２０世紀最大の科学史家にして科学哲学者トマス・クーンに師事して、数学史で博士号を取得した著者がさらにヨーロッパ近代を形成する科学革命の歴史を精緻な文献考証と解釈で描き上げた科学史の嚆矢。一人で描き出したことが解釈の一貫性を維持し、歴史の連綿を文献の詳細な引用と解釈で、科学的一貫性として描き出される史的ドラマにこそ本書の凄味がある。中でも第４章ドイツ近代大学建設と科学思想の中、３ 近代学問のモデルとしての古典文献学の記述は、文献学における解釈学がのちにラボラトリー（実験室）における実験ノートの解釈手法に決定的影響を与えたという実に優れた方法論を実証して、目から鱗が落ちる思いである。
こうした数々のドラマが、以後近代科学を発達させ続けた。そしてこの手法を北米でいち早く導入したジョンズ・ホプキンス大学へとつながることにも実証言及している。
さらに数学史家として歴代の哲学者と数学史にも優れた業績を残した哲学者論と自らの哲学的信念であるマルクス主義にも言及した浩瀚な科学論。未だに日本では本書を超える科学史研究におけるオリジナリティの高い研究は現れていない。
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