生物系統学入門でありながら、系統学の汎学的な応用可能性を説く。
物語(ナラティブ)による説明、共時的な分類思考など。生物学の知識は要さない。
本書の前半では、歴史学が二級科学と言われることに対する反論が行われるが、これは科学哲学におけるデュエム=クワイン(決定不能性)テーゼからも立論できるだろう。自然科学畑にいると、必ずこのようなことを敢えて主張しなければならないのだと推察される。
また、「祖先子孫関係は原理的に不可知である」という命題は、およそ他の体系理論においても基本的公理として措かなければならないものだろう。その関係の推測が、考証学や機械学習が対象とする課題である。
生物体系学の論争は、類似度による表形学派、系統関係による分岐学派、それらを併用する進化分類学派により行われた。このように、分類(系統)の組み立てにも複数の学派があることから、分類は一層考察を要するのである。
「極私的文献リスト」では、系統学などに加え一般教養書などが紹介される。
他分野において系統分析を用いたい、系統分析とはなにかということを知りたいなどの要求に応える優れた啓蒙書である。
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系統樹思考の世界 (講談社現代新書) 新書 – 2006/7/19
三中 信宏
(著)
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多様なものをいかに整理し、体系づけるか? 進化するのは生物だけじゃない。言語、車、蕎麦屋……系譜・系図はあまねく広がっている。祖先-子孫の由来をどう推定するか。その方法論と考え方を平易に解説! (講談社現代新書)
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- 本の長さ296ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2006/7/19
- 寸法11.4 x 1.4 x 17.4 cm
- ISBN-104061498495
- ISBN-13978-4061498495
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2006/7/19)
- 発売日 : 2006/7/19
- 言語 : 日本語
- 新書 : 296ページ
- ISBN-10 : 4061498495
- ISBN-13 : 978-4061498495
- 寸法 : 11.4 x 1.4 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 306,868位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年1月1日に日本でレビュー済み
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系統樹と言うと生物学徒にはヘッケルから分子進化系統樹を思いますが、基本的には物事の多様性や、出現の仕方が系統樹的なのだと言う優れたアイデアで書かれた書物。
2006年8月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
系統樹をキーワードにして、いろんなことが詰め込まれている。ひとつひとつはそれぞれ面白いトピックなのだが、非常にまとまりに欠ける感じがする(著者がエピローグで述べているとおり)。まずどういう読者を想定しているか不明瞭で、科学哲学的な分野ではかなりの思惟を要求するが、系統樹のグラフ理論になると無闇に初歩的な説明がなされる、かと思うといきなりネットワークの個数の漸化式が説明なしで提示される。読むほうは書き手の要求するレベルに合わせて行かねばならない。次に、トピックとトピックを繋いでいるのは著者自身の経験談だが、これがもうひとつどの話題ともしっくり結びついておらず、同じことの繰り返しになっている感が強い。そしてしつこい各章ごとの引用!トゥーランドットが嫌いになりそうである。全体を読み通してみて、トピックはいくつも印象に残るのだが、それぞれについてはざっと見渡した程度の踏み込みで、全体からは散漫な印象しか残らない。非常にいい材料が揃っているのに。「だから、系統樹!」と叫び、系統樹はコトバである、と主張する著者を心情的には全面的に支持するが、惹きこみかたをもう少し考えるのは如何かと。
2010年1月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、進化生物学・生物系統学者の著者による、系統学の入門書である。
”歴史をいかに科学するか”という問いに貫かれている本書は、生物学を例にとり、また科学哲学全般における主要な論点や著者の実体験を踏まえて、系統樹の歴史とその位置付け、使用法について幅広く説明している。
本書の前半部分からは、深遠なる歴史の系譜と、それに対する広大なる形而上学的思索を見渡す事が出来る。
後半部分は、歴史の系統推定法として著者が提案するアブダクションの説明にページが割かれている。
話題に上るトピックスの範囲はかなり幅広く、様々な分野における系統樹の存在について多くの知見を得られる。
確かに、他のレビューにあるように系統推定についてはやや突っ込み方が足りないとは思う。
数式まで持ち出した割には、基本の「き」ぐらいでやめてしまった感がある。
エピローグで著者自身が語るように、論点が絞れていないとの批判も当てはまると言えよう。
しかし、全編を通して随所に垣間見える、この世界の眺めを愉しむ”科学者としての著者”の気持ちは、同じ科学に携わる者としては痛いほどわかるのである。
読者にも同様の楽しみを提示する姿勢は、一定の評価に値するのではないかと思う。
著者が意図する以上に、思考者としての著者自身から学べるものは多かった。
また、本書において系統樹思考と対置されている分類思考についての著書も合わせて読むと、より立体的にこの分野の奥行きが掴める。
本書のレベルに関して、あくまで系統推定本としての”入門書”であり、哲学的な考察については、平易な文とは言えないかもしれない。注意が必要。
”歴史をいかに科学するか”という問いに貫かれている本書は、生物学を例にとり、また科学哲学全般における主要な論点や著者の実体験を踏まえて、系統樹の歴史とその位置付け、使用法について幅広く説明している。
本書の前半部分からは、深遠なる歴史の系譜と、それに対する広大なる形而上学的思索を見渡す事が出来る。
後半部分は、歴史の系統推定法として著者が提案するアブダクションの説明にページが割かれている。
話題に上るトピックスの範囲はかなり幅広く、様々な分野における系統樹の存在について多くの知見を得られる。
確かに、他のレビューにあるように系統推定についてはやや突っ込み方が足りないとは思う。
数式まで持ち出した割には、基本の「き」ぐらいでやめてしまった感がある。
エピローグで著者自身が語るように、論点が絞れていないとの批判も当てはまると言えよう。
しかし、全編を通して随所に垣間見える、この世界の眺めを愉しむ”科学者としての著者”の気持ちは、同じ科学に携わる者としては痛いほどわかるのである。
読者にも同様の楽しみを提示する姿勢は、一定の評価に値するのではないかと思う。
著者が意図する以上に、思考者としての著者自身から学べるものは多かった。
また、本書において系統樹思考と対置されている分類思考についての著書も合わせて読むと、より立体的にこの分野の奥行きが掴める。
本書のレベルに関して、あくまで系統推定本としての”入門書”であり、哲学的な考察については、平易な文とは言えないかもしれない。注意が必要。
2006年9月10日に日本でレビュー済み
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英語ではNATURAL HISTORYと言い、ニューヨークにはMUSIUM OF NATURAL HISTORYがあるけど上野のは科学博物館。日本では「科学・技術」対「歴史・哲学」という二項対立でとらえてきた弊害。本書で進化生物学は歴史学だったことに納得。
現象に対する理論は「歪んだガラス」。しかし森羅万象を人間が理解するためにはこの歪んだガラスが必要で、系統樹がその強力な枠組みを提供する。ネットワークは複雑すぎると筆者は説くがツリーも十分複雑で、もっと歪んでいるマトリックスはツリーより判りやすい。
ところで貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書を三位一体とする財務諸表に昨今米国企業改革法SOX内部統制が加わって先行きが混沌としてきた観のある会社評価。系統樹モデルが役立つかもしれない。
現象に対する理論は「歪んだガラス」。しかし森羅万象を人間が理解するためにはこの歪んだガラスが必要で、系統樹がその強力な枠組みを提供する。ネットワークは複雑すぎると筆者は説くがツリーも十分複雑で、もっと歪んでいるマトリックスはツリーより判りやすい。
ところで貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書を三位一体とする財務諸表に昨今米国企業改革法SOX内部統制が加わって先行きが混沌としてきた観のある会社評価。系統樹モデルが役立つかもしれない。
2008年2月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
非常に刺激的で示唆的,面白い新書です.個人的にこの本からたくさんの考えるヒントが得られました.
なるほど生物の歴史はその系譜=木を具体的に考えることで科学的に論じることができる.しかしこれは生物に限った話ではなく,本書にある比較文献学の例もさることながら,構造を持ったものであればもう何でもそうですね.この「系統樹思考」によるアプローチのしかたは,対象が複雑すぎるがゆえに定性的な記述をやむなくされている諸研究領域にとってはけっこうな活路になるのではないでしょうか?
あと,内容はもちろんなのですが,本の書き方というか話の持っていき方というかスタイルがかっこいいですね.読書中,エーコの小説を読んでいるような気がしました.
なるほど生物の歴史はその系譜=木を具体的に考えることで科学的に論じることができる.しかしこれは生物に限った話ではなく,本書にある比較文献学の例もさることながら,構造を持ったものであればもう何でもそうですね.この「系統樹思考」によるアプローチのしかたは,対象が複雑すぎるがゆえに定性的な記述をやむなくされている諸研究領域にとってはけっこうな活路になるのではないでしょうか?
あと,内容はもちろんなのですが,本の書き方というか話の持っていき方というかスタイルがかっこいいですね.読書中,エーコの小説を読んでいるような気がしました.
2013年9月3日に日本でレビュー済み
■見え隠れする系統
建築家が都市のことを語るように、既成の学問分類は時として意味が無い。私の個人的な感覚ではこのような言い回しは斬新でもなく、同世代を見渡すと自分も含め意図的に既成の分類から飛び出そうという意識の持ち主も多いように思う。ところが本書を読み進めるとその意識すら浅い範囲のものでしかないことに気づく。逆説的に、現存の分類があって始めてそれを超えるという概念が生まれることが分かる。ではなぜ現存の境界になったのか、あるいは超えた先に何が関わってくるのか、そういったものを辿るのが本書でいうところの「系統樹思考」である。
■歴史と科学
生物研究者である筆者は系統樹思考を扱うテーマとして初めに歴史を取り上げる。それは「歴史は科学である」という、現在の一般認識に反する筆者の主張であり、数多くの「系統」と歴史の研究・解明が限りなく似た思考法を取ることの証明でもある。詳細は本書に譲るが、まず典型的な自然科学の条件として以下の5つが全て可能であることが求められているという。観察、実験、反復、予測、一般化の5つであり、「歴史」は性質上これらには全て反するために科学ではないという結論が標準的であった。筆者はこの事実に対し、決して「何でもアリ」といった相対主義ではなく、かつ典型とは異なる科学的方法があると述べる。一般に論証のスタイルは、経験的事実から法則を組み立てる帰納法と、ある仮設を元に観察データを集め別の仮説を組み立てる演繹法があるとされてきた。歴史が科学たり得ない致命的な要因は、その両スタイルに照らして叙述が事実であると証明できないことに尽きる、と思われている。ところが科学的な法則も歴史的な叙述も、得られた結論が真実であると証明できない点においては通ずるものがある。どちらも検証できるデータの妥当性を判断し、「限りなく真実に近い推論」を導くために各々に合った研究方法を採っているにすぎない。これは上記2種類に続く第3の論証スタイルである「アブダクション」と呼ばれ、科学と歴史の本来の目的を辿ると同じような場所に行きつくことが分かる。
■ツリーの役割と弱点
上記の例のように現存の分類は何かしらの矛盾を抱えてしまうと同時にそれらの本来の役割を辿ることで同じ着地点が見えることもある。その事例として筆者は、18世紀イギリスの思想家であるウィリアム・ヒューエルが提唱した「古因学」を挙げている。
「『古因学』に分類されるためには『過去の事象に関する因果法則』を追求するという研究目的が共有されていることがただ一つの条件です。」
と筆者が述べるように、現代でいえば化石、生物、地理、言語、民俗、写本といった分類の学問が一緒くたに扱われていたという。かつて一つだった学問が系統樹のように分かれた経緯を考えれば、現在の学問分類を辿ると一つの流れに行きつくというのが筆者の考えである。
ただ、もちろん筆者のせいではないのだが少々肩透かしを食らったのは、「限りなく真実に近いツリー」の見つけ方である。最終的には人々の認識に頼る分類思考と異なり系統樹思考は個々の関係性を問うものであるからどこかに正解が存在する。数学の勉強で樹形図に苦戦したことのある人ならそれを思い出せばいい。つまり最適なツリーはを描くには最終的には考え得る全てのパターンを試すしかないという結論が示されている。もちろん諸条件によって手数を減らすことは可能らしいが、それでもコンピューターでも時間のかかる膨大な樹形を書く必要がある。
系統樹思考の最も怖いところはおそらくこの膨大な検証を避けるがゆえの見落としだろう。全てを検証しなくとも常識や固定概念によって正解に近いツリーを直感であぶりだすことは可能である。ただし、東南アジアのスラム街にある掘立小屋のような家が近年に適当に作られたものであると思いこんでしまうと、植民地宗主国であった国の住宅との関連性を見逃してしまうことにもなる。
■系統樹の発展
ツリーは分かりやすい一方、忠実に考えれば根の部分は孤独になってしまう。それを解決するための例として根の関連性を加えたネットワーク構造などが提唱されている。当然、考えるべきパターンもより膨大なものになるが、ツリーのままではあらゆるものは無限に分化していく以外の選択肢が無いことになってしまう。グローバル化が進んでいる現在、世界には未知の「モノ」が多かったことを知ると同時に共通するものに気づくという、多様性と統一性を同時に体験する矛盾した状態にある。それを解決する手立てとしての「根の関連を解析する」モデルは一つの画期になるのではないかと思う。
建築家が都市のことを語るように、既成の学問分類は時として意味が無い。私の個人的な感覚ではこのような言い回しは斬新でもなく、同世代を見渡すと自分も含め意図的に既成の分類から飛び出そうという意識の持ち主も多いように思う。ところが本書を読み進めるとその意識すら浅い範囲のものでしかないことに気づく。逆説的に、現存の分類があって始めてそれを超えるという概念が生まれることが分かる。ではなぜ現存の境界になったのか、あるいは超えた先に何が関わってくるのか、そういったものを辿るのが本書でいうところの「系統樹思考」である。
■歴史と科学
生物研究者である筆者は系統樹思考を扱うテーマとして初めに歴史を取り上げる。それは「歴史は科学である」という、現在の一般認識に反する筆者の主張であり、数多くの「系統」と歴史の研究・解明が限りなく似た思考法を取ることの証明でもある。詳細は本書に譲るが、まず典型的な自然科学の条件として以下の5つが全て可能であることが求められているという。観察、実験、反復、予測、一般化の5つであり、「歴史」は性質上これらには全て反するために科学ではないという結論が標準的であった。筆者はこの事実に対し、決して「何でもアリ」といった相対主義ではなく、かつ典型とは異なる科学的方法があると述べる。一般に論証のスタイルは、経験的事実から法則を組み立てる帰納法と、ある仮設を元に観察データを集め別の仮説を組み立てる演繹法があるとされてきた。歴史が科学たり得ない致命的な要因は、その両スタイルに照らして叙述が事実であると証明できないことに尽きる、と思われている。ところが科学的な法則も歴史的な叙述も、得られた結論が真実であると証明できない点においては通ずるものがある。どちらも検証できるデータの妥当性を判断し、「限りなく真実に近い推論」を導くために各々に合った研究方法を採っているにすぎない。これは上記2種類に続く第3の論証スタイルである「アブダクション」と呼ばれ、科学と歴史の本来の目的を辿ると同じような場所に行きつくことが分かる。
■ツリーの役割と弱点
上記の例のように現存の分類は何かしらの矛盾を抱えてしまうと同時にそれらの本来の役割を辿ることで同じ着地点が見えることもある。その事例として筆者は、18世紀イギリスの思想家であるウィリアム・ヒューエルが提唱した「古因学」を挙げている。
「『古因学』に分類されるためには『過去の事象に関する因果法則』を追求するという研究目的が共有されていることがただ一つの条件です。」
と筆者が述べるように、現代でいえば化石、生物、地理、言語、民俗、写本といった分類の学問が一緒くたに扱われていたという。かつて一つだった学問が系統樹のように分かれた経緯を考えれば、現在の学問分類を辿ると一つの流れに行きつくというのが筆者の考えである。
ただ、もちろん筆者のせいではないのだが少々肩透かしを食らったのは、「限りなく真実に近いツリー」の見つけ方である。最終的には人々の認識に頼る分類思考と異なり系統樹思考は個々の関係性を問うものであるからどこかに正解が存在する。数学の勉強で樹形図に苦戦したことのある人ならそれを思い出せばいい。つまり最適なツリーはを描くには最終的には考え得る全てのパターンを試すしかないという結論が示されている。もちろん諸条件によって手数を減らすことは可能らしいが、それでもコンピューターでも時間のかかる膨大な樹形を書く必要がある。
系統樹思考の最も怖いところはおそらくこの膨大な検証を避けるがゆえの見落としだろう。全てを検証しなくとも常識や固定概念によって正解に近いツリーを直感であぶりだすことは可能である。ただし、東南アジアのスラム街にある掘立小屋のような家が近年に適当に作られたものであると思いこんでしまうと、植民地宗主国であった国の住宅との関連性を見逃してしまうことにもなる。
■系統樹の発展
ツリーは分かりやすい一方、忠実に考えれば根の部分は孤独になってしまう。それを解決するための例として根の関連性を加えたネットワーク構造などが提唱されている。当然、考えるべきパターンもより膨大なものになるが、ツリーのままではあらゆるものは無限に分化していく以外の選択肢が無いことになってしまう。グローバル化が進んでいる現在、世界には未知の「モノ」が多かったことを知ると同時に共通するものに気づくという、多様性と統一性を同時に体験する矛盾した状態にある。それを解決する手立てとしての「根の関連を解析する」モデルは一つの画期になるのではないかと思う。
2006年11月18日に日本でレビュー済み
刺激的な本である。
系統樹という思考法を通じて学問間の壁を破壊し、知の世界を統合的に捉える方法を模索している。
作者はもともとは生物学系の学者であり、専門は進化生物学ということである。
生物学とはいまここにある生物を対象とする学問であるが、進化生物学となるとそれに加えて時の流れを相手にしなければならない。
進化とは過去のことであり、それぞれの進化は個別である。
となると観察・実験・反証・予測・一般化といった科学の一般原則が適用できない。では、進化生物学は科学ではないのか?更に拡げれば歴史は科学ではないのか?一般原則の適用の難しい社会科学や人文科学は真の科学ではないのか?
このような出発点から科学の原則とはなにかを追求し、「よりよい理論」をもとめる第三の推論形式アブダクションや分類と系統の違いといった人間の認知形式と次第に科学の根源を目指す深い思索の旅が始まる。
科学とは人間の日々の営為にも深く関わっている。
これも作者の主張の一つである。系統樹思考は家系図や事物の由来・継承などに見られるようにわりと身近な世界でも使われている。そして「棒の手紙」のように系統樹の考え方を用いて身近な世界について考えることもできる。
系統樹思考とは世界を新しく開け直す思考法である。
系統樹という思考法を通じて学問間の壁を破壊し、知の世界を統合的に捉える方法を模索している。
作者はもともとは生物学系の学者であり、専門は進化生物学ということである。
生物学とはいまここにある生物を対象とする学問であるが、進化生物学となるとそれに加えて時の流れを相手にしなければならない。
進化とは過去のことであり、それぞれの進化は個別である。
となると観察・実験・反証・予測・一般化といった科学の一般原則が適用できない。では、進化生物学は科学ではないのか?更に拡げれば歴史は科学ではないのか?一般原則の適用の難しい社会科学や人文科学は真の科学ではないのか?
このような出発点から科学の原則とはなにかを追求し、「よりよい理論」をもとめる第三の推論形式アブダクションや分類と系統の違いといった人間の認知形式と次第に科学の根源を目指す深い思索の旅が始まる。
科学とは人間の日々の営為にも深く関わっている。
これも作者の主張の一つである。系統樹思考は家系図や事物の由来・継承などに見られるようにわりと身近な世界でも使われている。そして「棒の手紙」のように系統樹の考え方を用いて身近な世界について考えることもできる。
系統樹思考とは世界を新しく開け直す思考法である。