村上龍デビューから3作は愛読書で、学生の頃は文庫を持ち歩いてボロボロになる程読みました。特にこの2作目は、ドローンで空間を飛ぶかのように見える世界が次々と移り変わりそれぞれの物語(ドラマ)が繋がっていく展開が独特で、龍さん特有の畳み掛けるような細かい描写のせいで完全にその世界に没入できる、その感覚の中毒でした。何度授業中この世界に逃避したことか笑。
久しぶりに読もうとKindle版でスマホに収めたら、いつでもこの中(スマホ)にあの世界がある、という事に妙な喜びをおぼえました。
いつまでも少しも色褪せない名作です。
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海の向こうで戦争が始まる 文庫 – 1980/11/12
村上 龍
(著)
海辺で出会った水着の女は、僕にこう言った。あなたの目に町が映っているわ。その町はゴミに埋もれ、基地をもち、少年たちをたくましく育てる町、そして祭りに沸く町。夏の蜃気楼のような心象風景の裏に貼りつく酷薄の真実を、ゆたかな感性と詩情でとらえた力作。『限りなく透明に近いブルー』に続く作品。
- 本の長さ186ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1980/11/12
- 寸法10.8 x 0.8 x 14.8 cm
- ISBN-104061316508
- ISBN-13978-4061316508
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1980/11/12)
- 発売日 : 1980/11/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 186ページ
- ISBN-10 : 4061316508
- ISBN-13 : 978-4061316508
- 寸法 : 10.8 x 0.8 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 200,571位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1952年長崎県生まれ。
七六年『限りなく透明に近いブルー』で第七五回芥川賞受賞。『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、『半島を出よ』では野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。『トパーズ』『KYOKO』で映画監督も務めた。最新作は『新 13歳のハローワーク』『13歳の進路』。日本の金融・政治経済の問題を考える メールマガジン『JMM』を主宰し、経済トーク番組『カンブリア宮殿』(テレビ東京)のホストも務める。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年7月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読み終えた時、中島みゆきの「僕たちの将来」という歌を思い出した。平和な土地と対岸の火事である戦争……。作中でころころと主人公が替わるのが少し読みづらい。ただ、独特な魅力があると思う。こうやって小説をゆったり読む私も、作中の軍人からしたら、つまらないオヤジ予備軍なのだろう。
2019年1月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「限りなく透明に近いブルー」の続編ではないです。
多少の関連性はあるように思われますが、前作のあるシーンから
着想を得た、派生した、という感じの作風です。
物語には全く関わってこないので、限りなくを読んでいなくても何ら問題ありません。
描写や物語への引き込み方が素晴らしく、はっきりとした筋は感じ取れないのですが
視点が次々と変わり読者をあきさせず、ページを繰る手が止まりません。
若いころの研ぎ澄まされた感性で描き切ったような簡潔な作品で、
文学作品としては他のヒット作よりもよくできていると思います。
グロテスクさや暴力、性をふんだんにつめこんだらしい村上龍らしい作品で、
著者の作品の中でもトップクラスに好きです。
限りなくが好きな人なら、さらに興奮して読めると思います。
二作目なので文体も読みやすくなっていました。
もっと人気があってもよさそうな作品ですが、装画が古臭くてダサいのが難点だなと思いました。
多少の関連性はあるように思われますが、前作のあるシーンから
着想を得た、派生した、という感じの作風です。
物語には全く関わってこないので、限りなくを読んでいなくても何ら問題ありません。
描写や物語への引き込み方が素晴らしく、はっきりとした筋は感じ取れないのですが
視点が次々と変わり読者をあきさせず、ページを繰る手が止まりません。
若いころの研ぎ澄まされた感性で描き切ったような簡潔な作品で、
文学作品としては他のヒット作よりもよくできていると思います。
グロテスクさや暴力、性をふんだんにつめこんだらしい村上龍らしい作品で、
著者の作品の中でもトップクラスに好きです。
限りなくが好きな人なら、さらに興奮して読めると思います。
二作目なので文体も読みやすくなっていました。
もっと人気があってもよさそうな作品ですが、装画が古臭くてダサいのが難点だなと思いました。
2018年8月16日に日本でレビュー済み
今まで、文章が美しいってどういうことだ?わかったふりした人たちが勝手に言ってるだけなんじゃないか?って思っていたんですが、この本を読んでわかりました。何度も味わえるんですよ、美しい文章は。
ストーリーはもちろんあるけど、ストーリーを知ってしまっても読み返したくなる、何らかの不思議な魅力を感じます。
彼のデビュー作「限りなく....」よりも好きです。
ストーリーはもちろんあるけど、ストーリーを知ってしまっても読み返したくなる、何らかの不思議な魅力を感じます。
彼のデビュー作「限りなく....」よりも好きです。
2008年10月30日に日本でレビュー済み
映画のようにテンポ良くガンガン繋ぎ合わされるエピソード。その一つ一つに殺意と血がにじみ、血みどろの祝祭が戦争に展開していく。舞台は南のどこかの国、主人公は国籍も名前もはっきりせず、読者の感情と視線の移入を誘う「カメラ」としてのみ主人公は機能している。(ビーチリゾートに寝そべる主人公は絵描き、ちょっとステレオ・タイプでセクシーな浜辺のヒロインはカメラマン。)映画を撮るように「カメラ」「視線」で物語を展開させようとしたこの小説は、ヒロインが主人公の目を覗き込むところから始まる−。
技法的にはかなり凝った作品であり、「海の向こう」の暑苦しさと血みどろ模様は、独裁者小説に良作の多いラテン・アメリカ小説とも十分タメを張る。星は4.5点を付けたいところで、0.5点の減点対象は以下。
-1. 戦争を「海の向こう」に設定したのは、今井裕康が解説で指摘するように、この小説が書かれた冷戦下(1977年)の日本だと、まあ納得できないでもない。つまり、戦争は「カメラの向こう」の出来事として設定されている。ただ、小さな紛争が世界中で勃発して日本の政治経済に色々なインパクトを与えている30年後の今の時代では、この設定は暢気に感じられるのは否めない。そもそも、70年代の日本でも足元には様々な血生臭さが存在していたと思うが、「海のこちら」に戦いがない、という割り切りがいかにも70〜80年代らしい。
-2. 高級ビーチ・リゾートで寝そべる主人公とヒロインの描写がステレオ・タイプ。
-3. 「俺が生きてる時は注射針が腕に刺さっている時だけだ。」「小説は麻薬とそっくりだと思った。」こんな作者の台詞が後書きに臆面もなく出てくる。物語にコカインを打つ描写も出てますが、不良ぶって格好つけるにしても、ちょっと青臭く時代がかってますわな。
しかし、こんな細部へのイチャモンをつけたとしても、この作品は今の時代でも十分読むに耐えうる。個人的には「コインロッカー・ベイビーズ」より技法的には良くできた作品だと思ってます。1円で読めるなら、絶対買い。
技法的にはかなり凝った作品であり、「海の向こう」の暑苦しさと血みどろ模様は、独裁者小説に良作の多いラテン・アメリカ小説とも十分タメを張る。星は4.5点を付けたいところで、0.5点の減点対象は以下。
-1. 戦争を「海の向こう」に設定したのは、今井裕康が解説で指摘するように、この小説が書かれた冷戦下(1977年)の日本だと、まあ納得できないでもない。つまり、戦争は「カメラの向こう」の出来事として設定されている。ただ、小さな紛争が世界中で勃発して日本の政治経済に色々なインパクトを与えている30年後の今の時代では、この設定は暢気に感じられるのは否めない。そもそも、70年代の日本でも足元には様々な血生臭さが存在していたと思うが、「海のこちら」に戦いがない、という割り切りがいかにも70〜80年代らしい。
-2. 高級ビーチ・リゾートで寝そべる主人公とヒロインの描写がステレオ・タイプ。
-3. 「俺が生きてる時は注射針が腕に刺さっている時だけだ。」「小説は麻薬とそっくりだと思った。」こんな作者の台詞が後書きに臆面もなく出てくる。物語にコカインを打つ描写も出てますが、不良ぶって格好つけるにしても、ちょっと青臭く時代がかってますわな。
しかし、こんな細部へのイチャモンをつけたとしても、この作品は今の時代でも十分読むに耐えうる。個人的には「コインロッカー・ベイビーズ」より技法的には良くできた作品だと思ってます。1円で読めるなら、絶対買い。
2006年10月29日に日本でレビュー済み
絵を勉強中の男がビーチでコカインをうって見た幻想。
それは海の向こうに見える町の話であり、男の目の中にしか存在しない町でもある。
その日は祭りの日。
特殊な雰囲気につつまれた一日を過ごす町の人々をクローズアップしていく。
まず巨大なゴミの山を歩く三人の少年の話ではじまる。
ゴミの描写があまりにもリアルなのは前作のとおりですね。
食事の前後はパス。
次に軍人とその愛人の話が続くけれど、愛人からの視点でかかれた軍人の姿があまりにも異常だ。
そしてサーカスを見に行った衛兵の家族の話と、死にかけた母親の病室にいる仕立て屋の話。
それぞれの事情や心理とは関係なく、町は祭りの熱狂に包まれ特別な巨大魚の水揚げに人々は狂ったように興奮している。
そして前触れもなく戦争のシーンに変わり、登場人物が血にまみれた肉の塊となって終わる。
自叙伝の雰囲気が強い前作よりは文学的になったと思うけど、しいて言えばシュルレアリズムに通じるものがあるのかもしれない。
それは海の向こうに見える町の話であり、男の目の中にしか存在しない町でもある。
その日は祭りの日。
特殊な雰囲気につつまれた一日を過ごす町の人々をクローズアップしていく。
まず巨大なゴミの山を歩く三人の少年の話ではじまる。
ゴミの描写があまりにもリアルなのは前作のとおりですね。
食事の前後はパス。
次に軍人とその愛人の話が続くけれど、愛人からの視点でかかれた軍人の姿があまりにも異常だ。
そしてサーカスを見に行った衛兵の家族の話と、死にかけた母親の病室にいる仕立て屋の話。
それぞれの事情や心理とは関係なく、町は祭りの熱狂に包まれ特別な巨大魚の水揚げに人々は狂ったように興奮している。
そして前触れもなく戦争のシーンに変わり、登場人物が血にまみれた肉の塊となって終わる。
自叙伝の雰囲気が強い前作よりは文学的になったと思うけど、しいて言えばシュルレアリズムに通じるものがあるのかもしれない。
2014年1月11日に日本でレビュー済み
村上龍氏の作品の中で最も美しい小説だと個人的には思います。村上龍氏の作品は娯楽性の強い作品も多いような気がしますが、本作は娯楽性よりも、文章の美しさを味わうものかなと思います。小説を読むというよりは、小説に村上龍氏に読まされるといった印象を受けます。何度も読む価値のある作品だと思います。
2011年7月21日に日本でレビュー済み
《……いつだって戦争は恐怖だ、私も怖い、小便を漏らしそうになる、しかし、考えてみろ、恐怖の裏側にはいつも何があった? 恐怖の向こうにあるものは何だ? それは熱狂と興奮と恍惚だ、戦争は退屈しない、きょう一日何をしようかなどと考える必要はない、人間の肉は柔かいものだ、お前達が考えているよりはるかに柔かいぞ、少なくとも、見飽きた女とのあれよりはいい気分になる、これだけは間違いがないことだ……》
村上龍の第2作。
海岸で男女が出会い、なにげない会話をする。海の向こうにはかすかな稜線がみえ、そこから煙が立ち上っている。「あなたの目に町が映っているわ」と女が言い、男の目を覗きこむ。 物語は、その「町」、すなわち男の目の中に映った「町」を舞台にして展開される。大佐とその愛人の物語、衛兵とその家族の物語、洋服屋と母親の物語。不思議な構成をもった小説である。
この「町」は男の目、女の語りを通じて立ち現われる。そのため、小説的に実在しているのか、それとも男と女の意識に生まれる幻影のようなものなのかが曖昧で、読んでいてかなり奇妙な感覚になる。リアリティの捻じれのようなものだ。
「町」の誰もが心のどこかで「戦争」を望んでいて(とりもなおさずそれは、海岸の男と女の心象風景でもあるだろう)、それが小説全体にぎこちない雰囲気をつくりだしている。そして「町」は「祭」を迎えるかわりに突然崩壊してしまうのだが、そのへんの描き方がいやに淡々としていておそろしかった。
さて、肝心の感想だが、構造としてはすごく面白いし、文章はおそろしく上手いのだけれど、もうひとつ芯のようなものが見えてこない作品だったかな……。読み込みが浅いからかもしれないけれど。
村上龍の第2作。
海岸で男女が出会い、なにげない会話をする。海の向こうにはかすかな稜線がみえ、そこから煙が立ち上っている。「あなたの目に町が映っているわ」と女が言い、男の目を覗きこむ。 物語は、その「町」、すなわち男の目の中に映った「町」を舞台にして展開される。大佐とその愛人の物語、衛兵とその家族の物語、洋服屋と母親の物語。不思議な構成をもった小説である。
この「町」は男の目、女の語りを通じて立ち現われる。そのため、小説的に実在しているのか、それとも男と女の意識に生まれる幻影のようなものなのかが曖昧で、読んでいてかなり奇妙な感覚になる。リアリティの捻じれのようなものだ。
「町」の誰もが心のどこかで「戦争」を望んでいて(とりもなおさずそれは、海岸の男と女の心象風景でもあるだろう)、それが小説全体にぎこちない雰囲気をつくりだしている。そして「町」は「祭」を迎えるかわりに突然崩壊してしまうのだが、そのへんの描き方がいやに淡々としていておそろしかった。
さて、肝心の感想だが、構造としてはすごく面白いし、文章はおそろしく上手いのだけれど、もうひとつ芯のようなものが見えてこない作品だったかな……。読み込みが浅いからかもしれないけれど。