これまでにも何冊か石田三成に関する本を読んできた.どれも特徴があって面白かったが,本書の最も秀逸な点は,章立てにあると思う.三成が出会い,影響を受けたと思われる人物を,三成の生活史に順次て,章のタイトルにしてある.織田信長,明智光秀から始まり,島左近,徳川家康に終わる.魅力的な章立てである.
しかしながら,この形式にするなら,三成から見た信長観,もしくは,光秀から見た三成観,といったものを,もう少し前面に押し出して欲しかった.どうも三成をどの視点から見ているのか(描いているのか),よくわからなかった.三成の一人称でもないし,家康を一人称にして三成を述べている訳でも無い.
もう一点,本作品の秀逸な点として,関ヶ原の戦いの解釈があると思う.いろいろな解釈があって良い歴史的イベントであるが,作者の展開する理論には,一方ならぬ真実味が感じられる.最も広く人口に膾炙している関ヶ原の戦いの解釈は,江戸時代を創設するにあたり,家康を神格化するために作られたもののように感じた.ここに書かれている江宮氏の筋立ての方が,よほどスッキリ腑に落ちる.ただしこれは,『石田三成』より『徳川家康』に書いた方が,より一層迫力があったかもしれない.
本作品は,石田三成の人生を概観するには優れていると思います.主役として描かれていないところが減点ポイントでした.
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石田三成 (学研M文庫 え 5-6) 文庫 – 2006/1/23
江宮 隆之
(著)
豊臣秀吉の死後、天下の野心を再燃させ、豊臣政権内の武断派を通じて着々と力を蓄える徳川家康に対し、その野望を阻止すべく短期間に日本の半分の大名を掌握した石田三成の手腕。かくして関ヶ原での決戦を引き起こした石田三成の本懐とは、なんであったのか…
- 本の長さ397ページ
- 言語日本語
- 出版社学研プラス
- 発売日2006/1/23
- ISBN-104059011797
- ISBN-13978-4059011798
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登録情報
- 出版社 : 学研プラス (2006/1/23)
- 発売日 : 2006/1/23
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 397ページ
- ISBN-10 : 4059011797
- ISBN-13 : 978-4059011798
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,498,460位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2007年8月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
三成ファンとなって日の浅い私は、とりあえず値段の手頃で発刊されてまだ年数も経っていないこの作品に目を付けた。
徳川幕下に置いて石田三成は無双の悪役だったからか、近年まで彼の評価は極めて低かった。
しかし、事実はこれと異なると唱える意見が多く浮上して来たため、あまり古いものだと以前のまま、誤解された部分を当然として扱っているのではないかと危惧し、発行年の新しいものを探していたら、本作品に辿り着いたというわけです。
この作品に出て来る三成は、あたかも清廉潔白な聖人君子のように描かれています。
それは、彼の光の部分だけにスポットを置いているからで、石田三成を良く知らない人が読めば洗脳されても仕方がないのではないかと思います。
現に今も彼の評価は低いままで、この作品と同じ年に発刊されている他の著書でも昔ながらの書き方しかされていないのが現状で、三成を知るにはいいきっかけになるかも知れないが、鵜呑みにするのは危険だとさえ感じます。
彼に関して有名なダークな部分として秀次・利休の一件が上げられますが、ここでは新説とされる「寧ろ三成は彼らの助命に出た」と言うものを採用されていて、汚名挽回にはなっていると思いますが、先述の通り「三成の光の部分」だけに焦点を当てているため、多少疑った見方をしてしまいます。
これを払拭させるだけの説得力のある書き方をしていれば、「石田三成の教科書」としてこれほど秀でたものはないと思うだけに残念で仕方ありませが、敢えてその光の部分だけを見たい人にはお勧めできる一冊であることには変わりありません。
ここから三成の本来の姿を探求する、いい一歩だと思います。
ただし、幻想を抱いてしまった人にはこれ以上彼を知るのは幻滅の一歩であることにも変わりなく、正に表裏一体と言えます。
結論から言うなら、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」この時代、彼の子供が多く徳川の手によって保護されているため、江戸時代の評価は不当なものだったと裏付けるものでもあると、個人的には思いました。
徳川幕下に置いて石田三成は無双の悪役だったからか、近年まで彼の評価は極めて低かった。
しかし、事実はこれと異なると唱える意見が多く浮上して来たため、あまり古いものだと以前のまま、誤解された部分を当然として扱っているのではないかと危惧し、発行年の新しいものを探していたら、本作品に辿り着いたというわけです。
この作品に出て来る三成は、あたかも清廉潔白な聖人君子のように描かれています。
それは、彼の光の部分だけにスポットを置いているからで、石田三成を良く知らない人が読めば洗脳されても仕方がないのではないかと思います。
現に今も彼の評価は低いままで、この作品と同じ年に発刊されている他の著書でも昔ながらの書き方しかされていないのが現状で、三成を知るにはいいきっかけになるかも知れないが、鵜呑みにするのは危険だとさえ感じます。
彼に関して有名なダークな部分として秀次・利休の一件が上げられますが、ここでは新説とされる「寧ろ三成は彼らの助命に出た」と言うものを採用されていて、汚名挽回にはなっていると思いますが、先述の通り「三成の光の部分」だけに焦点を当てているため、多少疑った見方をしてしまいます。
これを払拭させるだけの説得力のある書き方をしていれば、「石田三成の教科書」としてこれほど秀でたものはないと思うだけに残念で仕方ありませが、敢えてその光の部分だけを見たい人にはお勧めできる一冊であることには変わりありません。
ここから三成の本来の姿を探求する、いい一歩だと思います。
ただし、幻想を抱いてしまった人にはこれ以上彼を知るのは幻滅の一歩であることにも変わりなく、正に表裏一体と言えます。
結論から言うなら、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」この時代、彼の子供が多く徳川の手によって保護されているため、江戸時代の評価は不当なものだったと裏付けるものでもあると、個人的には思いました。
2010年1月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この小説に書かれている石田三成は何というか・・・モテモテです。
織田信長、明智光秀から徳川家康に至るまで全員が石田三成を推称しています。
石田三成贔屓には嬉しい内容かもしれませんが、これだけを読んでしまうと石田三成という人物が
頭が良く気立ても良い正義のヒーローという位置で動かなくなってしまう可能性があるかもしれません。
でも、自分はこの小説はお気に入りで読んでいるとスカッとします。
石田三成が好きな方は一回は読んでみると面白いかもしれません。
織田信長、明智光秀から徳川家康に至るまで全員が石田三成を推称しています。
石田三成贔屓には嬉しい内容かもしれませんが、これだけを読んでしまうと石田三成という人物が
頭が良く気立ても良い正義のヒーローという位置で動かなくなってしまう可能性があるかもしれません。
でも、自分はこの小説はお気に入りで読んでいるとスカッとします。
石田三成が好きな方は一回は読んでみると面白いかもしれません。
2010年6月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
主の没落で半隠居状態だった北近江の土豪が、次男坊に英才教育を仕込み、更に彼をして天下の執政とならしむ。
そんな父の期待に応えて余りある才気煥発な三成像を、何故か思い描きました。
どんなに優れた才があっても三成のそれは、父たる者の力に拠ってしか発揮出来ない。彼は「自分を支え、護り、認めてくれる者」を最後まで必要とした天下の寵童だったのではないかと思います。
若くして出世した後、父や兄を呼び寄せて共に仕官させ、彼らも出世して自分の傍に居られなくなると、嶋左近などの歳上の家老を迎えているのも、そんな印象を受ける理由かも知れません。
関ヶ原西軍を率いた石田三成について、見え透いた芝居を打って大大名を従え、大風呂敷を拡げて朝鮮侵略を試みて人を振り回した秀吉の、何処がそんなに好きだったのかさっぱり分かりませんでした。実際西軍の中でも、「豊臣恩顧」なんて本気で思っているのは、彼以外極少数だったと云います。しかし、きかん気な子どもがきかん気なままでおとなになり社会を動かすときに、常に防波堤のように護ってくれた人だったから「恩顧」だったのかな、庇護者秀吉の居ない天下では活躍の場がないことを分かっていたから闘うしかなかったのかな、と、そう思いました。
ご冥福をお祈りします。
そんな父の期待に応えて余りある才気煥発な三成像を、何故か思い描きました。
どんなに優れた才があっても三成のそれは、父たる者の力に拠ってしか発揮出来ない。彼は「自分を支え、護り、認めてくれる者」を最後まで必要とした天下の寵童だったのではないかと思います。
若くして出世した後、父や兄を呼び寄せて共に仕官させ、彼らも出世して自分の傍に居られなくなると、嶋左近などの歳上の家老を迎えているのも、そんな印象を受ける理由かも知れません。
関ヶ原西軍を率いた石田三成について、見え透いた芝居を打って大大名を従え、大風呂敷を拡げて朝鮮侵略を試みて人を振り回した秀吉の、何処がそんなに好きだったのかさっぱり分かりませんでした。実際西軍の中でも、「豊臣恩顧」なんて本気で思っているのは、彼以外極少数だったと云います。しかし、きかん気な子どもがきかん気なままでおとなになり社会を動かすときに、常に防波堤のように護ってくれた人だったから「恩顧」だったのかな、庇護者秀吉の居ない天下では活躍の場がないことを分かっていたから闘うしかなかったのかな、と、そう思いました。
ご冥福をお祈りします。
2008年10月29日に日本でレビュー済み
目次を見て一瞬戦国武将の短編集かと思った。
目次の人物を中心に三成との関わりが的確に表現されており良い作品と思う。
内容的には三成の人生が汲まなく表現されているが多少迫力には欠ける。
一般文学通算482作品目の感想。通算759冊目の作品。2008/10/29(in中国・山東省・青島)
目次の人物を中心に三成との関わりが的確に表現されており良い作品と思う。
内容的には三成の人生が汲まなく表現されているが多少迫力には欠ける。
一般文学通算482作品目の感想。通算759冊目の作品。2008/10/29(in中国・山東省・青島)
2010年9月29日に日本でレビュー済み
この作品は、評価がふたつに分かれると思います。
いわゆる石田三成という人物について、「何処までも素晴らしく描かれている三成」をお求めの方には存分に楽しめる一冊かと思います。
一方で、主人公の悪い部分が薄められており、なんだか良い人にほいほいと仕上げられてる感を味わいたくない人にはおススメ出来ない一冊です。
特に三成の短所もひっくるめて三成が好きだと言える方は手に取らない方が良いでしょう。
「これ誰?」と言わんばかりにすっかり漂白された三成が登場しますので。
三成に限らず、その人の悪い部分、良い部分それぞれを書き出して読者に「面白い」と思わせるのが歴史小説の味と言うのではないでしょうか。
それを目指すのが、歴史小説作家ではないでしょうか。
そういった点、歴史小説の大御所作家らが如何に凄いのかが良く分かります。
でもこの小説には、三成の悪い部分が綺麗に削られているように見受けられます。
長所ばかりが取り上げられています。
その長所を余程際立たせたいのか、そのために加藤清正らはかなり低めて書かれてます。
正直、冷静な突っ込みを入れるのなら、こんな三成だったら諸将の反感や不人気を買わなかったと思います。
贔屓もここまで来ると、却って読者がげんなりし、贔屓の引き倒しになります。
三成再評価、大いに結構ですが、方法を間違ってはいけないと思います。
(これはこの小説に限らず、昨今の三成ブームすべてに言えることですが)
巻末の作者の言葉から察するに、作者は三成に非常に思い入れがあることが窺えました。
ですが、思い入れがあるのならもう少し偏った視線ではなく、広い視線で石田三成とその背後の歴史というものを見て欲しいと感じました。
また所々で歴史的御認識があったのも注意です(例:三成は五奉行筆頭ではありません)
「歴史物」としては駄目だと思いましたが、「読み物」としては普通に評価出来ます。
そんな様々な事情から、☆ふたつです。三つはちょっと付けられないかな。
いわゆる石田三成という人物について、「何処までも素晴らしく描かれている三成」をお求めの方には存分に楽しめる一冊かと思います。
一方で、主人公の悪い部分が薄められており、なんだか良い人にほいほいと仕上げられてる感を味わいたくない人にはおススメ出来ない一冊です。
特に三成の短所もひっくるめて三成が好きだと言える方は手に取らない方が良いでしょう。
「これ誰?」と言わんばかりにすっかり漂白された三成が登場しますので。
三成に限らず、その人の悪い部分、良い部分それぞれを書き出して読者に「面白い」と思わせるのが歴史小説の味と言うのではないでしょうか。
それを目指すのが、歴史小説作家ではないでしょうか。
そういった点、歴史小説の大御所作家らが如何に凄いのかが良く分かります。
でもこの小説には、三成の悪い部分が綺麗に削られているように見受けられます。
長所ばかりが取り上げられています。
その長所を余程際立たせたいのか、そのために加藤清正らはかなり低めて書かれてます。
正直、冷静な突っ込みを入れるのなら、こんな三成だったら諸将の反感や不人気を買わなかったと思います。
贔屓もここまで来ると、却って読者がげんなりし、贔屓の引き倒しになります。
三成再評価、大いに結構ですが、方法を間違ってはいけないと思います。
(これはこの小説に限らず、昨今の三成ブームすべてに言えることですが)
巻末の作者の言葉から察するに、作者は三成に非常に思い入れがあることが窺えました。
ですが、思い入れがあるのならもう少し偏った視線ではなく、広い視線で石田三成とその背後の歴史というものを見て欲しいと感じました。
また所々で歴史的御認識があったのも注意です(例:三成は五奉行筆頭ではありません)
「歴史物」としては駄目だと思いましたが、「読み物」としては普通に評価出来ます。
そんな様々な事情から、☆ふたつです。三つはちょっと付けられないかな。
2007年11月9日に日本でレビュー済み
江宮氏の本は同じ文庫から『伊達政宗』を読んだことがあり、当時から割と丁寧な書き方をする作家だと印象を抱いていたのだが、その江宮氏の本で石田三成を書いた本があると知って早速手に取ってみた。石田三成を中心に据えた小説というものも結構少なくそれだけでも十分価値ある一冊なのではないかと思う。
作品は石田三成が秀吉に茶をくんでやって(後世の創作)召し使えるようになってから、三成が打ち首になるまでを(短く一族のその後がまとめられてもいる)描いている。最初は聡明なところがありながらまだ幼く、秀吉の偉大さに感じさせられてばかりなのだが、成長していくに従って秀吉に劣らぬ存在になっていくとんとん拍子の三成の出世は痛快で面白い。秀吉ほか大谷吉継などの周囲の人物との関係や友情も幾分平坦な所はあるものの、良く書けていると思う。作中の(少し誇張はあるのだろうが)義のためのみに生きる三成の姿を見ていると三成という人間の清々しさや潔さが前面に出てきいてそういった面で自分も学ぶところがあったような気がした。また、背景に織田、豊臣、徳川の大きな動きも読んでいる中で出てくるので戦国時代の流れを掴むことも出来る。それらの動きもまた面白い。
小説として不足なのは、加藤清正や福島正則といった豊臣恩顧の東軍の扱いがひどいこと。せりふらしいせりふもなく作中なんども猪武者と三成に罵られ、また、三成の忠節を際だたさせるためか不平をこぼしてばかりの能なし武将になっている。格好いい三成もいいが、他の武将がかすんでいるのには少し疑問を覚えた。
全体的には良かったと思うが、傷も多いように思う。ただ、読んで楽しむ分には何の不足もない。読んでみてもいいと思う。
作品は石田三成が秀吉に茶をくんでやって(後世の創作)召し使えるようになってから、三成が打ち首になるまでを(短く一族のその後がまとめられてもいる)描いている。最初は聡明なところがありながらまだ幼く、秀吉の偉大さに感じさせられてばかりなのだが、成長していくに従って秀吉に劣らぬ存在になっていくとんとん拍子の三成の出世は痛快で面白い。秀吉ほか大谷吉継などの周囲の人物との関係や友情も幾分平坦な所はあるものの、良く書けていると思う。作中の(少し誇張はあるのだろうが)義のためのみに生きる三成の姿を見ていると三成という人間の清々しさや潔さが前面に出てきいてそういった面で自分も学ぶところがあったような気がした。また、背景に織田、豊臣、徳川の大きな動きも読んでいる中で出てくるので戦国時代の流れを掴むことも出来る。それらの動きもまた面白い。
小説として不足なのは、加藤清正や福島正則といった豊臣恩顧の東軍の扱いがひどいこと。せりふらしいせりふもなく作中なんども猪武者と三成に罵られ、また、三成の忠節を際だたさせるためか不平をこぼしてばかりの能なし武将になっている。格好いい三成もいいが、他の武将がかすんでいるのには少し疑問を覚えた。
全体的には良かったと思うが、傷も多いように思う。ただ、読んで楽しむ分には何の不足もない。読んでみてもいいと思う。