない部分もありました。
訳文は全体に読みやすい印象ですが、人名のカタカナ表記でかなり疑問符つきのものがありました。ベンサムをベンタムとか、レイコフをラコフとか、これは意図的なものなんでしょうか。私が知らない名前についても同様の問題がありそうで、日本語で関連文献を調べたりするときのことを考えると、ちょっと心配です。
「直感で~」ではほとんど省かれていた、複素数と回転の関連性が初歩から丁寧に積み上げて説明してあり、「文系人間」としてはその点は満足できました。ポイントは、-1を掛けるという操作を回転として捉えられるかどうかで、そこさえクリアすれば複素数までまっしぐらなんですね。
ただし、全体の中で膨大な比率を占める詩的想像力の話題は、ハッキリ言って数学の大家らしい著者のハイブラウな趣味という印象で、少なくとも私には不必要と思えました。まあ、もっと数学に詳しかったら、詩と数学の類似・差異というテーマも楽しめたのかもしれませんが・・・
また著者が想定する読者レベルが「高卒程度」らしいのですが、これはアメリカの高卒でしょう。2次方程式の解の公式なんて、日本では中学生じゃなかったっけ。そのため、説明はチョー基本的なところから始まり、じれったい気持ちもありました。しかも、複素数に辿り着いて、それなりに親切な解説があったと思ったら、そこから先は細かい説明を省略しながらドンドン水準を上げていくので、ついていけない部分もありました。
訳文は全体に読みやすい印象ですが、人名のカタカナ表記でかなり疑問符つきのものがありました。ベンサムをベンタムとか、レイコフをラコフとか、これは意図的なものなんでしょうか。私が知らない名前についても同様の問題がありそうで、日本語で関連文献を調べたりするときのことを考えると、ちょっと心配です。
2004年5月3日に日本でレビュー済み
虚数のはなしですが、まず数をイメージする方法として数直線のはなしがでてきます。小学校の算数で習ったと思いますが、この数直線を最初に考えたひとはいまさらながら凄いと思いました。そして虚数のイメージはこの数直線をつかってパッとできました。久しぶりに頭がやわらかくなったような感じがしました。
2019年6月24日に日本でレビュー済み
「現代整数論の風景」落合 理 のp.65欄外に複素平面の詳しい歴史的経緯
が本書に書かれてるとういことで知りました。
「世にも美味しい数学」古川 昭夫 との併読が良かった。
が本書に書かれてるとういことで知りました。
「世にも美味しい数学」古川 昭夫 との併読が良かった。
2004年3月21日に日本でレビュー済み
マイナス X マイナスがプラスになることをどう理解するか。 確かに、改めて聞かれるとどう説明していいものか困ります。 自分の子供に聞かれたらどう説明するだろうか。 面倒だったら「そういうものだ」ということにしちゃうかも。 ガッコの先生もちゃんとおしえてくれなかったなぁ、そういえば。
この本は、掛け算て一体何?という改めて聞かれても困ってしまうことから入っていって、見事に虚数の説明(というかイメージさせるところ)まで持っていきます。 数直線から、ユークリッド平面までの持っていきかたがなかなか見事で、無理なく実数・虚数がイメージできるようになります。 しかしながら、途中にはさまれる数学史や詩によるイメージすることの話が時に、数学的理解の邪魔と感じられることもあります。
著者の狙うところとして、いかに数学的なものをイメージとして捕らえるかにあるのは分かりますが、これは人によって成功と採るか失敗とみるかは分かれるところではないかと思います。 本当に一貫した数学的理解を望むのであれば、文庫にもなっている「オイラーの贈物」程度のボリュームは必要でしょう。 本書は、「数学の世界での想像力」と「詩を読むときの想像力」の違いを知りたい人向けとのことだが、そのような読者は、どれくらいいるのだろうか?
私は、理系なので元々本書程度の数学的知識を持っていましたが、まるっきりの文系の友人に、本書を薦めるのはちょっと躊躇してしまう。 確かに切り口としては、面白いものであるとは思います。
この本は、掛け算て一体何?という改めて聞かれても困ってしまうことから入っていって、見事に虚数の説明(というかイメージさせるところ)まで持っていきます。 数直線から、ユークリッド平面までの持っていきかたがなかなか見事で、無理なく実数・虚数がイメージできるようになります。 しかしながら、途中にはさまれる数学史や詩によるイメージすることの話が時に、数学的理解の邪魔と感じられることもあります。
著者の狙うところとして、いかに数学的なものをイメージとして捕らえるかにあるのは分かりますが、これは人によって成功と採るか失敗とみるかは分かれるところではないかと思います。 本当に一貫した数学的理解を望むのであれば、文庫にもなっている「オイラーの贈物」程度のボリュームは必要でしょう。 本書は、「数学の世界での想像力」と「詩を読むときの想像力」の違いを知りたい人向けとのことだが、そのような読者は、どれくらいいるのだろうか?
私は、理系なので元々本書程度の数学的知識を持っていましたが、まるっきりの文系の友人に、本書を薦めるのはちょっと躊躇してしまう。 確かに切り口としては、面白いものであるとは思います。
他の国からのトップレビュー
Rumbucket
5つ星のうち5.0
Can't say a bad thing about this book
2019年9月23日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
This is the first book (I think) I bought from this book store; I am pleased with the condition of the book.
Dawn
5つ星のうち2.0
Prolix
2014年5月16日にインドでレビュー済みAmazonで購入
.. Extremely redundant and stretched out; Could have been a 5 page article. Though it introduces ideas, not sure how many of them are unthought of by anyone who loves math at one point or the other.
Michael Enright
5つ星のうち5.0
Mazur has an excellent style of writing and brings it to life
2015年2月28日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
It's a fascinating book. The concept of imaginary numbers and the fact that they have broad application in real life has always fascinated me and Mr. Mazur has an excellent style of writing and brings it to life.
Steve Morin
5つ星のうち2.0
More than just math - yet not interesting
2003年12月30日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
I have read a few math books, prime obsession most recently, and this book wasn't technically very interesting, it also wasn't fun to read either. There are some good parts at the very beginning and end but middle is incoherently dry. Basically I believe that in some ways the way the author was trying to thought provoking and intelectual is where it lost it's was. Neither technical, historical, or fun enough you lost your audience