当然ながら、見つけられなければ掛け金を乗せたあなた、ついでに推薦文を書いたわたしの負けになるのでしょう。
舞台は京都大学。
森見登美彦先生で一躍、と言うにはわたしの読書遍歴も貧弱なものですが、京都府民や京大出身以外には異世界風味が強いなあ、と思います。つまりは馴染がないということで。
いささか古典的過ぎる主人公と会長の、周回遅れなボーイミーツガールの舞台には相応しいのかもしれません。
定型的な入り口で掴みやすいキャラ配置としながら、地に足の着いた性格の奥深さはライトノベルと一般文芸の中間地点といったところか。
春夏秋冬、一年で順々にサークルの構成員を一人一人ピックアップしていくのも王道でわかりやすい構成、リーダビリティー(読みやすさ)は高めです。
春に出会い、夏を歩み、秋に転んで、冬に別れる。
紆余曲折を経て、悩みっぱなしな主人公は等身大ですが、少年と青年の狭間のような設定はそのまま感情移入して読むか少し突き放してみるか、読者の年齢層によって、読み方によって分かれそうで興味深いです。
少しファンタジーでないマジックはありますが、全般的に凄く地味で、それさえ消え去ってしまう。
主人公は一年(回)生と言う時の安穏さにいながら、これから過ぎ去っていく過去と、その先にある未来の冷徹さに怯えています。
これは当時を生きる彼の物語であると同時に作者の青春を辿った半ば自伝であると考えてしまうと、先の指摘も見えてきます。
正直に申し上げますと、自分はハリネズミのようにこの物語が刺さりまくりました。故に星五つなのです。
だからこそ、冷静に文責を負える立場では無いかもしれません。
けれど、作品全体を気に入らなくてもどこか一ページだけは切り取って持っていてほしい、その程度には気に入っていると謙虚ながらに推薦を申し上げたいと思います。
まだ見ぬ未来に怯え過去に変わってしまう現在を手放したくなかった彼が何を見たのか?
さしずめ時の牢獄につながれていたのは誰だったのか? 答えは酷く簡単ですが、気付いたところでやってくるのは単純な驚きではありません。
ネタばれ込みで構いませんのでどうか、読んでいってくださいませ。
余談(私事)
ちなみに自分はダブルヒロインとしてみると会長の方が好みですね。その辺、ぼかしてくれた作者先生には恨み半分感謝半分です。
今は、確定させるとしっくりこない気がするのは作品の記述そのままですが、踊らされて良しとしましょう。
自分は何も書かれていない空白の、これからのページをお気に入りとして持っていくことにします。
続編が出るなら、このお気に入りは更新されるのかもしれませんが、今は心の中で眠らせておくとしましょう……。
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エトランゼのすべて (星海社FICTIONS モ 2-1) 単行本 – 2011/10/14
僕と会長の春夏秋冬(いちねん)
充実した大学生活に憧れ、京都大学に入学した針塚圭介は、「京都観察会」なる怪しげなサークルの新歓説明会でミステリアスな美女“会長”と出会う。
「ちょっとした魔法ですよ」──そう言いながら淡々と圭介の個人情報(せいかつ)を言い当てていく“会長”。彼女は一体何者なのか。なぜ自分のことを語らないのか。その美貌と微笑みの裏には、思いもかけない秘密があった……。
注目の新鋭・森田季節が贈る、とびきりの青春小説。──泣いても笑っても、この一年(せいしゅん)は一度だけ。ようこそ、京都へ。
充実した大学生活に憧れ、京都大学に入学した針塚圭介は、「京都観察会」なる怪しげなサークルの新歓説明会でミステリアスな美女“会長”と出会う。
「ちょっとした魔法ですよ」──そう言いながら淡々と圭介の個人情報(せいかつ)を言い当てていく“会長”。彼女は一体何者なのか。なぜ自分のことを語らないのか。その美貌と微笑みの裏には、思いもかけない秘密があった……。
注目の新鋭・森田季節が贈る、とびきりの青春小説。──泣いても笑っても、この一年(せいしゅん)は一度だけ。ようこそ、京都へ。
- 本の長さ277ページ
- 言語日本語
- 出版社星海社
- 発売日2011/10/14
- 寸法13 x 1.5 x 18.3 cm
- ISBN-104061388177
- ISBN-13978-4061388178
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登録情報
- 出版社 : 星海社 (2011/10/14)
- 発売日 : 2011/10/14
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 277ページ
- ISBN-10 : 4061388177
- ISBN-13 : 978-4061388178
- 寸法 : 13 x 1.5 x 18.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,212,376位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 190位星海社FICTIONS (本)
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トップレビュー
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2017年10月26日に日本でレビュー済み
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2017年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
田舎の高校でボッチだった針塚圭介は京都大学に入学を果たし、どこかのサークルに入って今度こそ生き生きした学生生活を送ろうと期待しましたが、ミステリアスな女性会長の魔力に捕らえられて、「京都観察会」に入ってしまいます。会長の他に四回生四名と一回生の女性一名のメンバーとともに、何が目的か定かでないサークルでの針塚君の一年が過ぎていきます。
ちゃんと勉強してはいても「エトランゼ(異邦人)」という感覚から逃れられず、将来が不安でならない針塚君には多くの読者が感情移入できるはずです。優しい人の弱さと強さが物語の軸です。
最後にサークルの謎が明かされてから、もう一度初めから読み直すと、見事に味わいが深まります。何気ないように見えた言葉がこんな意味を持っていたとは。
ピュアな恋愛小説的な面もありますが、弱い人に手を差し伸べる人々の優しさの物語と言った方が良いでしょう。
作者の大学の先輩にあたる森見登美彦氏の京都を舞台とする物語を思い出させますが、あのような腐れ大学生は出てきません。毒はありませんが、もっと身近な愛があります。
ちゃんと勉強してはいても「エトランゼ(異邦人)」という感覚から逃れられず、将来が不安でならない針塚君には多くの読者が感情移入できるはずです。優しい人の弱さと強さが物語の軸です。
最後にサークルの謎が明かされてから、もう一度初めから読み直すと、見事に味わいが深まります。何気ないように見えた言葉がこんな意味を持っていたとは。
ピュアな恋愛小説的な面もありますが、弱い人に手を差し伸べる人々の優しさの物語と言った方が良いでしょう。
作者の大学の先輩にあたる森見登美彦氏の京都を舞台とする物語を思い出させますが、あのような腐れ大学生は出てきません。毒はありませんが、もっと身近な愛があります。
2012年4月17日に日本でレビュー済み
前に友達同盟を読んでいたので、森田季節の作品は2作目です。
ファンタジーが入るのかな?と思っていたんですが、違いました。
大学デビューにあたって、何かと理由をつけて積極的になれない主人公。
他の登場人物も個性的なキャラクターなんだけどリアルにいてもおかしくない。(会長以外)
そのさじ加減がとても良かった。
週に2回、飯を食べるだけの不思議なサークル。その所々出てくる違和感に気づいたら惹きつけられていた。
自分が大学生になったら再読すると思う。そんな懐かしさも感じた。
挿絵がカラーになっており丁寧に描かれていたのも嬉しい。
ファンタジーが入るのかな?と思っていたんですが、違いました。
大学デビューにあたって、何かと理由をつけて積極的になれない主人公。
他の登場人物も個性的なキャラクターなんだけどリアルにいてもおかしくない。(会長以外)
そのさじ加減がとても良かった。
週に2回、飯を食べるだけの不思議なサークル。その所々出てくる違和感に気づいたら惹きつけられていた。
自分が大学生になったら再読すると思う。そんな懐かしさも感じた。
挿絵がカラーになっており丁寧に描かれていたのも嬉しい。
2014年3月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
届くまでにひにちがかかりましたが、安く購入できたのでよかったです。
2016年1月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とてもよかったです。とてもよかったです。とてもよかったです。
2011年11月6日に日本でレビュー済み
『不動カリンは一切動ぜず』の著者によるライトノベル。『不動カリンは一切動ぜず』がなかなか面白かったので読んでみたけど、内容は京都の大学生たちを主人公にしたライトノベル。
まぁ、SFじゃなさそうだったのはすぐ分かったのでいいし、京都の大学生モノも好きだなので、読んでみたが、うーん、今ひとつ。京都の大学生モノといえば、森見登美彦や万城目学をすぐに思い出す。私的には両作家ともお気に入りの作家で、新刊が出れば必ず買うようにしているんだけど、この本はそこまでの面白さには至っていないように思う。
森見登美彦や万城目学は、同じ京都の大学生を主人公にしながら、ファンタジーっぽい作品なので、比べてはいけないのかもしれない。この本も、大学生になりたてで、周りに上手く溶け込めない大学生の心情や就職に不安を抱く気持ちなどはよく描けているので、別ジャンルとして読むべきだったかな。そういう意味では、軽いタッチの青春ライトノベルということでは面白かったと思う。
まぁ、SFじゃなさそうだったのはすぐ分かったのでいいし、京都の大学生モノも好きだなので、読んでみたが、うーん、今ひとつ。京都の大学生モノといえば、森見登美彦や万城目学をすぐに思い出す。私的には両作家ともお気に入りの作家で、新刊が出れば必ず買うようにしているんだけど、この本はそこまでの面白さには至っていないように思う。
森見登美彦や万城目学は、同じ京都の大学生を主人公にしながら、ファンタジーっぽい作品なので、比べてはいけないのかもしれない。この本も、大学生になりたてで、周りに上手く溶け込めない大学生の心情や就職に不安を抱く気持ちなどはよく描けているので、別ジャンルとして読むべきだったかな。そういう意味では、軽いタッチの青春ライトノベルということでは面白かったと思う。