冒頭、次の2行の言葉で始まります。
物みなの底に1つの法ありと
日にけに深く思ひ入りつつ
「宇宙と人間 7つのなぞ/湯川秀樹著」(1974年刊)に続いて出版されたのが本書ですが、
すでに前作で「キーワード」は結晶化されていたのか、やはり「神話」から流れが持ち上がります。
①「神話」・・力学において自然環境相互の関連を解明せんとする、最初の思考の試みは「神話」だった。
②「自然哲学」・・しかし「神話」がいつまでも物質現象の理論として通用するはずもなく、水・火・土・
空気、物質の力の仕掛けをのみこんだ人間は、自然を支配し得ると思うようになった。
③「近代物理学」・・17世紀前後「自然哲学」から「近代物理学」へ至るには二つの特徴があった。
一、数学の助けによる自然記述の精密化、ないしは体系化。
二、推論の前提、ないしは結果の実験。
※実証的精神は、経験に確固たる根拠を持たぬ多くの独断論を破壊した。
素朴実在論的見解(理論の現実世界への再現性)を人々と共有することができた。
④「現代物理学」・・20世紀の物理学にはもはや、そのような安定感は伴わなくなった。相対性理論は、
物理学的な合法的世界がそのまま現実世界の再現ではないことを証明した。
⑤「物質から精神へ」
・・石は無生物。猫は生物。どちらも、非常に多数の原子の集まりである点は同じ。
猫を量子力学的体系と見なすならば、石と同程度の数の原子から成るのに、
そのふるまいの自由度は石とは比較にならないほど、複雑で大きい。(=^・^=)
物理学的研究法と生理学的研究法はたがいに相補的関係にあるのではないか・・。
一方、人間のごとき複雑な構造を持つ生物に対しては、外面の観察だけでは不十分。
現にわれわれは始終自分の心の働きを自分で観察している。また、他人に対しては、
外面的な観察から内面を観察し、<動物🐈の行動観察>から、人と似た心の働きを
想像しさえする。
物質の問題が錯綜した迷路にはいりこんで、途方に暮れようとする行き詰まりから、
自ら精神の世界が開けてくる。それはもはや、狭い領域における物理学の世界ではない。
主として心理学によって研究されるべき領域である。
そこでは精神現象の正確な表現、それを支配する法則の発見が問題となる。
ただし心理学的世界とは言え、<物質的な現象>が始終、外的なもの、偶然的なものとして、
影響を及ぼしていることは明らかである。
⑥「著者の信条」・・自然法則とは「自然現象の(ありのままの)記述」であって説明ではない。
➆「思想の結晶」・・極めて細い兎の毛の小さなコブは、「雪の結晶」を人工的に作る際の最もよい核。
凝縮された核を中心に大きな思想の結晶を作りたい。
思想の結晶とは逆に、核爆発を生んでしまった物理学の歴史にはどれほど心を痛められたことでしょうか。
物理学の奥深さに誘われ、湯川博士に黙祷。フォーエバー、湯川先生!
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目に見えないもの (講談社学術文庫) 文庫 – 1976/12/8
湯川 秀樹
(著)
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〈わが国初のノーベル賞に輝く湯川博士、生涯の記念碑的作品〉
〈1946年の初版*以来、学問に志す多くの若者達の心をとらえ続けてきた名著!〉
「中間子」を発見し素粒子物理学を大きく前進させた著者が、現代物理学の物質観を、そして同時に、今日の自然科学的なものの見方・考え方を、だれにもわかる平易な言葉で説く、不朽の科学入門。
「目に見えないものの世界」への旅立ちを伝える諸篇には、深く豊かな知性が光り、「真実」を求めてのあくなき思索が生み出した珠玉の言葉には、ひとつの確かな思想がある。
現実は痛切である。あらゆる甘さが排斥される。現実は予想できぬ豹変をする。あらゆる平衡は早晩打破せられる。現実は複雑である。あらゆる早合点は禁物である。(本書「真実」より)
*本書の原本は1946年に甲文社より刊行されました。
【本書の内容】
第一部
1.理論物理学の輪郭
1 自然哲学 2 近代物理学 3 現代物理学
2.古代の物質観と現代科学
1 古代インドの自然観 2 現代の物質観との対比 3 因果と時間の問題
3.エネルギーの源泉
1 物質の構造 2 放射線の本体 3 力とエネルギー 4 原子内のエネルギー 5 太陽のエネルギー
4.物質と精神
1 二つの通路 2 物理学的世界 3 物質から精神へ 4 科学の根源
第二部
1.半生の記
2.ガラス細工
3.少年の頃
4.二人の父
第三部
1.物理学に志して
2.科学と教養
3.真実
4.未来
5.日食
6.眼の夏休み
7.読書と著作
8.話す言葉・書く言葉
9.『現代の物理学』
10.『物質の構造』
11.『ピエル・キュリー伝』
12.目と手と心
13.目に見えないもの
14.思想の結晶
〈1946年の初版*以来、学問に志す多くの若者達の心をとらえ続けてきた名著!〉
「中間子」を発見し素粒子物理学を大きく前進させた著者が、現代物理学の物質観を、そして同時に、今日の自然科学的なものの見方・考え方を、だれにもわかる平易な言葉で説く、不朽の科学入門。
「目に見えないものの世界」への旅立ちを伝える諸篇には、深く豊かな知性が光り、「真実」を求めてのあくなき思索が生み出した珠玉の言葉には、ひとつの確かな思想がある。
現実は痛切である。あらゆる甘さが排斥される。現実は予想できぬ豹変をする。あらゆる平衡は早晩打破せられる。現実は複雑である。あらゆる早合点は禁物である。(本書「真実」より)
*本書の原本は1946年に甲文社より刊行されました。
【本書の内容】
第一部
1.理論物理学の輪郭
1 自然哲学 2 近代物理学 3 現代物理学
2.古代の物質観と現代科学
1 古代インドの自然観 2 現代の物質観との対比 3 因果と時間の問題
3.エネルギーの源泉
1 物質の構造 2 放射線の本体 3 力とエネルギー 4 原子内のエネルギー 5 太陽のエネルギー
4.物質と精神
1 二つの通路 2 物理学的世界 3 物質から精神へ 4 科学の根源
第二部
1.半生の記
2.ガラス細工
3.少年の頃
4.二人の父
第三部
1.物理学に志して
2.科学と教養
3.真実
4.未来
5.日食
6.眼の夏休み
7.読書と著作
8.話す言葉・書く言葉
9.『現代の物理学』
10.『物質の構造』
11.『ピエル・キュリー伝』
12.目と手と心
13.目に見えないもの
14.思想の結晶
- 本の長さ163ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1976/12/8
- 寸法10.8 x 0.8 x 14.8 cm
- ISBN-104061580949
- ISBN-13978-4061580947
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商品の説明
著者について
1907年東京に生まれる。京都帝国大学卒業後1932年京大講師、同33年阪大講師を兼ねる。1934年「中間子論」を発表、この業績により1949年我国初のノーベル物理学賞を受賞す。日本学士院会員、京都大学・大阪大学名誉教授となり、1981年没。著書は「量子力学序説」「創造への飛躍」「この地球に生れあわせて」など。
【画家紹介】
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1976/12/8)
- 発売日 : 1976/12/8
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 163ページ
- ISBN-10 : 4061580949
- ISBN-13 : 978-4061580947
- 寸法 : 10.8 x 0.8 x 14.8 cm
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著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年10月8日に日本でレビュー済み
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2023年10月19日に日本でレビュー済み
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ノーベル賞に輝いた湯川秀樹博士が30代の頃に書いた文章を集めたものだ。50代となった自分と比較すると、人間としての成熟度に雲泥の差を感じる。理論物理学というものが、それぞれの時代の中でどのような雰囲気を持っていたのかを想像することができる貴重な言葉たちだ。相対性理論や量子論などが、どんどんと生まれ、研ぎ澄まされて行く工程を目の前で感じていた世代は、原子力発電所が生まれ、さらに未曾有の事故を起こすところまでを体験している我々とは感覚がちがう。そこには前進して行く力を感じる。未知であることは力なのだと思う。
2021年2月19日に日本でレビュー済み
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所定期日以内に届きました。とても興味深く完読しました。感謝申し上げます。
2016年8月13日に日本でレビュー済み
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二部構成。
自伝的な部分と、研究者としての思いの詰まった部分と。
中間子理論発見のまさにただなかに書かれたものであるだけに、新たなものを創造する時の息吹のようなものが感じられる好著だと感じた。
これから専門に向かってゆく理系大学生に心構えが伝わるいい本です。
自伝的な部分と、研究者としての思いの詰まった部分と。
中間子理論発見のまさにただなかに書かれたものであるだけに、新たなものを創造する時の息吹のようなものが感じられる好著だと感じた。
これから専門に向かってゆく理系大学生に心構えが伝わるいい本です。
2014年8月9日に日本でレビュー済み
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タイトルに惹かれて、購入しました。
第一部に入ってすぐの一文に、ノックアウトされました。
「物みなの底に一つの法ありと 日にけに深く思ひ入りつゝ」
戦争が終わってすぐ、の昭和21年に初版、というのも、ものすごいことですね。
戦争があっても、何があっても、それでも不変の、自然の「法」を、そして、その「力」を
感じておられたからこその発刊だったのでは・・・と。
第一部に入ってすぐの一文に、ノックアウトされました。
「物みなの底に一つの法ありと 日にけに深く思ひ入りつゝ」
戦争が終わってすぐ、の昭和21年に初版、というのも、ものすごいことですね。
戦争があっても、何があっても、それでも不変の、自然の「法」を、そして、その「力」を
感じておられたからこその発刊だったのでは・・・と。
2017年3月10日に日本でレビュー済み
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裏表紙に「今日の自然科学的なものの見方・考え方を、だれにもわかる平易な言葉で説いている」とありますが、やはり戦前に書かれた文章で多少のわかりづらさはあります。また、第一部の前半については、今の中高校生の理科の教科書記載レベルの内容で退屈に感じてしまうかもしれません。しかし、第二部については、湯川博士の人柄・科学者としてのありようが書かれており、ぜひ理科系の学生さんには読んでいただきたい内容でした。
2013年4月17日に日本でレビュー済み
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湯川秀樹先生のこの本を、大学生に差し上げてしまったので、再購入。
年をとって再び読み返すと、奥の深さを感じます。
年をとって再び読み返すと、奥の深さを感じます。
2013年11月22日に日本でレビュー済み
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なかなか忙しくて最後まで読んでいないのですが、新たな視点で目を開かれる想いがするような内容が何箇所もあり、気持ちの良い文章でした。