出版社が(数学書としては)マイナーでしたから、内容少し不安を覚えつつ手に取ったのですが、とても読みやすく、分かりやすいガロア理論の入門書です。
既に体系化されてしまったガロア理論を一般の体論の教科書で学ぼうとすれば、そこにはどうしても夫々の定理、補題の必然性などを自身でよく考えながら読み進める必要が生じ、通常それはとても困難な作業になってしまいます。本書はその点を代数方程式論の歴史に忠実に沿った形で記述しており、ルフィニからアーベルを経てガロア、そして抽象体への一般化に至る一連の理論の発展の流れをすんなりと読み解くことができます。行間を埋める手間がほとんどかからない、独習に適した教科書といえます。
これは原著に忠実、しかも美しい日本語での翻訳によるところが大きく、訳者の丁寧な翻訳に大いに感謝しなければなりません。
ただ、2点、読み進める上でかならずつまづく箇所があると思いますので、以下に述べておきます。とはいえ、第12章までで他に大きな論理の飛躍や誤植はなく、独学者にとってとても使いやすい本であることは間違いありません。
〔1〕第8章 P112 定理8.14の証明 なかごろ「...したがって,¥alpha,...,x_{p-1}¥in L である.」
→これは前後の流れからただちに分かることではありません。論理の飛躍があります。
〔2〕第11章 P137 定理11.13の証明
→論理の飛躍、あるいは誤りがあります。
「すべてのK単射L→MはK単射L→N」ですが,K単射L→Nの個数は[L:K]個以下であるとは(明らかには)いえません。NはM:Kの正規閉包としてとっており,L:Kの正規閉包としてとっているわけではないからです。
ただ、この定理はL:KをCの部分体に限らない場合について述べていると考えた方がよいでしょう。その場合には定理11.10が使えず、やはり帰納法による証明がよいと思います。(ちなみに明示されていませんが、11.10はCの部分体における定理です。)
原著には帰納法による証明がありますので、そちらを参考に。

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明解ガロア理論 [原著第3版] (KS理工学専門書) 単行本(ソフトカバー) – 2008/3/15
ガロアは何を考え、どう生きたのか
5次方程式はなぜ解けないかを中心に、ガロア理論を具体的に説き明かす。豊富な話題と200題を超える演習問題で理解を深める、ガロア理論の入門として画期的な好著。
5次方程式はなぜ解けないかを中心に、ガロア理論を具体的に説き明かす。豊富な話題と200題を超える演習問題で理解を深める、ガロア理論の入門として画期的な好著。
- 本の長さ368ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2008/3/15
- ISBN-10406155770X
- ISBN-13978-4061557703
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2008/3/15)
- 発売日 : 2008/3/15
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 368ページ
- ISBN-10 : 406155770X
- ISBN-13 : 978-4061557703
- Amazon 売れ筋ランキング: - 949,441位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,129位代数・幾何
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年11月14日に日本でレビュー済み
この本を発行後まもなく買ったが,読むにつれ理解できない箇所がどんどん溜まって降参し,私には教科書レベルの数学書は無理なのかと落ち込んでいた。ところが最近,原著にふれる機会があり,“原著に忠実しかも美しい日本語での翻訳”といった評判に疑問をもつにいたった。
“ガロアの生涯”といった数学者先生には縁遠い実生活的な所でのとんでもない訳については目をつぶるとしても,第3版まえがきの1ページ目( p.vi )の「…中心となる課題は,ベキ根で表される解によりそれに関する方程式を解くことであり,そこではn乗根以上の代数記号は登場しない。」は数学的内容の訳としておかしなものではないか(解によって方程式を解くとはどういうこと? “解くこと”ではなく“ベキ根で表される解”が存在するかどうかが中心課題ではないの? n乗根以上の代数記号というと平方根記号もふくまれるんじゃないの?)。もちろん,原著ではこのようには言っていない。本文に入ってからも,この調子で誤り訂正能力or誤り無視能力を要求される訳文がしばしば出現する。
なお,絶版になった共立全書の同じ原著者の『ガロアの理論』が世の中に再び行き渡るのは喜ばしいことです,というコメントがあったが,この本にある”第3版まえがき”を見れば分かるように根本的な書き替えがなされているので注意が必要。
“ガロアの生涯”といった数学者先生には縁遠い実生活的な所でのとんでもない訳については目をつぶるとしても,第3版まえがきの1ページ目( p.vi )の「…中心となる課題は,ベキ根で表される解によりそれに関する方程式を解くことであり,そこではn乗根以上の代数記号は登場しない。」は数学的内容の訳としておかしなものではないか(解によって方程式を解くとはどういうこと? “解くこと”ではなく“ベキ根で表される解”が存在するかどうかが中心課題ではないの? n乗根以上の代数記号というと平方根記号もふくまれるんじゃないの?)。もちろん,原著ではこのようには言っていない。本文に入ってからも,この調子で誤り訂正能力or誤り無視能力を要求される訳文がしばしば出現する。
なお,絶版になった共立全書の同じ原著者の『ガロアの理論』が世の中に再び行き渡るのは喜ばしいことです,というコメントがあったが,この本にある”第3版まえがき”を見れば分かるように根本的な書き替えがなされているので注意が必要。
2008年10月2日に日本でレビュー済み
ガロア理論の概説書は色々あるけれども、本当は難しいと思います。この本もイマイチ明解とは私には思えません。ネットの「スチュアートのガロア理論」で誤植も必見。
「この定理が美しい」p.11は簡潔で分かり易いです。
とかく代数入門と謳った本は多いけど、これがまた決して入門的ではなく困惑するのですが、
併読本としては一番やさしい金重明「13歳の娘に語る ガロアの数学」竹内薫「建築には数学がいっぱい!? 」の第3章、硲文夫「代数学―数と式の現代的理論」から読もう。
引き続き整数論は吉田 武「素数夜曲」や群論は石谷 茂「入門入門群論」横田 一郎 『初めて学ぶ人のための「群論入門」』で足慣らし、次に加藤 明史「読んで楽しむ代数学」
「すべての人に数学を」小針アキヒロ(広中平祐の京都大での同級生)、数セミ増刊号「代数学への招待」「現代数学の招待」日本評論社p.17〜46の遠山啓の解説、岩波の「代数入門 2」上野健爾、中島匠一「代数方程式とガロア理論」もお薦めします。
ガロア理論についてはネットで松田研究室の「ガロア理論入門ノート概説・詳細」や「物理のかぎしっぽ」のHPと併読が良いと思います。青空学園数学科でJ.ロットマンの本の読書会もやっています。
追記2015 動画you tubeでもっとわかりやすいが「五次方程式が代数的に解けないわけ」の動画です。 数学セミナー2018年10月号に訳者の解説文があります。凄くわかり易いですよ。
you tube:【ガロア理論】体上の最小多項式の基礎まとめ
「代数学の華 ガロア理論」のレヴューもご覧ください。
「この定理が美しい」p.11は簡潔で分かり易いです。
とかく代数入門と謳った本は多いけど、これがまた決して入門的ではなく困惑するのですが、
併読本としては一番やさしい金重明「13歳の娘に語る ガロアの数学」竹内薫「建築には数学がいっぱい!? 」の第3章、硲文夫「代数学―数と式の現代的理論」から読もう。
引き続き整数論は吉田 武「素数夜曲」や群論は石谷 茂「入門入門群論」横田 一郎 『初めて学ぶ人のための「群論入門」』で足慣らし、次に加藤 明史「読んで楽しむ代数学」
「すべての人に数学を」小針アキヒロ(広中平祐の京都大での同級生)、数セミ増刊号「代数学への招待」「現代数学の招待」日本評論社p.17〜46の遠山啓の解説、岩波の「代数入門 2」上野健爾、中島匠一「代数方程式とガロア理論」もお薦めします。
ガロア理論についてはネットで松田研究室の「ガロア理論入門ノート概説・詳細」や「物理のかぎしっぽ」のHPと併読が良いと思います。青空学園数学科でJ.ロットマンの本の読書会もやっています。
追記2015 動画you tubeでもっとわかりやすいが「五次方程式が代数的に解けないわけ」の動画です。 数学セミナー2018年10月号に訳者の解説文があります。凄くわかり易いですよ。
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