ホームレスと出会うとき,われわれはとまどう。死にゆく者や死者に対して,生者はかけるべき言葉をもたない。精神的・身体的な障害者や重病者にとって,健康な健常者用の常識や通念は無意味だ。しかし,限定条件づきの倫理は偽物である。それは誰かをないがしろにする思想だからだ。
あらゆる思想を根こそぎにして,思想ではない倫理を存在論と結びつけて語るべく,著者は「死にゆく者」の視点からの哲学として,デカルトの『省察』を読み解いていく。「死にゆく者」とは身動きできない病者であり,身体的精神的障害者であり,ホームレスでもあるのだ。問われるのは,社会的,家庭的,身体的,精神的,経済的など,いろいろな条件付きで生を語ることを拒否し,生を無条件に肯定する道を考察することである。
ジャック・マリタンによって「天使主義」と批判されたデカルト。マリタンの批判は的確だと思うのだけれど,「死にゆくわたし」の独我論としてのデカルト把握は,デカルトの天使主義が魅力的な悟達に通じることを示しいていると思う。
「死にゆくわたしは,この世の食物を摂取する力を失っているだろう,身体を動かすこともままならないだろう,そして,刺激を感覚して反応する力も失っているだろう。他人や社会は,そんなわたしを死んだも同然と見なすであろう。それもで,死にゆくわたしは生きている」(p.101)。
「死にゆくわたしが生きているのは,思惟しているからである。(中略)わたしが生きているということは,わたしが思惟するということである」(p.102)。
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デカルト=哲学のすすめ (講談社現代新書 1325) 新書 – 1996/10/1
小泉 義之
(著)
ダブルポイント 詳細
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私は実在する、から出発する晴朗な思索世界飢えた子の前で哲学は有効だろうか。神の存在を証明するとはどういうことか。正しい戦争がありえるか―“近代哲学の父”とされるデカルトを徹底的に読みなおす。
- 本の長さ213ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1996/10/1
- ISBN-104061493256
- ISBN-13978-4061493254
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商品の説明
著者について
1954年、札幌市に生まれる。1988年、東京大学大学院博士課程退学。現在、宇都宮大学助教授。専攻は哲学・倫理学。著書に『兵士デカルト―戦いから祈りへ』―勁草書房―がある。アリストテレス、ホッブズ、スピノザ、ヘーゲルなどについての論文がある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1996/10/1)
- 発売日 : 1996/10/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 213ページ
- ISBN-10 : 4061493256
- ISBN-13 : 978-4061493254
- Amazon 売れ筋ランキング: - 523,879位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 387位フランス・オランダの思想
- - 945位西洋哲学入門
- - 2,033位講談社現代新書
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年11月18日に日本でレビュー済み
本書は、飢餓にあるアフリカの難民を救うべきといった政治的主張や、カントの完全義務への批判などを、デカルトを「援用」して展開しています。しかし、その「援用」を検討してみると、デカルト著書からの引用はごくわずかで、ほとんどこじつけです。現代的の課題について述べられた部分は、著者の政治的姿勢に過ぎないことがわかります。
私は「方法序説」と「省察」を読んだ後に本書を読みましたが、この著者は「懐疑」や「感覚」といったデカルトの問題について全く理解していないといわざるを得ません。解決困難な政治的問題を論じたいならば全く別のタイトルで議論を展開すべきでした。
したがって、デカルト理解を目指す人(デカルトの著書を読んでさらに理解を深めたい、あるいは、翻訳原典を読む前に入門書を買おうと思った人)には本書は不向き。デカルト入門だと思って購入してしまった私は後悔しています。大学教授である著者の講義の単位が必要で、購入やむなしといった人だけが、購入すべきでしょう。
私は「方法序説」と「省察」を読んだ後に本書を読みましたが、この著者は「懐疑」や「感覚」といったデカルトの問題について全く理解していないといわざるを得ません。解決困難な政治的問題を論じたいならば全く別のタイトルで議論を展開すべきでした。
したがって、デカルト理解を目指す人(デカルトの著書を読んでさらに理解を深めたい、あるいは、翻訳原典を読む前に入門書を買おうと思った人)には本書は不向き。デカルト入門だと思って購入してしまった私は後悔しています。大学教授である著者の講義の単位が必要で、購入やむなしといった人だけが、購入すべきでしょう。