『カーマ・スートラ』は、西暦300年前後に、都市生活者向けにヴァーツヤーヤナが編纂した「愛の指南書」とされ、全体は、人生の目的の移行を実利(アルタ)、性愛(カーマ)、美徳(ダルマ)と説く「総論」から、各種の媚薬の調合を説く「秘法」にまで至る7部36章64節のテキストである(オリジナル・テキストは10万以上の章からなり、最近まで英語圏で出回っていたバートン版は翻訳上、かなり問題があるものであるとのことだ)。
著者はこの古典の引用と敷衍を縦軸にして、それに動物行動学(ローレンツやダイヤモンド)、西洋哲学(プラトンやエピキュロス)、恋愛小説(ラクロやカサノヴァ)、フランスの思想家(フーコーやフーリエ)、性科学(『ハイト・リポート』や『エロスと精気』)、中国思想(『素女経』や老子)、キリスト教前後(オウィディウスやローマン・カトリック)や時事的な記事、著者自身の体験談を横軸にして、論じてゆく。
冒頭書いたような生真面目な記述もあるが、解説は時に居酒屋の談話者のように茶化して進む。
元々、本書は月刊誌やWebのエッセイが基礎になっていることもあってか、議論が緻密さを失い、論理にも齟齬が見え、話にも纏まりに欠ける印象を残すようになったのは残念だった(同著者の同シリーズの新書でも『競馬の快楽』には著者のスタイルに安定感があった気がするのだが)。
が、一度『カーマ・スートラ』の翻訳を開いたことがある者として、その内容の精緻な分類に興味を引かれつつも、無味乾燥な翻訳に飽き飽きてしまったので、その意味ではこうした伴走者にも意味があるかな、と思う。
著者の得意とするスタイルは、引用の間に未知のテーマを浮上させることであり、セクシャリティについての想像力は著者が最も得意とするテーマのはずであっただけに、私にはテーマの扱い方が残念だった。
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性愛奥義 官能の「カーマ・スートラ」解読 講談社現代新書 新書 – 2005/8/21
植島 啓司
(著)
古代最大の性典には何が書いてあるのか? 名ばかり有名な『カーマ・スートラ』。そこには驚くほど豊かな技巧と深遠な思想があった。古今の性愛指南書と比較しながら、人類史に残る金字塔を平易に読み解く
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2005/8/21
- ISBN-104061498010
- ISBN-13978-4061498013
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2005/8/21)
- 発売日 : 2005/8/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 224ページ
- ISBN-10 : 4061498010
- ISBN-13 : 978-4061498013
- Amazon 売れ筋ランキング: - 315,847位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年9月14日に日本でレビュー済み
全体としては「カーマ・スートラ」を最新の研究、翻訳に基づいて丁寧に紹介してくれているが、ただそれでけの本でない。一方ではフーコー、フーリエの性に関する言説にも触れ、古くはオウィディウスの「アルス・アマトリア」も紹介してくれる。新書ながら性愛の小百科事典にと呼ぶに相応しい1冊。
2011年5月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いいところは、性に対する記述なのに下品でなくまた、真面目すぎないという点
悪いところは、箇条書きの条件が多く、訳したものがザザっと羅列されている印象しかな
面白いとおもったところは、加藤鷹が意外と哲学的なことをいっているという論評の部分と
海外旅行で持ち物検査されて、鞄からカーマストラが出てきて笑われたという具体的なエピソードです。
全体的にいうとライトで軽いそして、あまり後に何も残らない本。
著者のファンじゃないと、キツイかも。
悪いところは、箇条書きの条件が多く、訳したものがザザっと羅列されている印象しかな
面白いとおもったところは、加藤鷹が意外と哲学的なことをいっているという論評の部分と
海外旅行で持ち物検査されて、鞄からカーマストラが出てきて笑われたという具体的なエピソードです。
全体的にいうとライトで軽いそして、あまり後に何も残らない本。
著者のファンじゃないと、キツイかも。
2007年6月13日に日本でレビュー済み
解説です。カーマスートラは興味深い本ですがうんと昔の本で読みにくかったりするのでそういう人向きの本だと思います。
2006年6月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
カーマスートラをわかりやすく翻訳するだけではなく、自分なりの解釈を加えながら書いてます。
しかし、どうも自分の考えを押し付けている感がぬぐえませんでした。
章の中には大半が自分の意見だけで埋まっているようなところもあり、ちゃんとしたカーマスートラとは言いにくいかもしれません。
しかし、どうも自分の考えを押し付けている感がぬぐえませんでした。
章の中には大半が自分の意見だけで埋まっているようなところもあり、ちゃんとしたカーマスートラとは言いにくいかもしれません。