手塚作品の中では最初期の作品の部類に入る、1948年の「ジャングル魔境」と「シャリ河の秘密基地」が収録されている。どちらも「ジャングル大帝」の原型になったような要素を持つジャングルものである。
「ジャングル魔境」は次から次へとイベントが起こり息もつかせぬ展開でクライマックスに繋がっていき、息もつかせぬ展開。重要なキャラクターとして古代帝国の最後の女王であるコブラという女性がでてくるのだが、これが男まさりでありながらも主人公の少年の言うことは素直に聞いてしまうという今でも通用しそうな魅力的なキャラである。これほどの作品が終戦間もない時期の日本で出版されていたのは驚きに値するだろう。
「シャリ河の秘密基地」は原題が「ターザンの秘密基地」なのであるが、著作権に配慮して題名が変更された。冒頭の世界地図がだんだんクローズアップしていき空撮のような描写に切り替わり最後にはヒゲオヤジの顔がアップになるという技法が素晴らしい。これは単なる映画的手法というよりは映画の技法を漫画的表現と見事に融合させているとでも言うべきもので、このような新しい手法が当時の漫画好き少年を熱狂させたのだろう。
この作品はいろいろ事情もありジャングルもののストーリーが後半で突然SFになっていくのだが、そこで出てくるキャラクターは後の作品にもおまけ的な扱いでよく出てくる生物である。特に「七色いんこ」のファンであればこの作品も一度読んでみていただきたい。
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