レトリック、という言葉を聞いてなんとなく尻込みしてしまう方は多いのではないか?しかし私たちの日常の言語にはどこを切り取ってもレトリックは顔を潜んでいるのである。
本書はレトリックというものが私たちの物の見方や表現の仕方に分かちがたく結びついていているというのを過去の文学作品などを引き合いにユーモアを交えながら懇切丁寧に説明し、レトリックの大切さを痛感させてくれる名著である。
レトリックは一言でいえば言語表現に特異な効力を発揮させる技巧である。それではどこで誕生して如何に発展してきたのか?
レトリック発祥の地、それは古代ギリシャであるそうだ。古代ギリシャでは民主制が発展して当時の議会や法廷や催し物で弁論が必要不可欠なものになっていった。ソクラテスが相手の無知を自覚させるべく躍動していたり、ソフィストたちがうごめていて猛威を振るっていたことからも想像がつくだろう。そこで其れ以降ヨーロッパに脈々と受け継がれ発展していく弁論術、レトリックには大きく分けて2つの役割が付与された。1つ目は「説得」2つ目は「装飾」である。佐藤氏はそれに加えて「発見的認識」を3つ目の役割として挙げている。詳しくは本書をご一読いただきたい。
古代ギリシャでうまれたレトリックはヨーロッパの教育において19世紀までは主要な一般教科科目とされていたが20世紀には忽然と姿を消してしまった。20世紀にはレトリックはわずらわしい、技巧的の割には活力を失った、古臭くてうざったいものとして見られるようになったのである。人々は自分の思いを、技巧的なレトリックなど気にすることなくごく正直に、率直に表現しようとした。そして言語は、技術的苦労なしに、忠実に物事を記述しうる道具である、という考え方が人々の中に普及していった。しかし佐藤氏はこれに大きく反発してる。
森羅万象のうち、実は本名を持たないもののほうがはるかに多く、辞書に載っている単語を辞書の意味通りに使っただけでは、たかの知れた自分一人の気持ちを正直に記述することすらできやしない、というわかりきった事実を、私たちはいったい、どうして忘れられたのだろう。ほんとは、人を言い負かすためだけではなく、ことばを飾るだけではなく、私たちの認識をできるだけありのままに表現するためにこそレトリックの技術が必要だったのにP26
その後は直喩や隠喩、換喩などのレトリックを具体例に即しながら説明している。
一般教養科目の王様としてのレトリックは消えたわけだが洋画などアメリカなどのテレビ番組などではいまだにレトリックは数多くみられる。なぜ彼らはあんなウィットに富んでいるのだろう、と不思議に思うが、それはレトリックは彼らの親、祖父母など先人から脈々と受け継がれているそうだ。彼らの中にはいまだに根強く残っている。なんだかうらやましい話だなと思った。
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レトリック感覚 (講談社学術文庫) 文庫 – 1992/6/5
佐藤 信夫
(著)
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アリストテレスによって弁論術・詩学として集成され、近代ヨーロッパに受け継がれたレトリックは、言語に説得効果と美的効果を与えようという技術体系であった。著者は、さまざまの具体例によって、日本人の立場で在来の修辞学に検討を加え、「ことばのあや」とも呼ばれるレトリックに、新しい創造的認識のメカニズムを探り当てた。日本人の言語感覚を活性化して、発見的思考への視点をひらく好著。
- ISBN-104061590294
- ISBN-13978-4061590298
- 出版社講談社
- 発売日1992/6/5
- 言語日本語
- 寸法10.8 x 1.5 x 14.8 cm
- 本の長さ332ページ
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著者について
1932年東京生まれ。東京大学哲学科卒業。元国学院大学教授。著書に『記号人間』『レトリック・記号etc』『レトリックの消息』、訳書にギロー『文体論』『記号学』、バルト『モードの体系』、ムーナン『二十世紀の言語学』、講談社学術文庫に『レトリック認識』『レトリックの記号論』『わざとらしさのレトリック』『レトリックの意味論』がある。1993年没。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1992/6/5)
- 発売日 : 1992/6/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 332ページ
- ISBN-10 : 4061590294
- ISBN-13 : 978-4061590298
- 寸法 : 10.8 x 1.5 x 14.8 cm
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2022年11月1日に日本でレビュー済み
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2023年10月24日に日本でレビュー済み
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文章は、適切な単語を選択して簡単な構成により構成することが良いと考えていた。著者は、適切な単語はなく作者の意図を正確に説明することが困難であるため、レトリックが発達したと説明している。単語の意味は、限定されているため作者の意図を的確に説明できないからである。
簡単な文章で、意図が適切に説明し得るとされたのは、19世紀ヨーロッパ文学者であるが、彼らは既に優秀なレトリック使用者であり、レトリックの理解に乏しい現代人が簡単な文章構成で正確な意味を伝えることは困難であると主張している。本書は、この様な前提からレトリックの手法を豊富な文献から例文を引用して説明している。レトリックの重要性が良く理解できる本である。
簡単な文章で、意図が適切に説明し得るとされたのは、19世紀ヨーロッパ文学者であるが、彼らは既に優秀なレトリック使用者であり、レトリックの理解に乏しい現代人が簡単な文章構成で正確な意味を伝えることは困難であると主張している。本書は、この様な前提からレトリックの手法を豊富な文献から例文を引用して説明している。レトリックの重要性が良く理解できる本である。
2019年7月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
"本書で私がこころみたかったのは、伝統的なレトリック体系が蓄積してきた古い知恵を、思い出し、そこから新しい可能性をさぐることである。"1978年発刊の本書は、アリストテレスから始まり説得効果と美的効果を与える技術体系となったレトリックの日本受肉を具体例で紹介している創造的な良書。
個人的には、序章にある"辞書にのっている単語を辞書の意味どおりに使っただけでは、たかの知れた自分ひとりの気持ちを正直に記述することすらできはしない、というわかりきった事実を、私たちはいったい、どうして忘れたのだろう。"といった始まりに、SNS上やそれ以外にも毎日のように【すれ違っては炎上したり、炎上させられたり】といった現在を重ねながら本書を手にとりました。
さて、本書ではアリストテレスによって弁論術・詩学として集大成され、言葉に【説得する効果】【美的・芸術的効果】の2つを与える技術体系としてヨーロッパで精錬された【役に立つ】『レトリック』が近代の人間視点の科学、合理主義の中で真実が変容する【役に立たない】つまり実用性がないと没落し、軽視される様になった事。
また20世紀の後半になって、近代の見直しの風潮の中で『レトリック』の前述の役割に加えて【発見的認識の造形】に注目が集まってきていることを、日本への文化的輸入のプロセスも含めて具体的に明らかにしようとしているわけですが。
正直に言って【直喩】に【隠喩】はともかくとして【換喩、提喩、誇張法、烈叙法、緩叙法】といった具体的な分類に関しては、言葉自体なじみがなく、とっつきにくさに始めは戸惑ったのですが。一方で著者が冒頭の夏目漱石始めとする様々な文学作品の引用や、隠喩は白雪姫型、換喩は赤頭巾型などに例えて紹介してくれている事で、とても親しみやすく読む事ができました。
また、言葉の直接的な動きよりも、対象との焦点。言葉としての【対象をわかりやすくする】役割より、対象を【感じさせ、想起させる】事についての指摘は、それこそ言葉で説明するのは難しいものの、言わば『現代アートと対峙した時に受ける感覚』と近い気がして、はっとさせられました。ユニークな本書の視点に驚きと敬意を。
言語表現の限界と可能性を考えたい誰か、あるいは文章表現に関わっている誰かにオススメ。
個人的には、序章にある"辞書にのっている単語を辞書の意味どおりに使っただけでは、たかの知れた自分ひとりの気持ちを正直に記述することすらできはしない、というわかりきった事実を、私たちはいったい、どうして忘れたのだろう。"といった始まりに、SNS上やそれ以外にも毎日のように【すれ違っては炎上したり、炎上させられたり】といった現在を重ねながら本書を手にとりました。
さて、本書ではアリストテレスによって弁論術・詩学として集大成され、言葉に【説得する効果】【美的・芸術的効果】の2つを与える技術体系としてヨーロッパで精錬された【役に立つ】『レトリック』が近代の人間視点の科学、合理主義の中で真実が変容する【役に立たない】つまり実用性がないと没落し、軽視される様になった事。
また20世紀の後半になって、近代の見直しの風潮の中で『レトリック』の前述の役割に加えて【発見的認識の造形】に注目が集まってきていることを、日本への文化的輸入のプロセスも含めて具体的に明らかにしようとしているわけですが。
正直に言って【直喩】に【隠喩】はともかくとして【換喩、提喩、誇張法、烈叙法、緩叙法】といった具体的な分類に関しては、言葉自体なじみがなく、とっつきにくさに始めは戸惑ったのですが。一方で著者が冒頭の夏目漱石始めとする様々な文学作品の引用や、隠喩は白雪姫型、換喩は赤頭巾型などに例えて紹介してくれている事で、とても親しみやすく読む事ができました。
また、言葉の直接的な動きよりも、対象との焦点。言葉としての【対象をわかりやすくする】役割より、対象を【感じさせ、想起させる】事についての指摘は、それこそ言葉で説明するのは難しいものの、言わば『現代アートと対峙した時に受ける感覚』と近い気がして、はっとさせられました。ユニークな本書の視点に驚きと敬意を。
言語表現の限界と可能性を考えたい誰か、あるいは文章表現に関わっている誰かにオススメ。
2011年12月31日に日本でレビュー済み
この本は文章についてたくさんのことを言っているから、感想を述べることは難しいのだけれど、序章で毒にも薬にもなるのがレトリックだ、と正直に告白していることに、この著者が誠実な人だという印象を受けた。
トルストイやモーパッサン、いわゆる文豪がレトリックの危険性を口酸っぱく説いている引用の部分は、なんだかこそばゆかったけれど(だって彼らもレトリックの達人なわけですから)、そもそもは相手に興味を持たせたり、あらゆる情景を喚起させることや一種の知的刺激こそが「ことばのあや」であって、善か悪かはその使い手に委ねられるのだよな、と思った。
科学主義が台頭してから、レトリックは技術というよりも「まやかし」のように扱われているけれど、それでもこれを学ぶことは、大切だと思った。文章は本来、事象や空想を描くには不完全な手段であるし、それを補うものこそがレトリックのような気がした。
例えばブックレビューひとつにしても、延々と事実と論理しか書かれていない文章を、最後まで読むのを諦めたという経験は誰にでもあると思うし、そういった感性が間違いだとは、僕には思えないからだ。
東大の教授が書いたもので、しかも300ページ以上ものボリュームがあったから、全部は読まなかったが、それでも直喩と暗喩の部分は何回か繰り返し読んだ。この2章は他の章と異なり、著者の「事実を事実として伝えることが、ダイレクトに読み手の理解へとつながるわけではない」というメッセージが込められていると思ったからだ。
例えば著者はこんなことを言っている。
『「クツワムシのような声だ」という文があったとして、我々のほとんどはクツワムシというものの声を聞いたことがない。けれどもそれが良くないこと、悪い声だということが、おぼろげにわかる。または周りの文章から推測して、クツワムシの声というものを著者がどのように捉えて、それによって我々読者にどのようなニュアンスを与えようとしているかを、推し量ることができる。
これはわかりやすく伝えるという比喩の役割としては失敗だけれど、読者が筆者の方に寄り添って、共感するという意味では成功ではないだろうか』
「まったくその通りだ」と、僕はこのくだりを読んでうんうんと頷いた。
最近書店なんかに行くと、『論理的な文章の書き方』といったような本が店頭やお薦めのコーナーにならんでいるけれど、僕はそれだけじゃ言葉の持つおもしろみやおかしさ、奥深さはわからないと思う。
別に財務諸表とにらめっこすることだけが人生じゃないんだから、こうした豊かさを一人一人が大切にすることが大切なんじゃないだろうか。
トルストイやモーパッサン、いわゆる文豪がレトリックの危険性を口酸っぱく説いている引用の部分は、なんだかこそばゆかったけれど(だって彼らもレトリックの達人なわけですから)、そもそもは相手に興味を持たせたり、あらゆる情景を喚起させることや一種の知的刺激こそが「ことばのあや」であって、善か悪かはその使い手に委ねられるのだよな、と思った。
科学主義が台頭してから、レトリックは技術というよりも「まやかし」のように扱われているけれど、それでもこれを学ぶことは、大切だと思った。文章は本来、事象や空想を描くには不完全な手段であるし、それを補うものこそがレトリックのような気がした。
例えばブックレビューひとつにしても、延々と事実と論理しか書かれていない文章を、最後まで読むのを諦めたという経験は誰にでもあると思うし、そういった感性が間違いだとは、僕には思えないからだ。
東大の教授が書いたもので、しかも300ページ以上ものボリュームがあったから、全部は読まなかったが、それでも直喩と暗喩の部分は何回か繰り返し読んだ。この2章は他の章と異なり、著者の「事実を事実として伝えることが、ダイレクトに読み手の理解へとつながるわけではない」というメッセージが込められていると思ったからだ。
例えば著者はこんなことを言っている。
『「クツワムシのような声だ」という文があったとして、我々のほとんどはクツワムシというものの声を聞いたことがない。けれどもそれが良くないこと、悪い声だということが、おぼろげにわかる。または周りの文章から推測して、クツワムシの声というものを著者がどのように捉えて、それによって我々読者にどのようなニュアンスを与えようとしているかを、推し量ることができる。
これはわかりやすく伝えるという比喩の役割としては失敗だけれど、読者が筆者の方に寄り添って、共感するという意味では成功ではないだろうか』
「まったくその通りだ」と、僕はこのくだりを読んでうんうんと頷いた。
最近書店なんかに行くと、『論理的な文章の書き方』といったような本が店頭やお薦めのコーナーにならんでいるけれど、僕はそれだけじゃ言葉の持つおもしろみやおかしさ、奥深さはわからないと思う。
別に財務諸表とにらめっこすることだけが人生じゃないんだから、こうした豊かさを一人一人が大切にすることが大切なんじゃないだろうか。
2020年7月14日に日本でレビュー済み
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比喩の類型や誇張の仕方など、レトリックと呼ばれるものたちがどのような意図や微妙な効果を持つかを解説してくれています。今まで考えたことようもなかったのですが、今後はレトリックに意識して本や文章、スピーチと触れてみようと思います!
2013年1月15日に日本でレビュー済み
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言語能力の向上には必須です。
説得力のある人というのは、自然に筆者の紹介する技法を使い、言葉を武器に昇華させていると気づかされました。
直喩隠喩をなんとなく知っているというレベルの自分ですが、本来のレトリックの、言葉の、表現力に驚かされる一方です。
本当に素晴らしいです。漢文の代わりに、佐藤信夫氏の教科書を高校教育に取り入れてもらいたい。
説得力のある人というのは、自然に筆者の紹介する技法を使い、言葉を武器に昇華させていると気づかされました。
直喩隠喩をなんとなく知っているというレベルの自分ですが、本来のレトリックの、言葉の、表現力に驚かされる一方です。
本当に素晴らしいです。漢文の代わりに、佐藤信夫氏の教科書を高校教育に取り入れてもらいたい。
2020年8月27日に日本でレビュー済み
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簡潔に要領よく知りたいと思うことがまとめられています。本格的な修辞学の本に取り組む前に予習をするために大変良い入門書と思われます。再版を希望します
2021年9月10日に日本でレビュー済み
類似性するものが二つあったの話前提
類似性といかに似ていないかと同時にいかに似ているかでもある そしていかに似ているかでもあり似ていないかでもいる
類似性といかに似ていないかと同時にいかに似ているかでもある そしていかに似ているかでもあり似ていないかでもいる