1995年刊行。『吸血鬼ドラキュラ』百周年を前にして出版された吸血鬼入門書。もう半世紀以上も前の出版物であります。
吸血鬼伝承の成り立ち、世界の吸血妖怪、実在の吸血鬼（と呼ばれた人間）、史実のドラキュラ＝ヴラド公の略伝、フィクションの中の吸血鬼等々……といったひと通りの吸血鬼情報を平易な文章で解説。
そんな本書の白眉は『吸血鬼ドラキュラ』の原作者ブラム・ストーカーの伝記であります。現在では『ドラキュラ』以外の作品は埋没してしまったものの、この方、得意なジャンルは『インディ・ジョーンズ』路線の伝奇冒険小説だったのですね。従来の吸血鬼文学とは毛色が違う、『吸血鬼ドラキュラ』の活劇調も大いに納得。
マイナーな吸血鬼映画、小説の紹介がやたらに詳しいのも楽しい。
『ドラキュラ』映画ではしばしばミナとルーシーの役まわりが入れ替えられていたり、セワード博士がミナ（またはルーシー）の父親に改変されていたりして首を捻っていたのですが、そうした改変の謎も本書を読んで解けました。
アメリカのユニヴァーサル映画も1940年代になるとモンスター映画が飽きられてしまい、質よりも量でモンスター同士をぶつける対決路線になっていたようで、まるで東映の特撮ヒーローか東宝の怪獣映画のようです。洋の東西を問わず、エンタメ屋さんが考えることは同じだな……。そんな末期の抱き合わせ映画でも著者はそれなりに持ち上げていたのが少々意外。
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